音ノ木坂学院・アイドル研究部部室にμ'sの面々やあかりは集まっていた。
ニューヨーク・タイムズスクエアでのライブは大盛況に終わり、日本へと帰国したμ'sの面々とあかりだったが…
「まさか、此処まで大人気になるとは…」
今のμ'sの人気っぷりはあかりですら想定してなかったレベルだった。
帰国するなり空港で大勢のファンに出待ちされ、海外ライブがライブ中継されたことで秋葉原だけではなく全国から注目されているのだ。
「ファーストライブから今までの動画の再生回数も大幅に上がってるし…本当に有名人じゃん」
と感想を漏らすあかりだったが…
「でも、これだけ人気が出ると…次のライブを求められるのは必然ね」
絵里の言うとおりなのだが…
「実はその事なんだけどね…私に考えがあるんだよ」
皆の視線があかりに向けられる。
「実はニューヨークでずっと考えてたんだよ。
μ'sの“本当のラストライブ”の日程とかね」
「ラストライブ…!?」
穂乃果の言葉にあかりは笑みを浮かべて頷く。
「μ'sは終わりにするって、私達以外には知られてない事だし、このラストライブで皆に発表して綺麗さっぱり終わりにする。
丁度、真姫が相応しい曲を作ってたからね」
「そうやね…しかも二曲も」
その言葉に知らなかった者達は驚く。
「でも、終わると分かっててどうして…?」
と疑問に思うことり。
「あれで終わりって思ったけど…あの後色々あったでしょ?
だから、私なりのけじめとして…
ただ、発表する予定はなかったのよ…其処の二人に知られるまでは」
そう言って真姫は愛用の音楽プレイヤーを出し、その二曲を順に再生する。
その二曲に皆は『この上なくμ'sのラストに相応しい曲である』と感じた。
「こんなに良い曲があるならやらないともったいないよ!
海未ちゃん、この歌に詩を作れないかな?」
「実は、私もアイデアを書きためてて…今すぐにでも始められます!」
「実は私も向こうで衣装ばっかり見てたんだ~」
海未とことりの言葉を聞いた後、穂乃果はあかりの方を向き
「あかりちゃん、当日のスケジュールとかお願い!」
「やるんだね」
あかりの言葉に皆は頷く。
「んじゃ、会場はまだ決まってないけど、ライブは3月31日に行う予定だからそのつもりで宜しくね!」
“本当のラストライブ”に向けて皆の志気が高まっていた時だった。
「ちょっと、良いかしら?」
と理事長は穂乃果、あかりを呼び出した。
「続けて欲しい…?」
「えぇ。スクールアイドルの中でも圧倒的な知名度と人気を誇るA-RISEとμ's。
ドーム大会を実現する為にはあなた達の力が必要不可欠―だからこそμ'sには活動を続けて欲しいと皆が思っているのよ。
スクールアイドルとしての活動が難しいのなら別の形でも構わないから」
理事長からの話の内容を穂乃果とあかりは皆に告げる。
「これからラストライブに向けての話をしてたのに…」
と呟く花陽。
「私は反対よ。確かに私達が此処まで来れたのもラブライブの存在が大きいけれどそこまでする義理はないわ」
「真姫の言うとおりよ。それに、あの時決めたじゃない!終わりにするって…あの時の決意を無駄にしたくない」
と継続か解散かで悩む面々。
「あかりちゃんはどうなん?」
「私には決められないし決める訳にはいかない。私は助言くらいなら出来るけど…最終的な判断を下すのは皆自身だからね。
だけど、忘れないで?私は皆の決断に従うよ…ただ、本当にその決断で良かったのか…後悔しないように考えてね」
そう言った後、あかりは仕事が入ったので其方へ向かった。
「後悔しないように、ね…あかりが言うと重みが違うわね」
と呟く絵里。
あかりは“選択を誤り”、それによって両親を失うという大きな後悔を抱えて生きてきた。
だからこそ、此処にいる誰がそれを言うよりもその言葉に重みがあるのだ。
解散か存続か…そのまま決まらずその場は解散となった。
ことりは念の為にラストライブ用の衣装を、海未は真姫が作った二曲に歌詞を書いたりしていた。
一方の穂乃果は自宅で“選択”を迷っていた。
「お姉ちゃん、ちょっと良いかな?」
部屋に入ってきたのは雪穂だった。
「お邪魔します!」
と亜里沙も続く。
「亜里沙ちゃん、ロシアには帰らなかったんだね」
「はい、これからスクールアイドルを始めるって時なのにおちおち帰れません!」
「で、二人ともどうしたの?」
「実は、練習場所について相談したいんだけど…どこが良いかな?」
「う~ん、そうだねぇ~
やっぱり屋上かな?広いし音を気にしなくて良いし!雨が降ったら使えないってデメリットもあるけど…」
「でも、屋上はお姉ちゃん達が…」
「大丈夫だよ!」
と返す穂乃果なのだが…少し元気がなかった。
「楽しくないですか?」
「楽しい…?」
「私、μ'sの皆には楽しくいて欲しいです!楽しそうに歌って踊って…私はそんなμ'sが大好きなんです!」
同じ頃、仕事を終えたあかりとヴェルはバーガーショップを訪れていた。
「どうしたんだい、あかり。浮かない顔をして」
「うん…実はμ'sのファイナルライブの話をしてた時に理事長から続けて欲しいと頼まれたんだよ」
「それで、解散か存続かで迷っている…そんなところか」
「流石ヴェル。お見通しって事かな」
「何年の付き合いだと思ってるんだい」
「まぁ…そうだね」
「それで、あかりはどうするんだい?」
「私は…皆の選択に従う。マネージャーである私が決めるべき事じゃなくて皆が決める事だから。解散しようが存続しようが私は皆の意思を尊重する」
「そっか…あかりがそうしたいのならそうすれば良い。どんな結果になろうとも私はあかりの味方である事に変わりはない」
「ヴェル…」
(もう、そんな事言われたら惚れちゃうって…結構前から惚れてたけど。
だって前々から思ってたけどヴェルは美人でかわいくてかっこいいんだよ!嫁にしたいぐらいだよ!)
「それでなんだが…あかり。一つ相談したい事がある」
「相談って?」
「うん…実は雪穂と亜里沙から一緒にスクールアイドルをやらないかと誘われた」
「ほほぅ…で、何と返したんだい?」
「考えさせて欲しい、って返した…仕事もあるし…それに…」
「でも、スクールアイドルの活動に興味あるんだよね?」
あかりの言葉に頷くヴェル。
「私は“私怨で血塗られた存在”だからアイドルになる資格はない、って思って穂乃果ちゃんからのスクールアイドルを一緒にやらないかって誘いを断った。
でも、彼女達の力になりたい―そう思ったから私はμ'sのマネージャーになって…一度は止めかけたけど、皆が私の事を―私怨による復讐で血塗られた私の事を受け入れてくれたから私は“本当の意味”でマネージャーになろうって決心した。
だけど、形はどうあれ誰かを守る為に行動したヴェルは私怨で手を汚した私とは違う。ヴェルはヴェル自身のやりたい用にやったら良いんだよ。
スクールアイドルとして雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんと一緒にやっていくのもありだし、私みたいにマネージャーとして支えていくのもありだし…
でもね、どんな選択をしようと私はヴェルの味方である事には変わりはないからね」
その言葉を聞いたヴェルは決心がついたのか清々しい笑顔で
「ありがとう、あかり」
と礼を言い、雪穂と亜里沙の元へ向かって走り出した。
「雪穂!亜里沙!」
と呼び止めるヴェル。
「ヴェル…どうしたの?」
「どうしても話したい事が…直接会って話したい事があったからこうして来た」
「話って?」
亜里沙の言葉の後、ヴェルは自身の決意を述べる。
「あの時…二人は誘ってくれた…スクールアイドルをやらないか、って。
私は迷ってた…仕事の事もあるし…形はどうあれ私も罪を犯しているから…でも、色々考えて分かった事がある。
私はあかりの様に皆を支える立場に…マネージャーになりたい。
仕事をやりながらだから二人に迷惑をかけるかもしれない!だが私は」
ヴェルが続きを言う前に雪穂と亜里沙はヴェルを抱き締めた。
「迷惑だなんて、そんな事、私達は思わないよ」
「ヴェルちゃん、一緒に頑張ろうね!一緒に楽しもうね!」
暖かい二人の言葉にヴェルは涙を浮かべてこう返した。
「スパシーバ…!」
それはロシア語でありがとうを意味する言葉であった。
一方、穂乃果は迷い続けていた。
「あぁ~!どうすれば良いのぉ!」と頭を抱えていた時だった。
「あの、どうかしたんですか?」
穂乃果は万世橋にて明乃と瓜二つの少女―岬風明乃と知名谷もえかと出会ったのだった。
To be continue