ラブライブ!9人の女神と鋼鉄の戦女神   作:衛置竜人

8 / 66
第8話『王者』

インドミナスはまず人間であるオーウェン達に目を付ける。

その事に気付いたブルーは注意を引こうと立ち向かうが、テリジノサウルス由来の長い前足で払いのけ、ブルーは石柱に激突、地面に落ちて気絶する。

激昂したデルタ、エコー、チャーリーはインドミナスに飛びかかろうとする。

それに対しインドミナスは尻尾でデルタを叩き飛ばす。

飛ばされた先にはレストランのグリルがある。

もしグリルが誤作動したらデルタは焼け死んでしまう。

「マズい!あのままじゃ!」

その事に気付いたヴェルは

「腕部及び脚部のサーボモーター、リミッター解除!」

腕部と脚部のサーボモーターの(負荷軽減用)リミッターを解除する。

それによってヴェルは飛ばされるデルタとグリルの間に立ち、デルタを受け止めた後、彼女を安全な場所に寝かせる。

だが、そこへチャーリーもインドミナスの尻尾で叩き飛ばされてきたのだ。

ヴェルはチャーリーも受け止め、デルタとチャーリーを抱えて距離を取る。

「この子達を頼む!」

とヴェルは傷だらけで気絶している二羽をクレア達に任せてあかり達の元へ戻る。

続いてインドミナスはエコーを前足で捕らえ、噛み付こうとする。

「させないよ!」

それに対しあかりも腕部と脚部のサーボモーターのリミッターを解除。

インドミナスの下顎を無理やり持ち上げ、オーウェンがインドミナスの前足に向けて発砲し、衝撃によってエコーから手を離した隙に

「「ヴェル!!」」

ヴェルはエコーを抱えてデルタやチャーリーを寝かせている場所に避難させる。

それを確認したオーウェンはインドミナスの首辺りに発砲、痛みで頭を持ち上げた隙にあかりは離脱する。

「流石ハイブリッド…手強い相手だ」

と呟くヴェル。

「ヴェル姉ちゃん、大丈夫?」

「あぁ、今の所は、な…だが…こっちも弾が少なくなってきた。なくなるのも時間の問題だ」

「じゃあ、どうすれば…」

と呟くザックにヴェルはこう呟いた。

「戦況を変えられる…強力な力を持つ奴がいれば何とかなるかもしれない」

だが、トランステクターの使用を禁じられている中、そんな力を持つ存在はいるのだろうか?

「いるよ」

そう言ったのはグレイだった。

「強い奴ならいるよ!」

その強い奴が誰なのか―それに気付いたクレアは発煙筒と非常用通信機を手に

「此処で待ってて。“彼女”を呼んでくるから」

と言って、その“彼女”がいる場所へと向かった。

 

管制室にいるロウリーにクレアからの通信が入った。

『ロウリー!?まだ管制室にいる!?』

「あぁ、管制室にいるよクレア!」

『良かった…あなたに頼みがあるの!』

「頼みって何だい!?」

『“9番パドック”を開けて!』

「“9番パドック”だと…まさか…」

クレアがどうしようとしているのか気付いたマスラニ。

「本当にやる気かい?クレア」

クレアに問うロウリー。

『えぇ、もうこれしかないわ。ロウリー、今こそ男を見せる時よ』

「何で今それを言うのかな…全く、卑怯な女だよ」

スクリーンに映るクレアは非常用通信機を投げ捨てる。

そんなクレアの姿を見ながらロウリーは恐る恐る“9番パドック”のゲートのスイッチを押す。

クレアは発煙筒を作動させ、ゲートが開き終えるのを待つ。

そして、ゲートが開くと共に暗い茂みの中から“彼女”が地響きと共にその姿をゆっくりと現した。

 

 

 

発煙筒の光を視界に捉えた彼女は昔の事を思い返していた。

今から凡そ25年前、イスラ・ヌブラル島のある研究施設。

「~よしよし、ワシがパパじゃよ~」

卵の殻を割った“彼女”が最初に見たのは老人―ジョン・ハモンドだった。

“彼女”にはハモンドが何を言っているかは分からなかったが、この者が親ではないという事は直感で理解していた。

 

それからは人間達の実験に付き合わされ餌を貰う毎日が続いた。

その餌も成長するにつれて肉塊から牛や山羊といった生き餌へと変化したものの、電気柵に囲まれた狭い空間の中、空腹が満たされるだけ。

狩猟本能が満たされる事などない、自由などない毎日―人間達による実験に、人間達の“強欲”に利用され、誇りを侮辱される毎日に“彼女”の怒り・不満は日に日に増していた。

 

そんな日々に変化したが生じたのはある雨の降る日だった。

その日も“彼女”は餌を食べに行ったのだが、違和感を感じた。

違和感の正体―それは電気柵が作動してなかった事だった。

“彼女”は漸く外の世界へ出る事が出来き、自由を漸く手にした。

やがて“彼女”は楽園の頂点に立つ王となった。

 

“彼女”はこれまでの鬱憤を晴らすかの様に自由を満喫した。

 

 

だが、その自由な生活は突如として終わる事となった。

 

 

“彼女”は再び人間に自由を奪われ、再び怒りや憎しみが湧き上がった。

 

そんなある日、“彼女”は空を飛ぶ翼竜を目にした。

“彼女”が壁の外が騒がしいのを―何かが起きているのを感じた時、閉じ込めていた扉が開かれたのだ。

 

 

 

 

茂みの中から現れた“彼女”をクレアは発煙筒でインドミナスの元まで誘導する。

 

インドミナスに牽制射撃を行い、クレアが“助っ人”を連れてくるまでの時間を稼ぐオーウェン、あかり、ヴェル。

「弾が切れる…!」

舌打ちをするオーウェン。

一方のあかりとヴェルも残弾数があと僅かとなっていた時

「オーウェン!あかりヴェル!」

発煙筒を持ってクレアが走って戻ってきた。

「逃げて!」

とクレアは三人に忠告し、発煙筒をインドミナスに投げ捨てた。

そして、展示されてたスピノサウルスの骨格標本を砕き“彼女”はインドミナスの前に姿を現した。

「ハラショー、これまたとんでもない助っ人だな」

「だけど、この上なく頼もしい助っ人だよ」

あかりやヴェル、オーウェンやクレア、兄弟やザラの視線の先、そしてインドミナスの前に現れた“彼女”。

約6500万年前の白亜紀後期の北米にて生態系の頂点として君臨していた種族。

日本語で“暴君竜”という意味で世界で最も有名なその恐竜の名は

 

 

 

 

『ティラノサウルス・レックス』

 

 

 

 

そして、彼女こそ20年近くイスラ・ヌブラル島の頂点に君臨していた本物の王たるティラノサウルス・レックス。

 

 

 

 

名は『レクシィ』である。

 

 

 

 

対峙するレクシィとインドミナスをあかりやヴェルは余計な手出しなどせずに見守る。

ここで手出しする事―それは王たるレクシィへの侮辱だからだ。

互いに睨み合い、先制攻撃を仕掛けたのはレクシィであり、インドミナスの首に噛み付く。

抵抗するインドミナスに何度も噛み付くレクシィ。

20年近く培ってきた経験と元々の能力は彼女の大きな武器であり、彼女の方が優勢だったが、相手のインドミナスはティラノサウルスを始めとする様々な種の遺伝子を持つハイブリッドであり、純粋な能力面ではインドミナスの方が上回り、徐々に形勢はインドミナスの優勢へと逆転していく。

インドミナスはその長い前足と鉤爪でレクシィに傷を負わせていき、とうとうレクシィは地に倒れてしまった。

インドミナスは右後足で胴体を、左前足で頭部を、右前足で首の根元を抑える。

「マズい…このままじゃ…!」

あかりは残弾数を確認する。

此処でレクシィという戦力を失うのはかなりつらい―あかりやヴェルもサーボモーターのリミッター解除を行った為、長期間戦うのはキツいという状況だ。

「インドミナスみたいな大型の恐竜に対しては威力が低くて牽制程度にしかならないし…王への侮辱かもしれないけど…ここで彼女を失う訳にはいかない…やるしかない」

そう呟きつつあかりがインドミナスに標準を合わせ、一方のインドミナスがレクシィにトドメを刺そうとしたその時、鳴き声が響いた。

レクシィの首に噛み付こうとしていたインドミナスは、立ち上がったあかりとヴェルは、少し離れた場所で戦いを見守っていたオーウェン達は鳴き声がした方を向く。

美しい青銀色の模様のラプトル―ブルーが全速力で走って来て、インドミナスの頭部に飛びかかり攪乱する。

その隙を突いてレクシィは立ち上がり、インドミナスの首に噛み付く。

インドミナスがレクシィに仕掛けようとするとブルーが攪乱し、その隙にレクシィがインドミナスに攻撃を仕掛ける。

二匹の猛攻にインドミナスはラグーンまで追い詰められた。

それでも尚インドミナスが反撃しようと立ち上がった時だった。

ラグーンから水しぶきと共に飛び出してきたモササウルスにインドミナスは逃げる間もなく右足を噛み捕まれてしまったのだ。

「インドミナス!」

飛び出して助け出そうとするあかりだったが、サーボモーターの負荷のかかりすぎで暫くは身体が動かしづらいという状況であり、間に合わない。

引きずり込まれそうになるも必死に抵抗するインドミナスはあかりの声に顔を向け、その瞳に涙を浮かべて短く吼えた。その鳴き声があかりにはまるで

 

 

『…あなたにもっと早く会いたかった…』

 

 

と言っているかのように聞こえた。

インドミナスはモササウルスによってそのまま水の中へ引きずり込まれてしまった。

人間の“傲慢”の被害者であり、“狂気”に支配されて苦しんでいたインドミナス・レックスは漸くその“苦しみ”から開放されたのだ。

 

 

 

 

To be continue

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。