―side:Akeno―
ライブが終わってからの帰り道。私達は色々話をしながら帰路についていた時だった。
「ジーオスが現れただと…」
と舌打ちするヴェルさん。
「場所は…よりにもよって此処だと…」
あかりさんがそう言った後、“それ”は上空から私達の目の前に落ちてきた。
「■■■■■■■■!」
ジーオス。この地球に於いて度々人類を襲い、被害を齎している怪獣。
「みんなもいるから安全に気をつけつつ速攻で倒すよ、ヴェル!」
「あぁ、あかり!」
「「アデプタイズ!」」
「バトルマグナス、トランスフォーム!」
「ドレッドバイト、トランスフォーム!」
あかりさんとヴェルさんはトランステクターを身に纏い、ジーオスとの交戦を開始する。
『トランステクター』『怪獣』『アデプトテレイター』
そうか…私は…私は…
―side out―
―side:Akari―
ジェネラル級ジーオスとの戦闘終了後
「あかりちゃん、ヴェルちゃん」
私達に声をかける穂乃果ちゃんは何やら困っているようだった。
「どうしたの?」
「明乃ちゃんの様子がおかしくて…」
と返すことりちゃん。
明乃は絶望しているかの様な目をして泣いていた。
「…とりあえず家に帰って本人から話を聞いてみよう。みんなはもう遅いから帰って―」
「私達もあかりちゃん達について行く!」
穂乃果ちゃんは真剣な眼差しで私を見る。
「私達にも知る権利があるわ…彼女の事について」
まぁ、エリチカの言うとおりだね…
「良いよ。じゃあ、みんな今日は家に泊まって」
その後、軽い食事を済ませ、私達は明乃から話を聞く事にした。
ヴェルにはこの話を録音しておくようにお願いしている。
私の予想が当たれば明乃はおそらく…
「明乃、何があったのか話してくれないかな?」
「…思い出したんです」
そう返す明乃の声は弱々しかった。
「あかりさんとヴェルさんがジーオスと戦っているのを間近で見て思い出したんです…私がどうしてこの地球に飛ばされてきたのか…何故アデプトテレイターになったのかを…」
やはり…か。
「私は“アイツ”が第34太陽系の地球と呼んでいた地球出身なんです」
第34太陽系の地球…確か前に亜理火さんから原因不明の爆発で消滅したって聞いたけど…
「一つ質問していい?」
私の言葉に明乃は頷く。
「“アイツ”とは誰なの?」
「“アイツ”の名は…“トクスレイダー”」
トクスレイダー…確かこの名も亜理火さんから聞いた事がある。
元デストロンの科学者であるディセプティコンのトランスフォーマーで、非人道的な研究で多くの惑星の生命を奪ったとして指名手配されているもののその所在は未だに掴めずにいる。
「私はトクスレイダーの実験によって改造されたアデプトテレイターなんです」
そして、明乃は何を見てきたのか、今まで何が起きたのかを語り始める…
それは一人の少女が背負うには余りにも重く悲しい過去だった。
―side out―
―side:Akeno―
およそ6年前、第34太陽系の地球。降りしきる豪雨、激しく波打つ海原。
私と両親が搭乗していた旅客船は豪雨の中、嵐と激しい波によって座礁、沈没の危機に瀕していた。
「明乃、こっちだ!」
父親に手を引かれるままに私は連れていかれる。
「さぁ、此処から飛び降りるんだ」
「そんなのできないよ!」
「良いから飛び降りるんだ!如何なる時もお前は
俺達の分まで生きろ!」
私は父親に押し飛ばされる形で海に放り出された。
船から爆発が生じたのはそのすぐ後だった。
海難事故から一夜が明けた朝。警察に被害報告している救助隊員の足元には青いシートが敷かれていて、その上にある“何か”を青いシートで被せてあった。
その中に見覚えのある腕が覗いているのが見えて、私はそのシートの元へ駆け寄る。
「お父さん!お母さん!」
捲り上げたシートの下にあったのは…最早すっかり見分けがつかなくなった、二体の人間の変わり果てた姿だった。
これは両親じゃないんだ…両親はまだ帰ってきてないんだと私は心の中で二人が帰ってくるんだ…そう思っていた。
翌朝、私は両親が“いる”と聞いて、沢山の木箱が置かれている避難所の中でも大きな部屋を訪れていた。
あちこちから人々の様々な泣き声が聞こえて来る中、私は其処にいた係員と思わしき大人に
「お父さんとお母さんはどこ」
と尋ねる。
彼は黙ってある二つの木箱を指差した。
「君のお父さんとお母さんはこの小さな箱の中に…いや、もういないんだよ」
今回の事故で家族や家財をすべて失い、私は帰る場所を失った。
静かに燃え尽きた世界にたった一人、私は取り残された。
あの時、二人の言うとおりに躊躇なく海に飛び込んでいれば両親は死なずに済んだのかもしれないという後悔と罪悪感、そして一人だけ生き残った自分を許せないという怒りが私の中で渦巻いた。
その後、私はある孤児院に入れられ、其処で暮らす事となった。
孤児院にいた子達はとても優しくて、私を暖かく受け入れてくれた。
しかし、私達は親無しとして一般家庭の子達からいじめを受けるようになっていた。
いじめっ子に立ち向う子もいた中、私は(孤児院の仲間がいじめを受けていたらいじめに立ち向かって助けるが)自分に対してのいじめの場合は向かう気などなかった―これはただ一人だけ生き残った自分への天罰なんだ、そう思ったから。
私達が小学校へ入学してもそれは変わらなかった。
ある日は下駄箱に入れていた上靴の中に画鋲を入れられていた。
ある日、上靴や体操服を隠された。
ある日、提出したプリントやノートを受け取ると…落書きをされていた。
周りの子は私達を見て見ぬふりをする…関わって自分達もいじめられたくない、そう思わんばかりに。
私はともかく他の孤児院の子達は教師にいじめを訴えたりした。
訴えてしばらくはいじめが止んだかに見えても…また数日後にはいじめが再開するという繰り返し。
教師達は警察沙汰にしたくなかったのかいじめを行っている生徒達には軽く注意するだけで親も呼び出しての厳重注意を行おうとしない。
小学5年生になった数ヶ月経ったある冬の日。
孤児院の仲間で大人しい子がいじめに耐えかねて自殺した。
その日、彼女は両親の形見として大切に持っていたアクセサリーを粉々に破壊されたという出来事が起きていた。
私は彼女と格段に親しかった―そんな彼女を失った時、私はこう思った。
守れなかった…私に暖かな居場所を与えてくれた仲間を守れなかった…
もうあんな悲劇は二度と繰り返してなるものか…
その為には自分が強くあればいい…あいつらよりも。
その為になら…私は悪魔にでもなる。
翌日の登校時間。
「―でさ、ほんと笑っちゃうよね」
呑気に会話しているいじめっ子の一人を視界に捉えた私は彼女の元へ向かう。
「何よアンタ―」
私は彼女が言い終える前に腹部を殴り
「こいつ!」
後ろから来る者に対しては肘打ちをお見舞いする。
肘打ちを食らった者は悶え苦しみ、倒れる。
「死ねや!」
更にモップで殴りかかろうとする者に対してはモップを奪い、そのモップで頭を強く叩く。
私は頭を叩かれた者が意識を失っている間に悶え苦しんでいる者の頭を強く蹴り、その者は靴箱に衝突、その衝撃で靴が散乱し、血が付いている。
その後、腹部を殴られ悶えている者と肘打ちを食らって悶えている者の頭を掴んでぶつけるのだった。
私が復讐を果たしたのと同じ頃。
この第34太陽系の地球で各地が核爆発が起きるという事件が発生していた。
原因は何者かによる核ミサイル保管所や核廃棄物処理場、原子力発電所の爆破。そしてその犯人は人間ではなく…宇宙人―巨大な金属の身体を持つエイリアンだった。
「こいつも違う…どいつもこいつも適合率が低すぎる。何年もかけて準備をして、今日実行に移したのに結果はこれか」
そのエイリアンはそう言いながら各地を爆撃し、刃向かう者は勿論、逃げ惑う無抵抗な人々からも次々と命を奪っていく。
「トクスレイダー様、各国の軍事施設の制圧、完了しました」
「トクスレイダー様、こちらへ」
そのエイリアン―後にディセプティコンのマッドサイエンティスト『トクスレイダー』だと知る事になる奴は“適合者”を探していた。
「ほほう…こんな所に適合者がいるとは…連れていけ」
「わかりました」
トクスレイダーの配下のドローンに麻酔弾を撃たれ、私は意識を失った。
次に目覚めた時、私はトクスレイダーの実験場にいた。
話を聞くにトクスレイダーは私をアデプトテレイターと呼ばれる存在へと改造し、“ある兵器”のパーツに使うらしい。
「今までアデプトテレイター化への適合率が高く、アデプトテレイター化した者でもこいつを―ディノスレイドを制御できた者はいなかった」
「その人達はどうしたの…?」
「処分した。お前も適合率が低ければ処分する」
トクスレイダーはそう言って私をその兵器―ディノスレイドに接続する。
接続された瞬間に複数の地球やトクスレイダー達の実験場、アデプトテレイターやトランスフォーマー、トランステクターなど様々な情報が私の頭の中に流れる。それと同時に今まで接続した者達がどうなったのかも頭の中に流れてきた。
ある者は動かす事すら出来ず、またある者は発狂して暴走した。
そんな事はどうでも良い。
まず、私は腕を動かしてみた。するとディノスレイドの腕は私が思った様に動いた。
「成功か…」
私はトクスレイダーの部下であるドローンの方に目を向け、その腕でドローンを捕獲する。
「何をする」
ドローンが喚くが、そんなの気にせず握り、そして引きちぎる。
「何のつもりだ」
トクスレイダーはそう問う。
こいつが今までに何をしてきたのかは流れてきた情報で知っている。
こいつは今までにもある地球の文明を滅ぼしている。
そして、この地球の文明ももはや機能していない―多くの人々がこいつらに殺されたからだ
今の私には守るべき者など誰もいない…倒すべき相手は精々こいつくらいだ。だから…
「あなたを倒して…私も死ぬ」
「やってみるがいい」
私―ディノスレイドはまず一気に駆け出してトクスレイダーとの間合いを狭め、殴りかかる。トクスレイダーはそれを回避し、私に向けてレーザーを放つ。
私はそれを同じくレーザーで相殺し、トクスレイダーに接近する。
「戦い方が素人だな」
トクスレイダーも私に近づき、ディノスレイドから私を“引きちぎって”強引に接続を解除した。
「サイバトロン共に嗅ぎ付けられて逮捕されて技術を奪われる訳には行かないからな…だからこそこの“実験場”を処分する。お前は精々この地球と運命を共にするんだな」
そう言ってトクスレイダーは端末を操作し、“ある物”を開き、ドローン達と共にその中へ入っていった。
流れてきた情報の中にあったスペースブリッジだ。
トクスレイダーの言うとおり、此処で死ぬのも良いだろう…そう思っていたのに…
『お前は俺達の分まで生きろ』
父親のその言葉が頭を過ぎった。
「ごめんなさい…お父さん…お母さん…」
私はスペースブリッジへと向かう。
あちこちで爆発が相次ぐ中、スペースブリッジも円形から不定形な形となっている。あんな状態じゃ無事にくぐり抜けたとしてもトクスレイダー達が向かった先とは別の場所に飛ばされるだろう。
でも、そんなのどうでもよく感じた…もはや考える事すら面倒になっていた。とにかくあの向こう側へ…ただそれだけだった。
スペースブリッジに入ったと同時に私は爆風によってどこかへ飛ばされてしまった。
その飛ばされた場所こそが第46太陽系の地球だった。
To be continue