第58話『世界へ』
「“今回の件”についてとある“依頼”について。
正式発表まではみんなにも黙っているようにって言われてたんだけどね」
「じゃあ、卒業式が終わったらウチらに話があるのって…」
希の言葉に力強く頷き、こう続ける。
「これまで皆が歩んできた軌跡。ラブライブ優勝で終わると思ったら大間違いだよ!
皆の“軌跡”はまだまだ終わらないよ!」
「私達の奇跡…」
穂乃果の呟きにあかりは頷く。
「ラブライブ第三回の開催が決まり、その会場としてアキバドームでの開催を予定している」
「アキバドームって、あの何時も野球をやってるドームかにゃ?」
「そうだよ。ただ、アキバドームでの開催は確定じゃないんだよ。
幾らスクールアイドルが人気だとはいえ今の実績だけじゃ難しい。
其処でみんなに―μ'sに白羽の矢が立ったって事だよ。
で、依頼の内容だけど…ラブライブ実行委員会と海外のある会社からの依頼で、その依頼先の海外会社の傘下にあるテレビ局が日本のスクールアイドルを紹介したいから、向こうでライブをして欲しいって事だよ」
「か、海外!?これまた大きく出たわね…」
真姫がそう驚いた後、あかりはこう言った。
「因み既に依頼は引き受けちゃったから皆に拒否権はないよ」
「ないんかい!」
ツッコミを入れるにこは置いておいてあかりはみんなにこう言った。
「でも、みんなもどの道受ける気だったんでしょ?」
その言葉に皆は笑みを浮かべて頷くのだった。
―side:Akeno―
音ノ木坂学園の卒業式から数日後。
「じゃあ、留守の間頼んだよ」
「あぁ、任せろ」
とあかりさんとヴェルさんはハグを交わす。
μ'sの皆さんはこれからアメリカのニューヨークでスクールアイドル史上初の海外ライブを行う事となった。あかりさんはμ'sのマネージャーとして一緒に行くことになっている。
「じゃあ、お土産とか楽しみに待っててね~」
とあかりさんは手を振りながらμ'sの皆さんと共にニューヨーク行きの飛行機へ乗るのだった。
「さて、私達は帰るか」
「はい!」
見送りを終えた私達は帰宅し、あかりさん達が帰ってくるまでの間、二人(時折雪穂さんや亜里沙さんが遊びに来て4人)でゲームをしたり、勉強したり、アニメや映画を見て過ごしたりした。
―side out―
数時間後のアメリカ・ニューヨーク。
「これから“車”に乗ってホテルまで移動する。ついて来て」
あかりの指示通りについて行く穂乃果達。
だが、あかりはバス・タクシー乗り場をスルーする。
「あかり、バスやタクシーに乗らないのですか?」
海未の質問にあかりは頷くと共にこう返した。
「ホテルまでの移動の足はあっちが準備してくれてる」
そして、駐車場。
「どうやらお迎えはもう来ているみたい。仕事が早いよ」
あかりはあるトレーラートラックに近付いていき、μ'sの面々もその後に続く。
トレーラーから降りてきたのはインド人の男性だった。
「あかり君!久し振りだな!」
「マスラニの旦那!元気してたかい!?」
あかりとインド人の男性―マスラニは握手を交わす。
「君のおかげでこの通りさ」
「大体一年ぶりだね。今回のお誘い、どうも」
「私も興味があったからね。君がマネージャーを務めているスクールアイドルに」
と談笑する二人。
一方のμ'sの面々は驚いていた。
「あの人、テレビで見たことあるにゃ…」
サイモン・マスラニ…世界的に有名な大富豪にしてマスラニ・グローバル社のCEO…」
「そんな人と知り合いってあかりちゃんは一体…」
と思い思いに言う一年生組。
あかりは手招きでμ'sの面々を呼ぶ。
「みんなに紹介するよ。彼はサイモン・マスラニ。
マスラニ・グローバル社のCEOで、今回の海外ライブを依頼した人なんだよ」
「やぁ、μ'sの皆さん。噂は聞いているよ。私がサイモン・マスラニだ」
とマスラニは日本語で自己紹介をする。
「立ち話も何だし乗ってくれ」
マスラニに促され、一行はトレーラーへ乗り込むのだった。
トレーラーの中はまるで高級ホテルの部屋の様であった。
中央に置かれたテーブルを左右から挟み込む形でソファが配置されている。
右側のソファに前方から海未、穂乃果、ことり、花陽、凛が座り、左側のソファにはあかり、希、絵里、にこ、真姫が座る。
マスラニは一人用のソファに座る。
「あの、マスラニさんってあかりちゃんとお知り合いのようですけど…どの様な関係なんですか?」
そう尋ねるのはことりだ。
「友人さ。それにあかり君は私の“命の恩人”でもある」
「もしかして…ジュラシック・ワールドの件ですか?」
「あぁ、良く知ってるね」
と絵里にマスラニはそう答えた。
「以前、あかりが話をしたんです。ジュラシック・ワールドでの出来事を」
と付け加える海未。
「日本語、お上手ですね」
花陽に対しマスラニはこう返した。
「日本語はあかり君の両親が教えてくれたり独学で学んだりしたよ。
あかり君の両親とは仕事仲間で、友人でもあった。
それがまさか、その娘であるあかり君とジュラシック・ワールドで出会う事になるとは思いもしなかったよ。
彼女やヴェル君が居なかったらあの事件の犠牲者はもっと多くなっていたかもしれないし…私も生きていなかっただろう」
マスラニはそう言った後、あかりにある事を尋ねる。
「そう言えば、“あれ”はまだ持っているのかい?」
「勿論だよ。だってこれはあの子の忘れ形見だからね」
そう言ってあかりが胸元から取り出したのはあるネックレスだった。
「ネックレス…?」
「これって歯よね?」
穂乃果とにこの言葉にあかりは頷く。
「うん、そうだよ。これはインドミナス・レックスの歯。
ヴェルが見つけたんだよ…あの子が死んだ後に」
あかりの脳裏に“インドミナスの最後”が過ぎる。
「それからはこうしてペンダントに加工して肌身話さず持ち歩いているんだよ…あの子の事を忘れない為にも」
それから一向はホテルへ到着、マスラニは仕事があるからとあかり達と別れた。
「さて、今回のライブに関してだけど、どこでするかは自由よ」
「どこでライブをすればμ'sらしいライブになるか、よく考えてライブ場所を選ばないと」
絵里とあかりの言うとおり―ライブ会場の指定はないのだ。
「という訳で当日までは午前は練習、午後からは場所探しって事で良いかな?」
あかりがそう言った後
「あかりの意見に賛成の人~」
というにこの言葉に皆は手を挙げて賛成の意を示す。
「それじゃ、次は部屋割りやね。部屋割りはくじ引きで」
希はそう言ってくじを出す。
「二人部屋と三人部屋がそれぞれ二部屋ずつ、くじには1~4の数字が振ってあるから同じ番号の人と同じ部屋になるって事や」
そして、くじを引く面々。
結果、二人部屋にはことりと海未、凛と花陽が割り当てられ、三人部屋には希と真姫とあかり、穂乃果とにこと絵里が割り当てられた。
希・真姫・あかりの部屋。
「真姫ちゃん、あかりちゃん、ジュース買ってきたよ~」
「ありがとう、希」
「ありがと~」
希は冷蔵庫へ、あかりにコーラを渡した後、真姫の分のジュースを冷蔵庫に入れる。
「あっ…」
「どうしたんだい?」
「これ…」
希が発見したのは真姫の作曲ノートだった。
早速読み進める二人。
今まで歌った楽曲の楽譜も多い中
「この曲…あかりちゃん、何か知ってる?」
「いや、これは私も始めて見たよ」
二人が見つけたのは二人の知らない曲の楽譜だった。
何見てるのよ?」
シャワーから出て来た真姫が二人に問う。
「「ごめん」」
謝る二人に
「別に良いわよ」
と返す真姫。
あかりはこの曲について訊こうとするが、先に
「真姫ちゃん、この曲…」
希が口を開いた。
「これは私が好きで描いてる曲だから」
と返す真姫だったが…
(やはり真姫は…)
あかりは真姫が作ったこの“二つの新たな曲”をどこかで使いたい、とそう思っていた。
(スクールアイドルとして活動出来るのは在学中まで。
4月からは完全に新学年に移行するから―μ'sの“スクールアイドル”としての活動のリミットは今月末まで…よし、だったら…)
この時からあかりはある計画を立てていた。
(…μ'sの“本当”のラストライブ、やらないとだね…!)
これより綴られるのは9人の歌の女神たる少女達とある鋼鉄の戦女神たる少女の最後の物語。
血塗られた咎人であった己を救ってくれた彼女達に尽くそうと決心した鋼鉄の戦女神が彼女達と共に歩んできた話。
今、最後の―彼女達の物語の最終章のページが開かれるのであった。
To be coninue