空を舞う翼竜達を見てあかりはこう口にした。
「翼がある奴って厄介なんだよね」
あかりは背中のパックパックにマウントしていたアデプトテレイター用スナイパーライフルを展開、ヘリに近付く翼竜達を予め準備しておいた麻酔弾で撃っていく。
あかりの援護射撃によってヘリは何とか脱出に成功するものの翼竜達は南に向かって飛んでいった。
「マズいな…あっちはリゾート区画だぞ!」
オーウェンの言うとおり―南には客が避難しているリゾート区画があるのだ。
「急ごう!」
とあかりの言葉に二人は頷くのだった。
リゾート区画の広場。其処に到着したヴェル、ザック、グレイだったが、その広場は翼竜達の群れが次から次へと集まっていた観光客を襲っては連れ去っていくで大パニック状態の地獄絵図だった。
「お兄ちゃん!何この恐竜の群れ!?」
「俺が知るか!」
「二人共、あれは恐竜じゃない。翼竜―プテラノドンとディモルフォドンだ」
「「冷静にツッコんでいる場合じゃないよ(だろ!)」」
「まったく…空を飛べる奴は逃げ出した時に厄介だな…」
と呟きながらもヴェルは両腕に銃を装備、麻酔弾で翼竜達を撃ち落としていく。
「やっと見つけた!」
そう言って近寄ってきたのはクレアの秘書のザラだった。
そして一体の翼竜がザラを掴み、上空へ連れ去ろうとする。
「させないよ!」
だが、ヴェルはその翼竜に麻酔弾を撃ち込む。
ザラは割と低い所から落ちたので、軽い擦り傷だけで済んだ。
「大丈夫かい?」
と声をかけるヴェル。
「えぇ。あなたは?」
「ネスト所属の特殊隊員―風見ヴェールヌイだ」
ヴェルは自己紹介をしつつ翼竜達を次々と撃ち落としていく。
「ザック!グレイ!」
四人が声のした方を向くと此方に漸く到着したクレアが台の上に立って必死な表情で叫んでいた。
「「叔母さん!!」
クレアの元へ向かう兄弟だったが、一羽の翼竜が兄弟を狙う。
それに気付いたあかりとヴェルは翼竜に麻酔弾をほぼ同時に撃ち込み、翼竜はその場に落ちた。
一方のオーウェンにも翼竜―ディモルフォドンが襲いかかってきていた。
オーウェンが麻酔弾を撃つよりも早く押し倒したディモルフォドンはオーウェンの頭に噛み付こうとするが、オーウェンはそれを回避し、ディモルフォドンの首を絞める。
そして、そのディモルフォドンに対しクレアは麻酔弾を何発か撃った。
クレアに支えられ、立ち上がったオーウェンはクレアを抱き寄せ、互いにキスを交わす。
その様子を兄弟は呆然とした表情で見ていた。
「なぁ…ヴェル、あの人…誰なんだ?」
オーウェンの事について尋ねるザック。
「彼女の仕事仲間さ。…お似合いなカップルだな」
「だね。いっそのことそのままくっついちゃえ」
そう言うあかりに
「お姉さんは?」
と尋ねるグレイ。
「私は頼尽あかり。ヴェルと同じネスト所属の特殊隊員だよ」
「因みに年は彼女の方が2つ年上だ」
ヴェルがそう付け加えた後
「お二人さん、いちゃつくのは良いけど此処から離れるよ」
とあかりはオーウェンとクレアに呼びかけるのだった。
同じ頃、管制室では…
「ヘリは何とか逃げ延びたが…問題は…」
「インドミナスが翼竜のドームに突っ込んでくれたばかりに広場はパニック状態」
「一刻も早く、あのハイブリッド恐竜をどうにかしないと被害は…」
マスラニ、ロウリー、レノックスは現状について話し合っていた。
そんな時、ホスキンスが何人かの部下を引き連れて管制室に入ってきた。
「何の用だね、ホスキンス」
「あなたが腹をくくらないので私の方で動こうかと想いましてね」
「勝手な真似は許さん…ぞ…」
マスラニはホスキンスの部下の男に後頭部を殴られ、意識を失った。
「何のつもりだ?」
ホスキンスに銃を向けるレノックス。
「このままいてもらっては邪魔だからな。大人しく眠って貰おう。それにあんた、俺に手を出して良いのか?」
「それはこっちの台詞だ」
静寂の中、睨み合う両者。
「此処で撃ち合っても良いが…周りにも被害が及ぶかもしれない」
先に静寂を破ったのはホスキンスだった。
「それに彼奴を止めるのが先決だろ?協力しないのなら出て行って貰おうか」
悔しいが確かにその通りだ、と考えたレノックスは銃を下ろす。
「よく覚えておけ。あんたら、ただで済まされないぞ」
「ロウリー、今からそっちに向かうわ!」
広場にてクレアはスマホでロウリーと連絡をしていた。
『それは止しといた方が良い』
「どうして?」
『今、管制室はインジェン社の危機管理部門の支配下にある。代表はホスキンスって男だ』
『マスラニ社長はそいつの部下に気絶させられ、俺も監視されて身動きが取れない状況だ』
と伝えるレノックスは悔しそうであった。
『それにホスキンスはラプトルを使う気らしい』
その言葉を聞いたオーウェン、あかり、ヴェルの頭の中の“何か”がプチン、と切れた。
「あのクソッタレが!」
「ねぇ、ヴェル。あのゴミ屑、血祭りに上げて良いかな?」
「落ち着けあかり。面倒な事になるぞ…それにやるならバレないよう徹底的にやるべきだ」
三人―特に後者二名の発言に彼らを怒らせてはならない、と思ったクレア達だった。
ラプトルのパドックにあかり達が到着した頃には辺りは真っ暗になっていて、既に準備が始まっていた。
「ザラ、子供達をお願い」
クレアの言葉に頷くザラ。
「私達はちょっとあのゴミ屑に話を付けてくるから」
あかりはオーウェンやヴェルと共に車から降りる。
「パパの御到着だな」
それに気付いたホスキンスはフレンドリーな態度で近付いてくる。
あかりとヴェル、オーウェンは気に入らないどころか怒りを混じらせていた。
「オーウェン!嬢ちゃん達!待ってた―」
ホスキンスが言い終えるよりも早くオーウェンはホスキンスの顔面を殴り、あかりはホスキンスの股間を蹴り上げる。
「ごめんごめん、蹴るとこ間違えたよー」
蹴ったあかり本人は棒読みである。
ホスキンスの部下の兵士達が銃をオーウェン達に向けるが、あかりとヴェルは地面を踏みつけ、小さなクレーターを作る。
「生憎、私達は脳以外の身体の部位を義体化してるんだよね」
「だから、この程度の事など容易い事だ」
人間離れした力を見せ付ける二人に睨み付けられた兵士達は戦意喪失していた中、ホスキンスは不適な笑みを浮かべていた。
テントで作戦会議を行った後、オーウェン達は準備を始める。
「あかり!ヴェル!お前らもバイクで良いんだよな?」
バリーに対し
「うん!OKだよ!」
と返すあかり。
「お前ら本当にバイク乗れるのか?あかりはともかくヴェルは本来はまだ免許取れる年齢じゃないのに」
と尋ねるバリーに
「問題ない。私達は仕事柄、年齢制限とったものがない“特例免許”を持っている。
それに、あらゆる事態に対応できるよう、様々な乗り物の操縦などもネストの訓練校生時代に訓練している」
皆の準備も終わり、先頭にてバイクに跨がっているオーウェンの頷きを合図にキャットウォークの上にいたラプトルの飼育員の一人がゲート解放のスイッチを押す。
ゲートが開くと同時にラプトル四姉妹は勢い良く飛び出して行き、オーウェン達はその後に続いていった。
暗い森の中、無造作に伸びている草が生い茂る整備されてない道を部隊は警戒しつつ進む。
ラプトル達は育ての親であるオーウェンに視線を寄越しながらも併走し、部隊を導くと共に匂いを頼りにインドミナスを探す。
段々近付いて来ているのかラプトル達のスピードも減速していく。
暫くしてラプトル達は広い草地で立ち止まった。
オーウェン達もバイクや車から降りて身を屈めて銃を構えたりする中、足音が聞こえてきた。
足音は段々大きくなっていき、その主―インドミナス・レックスが姿を現した。
ラプトル達がインドミナスに攻撃を仕掛けると同時にオーウェン達が援護する…筈だったが、ラプトル達は攻撃を開始しようとしなかった。
「おい、あいつら何かおかしくねぇか?」
ラプトルの異変に気付いたバリー。
「まるで会話をしているみたいだ」
ヴェルの言うとおり、その様子はまるで“会話”をしているかの様だ。
ふと、あかりはある可能性に気付いた。
高い知能とラプトルと“会話”している姿。
「オーウェン、まさか…」
「あぁ…奴ら肝心な事を隠してやがった」
オーウェンも同じく気付いた。
「何だ?」
と尋ねるバリーにあかりはこう答えた。
「インドミナスは複数の恐竜や生物の遺伝子を使ったハイブリッド。…そして、その中に―」
「「ラプトルの遺伝子が含まれている」」
あかりとオーウェンが声を揃えてそう言うと同時にラプトル達はオーウェン達の方を振り向く。
『何をしている!撃て!!』
管制室にいるホスキンスからの指示を受け、兵士達は攻撃を開始。
銃撃の中、ラプトル達とインドミナスは森の中へ退避する。
「背後に気をつけろ!ラプトルを味方に付けたぞ!」
とオーウェンは注意を促した。
オーウェンの言葉通り、兵士達は味方“だった”ラプトル達に次々と襲われ、現場では兵士達の悲鳴や断末魔の叫びが飛び交うのだった。
To be continue