ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

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第54話『輝きの向こう側へ』

「もしかして、今日って最後の練習だったんじゃ…」

その事に気付いた花陽はそう口にした。

いや、何人かは気付いていたがあえて口にはしなかったのだ。

 

ラブライブ本戦の前日。

その日もまた練習を行っていたが―今日は最後の練習だった。

みんなで神田明神へお参りしてその場は解散となったが…

 

まだこの時間を終わらせたくないという思いがあるからか結局自然と全員が集まってしまった。

「どうする?このままじゃ何時まで立っても…」

にこの言葉に

「そうだ!私に良い考えがあるよ!」

と穂乃果はある事を提案するのだった。

 

 

「あの、私もご一緒で本当に良かったんですか?」

「構わないよ。それにあかり姉やヴェルがいなかったら一人になっちゃうでしょ?」

「だから、明乃も一緒に、ね?」

「二人の言うとおりだ。何も気にする事はない」

明乃の言葉に雪穂、亜里沙、ヴェルの3人はそう返した。

μ'sの面々とあかりが学校で合宿する事になった一方で、4人は音ノ木坂に一番近い穂乃果の家でお泊まり会を行い、穂乃果の父親の車に乗って現地に向かう手筈となっている。

「それじゃあかり達にメールでも送ってみるか」

ヴェルはそう言ってスマホのカメラで自分と3人を撮影し、あかりにメールを送る。雪穂や亜里沙も同様にメールを送ったりしてラブライブ前夜を楽しんだのだった。

 

時は遡り数分前…

「いや~、まさかこの提案が通るとは流石の私でも思わなかったよ」

あかりは練習部屋に並べられた十床の布団を見てそう呟いた。

穂乃果のアイデアを聞いた後、あかりはことりと共に理事会へ直談判をしに行った。

あかりはダメかもしれないという可能性も考えていたが…

「―本当は二週間前に申請しないと行けないのだけれど…ひょっとしたら私が見落としてただけなのかもね」

と柔軟に取り計らってくれて、こうして合宿もといお泊まり会が出来たのだ。

「つくづく、おばさんは本当に話が分かる人だなって思うよ!

まぁ、私がこの学校に来たのってある程度融通が利くからってのもあるんだけどね」

「ほんと、理事長には感謝しないと」

「絵里も加入前と比べて随分と変わったよね」

「そうかしら?」

「加入前はどこか近寄り難い様な…そんな印象があったけど今はノリノリだったりで…より魅力的になったと思うよ」

「…ありがとう、あかり」

あかりの言葉に照れる絵里だったが、その時二人のスマホにメールが届く。

「あっ、ヴェルからだ」

「亜里沙からね」

二人はそれぞれメールを読む。

『雪穂と亜里沙とお泊まりなう』

『そっちはどう?こっちはお泊まり会だよ!

明日、頑張って(≧∇≦)』

「あっ、これドヤ顔だ…」

とあかりは写真の中でドヤ顔をしているヴェルにそう呟く。

「まぁ、楽しそうで何よりじゃない?」

「それもそうだね」

と談笑をしていら

「ちょっと!家庭科室のコンロの火力弱すぎじゃないの!?」

中華鍋を持ったにこが入ってきた。

「流石にこさん。家庭科室の設備で麻婆豆腐を作るとは…いやはや恐れ入りましたよ」

しかも本格的だった。

「花陽!ご飯は!?」

「炊けたよぉ~!」

そう言って炊飯器を抱えて炊きたてのご飯を見せる花陽の笑顔はこの上ないものであった。

それからご飯食べ終えた後

「見て!星が出てるよ!」

窓の外を見た穂乃果は星が出ている事に気付き、皆で屋上へと向かった。

 

「It's so beautiful…」

とあかりは呟く。

皆もまた美しい夜空に見とれていた。

「みんなー!私達のステージ、見ていてねー!」

と不意に穂乃果が叫んだ。

そして、皆が空に向かって叫んだ。

『『みんなー!見ていてねー!』』

 

 

そして、ラブライブ本戦・当日。

「―てな訳で私はあのファーストライブの時、空気読めねージーオスに『空気読めよクソッタレが!』って八つ当たりしたり罵声を浴びせたりんだよね」

あかりは皆の緊張を解すべく思い出話を皆に訊かせていた。

「あんた…キレたらとことん口が悪くなるわよね」

とツッコミを入れるにこ。

「まぁ、私だけじゃなくてヴェルもなんだけどね」

それからも話は続き

「んじゃ、いい感じに緊張も解れたみたいだし、みんなにメッセージを送ろう。

勝ち負けとか気にせずに悔いがないよう楽しんでいこう!」

あかりのエールにμ'sの面々から“緊張”というものは消え失せていた。

 

 

 

 

 

夜となり、他のスクールアイドル達の発売も終わって残すはμ'sの番のみ。

着替えも終わり、後は出る時を待つのみ。

「みんな!かわいいよ!思わず抱き締めたくなる程にかわいいよ!」

「本当!?ありがとうあかりちゃん!」

あかりの言葉に穂乃果は満面の笑みを浮かべる。

「海未ちゃん、緊張する?」

ことりは海未に問う。

「えぇ。でも…この緊張感を楽しむのがすっかり癖になってしまいました」

と海未は返す。

「にこはどうだい?」

と問うあかりに

「私を誰だと思ってるの?」

とにこは返し

「早くあのステージに立ちたい…ただそれだけよ」

「私は、緊張しちゃうけど…でも、早くあのステージを楽しみたい!」

「凛は早く踊りたいんだにゃー!」

と真姫、花陽、凛は続ける―その思いは同じ。

「今日のウチは遠慮しないで前に出るから覚悟しといてね!」

「なら!私もセンターのつもりで目立ちまくるわよ!」

希と絵里も気合いが入っていた。

皆の気合い・盛り上がりは充分―いや、溢れる程だ。

「そろそろ時間だよ!」

とあかりは皆に告げる。

「皆、全部ぶつけよう!今までの気持ちと、想いと、ありがとうを全部乗せて歌おう!」

穂乃果の言葉に皆は頷き、恒例の儀式―ピースサインを合わせて星を作り出す。

そこにあかりは加わる気などなかった。

「あれ?あかりちゃん?」

穂乃果の言葉にあかりは何時もの口調ではなく“素の口調―本来の口調”でこう返した。

「前にも言っただろ?俺は“歌の女神”を護る“鋼鉄の戦女神”だってな!」

笑顔でそう言う“鋼鉄の戦女神”の言葉に頷く九人。

「なんて言ったらいいか分からないや」

穂乃果はそう口にした。

「だって本当にないんだもん。もう全部伝わってる。

もう気持ちは一つだよ。感じていることも、考えていることも同じ」

その言葉に同意するが如く皆が頷く。

「μ'sラストライブ!全力で飛ばしていこう!1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

「7!」

「8!」

「9!」

『『μ's!ミュージックスタート!』』

 

 

 

 

奇跡のその先にある“光”へと辿り着き、その“光”の中、現在(いま)という時を全力で楽しもう―そんな思いがこの曲『KiRa-KiRa Sensation!』に込められていた。

 

 

 

 

曲が終わった後、何時もの点呼の順で名乗り、最後に

「音ノ木坂学院スクールアイドル“μ's”!ありがとうございました!」

『『ありがとうございました!』』

穂乃果の言葉に続けて皆はこれまでの感謝の意を込めて締めの挨拶をした。

 

 

本来なら―ラブライブ本戦の規定通りならこのまま終わる…筈だった。

『アンコール!アンコール!』

観客席からその声が響き渡り、次第にその声は大きくなっていく。

(『このまま見向きもされないかもしれない、応援されないかもしれない…。

…でも、一生懸命この気持ちをみんなに届けたいんです!』

ファーストライブの時に穂乃果はそう言った。

完敗だったあの時と比べて今は大きなステージに立ち、沢山の人々が応援してくれる。

それは彼女達の気持ち―思いが人々に届いた事を意味している)

観客席でライブを見守っていたあかりは“ある物”を取りに行く。

「あかり」

そうあかりに声をかけるのはヒフミトリオを連れているヴェルだった。

4人の手にはあかりが取りに行こうとしていた“ある物”が入った袋を持っていた。

「『あかりは“こういったもしもの場合”に備えてる』ってヴェルちゃんが言ってたよ」

「その“もしも”が―」

「今なんじゃないかな!?」

ヒフミトリオの言葉にあかりは笑みを浮かべてこう返した。

「Yes!」

 

 

ステージが終わり、その余韻に浸っていたμ'sの面々。一人、また一人とやり切ったと涙を流す。

そして、“アンコール”の声が響き渡り、その言葉に穂乃果はふと自分が嘗て言った言葉を思い出した。

 

 

『このまま見向きもされないかもしれない、応援されないかもしれない…。

…でも、一生懸命この気持ちをみんなに届けたいんです!』

 

 

ファーストライブの時に言った言葉。

完敗だったあの時と比べて今はどうか?

こうして大きなステージに立ち、沢山の人々が応援してくれる。

それは自分達の気持ち―思いが人々に届いた事を意味していた。

そう思った穂乃果の瞳には大粒の涙が溢れていた。

その時

「その涙は取っておくべきだよ、穂乃果!」

あかりの声に穂乃果は振り向く。あかりが、ヴェルが、ヒフミトリオが其処にいた。

「こんな事もあろうかと準備して置いて良かったよ」

「あかり…まさか、こうなるのを…」

絵里の言葉にあかりは頷く。

「トリを飾る、って分かった時からこうなるんじゃないかって思ってたよ」

「じゃあ、もう一曲を練習しておけっていうのは―」

希の言葉にあかりは頷き、こう返した。

「備えあれば憂いなし、ってね」

あかりの笑みに

「全く、あかりには適いませんよ」

と海未は返す。

 

 

あかりが差し出した袋―その中に入っていた衣装を涙を拭った穂乃果は受け取る。

「さぁ!みんな!楽しんできて!あの“輝きの向こう側”へ!」

あかりの言葉に皆は力強く頷いた。

 

 

 

 

前へ向かって進んでいき、輝きを追い求め続けた彼女達の軌跡。その軌跡をあかりが自身なりに綴った曲。

 

 

 

 

 

その曲の名は

 

 

 

 

『僕らは今のなかで』

 

 

 

 

To be continue

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