黙祷を捧げた後、立ち上がるオーウェン達が見たのは他のアパトサウルス達の亡骸だった。
「肉を食べた跡がない。“殺し”を楽しんでいる」
「彼女は食物連鎖に於ける自分の立ち位置を理解したんだろう」
そう推測するオーウェンとヴェル。
「彼女を…インドミナスを必ず止めよう。散っていったこの子達の命を無駄にしない為にも」
あかりの言葉に三人は無言で頷くのだった。
インドミナスとアンキロサウルスが交戦した地点に辿り着いた四人が目にしたのは大破したジャイロ・スフィアだった。
「そんな…嘘よ嘘よ嘘よ!」
と、動揺するクレアに対し
「これはインドミナスの歯か?」
「間違いないと思う」
冷静に状況整理を行う三人。
「ヴェル!オーウェン!これを!」
あかりが見つけたのは足跡だった。
足跡を辿った先は滝だった。
「飛び込んだのか…なかなか度胸あるな」
感嘆するオーウェン。
「ザック!グレイ!」
大声で二人の名を叫ぶクレアに
「大声は止すんだ!」
とオーウェンは注意する。
「あなたの飼っている恐竜じゃないの!」
「落ち着くんだ。二人は生きている。
だが、大声を出したら奴に居場所がバレて俺達の身が危ない」
オーウェンの言葉に従うクレア。
「あかり、手分けして探そう。私は崖の下に降りて探す」
「うん、私はオーウェンやクレアさんと一緒に探すよ」
そう言ってヴェルは崖の下へ軽々と降りていき、崖の下で見つけた足跡を辿って行くのだった。
ヴェルの“人間離れした身体能力”にラプトルの檻で見たオーウェンはともかくクレアは驚愕していた。
「あの崖から飛び降りて無事だなんて…あなた達は何者なの?」
「ネスト所属の特殊隊員―脳以外の身体の部位が金属細胞による義体となったアデプトテレイター」
クレアに対しそう返すあかりであった。
一方、崖の下の森の中。
兄弟はそこをさ迷っていた。
兄弟が見つけたのはボロボロのヘルメットや大破した車―そう、インドミナスとの交戦によって全滅した討伐隊の持ち物だった。
「使うのは無理そうだ」
とザックが討伐隊の車を見てそう言った時だった。
何かが草村を掻き分けて近付く音がし、兄弟は警戒するが
「君達がクレアさんの甥だね」
現れたのはヴェルだった。
「クレア叔母さんの知り合い?」
ザックに頷いて返すヴェル。
「私は特殊災害対策機関《ネスト》所属の特殊隊員、風見ヴェールヌイだ。
ヴェルと呼んでほしい」
「俺はザック。で、こっちが弟のグレイ」
ザックとグレイと握手を交わした後
「ザック君、グレイ君。君達を探していたんだ。クレアさんに頼まれて、ね。ついて来てくれ」
ヴェルはそう指示する。
「ついて来てって…何かあるんですか?」
グレイの言葉にヴェルは頷く。
「地図で確認した所、この辺りには嘗てのジュラシック・パーク―旧パークのビジター・センターがある。もしかしたら何か使える物があるかもしれない」
暫く歩いていて、旧パークのビジターセンターに到着した三人。
「まるで遺跡みたいだ」
と呟くザック。
「20年も放置されてたからこうもなるさ」
ヴェルは力ずくで扉を開け、三人は中に入る。
「ねぇ、これ見て」
グレイが発見したのは段幕らしき布だった。
「グレイ、マッチ持っているか?」
そう尋ねるザックの手には肋骨らしき棒が握られていた。
ザックは段幕を棒に巻き付け、松明代わりにした。
暫くして三人はガレージに辿り着く。
ガレージには工具や部品
「20年位前の型のジープか…」
2台の職員用ジープがあった。
「なぁ、グレイ。昔、爺ちゃんのボロ車を修理したことを覚えているか?」
「うん、覚えているよ」
「やってみるぞ」
兄弟は工具を集めてジープの終了を始める。
一応、ヴェルもインドミナスが来ないか警戒しつつ手伝っている。
「ハラショー、MF(メンテナンスフリー)バッテリーか」
と呟くヴェルにザックは尋ねる。
「“お姉さん”はロシア人なんですか?」
「半分は、ね。4分の1はそれぞれアメリカ人と日本人。それと、私は一応まだ14歳だよ」
その言葉に驚く二人。
「雰囲気が大人びててたからてっきりお兄ちゃんと同じ位かと…」
「まぁ、話すとちょっと長くなるけど、私ともう一人の同僚は“色々”あって“護られる側の”じゃなくて“護る側”として戦っているから」
修理を始めて数分後。
「グレイ、エンジンかけてみてくれ」
ザックの指示にグレイは頷き、イグニッションキーを回すと、エンジンがかかったのだ。
「ハラショー、大したものだ」
と感心するヴェル。
「ザック君、運転は出来るかい?」
「ザックで良いよ。運転なら出来るよ…路上試験で落ちて免許はないけど」
「非常事態だ。免許はなくても運転さえ出来れば大丈夫さ。
私は後ろであのハイブリッド恐竜―インドミナス・レックスが追って来ないか見張るから運転を頼む」
ヴェルの言葉にザックは頷き、修理したジープの運転席にザック、助手席にグレイ、後部の荷台にヴェルが乗り込んで一向はガレージを後にするのだった。
一方の管制室。
インドミナスを生み出した存在からインドミナスの事を聞き出しに行っていたマスラニが帰ってきた。
「マスラニさん、何か分かったんですか?」
尋ねるレノックス。
「残念ながらほんの少し―インドミナスに使われている遺伝子の一部が何なのかしか分からなかった」
マスラニはレノックスにその使われている遺伝子について話す。
「なる程…アマガエルの遺伝子が体温調整を、コウイカの遺伝子が変色による擬態能力を与えた、という事か…」
とレノックスが納得した時だった。
「インジェン社だ!」
ホスキンスが管制室に入ってきた。
「ボス、事態は一刻を争う。私が立てた作戦なら奴を叩くことが出来る」
「で、その作戦とは?」
「ラプトルです。我々は彼らを従わせることに成功しました。
彼らを使ってインドミナスを―「生憎だが許可出来ない」何故です?
このままでは大勢の人が奴に殺されることになる」
「ラプトルがあなた方を襲わないという保証はありませんよ」
とレノックスは言う。
「だったら君の所にいる嬢ちゃん達にも協力して貰えば良い。
嬢ちゃん達もラプトルを従えているし、それに嬢ちゃん達自身も戦力になる」
「生憎ですが、彼女達はあなたの命令に従わないと思いますよ」
とレノックスは言い返し、ホスキンスは舌打ちをして管制室を出て行った。
ヴェル達が脱出して数十分後の旧パーク、ビジターセンターのガレージ。
あかり達もまたガレージに到着していた。
「―うん、分かったよ。じゃあ、また後で」
あかりはそう言って通信を切る。
「ヴェルからか?」
「二人を保護して今はリゾート区画に向かってるって」
あかりの言葉に安心して胸をなで下ろすクレア。
「それにしても…一体どうやって20年も放置されていたこのポンコツを直したって言うんだ!?」
とオーウェンがツッコミを入れた時、足音が響いた。
インドミナスが来る、と察した三人は物影に息を殺して隠れる。
クレアは恐怖で涙目になってる。
「大丈夫、私達がついてる」
とあかりはクレアを励ました時、インドミナスがガレージに入り込んできた。
インドミナスはジープに顔を近付けて、揺すったりして探った後、居ないと判断したのかガレージを去った…かに見えた。
ガレージの天井が崩れ、インドミナスが覗き込んでいたのだ。
インドミナスはあかりの姿をじっと見つめていた。
「私が注意を引きつけるから二人は逃げて!」
とあかりはインドミナスの前に姿を現す。
「クレア、走れ!」
オーウェンの言葉に従い、クレアは通路へと走る。
一方のあかりは
「…インドミナス!やめて」!
インドミナスを説得しつつガレージの外へと誘導する。
一方のインドミナスはあかりを“襲おうとしなかった”のだ。
何故襲おうとしないのか―それはインドミナス自身もよくわからなかった。
だが、目の前にいる頼尽あかりという名の少女はこれまで彼女が見てきた人間とは明らかに違う何かを感じる、その事は理解していた。
そんな中、“ヘリのプロペラ音”を聴いたインドミナスは上空を見上げる。
ヘリの開いている扉からは備え付けられたガトリング銃がインドミナスに標準を合わせており、それを見たインドミナスは森の方へと走り出す。
ガトリング銃から銃弾の雨がインドミナスに降り注ぐ中、あかり達はひとまず高台まで逃げてきていた。
「なぁ…あかり…奴が逃げている方角は…」
「うん、インドミナスは闇雲にヘリから逃げている訳じゃない…“あれ”があると分かってあの方角から逃げてる」
あかりは管制室に通信を繋ぐ。
『あかり君かい!?』
応答したのはマスラニだった。
「マスラニさん!大至急ヘリを戻して欲しい」
『どういう事だい?』
マスラニの言葉にあかりはこう返した。
「インドミナスの進行方向上にあるのが…翼竜の住むドームだからだよ」
一方の管制室。あかりの言葉の後
「ロウリー!今すぐヘリを呼び戻すんだ!」
「了解!管制室からヘリへ!今すぐに帰還しろ!」
マスラニはオペレーターの一人であるロウリーに指示を出し、ロウリーはその指示をヘリに伝えるが…先にインドミナスがドームを突き破り、侵入した。
「あ~マズいマズいマズい!」
と焦るロウリー。
モニターの中にて突然の来訪者にざわめく翼竜達は鳴いたり翼を羽ばたかせて威嚇するが、インドミナスは咆哮し返し、翼竜達はインドミナスが侵入した所から次々と出て行ったのだった。
To be continue