ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

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第56話『受け入れること』

―side:Akari―

 

 

彼女―岬崎明乃の過去は私達が想像してた以上に重く悲しいものだった。

「なんで今まで忘れてたんだろう…」

と涙声で震えながら明乃は泣いていた。

 

あらゆるものを失い、心がボロボロになっている…それが岬崎明乃という人物なんだろう。

 

そんな彼女に私は嘗ての自分をだぶらせていた。

 

私も一度は何もかも失った。

 

恐らくヴェルも同じようにだぶらせているだろう。

 

だからこそ、私は立ち上がり、明乃を優しく抱きしめた。ヴェルも同じように明乃を後ろから抱きつつ頭を優しく撫でている。

「辛かったんだな…」

ヴェルが声をかける。

「お前はよく頑張ったよ…ここまでよく頑張った」

私もそう声をかける。

「此処には“俺”がいる。ヴェルがいる。みんながいる。

お前が望むなら、お前が帰るべき暖かな場所になろう」

思わず“素の口調”になったが、そんなのどうでもいい。

今の明乃に必要なのは帰るべき暖かな場所となる者達だ。

 

嘗て“俺”がヴェルやμ'sのみんなに救われた様に今度は私が、私達が明乃を救ってみせる…

 

 

 

 

あれからどれくらい時間が経ったのだろうか…明乃は漸く落ち着いたようだった。

「落ち着いた?」

「はい…ありがとうございます」

「こう言うのも何だけど…明乃はいじめっ子を“殺して”はないんでしょ?」

私の言葉に明乃は無言で頷く。

「だったら私やヴェルよりはマシだよ」

その言葉に明乃は信じられないと言わんばかりの表情を浮かべる。

「私やあかりは…形はどうあれ殺人を犯している」

そして、私とヴェルは明乃に対し自分達の過去を話すのだった。

 

 

―side out―

 

 

―side:Vernyi―

 

 

私がアデプトマスターになる1ヶ月程前のロシアのとある銀行。

私はその日、両親と共にその場にいた。

「動くな!」

そんな時、銀行強盗が押し掛けてきた。

「お前ら人質だ!動くなよ!」

2人組の強盗はその場にいた者達を脅し、銀行員に金をバッグに詰めるよう脅しをかける。

見たところ…拳銃を持っているのは一人だけのようだった。

「ほら早く急げ!」

「親分、警察の連中が来ますぜ!」

「クソッ!早く金を詰めろ!」

強盗達が出入り口の方を向いた一瞬の隙をついて、銀行員が拳銃を持った男にタックルを食らわせる。その拍子に男が持っていた拳銃が手から離れ、私の前に落ちる。

「このやろう!」

男は銀行員の股間を強く蹴り飛ばし、銀行員は悶え倒れる。

一方の私は拳銃を手にしていた。

家族を守りたい…父親を…母親を…そして、母親のお腹の中にいる妹になる命を。

「そいつを返して貰おうか、メスガキ」

私に迫ってくる男は次の瞬間、私に飛びかかろうとしたが…

 

 

その男が私に飛びつく事はなかった。

 

 

大きな銃声。反動で飛ぶ私の身体。そして…男の鳩尾に命中した銃弾。

 

 

 

 

その後、強盗犯は警察に逮捕されたが…拳銃を持っていた男は死亡した。

私が殺したんだ…私がその男を殺したんだ…

私と私の両親は過剰防衛として厳重注意されるだけで済んだが…それから私は家に引きこもった。

周囲から人殺しとして軽蔑されるのが怖かったからだ…。

「ヴェル、お腹の中の子が生まれたら引っ越しましょう。私達を知らないどこか遠い場所へ」

母親が私にそう提案した数日後だった。

 

 

私達一家はジーオスの襲撃を受けた。この襲撃で私は重傷を負うだけで済んだが…両親と私の妹になる筈だった命は失われてしまった。

ネストの面々が到着したのは私達が襲撃を受けた数十秒後だった。

意識を取り戻した私は泣き叫んだ。

「もっと早く来てよ&もっと早く来ていれば両親と妹は…!」

 

 

この襲撃で私は自身の四肢と家族の命を失った。

何もかも失い、絶望していた時に私はネスト隊員達の話からアデプトマスターの存在を知った。

私はアデプトマスターになる事を強く望んだ―家族の命を奪った奴らに復讐する為と私の様な者を一人でも多く減らしたい為に。

 

 

アデプトテレイターとなった私は義体に慣れる為のリハビリを行うと共にPTSDの治療を行った。

銃器を見るとあの時の事をどうしても思い出してしまう…だが、戦うと決めた以上は銃に対するトラウマを克服しなければならない。

だから、私は義体に慣れる為のリハビリを行う時間や食事、睡眠の時間以外の時間はほぼ全てトラウマを克服する為の治療を行う時間に費やした。

周りから無茶をしていると言われる事もあったが、続けたおかげで義体に慣れ、ネストの訓練校に入った頃にはトラウマを完全にではないが克服出来ていた。

 

 

 

 

「えー、この俺がお前達の教官となるレノックスだ。階級は少佐だ」

「同じくアーマーハイド。種族はオートボット。まずはお前達の自己紹介だ」

二人の教官―レノックス少佐とアーマーハイドの指示に同期の者達は自己紹介を行う。

「私は頼尽あかりと言います!日本人でアデプトテレイターであります!宜しくお願いします!」

そして、最後―私の前に自己紹介をしたのがあかりだった。

 

 

「君達二人はこの部屋で一緒に暮らして貰う。

それと、君達に関しては通常訓練のカリキュラムに加えてトランステクターを使った訓練も行うのでそのつもりで」

レノックス少佐はそう言って部屋を後にした。

そして、流れる気まずい空気。

「えっと…風見さん…」

「ヴェールヌイで構わないですよ」

「うん!じゃあ、私の事もあかりって呼んでね!」

私は頷いて答えた。

暫くして夕飯の時間となり、私達は食堂へ向かった。

食堂はメニューが豊富で、ラーメンやうどんといった麺類もある事に驚いた。

「じゃあ、私はこの豚骨ラーメンで!ヴェールヌイは?」

「う~ん、このきつねうどんという物で」

注文した物が届いて、隣同士となって私達は夕飯を食べる。

「なかなか美味しいじゃん!」

あかりが美味しくラーメンを食べている隣で私は興味津々にきつねうどんを見て、それから麺を口にして驚いていた。

「ハラショー、これが母上が言っていたうどんという物か…」

最初は会話もあまり多くはなかったが、あかりの方から積極的に話しかけてきた。

 

そして、訓練が始まってある程度の月日が流れた。

その日は近くの山でテントを設営したりしてサバイバル訓練を行っていた。

「あかりは何故アデプトテレイターになったんだ?」

「そう言うヴェールヌイはどうしてなの?」

「…私は家族をジーオスに殺された。私自身もジーオスに重傷を負わされ、その時にアデプトテレイターとして奴らと戦う道を選んだ」

「なる程ね…」

「で、あかりはどうなんだ?話しにくいなら別に話さなくても良いんだが…」

「あれはね―」

それからあかりはあの日の事―両親を殺され、私自身も殺した連中を殺した事を話した。

「…すまない、悪い事を訊いてしまった」

「ううん、良いんだよ!あっ、そうだ!これはから“ヴェル”って呼んで良い!?」

「別に構わないが…だったら私に日本語を教えて欲しい。

私は日本人の血を引いていながら…日本語が話せない。両親は基本的にロシア語か英語だったからな」

「それくらいなら全然OKだよ!じゃあ、私にもロシア語を教えてくれないかな!?」

「あぁ、勿論だ」

「あぁ、勿論だ」

それからあかりは私を“ヴェル”と呼ぶ様になり、彼女にロシア語を教える代わりに彼女から日本語を教わった。

それから、私もアデプトテレイター化する前の…銀行の事件も話した。あかりはそんな私を暖かく受け止めてくれた。

そして、更に月日が流れ、私はμ'sの皆を始め多くの人々に暖かく受け入れてもらった。

 

 

彼女達と出会えたのはあかりがいたからだ…だからあかりには感謝している。色々なものを私に与えてくれた彼女に…

 

 

―side out―

 

 

―side:Akari―

 

 

「―と、こんな感じだ」

ヴェルは自身の過去を話し終えた。

「すみません…辛い過去を思い出させてしまって…」

「気にしないでいいよ。あの事件があったからこそ今のアデプトマスターである自分がいるし、みんなが受け入れてくれたから今こうして私達はいる。

私達にとってみんなは帰るべき暖かな場所なんだよ

私達は明乃の事を受け入れる…帰るべき暖かな場所になる。だからさ、明乃も私達の事を頼って良いんだよ」

「…はい!」

私のそう返す明乃は笑顔でとても愛らしかった。

 

 

 

 

To be continue

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