かなちゃんは黄金世代四強なのです!?   作:風早 海月

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お久しぶりです!
ちはやふるを読んで、1度非公開にしていた本作を復刻させました!

更新は遅いですが、どうぞまたご贔屓に!


美しさと詩《うた》

 

 

「全国大会出場のことは真島くんから聞きました。おめでとうございます。で、かるたは4校くらいでやったんですか?」

「12校です!先生!すごい大変だったんです!」

「ごめんなさいね。バドミントン部の試合とかぶって見に行けなくて。真島くんがあなたたちだけで大丈夫だっていうし。」

 

女帝こと、宮内先生は明らかにおざなりに話す。

 

「それで、本戦が近江神宮であるんですって?」

「そうです。カルターにとっての甲子園!先生、引率お願いします!」

 

千早の言葉に、宮内先生はフッと息を吐く。

 

「それが行けないの!ちょうどテニス部の合宿で!なんたってインターハイが決まっちゃったから!あなたたち聞いた?決勝戦での奇跡の逆転!まだだったらお話するけど―」

「いえ、結構です。」

「あら残念ね。今年のチームは私が顧問になってから強くなった子たちなの!」

 

奏が食い気味に断っても機嫌が悪くならないところから見るとかなり上機嫌らしい。

 

「もう1つ引率をお願いしたい大会があるのですが。」

「もう1つ?」

「はい。全国大会に向けて調整戦としてA級の私と千早ちゃん、B級の太一くんとに…西田くんの4人で東京西会大会に出るので。つ…駒野くんも戦績管理のために同行する予定です。」

「ほお…いつですか?」

「今週末の日曜日です。」

「………」

 

急な話に宮内先生も口を半開きに固まる。

 

この大会はかるた協会の主催後援のない地方大会で、西東京(23区を除いた東京都全域)の有志によって開催される大会で、A級~C級相当選手を対象としたごちゃまぜな大会だ。定員は120人で、出場条件は西東京に在住のかるた愛好家という条件だ。申し込みは当日となっている。

 

奏が白波会を後にしたあとに得た光明を実践するにはぴったりな大会だった。

 

「…まあいいでしょう。どこでやって何時に始まるのかは分かりますか?」

「9時受付開始なので8時半には会場についている必要があります。場所は西東京です。」

「分かりました。後で要項を持ってきてください。」

 

そう言うと、話は終わりと言わんばかりに机の書類を処理し始めた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

奏が今までとっていたかるたは世間では無音のかるたと呼ばれていた。

美しさもさることながら、詩を邪魔しないようにするためだ。

 

だが、それは競技かるたにおいては無駄が多すぎた。音がしないということは、腕の速度が札でぴったりゼロになることだ。突いたり払ったりするような止まらないかるたのとり方に速度で劣る抑え手だ。

 

奏が若宮詩暢に勝てないのも、腕の振りが圧倒的に遅いせいだ。聞き分けの良さ(感じとも若干違う感覚なのだが)では勝てるが、振る速度が若宮詩暢は鋭い。奏、若宮詩暢、綿谷新の3人は三竦みの関係だ。奏は新に勝てる。新は若宮詩暢に勝てる。若宮詩暢は奏に勝てる。と言った具合だ。

だが、動かなくなった身体でどうするかという問題が出た今なら新にも勝てないだろう。B級選手にも大差をつけられてしまうほどなのだ。

原田先生の美しさを諦めるという言葉も、今の奏にはまだ割り切れない。

 

だから、奏は考えた。

 

(二兎を追わぬ者に二兎は得られず。美しさと激しさの融合。それが私の目指すかるた!)

 

中途半端に混ぜ合わせても意味が無い。最近は原田先生と坪口さんの2人と実戦形式で試しているが、平均して枚数差2~3枚での負けまで食い下がれるくらいにはなってきた。

 

黄金世代四強の力を取り戻すためなら2人相手に平均枚数差5枚(マイナスは負け枚差・プラスは勝ち枚差)くらいになるべきだろう。だが、ここ数日で力が戻るのは感じていた。

 

 

 

集合場所である学校から奏の母の運転する車で1時間かからないくらい。

 

 

 

今回参加するのは4人。千早、太一、肉まんくん、そして奏の4人だ。

正規の大会では無いので、優勝してもB級の2人がA級に昇級することは無いし、優勝回数もカウントされないが、もちろん勝ちにいく。

 

 

(うた)への愛と、自らの矜恃にかけて。

 

 

120人の参加するトーナメント戦。大会にもよるが、最大7試合前後が標準的。勝ち進めば4試合なんてざらであると、肉まんくん曰く。

 

知らない人のために記すが、1回戦を勝ち残る人は半数だ…というのは勘違いだ。なぜなら、そんなに多くの人が同時にかるたをとるスペースのある会場などそうそうない。人数調整のために不戦勝がほぼ必ず出る。続けて不戦勝にならないようには組まれるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会初戦。

 

運良く不戦勝となった奏は観覧の方にいた。隣には肉まんくんと宮内先生。

肉まんくんと奏で観覧時のマナーを宮内先生に仕込む。

決して音を立てないこと。注意力を妨げることはしないこと。これは鉄則である。音を気にするため、エアコンすら付けないこともざらで、近江神宮の団体戦の時には浴衣と袴の大正女学生スタイルを想定してはいるものの、流石に厳しい気がする。そこでパフォーマンスを落としても勿体ない。

 

「これが…かるた…ですか」

 

初戦が終わり、部屋を出たところで宮内先生が生気の抜けた顔でそう呟いた。

千早や太一が必死に闘う姿を見て、感じるところがあったらしい。

 

「別に特別扱いをして欲しいわけではありませんが…私たちとて、全国にかける想いは他の部活にも負けませんし、都大会でも同じです」

 

奏は宮内先生のかるたを遊びかなにかだと思っているような態度を、真正面からかるたの素晴らしさを伝えたかったのだ。

 

「そうですね…」

 

宮内先生は深く頷き、己を反省した。

 

 

「大江さん、ルールブックかなにかはありますか?」

 

 

奏は宮内先生のその言葉に笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2回戦。

 

満を持しての奏参戦。相手はA級6段のおじさん。それなりに有名な選手だが、原田先生には勝てまい。あれは荒熊だ。

相手ももちろん、専任読手である奏のことを知っているようで、互いに会釈を交わす。

 

25枚の取り札を並べていく。ここからが奏の見出した光明の1つ。

 

札の置き方はだいたいセオリーがある。もちろん個人差やかるた会毎の差もあるが、だいたいこうというものが決まっている。奏も、府中白波会で原田先生やその他強い人たちから教えてもらったため、その置き方を使ってきた。だが、自らの強みである(うた)への想いを十全に使える配置ではないと、変えたのだ。

 

「えらい変な置き方するなぁ…外しかい?」

 

おじさんの言う外し…つまり普段と違う置き方をすることで相手を惑わす作戦か…と。それも含まれているが…

 

「いえ、私が取りやすいように置いているだけですよ」

 

配られた25枚の内訳にもよるが、右上段に春、右下段に秋、左上中段に夏冬、右中段に雑、左中下段に恋を配置する。左中段は夏冬と恋の枚数次第だ。

詩の情景で札をとる奏らしい、最善の配置だった。

 

そして、もうひとつは………

 

 

 

―――難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花

 

―――今を春べと 咲くやこの花

 

 

 

奏は梅の花を思い浮かべつつ、次の詩を待つ。

 

 

 

『つきみれば―――』

 

 

秋の悲しげな情景が、自然と右下段を射抜く。

 

 

綿谷新…ひいては綿谷永世名人のような老獪な()()()ではないが、奏らしい後の先となった。

 

 

『たちわかれ―――』

 

敵陣中段から掻っ攫う。別れながらも未だに想うその気持ちが、札を引き寄せる。

 

上半身が重いため動きが鈍くなっていたが、そこは呼吸という取り方を採り入れ、振り子のように身体ごと動かすことによって以前の速度を取り戻していた。

 

 

 

 

0-17。2回戦突破。

 

 

 

 

 

 

決勝の相手は意外にも太一で、守りを意識した彼に中々差をつけられなかったため、運命戦にもつれ込み、太一の()()()()を信じた突っ込みを下して優勝した。

 

 

 





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ちなみに、身体ごと揺らして取りに行く取り方では、かなちゃんの大きなおもちがぶるーんぶるんするらしく、相手が男の場合デバフがかかるらしい。
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