外伝・異世界転生で世界を救った神の異世界リライフ   作:Möbius Klein

3 / 3
※ケルベロス三姉妹の次女、ローザの身の上話です。ローザベースに原作ストーリーを辿った形になっているので本編を知らない人にはネタバレになるかもしれません。本編読んでる人にはなるほどーな感じだと思いますが、ローザはケルベロス三姉妹一のド変態、破壊と欲望の神フェンリルの狂信者でもあります。一応R15に収まるよう言葉を選んだ形にしましたが、処女喪失のシーンがありますので閲覧にはご注意下さい。



外伝3:ケルベロス三姉妹一の才媛

ケルベロス三姉妹の二、仁獣ケルベロス=ローザウィッチ。仁獣御前会議第2席として、第1席である神宮女官長の姉様ケルベロス=ベルレシア不在時は女官長補佐ではなく女官長代理として神宮第1の女性として第1席の扱いを受ける。私はそれと同時にご主人様である破壊と欲望の神フェンリル=ホープトレジャーの第1位の側近に命じられた。何という身不相応…これは私が一番理解しているつもりだ。

 

何故なら私はケルベロス三姉妹とは名ばかりの力しか持ってはいないのだ。Sランクの魔物であるケルベロスが三体に分離した時その力の7割以上が姉様にいってしまい、私と末妹で残り3割を分けているような状態になった。元々ケルベロス三姉妹は創造神ユニコーン=グランドトレジャーがSランクの魔物ケルベロスから創った半身フェンリル様の番いになる存在だった。私達は人型が与えられ分離した事で失敗作となってしまったのだ。そう、子宮だけが分離の際に綺麗に三等分…数百年生きた結末がこんな無情で終わる事になったのは絶望と言うしかない。

 

 

 

一体何百年もの間、神宮の地下で魂に刻まれたフェンリル様の名を唱え続けた事だろう。実験に次ぐ実験の果てに失神を繰り返す私を励まし続けていたのは姉様の声だけ…フェンリル様の事だけを考えてひたすら耐えて過ごした日々。私が私という自我を持った時には、末妹も生まれていたが末妹が自我を持った頃にはもうグランドトレジャーが私達の下へ足を運ぶということは無くなっていた。

 

泣き続ける姉様、早く死んでフェンリル様の下へ行こうという末妹…何百年もの間私はその2人に挟まれて生きてきた。ああ…フェンリル様、何故私は生まれて来たのでしょうか。お役に立つ事も出来ず、生きてお会いする事も無く、神宮の地下でこのまま朽ちてしまうだなんて…。私達は何の為に生まれて来たの、私は貴方に必要とされないのですか?泣き続ける姉妹に気休めを言う事しか出来ない私は考えます。

 

この無力な私がどうすれば貴方のお側に在る事が許されるのか…フェンリル様、私達は貴方を愛する為に生まれ貴方に愛されなくては生きていけないのです。私はこの魂が朽ちる瞬間まで諦めたりはしない…貴方は必ず私達の前に現れて下さる。そして神宮の地下に繋がれた虜囚の私達を救って下さると、そう信じる事でしか私はもう今を生きてはいけない。泣き続ける姉を宥め、死に急ぐ妹を宥めもうどれ程の時が流れたのかは考えたくもない。

 

だが1人でも欠ければ私達は死ぬ…それだけは分かる。この身を3人で支える為の三頭なのだ、私達は…だから2人を死なせるのは駄目だ。私は一時でも最期を引き延ばそうと必死だった。口から溢れ出す私の妄想に、姉様は辟易していたと思う。力を失いかけた妹は夢見がちで幸せそうに私の話しを聞き入っていた。

 

 

フェンリル様が神獣フェンリルに受肉してこの世に生まれた時、神宮の地下にいた私達にもそれが分かった。私達は皆喜びの声を上げ咆哮した。フェンリル様、フェンリル様…私達は貴方をずっと待っていたのです。

 

再びグランドトレジャーは私達の下へ現れ私達に人型を与えた。結果は失敗に終わりグランドトレジャーを落胆させてしまったが、フェンリル様の身の回り役を務められたのならば処分は考えるとのお言葉を頂いたので、私達3人は必死に務めに励んだ。魔力供給の際、魔力が取り込みきれずお漏らしをしてしまう末妹は早々に厩に放り込まれてしまい、私達には後がなくなった。

 

グランドトレジャー自身が時間を惜しまず、フェンリル様の世話をしていたが手の届かない部分は私達の担当だった。どうしても執務に追われてしまうグランドトレジャーに代わり姉様はフェンリル様の食事の世話を、私は身の回りの掃除と洗濯を担当した。私達は特にそう言った教育を受けていなかったので必死に努力した、フェンリル様がお目覚めになる前に何としてもこなさなくてはならない課題となったのだ。

 

フェンリル様は生まれてからまだ一度も意識を覚醒しておらず、微睡んでいるご様子だった。腹が空けば姉様に差し出された哺乳瓶からミルクを大量に飲むし、オシメを濡らし排泄をする。人型になった際グランドトレジャーは人間としての殆どの機能が失われていたそうだがその原因はフェンリル様との分離のせいだという。

 

グランドトレジャーはその身を削るようにしてフェンリル様を慈しんでいる事なのは見ていて直ぐに分かる。私達には足りない、そう言ったのも当然だろう。グランドトレジャーはその身の半身だけでなく魂を削るように魔力をフェンリル様に惜しみなく注ぎ続けているのだ。

 

フェンリル様はお腹が空くとよく姉様の指に吸い付いていた。姉様が愛おしそうにフェンリル様を撫でるとフェンリル様が姉様の胸に顔を寄せて眠っていた。その光景を眺めていると、私の嗅覚がフェンリル様のお漏らしを感じ取る。これは私の仕事だ…今すぐ綺麗にして差し上げなければいけない。姉様も気がついてフェンリル様をベッドに寝かせると私はフェンリル様のオシメを取り替える。

 

「ああ…今日もお健やかで何よりです、フェンリル様。直ぐに綺麗に致しましょう」

フェンリル様のオシメを変えるのは私の仕事だ。だがフェンリル様の下の世話をしていて私はいつも不思議に思うのだ。フェンリル様はどうして何処もかしこもこのような香りに包まれているのだろう、と。姉様が次のミルクの用意をする為に丁度席を外したので私はフェンリル様の身体に顔を埋め思い切り息を吸い上げた。その香りは一気に脳内を駆け抜け私は例えようもない恍惚感に包まれ、クンクンと何度も鼻を擦り付ける。ジュワッとした感覚で我に返り、私は慌ててフェンリル様からその身を離した。

 

(やだ…っ私ったら、どうしてこんな)

私は慌ててフェンリル様の身支度を整えると姉様と入れ替わりに部屋を出た。最初私は失禁してしまったのかと思ったのだがそうではなかった。私の下着を濡らしていたのは発達し始めた女性器官から溢れ出た蜜液だったのだ。私は自分の事が恥ずかしくて仕方がなかった。

 

フェンリル様にこんな自分を知られてしまったらショックで死んでしまう。姉様も末妹もフェンリル様からいい匂いがするとは言っていたが、ケルベロス三姉妹の中で最も五感が鋭いと言われている私の嗅覚は一体何を捉えてしまったのだろう。咄嗟に持ち出したフェンリル様の服に吸い付き、舌を伸ばすと私はフェンリル様の服を顔へ引き寄せる。駄目だ…もう何も考えられない。

 

 

 

我に返り私は泣きながらフェンリル様の服を洗濯しシャワーを浴びた。どうして私はこんなになってしまったのだろう。もうフェンリル様の事しか考えられない。その内フェンリル様のお側にいるだけで私は絶頂死してしまうのではないだろうか。最初は罪悪感の方が多かった行為だったが、日に日にそれは背徳感が増していた。私は気づけば毎日のようにフェンリル様への懺悔を繰り返しながら洗濯前のフェンリル様の下着を使って濡れる下肢を慰めるようになっていた。

 

 

 

フェンリル様が遂に意識を覚醒され、私達ケルベロス三姉妹を召使いとして受け入れてくれると言って下さり、私達の処分は取りやめになった。

 

(君は美しい…まるで薔薇のようだ。君の名はローザ、僕の部屋の掃除や洗濯、身支度は君に任せる。君のようにいつでも綺麗にしていたい…君は三姉妹の次女、ベルの手助けも頼むよ)

 

私はこの時からケルベロスの三分の一ではなくローザという個となったのだ。ご主人様は綺麗だと私の容姿を気に入って下さった。有難い事だ…私にも生まれ持ったもので褒められる事があったとは。私はケルベロスの出来損ないなのだ…姉の半分でも力を持って生まれたならばお役に立てたとこの身が不等分に三分割された事を呪った。

 

そうだ…私は綺麗にならなくては。そしてフェンリル様の身を常に綺麗にしなくてはいけない。私は無力な分、決してフェンリル様のお側に在る為の努力を怠ってはいけない。役立たずと評されればグランドトレジャーによって問答無用に処分されてしまうのだ。私は寝る間も惜しんで日夜勉強に励んだ。合間にこの身を綺麗に整える事も忘れてはいけない。フェンリル様を綺麗に包み込むのが私の仕事。毎日フェンリル様の頭の先から足の先まで綺麗にして差し上げなければならない。

 

だからもうアレをしてはいけないのだ…綺麗にあらねばならない私がフェンリル様の匂いと味に塗れ汚れたいなどという昏い欲望に浸かってはならない。フェンリル様に知られれば私は間違いなくグランドトレジャーに引き渡されて処分の対象だろう。

 

「フェンリル様…っフェンリル様、どうかローザをお許し下さい!」

もうしません、これが最後です。これで最後にしますからどうか許して下さい。ローザはフェンリル様が好き過ぎておかしくなってしまったのです。フェンリル様の匂いを嗅ぐだけで脳が蕩けて、フェンリル様の汗の混じった下着を味わうだけで私の下着はビショビショになってしまうのです。ローザは嬉しくて涙が止まらなくて幸せで仕方がないのです…だってコレは貴方が生きている証そのものではないですか。貴方が綺麗だと言われる私の身体が貴方の匂いと味に包まれる事に身体が感激してしまうのです。

 

私は泣きながら人生最後の自慰を済ませ身支度を整えた。フェンリル様が私をお呼びになっているのだ。その後審判を受ける事になる等その時の私には思いもよらぬ事だった。

 

 

 

「申し訳ありません…二度と、二度としません。どうかお許しをっ」

フェンリル様は遠隔視が使えるらしく、私の様子を伺っていたそうだ。このまま泡になって消えてしまいたい。フェンリル様の誘導で私の自我は完全に支配下に置かれ忽ちその醜態をフェンリル様の目の前で晒す事になった。ああ…何故私は我慢が出来なかったのだろう。目の前に差し出されたフェンリル様の汗の匂いに我を忘れてしまった。

 

(…とりあえずコッソリ、ボクの…使って自慰するの禁止。約束破ったら父様にローザを返す。ボク遠隔視使えるからすぐ分かるよ、いいね?)

「も、申し訳ありませんでした…っ誓います、2度と致しません!ですから、そのっ…あの」

約束を守るなら内緒にしてあげる、2人だけの秘密だよ。そうフェンリル様が言って下さり、私は首を何度も縦に振って何度も何度もお礼の言葉を繰り返した。

 

(明日からも僕の世話を頼むね、いい子にしてたらまたご褒美あげるからさ)

「は、はい…ご主人様、ローザはずっといい子でいます」

フェンリル様との約束だ。これは死んでも果たさなくてはならない。私はフェンリル様の慈悲だけでまだ生きていられるのだ。このご恩に何としても報いなくてはならない。今の私はご褒美欲しさでいい子に縋り付く駄犬に過ぎない。いい子になるんだ、もっといい子にならないと…私は取り憑かれたように一心不乱になって仕事に勤しんだ。

 

 

 

ケルベロス三姉妹一の才媛、と神宮内で私の事を囁かれていたのは知っている。だが私にはその言葉が皮肉にしか聞こえない。私が出来る事は当然姉様にも出来るのだ。それは表立って動く事を好まない姉様の代わりに動いているのが私であり、私が人目につく派手な容姿をしているからだと思う。私は姉様が当然の様に熟す事を血を滲む努力で補って今がある。

 

役立たずとして早々にグランドトレジャーによって厩へ追いやられた末妹にもフェンリル様は仕事を与えて下さった。失敗作としてグランドトレジャーからの処分を免れたのも全てフェンリル様のおかげ。ただひたすら従順に働き続ければケルベロス三姉妹は番いになる事が叶わなくとも永遠に下僕としてフェンリル様と共に在る事が出来る。

 

 

 

「ケルベロス三姉妹はボクの大事な家族だよ…ベルはボクを甘やかして可愛がってくれるママだし、ローザはボクのワガママを何でも聞いてくれる綺麗で優しいお姉ちゃん。リズはボクの事が大好きで堪らない可愛い妹だ…ずっとずっとボク達は一緒だよ」

 

双子宮として世界の中央にある神宮ユグドラシルはグランド宮とホープ宮がその中心に存在している。この世界に存在する神2柱の居住区であり破壊と欲望の神フェンリル=ホープトレジャーはホープ宮の主である。ホープ宮に住む事が許されているのはケルベロス三姉妹である私達だけ。ここはボクの家族だけしか住まわせない、フェンリル様はそう明言された。

 

ここは内宮と呼ばれる場所に辺り他の女官は外宮と呼ばれる神宮ユグドラシルの内宮を囲む外周に住んでいる。だがどれだけ女官が増えようと、後宮に女性達が溢れようとこの内宮には立ち入る事は出来ない。ここはフェンリル様の家族だけに許された場所なのだ。

 

フェンリル様は私達ケルベロス三姉妹にそれぞれにフェンリル様の1番を与えてくれた。姉様には神宮第1位の女性としての位を、私には第1位の側近を、末妹には第1位の仁獣の座を…フェンリル様は私達を個として各々を重んじて下さりそれぞれを違う想いで1番の寵愛を下さるのだ。いつかフェンリル様の望むケルベロスの一体化を果たしてフェンリル様の全てを受け入れられる存在になれればと思う。

 

ああ…こんなに毎日頑張っているのに一体何が私達に足りないと言うのだろう。そもそも神の器というものが大き過ぎるのだとフェンリル様はボヤいていた。フェンリル様ご自身も持て余しているご様子で、そんな時はよくミズガルズへ引き篭もってやり過ごしているようだ。

 

そしてケルベロス三姉妹の中で私だけに教えてくれたニヴルヘイムの柩という存在。血の匂いがこびりついた拷問器具が溢れた歪な異空間の場所、罪悪を裁き浄化する為に作られたその場所にフェンリル様は時々訪れている。

 

この世界を浄化する為、グランドトレジャーの御為にその身を血で汚すその行為をフェンリル様は続けていた。私はフェンリル様の告白に『死の沈黙』という神の秘密を語ろうとするだけで死に至る呪いをその身に受ける事でそれに答えた。フェンリル様は私の返事に殊の外お喜びになり、そのままニヴルヘイムの柩の処刑台に寝かされた私はフェンリル様に処女を捧げた。

 

フェンリル様の改良した『苦悩の梨』という拷問器具は、『ハクダの梨』というフェンリル様が錬金した特別製のものでフェンリル様が体内で飼われている白蛇ハクダの蛇身で作られた弾力性のある代物だ。小さなバナナの形をしたソレを私の濡れた下肢へと忍ばせるとその蛇身からは媚薬成分が分泌され、私の狭い入口をゆっくりと押し開いていった。

 

それでもフェンリル様の雄芯は常人のソレとは比べ物にならない大きさらしく私は痛みに泣いて踠いたが、処刑台の上に拘束された私には身動きもままならない。フェンリル様に腰を掴まれ固定されたままフェンリル様の全てを受け入れた。文字通り串刺しというものだったと思う。私の痛みが消えるまでフェンリル様は私の身体を宥めるように優しく愛撫を繰り返してくれていた。気づけば痛みは消え、それからは夢中に声を上げて腰を振り続けて失神してしまった記憶しかない。

 

「よく頑張ったね…綺麗に開いたよ、ローザ。君はとてもいい子だ、凄く可愛いかった…大好きだよ。もう離さない、ローザはこれでボクだけのもの、いいね?」

「はい…ご主人様、ローザの全てはご主人様だけのものです」

フェンリル様は私の全てを受け入れて、それでも私を望んでくれた。フェンリル様に頭を撫でられていい子いい子されているだけで、本当に自分がいい子になれる気がする。それは強い痛みを伴う物だったけれどそこで得た幸せで堪らなかったあの出来事を私は一生忘れない。

 

 

 

一週間の間に行われた各国の代表者が集まる世界御前会議の最終日。その夜開かれた打ち上げ舞踏会でフェンリル様が私達ケルベロス三姉妹のお披露目をしてくれた。

 

我が自慢の第1位の側近よ…

 

そう言って私を呼んだフェンリル様のお言葉に感激しその身を震わせて仕舞ったが失態を見せずにお披露目を終わらせる事が出来てホッとしている。常にフェンリル様の側でお仕えするのが仕事…最早これだけで私には至福の務めだ。

 

 

 

内宮にあるホープ宮の至る所で私はフェンリル様のお相手を務めている。姉様がお相手をするのはフェンリル様の部屋が殆どで末妹に至っては厩の中だ。私はホープ宮にいる間は常にフェンリル様と共にある。このホープ宮全てが私の寝所、フェンリル様に甘く囁かれるだけで私の腰は砕け、可愛いお強請りをされて喜んで全身を使って奉仕する。もう私の事が離せないから離さない、フェンリル様はいつもそう言って私の頭を撫でて可愛がってくれる。

 

私の腕の中にいる小さな弟になったフェンリル様は年相応でとても可愛らしい。お姉ちゃんと呼んで頰を赤らめ腰をゆっくり動かしながら私の胸に顔を埋め私の身も心も裸にしてしまう。逆らえない、何でもしてあげたい。その事だけで胸が破裂しそうだ。何でも言ってほしい、どんな無茶も喜んで叶えてあげるから…この腕の中にいる間はずっと私の、私だけの弟でいて欲しい。

 

「お姉ちゃん、大好き…っ」

「私も大好きよ…ねえ、もっとワガママ言って。沢山甘えて欲しいの…お姉ちゃん、アヤトの言う事なら何でもしてあげたい」

私のそんな姿はご褒美が欲しくて尻尾を振っているようにしかフェンリル様には見えないのかも知れない。でもそれだけじゃない、私には貴方が必要なんです。私を必要としてくれる貴方がいるからこそ今の私がある。他にはもう何もいらないの。私は貴方にずっと必要とされていたい。

 

愛なんて足りないわ…これはもっと貪欲なもので私の存在意義にも等しい。私は貴方の必要不可欠な物になりたい、常に必要とされていたいのです。

 

「クスクスクスッ本当、可愛いね…ローザは。そんな心配しなくてもボクはローザを離さないよ、もっと離れられなくしてあげる…覚悟してなよ」

「はい…ご主人様。もっといい子にしますから、どうかローザを離さないで下さいね」

フェンリル様に深く口付けられると私はいつも魂まで吸い上げられてしまいそうになる。ああ…幸せです、フェンリル様。

 

 

 

時々真夜中に目を覚ますとこれは全て神宮の地下で眠っている間に見た夢ではないかとふと思うのです。姉様の泣き声と、私の妄想と、末妹の現実逃避の絵空事…その狭間に時々見た甘い幻想にとても似ている。

 

貴方が生まれた時の産声が届いた時の歓喜を私は未だ昨日のように思い出す事が出来る。神宮の地下から私達3人はフェンリル様を呼んで必死に咆哮を上げ続けた。私達はここに居ます、どうか私達に気付いて下さいと。そして私達に一目そのお姿を見せて下さいと涙を流しながら、声が枯れ血を吐き出すまで貴方を呼び続けた日々。それは何年、何十年、何百年と待ち続けた私達にとって念願の出来事だったのだ。

 

私はあの日を思い出すだけで涙が溢れてくる。神宮の地下では涙を堪える事が出来たのにフェンリル様を見ているだけで、時々涙腺が壊れたように涙が止まらなくなる。泣き虫ローザ、なんていうのはフェンリル様だけ、私は本来泣かない存在だった。泣くのは姉様と末妹だけ…それを宥めるのが私の役割だった筈なのに。

 

 

 

「ローザは頑張り屋さんだものね…いつも我慢で乗り切ろうとするから堰き止めていた涙が出始めると止まらなくなる。身体にも精神にも悪いから少しずつ出していこうね…誰にも見せないよ、泣き虫ローザはボクの前だけでいい」

「うう…っこんな私ですみません、ご主人様どうかローザを捨てないで」

時折わんわんと泣き出す私をそう言ってフェンリル様は私が治るまで胸に抱き締めて顔中にキスを贈ってくれる。成人を迎えても未だフェンリル様の腕の中で私は子供に還ってしまう。

 

見栄っ張りで負けず嫌いな私は他人に弱い所を見せるのが死ぬ程嫌で、同情されるのは屈辱でしかない。だから私は自分が無力だと分かっていても努力は怠らない。こんなちっぽけなプライドをフェンリル様はそれすらも、それでこそローザだと言って大事にしてくれている。フェンリル様は秘密は秘密にするし、内緒は墓まで持っていくと言って私の事は全部自分がなんとかするからと言って手放しに私を甘やかしてくれるのだ。

 

だからこそ私は今の自分に満足が出来ない。フェンリル様のお役に立てるべく日々の努力はこれからも一層励むつもりだ。私がフェンリル様がいなくては生きていけないように、フェンリル様にもこのローザがお側にいる事が当たり前になってくれる事を何よりも願っている。

 

無力な私にはフェンリル様の全てにはなれない…でもその一部でいい。フェンリル様の指先一つ分でもお役に立てたらと思う。私はフェンリル様を愛する者として生まれ愛されないと生きていけない獣、ケルベロスとしてグランドトレジャーに創られた。フェンリル様が私達を庇護するのはその前提があっての事なのは承知している。私達は幸運だったと思う…だがそれに甘えてフェンリル様の足枷にだけはなりたくない。

 

 

 

グランドトレジャーは私達をフェンリル様の最大の鎖にする為に私達を創ったという。神の魂を生身の肉体に縛り付ける枷にしようと考えた。本来神というのは一世界一神であり、フェンリル様はグランドトレジャーによって創られた神でありグランドトレジャーが生んだ子供とは意味が異なる。故にフェンリル様はグランドトレジャーのようにこの世界に縛られる事がない存在なのだそうだ。

 

時空の歪みを利用して3000年前に異世界の神がこの世界に訪れたように世界の誕生と消滅の瞬間、時空に裂け目が出来る。その歪みを利用して他の神々は異世界等への移動を可能にするのだがフェンリル様にはその縛りがない、よってその気になればいつでもこの世界から離れられる。グランドトレジャーはそれを何よりも恐れフェンリル様を生身の肉体に縛り付ける事を考えた。物理的に自分の下から離れないように神の魂を生身に封じ込んだのである。

 

フェンリル様はもう二度と側を離れないという誓いを胸にグランドトレジャーの想いに応え受肉したのだ。

 

私達にはフェンリル様のような世界を一瞬に駆け抜ける足はない。フェンリル様がそれを望まれるのならば私にも枷としての役割があるのだろう。私はせめて重荷にならない足枷でありたいと思う。

 

 

 

フェンリル様はこの世界で冒険者になりたい夢がお有りだ。その為、フェンリル様が留守中、神宮内を管理するものが必要になる。それが私と姉様に与えられた役割だ。成長過程で今苦しんでいる末妹にはどうかフェンリル様を悲しませないよう無事に成人して欲しいと思う。Sランクの魔物であるケルベロスの私達では冒険のお供が叶わないので、出来る事でお役に立てればと考えている。

 

私達ケルベロス三姉妹はフェンリル様を愛する為に生まれ愛されなければ生きていけない身体を持っている。もしもの時は舌に刻まれた神の文言が私の願いを叶えてくれると思う。

 

『仁獣ケルベロス=ローザウィッチが沈黙の誓いを破らんとするその時破壊と欲望の神フェンリルの名に於いて死を賜る。その命尽きようとも神の秘密を語る事なかれ。』

 

私には『死の沈黙』という名の呪いに込められた死を選択する自由だけは許されているのだ。この命が使える時が来るまではとっておこうと思う、これは私の切り札だ。フェンリル様のお役に立つ時にこそ使おうと思っている。

 

身も心も捧げられる存在を得られた事に創造神ユニコーン=グランドトレジャーへは最早感謝の念しか今はない。貴方がいなければフェンリル様はこの世界に存在しなかった。故にこれまでの出来事全てを引き換えにしても何よりその事に感謝したい。

 

私を生んでくれた事、フェンリル様を生んでくれた事、この世界に共に生きていける事…これを幸いと言わず何と言おうか。フェンリル様は私を狂信者とよく仰るけれど正直それは私にとっては望む所であり、私以上にフェンリル様を思う者等いてなるものかと日々の祈りは欠かした事はない。

 

この世界に存在する神2柱の側に仕え、その存在が公式にも認められた立場になったのだ。声を大にして叫んでもいい。

 

私はフェンリル様の狂信者だと。私は殉職以外の死に方を決して選ばない、私の死に場所はフェンリル様の傍らだ。私は貴方の為に生まれ、貴方の為に生き、貴方の為に死ぬ…これが私の望む姿だ。番いにもなれなかった失敗作の私には身不相応な死に様かもしれないけれどそうありたいと思っているし、その為の努力は惜しまない。

 

お優しいフェンリル様は決してそのような事は私やケルベロス三姉妹には言わないだろうから、これは私だけの秘密だ。この命尽きようと魂の虜囚となろうと私は貴方の傍らにある。

 

この魂が尽き果てるその日まで…

 

 

 




まだ3人目ですね…まだまだキャラクターいるのでネタはあるのですが本編と並行だと中々外伝は進みません。こちらはネタを忘れてしまう前に書いていきたい所です。本編優先してますが、突発的にこちらに話が入ってしまうと思いますが読みにくいとは思いますがご容赦下さいませ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。