妹のように甘えてくるみんなが可愛すぎて死にそう   作:青虹

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どうも、青虹です。

水着ガチャ来ますね。無課金の私は20連しか引けません。イシクレイシクレ。

感想評価、待ってます。


料理は難しいが、それ以上に楽しい

「ねえお兄ちゃん」

「ん?なんだ」

「ハンバーグが食べたい」

「だから金ねえつってんだろっ!」

 

 だから何回このやり取りすりゃいいんだ。いつも通り校門前で捕まってから並んで歩くこと僅か10分足らず。

 おたえと5回目の同じやり取りを繰り返した俺は、大きくため息を漏らした。

 バイトしてない俺の財布がパンパンになる日はまず来ない。年に一回の誕生日に金をせびるだけだ。

 それまであと半年くらい。後先考えずにお金を使うとこうなるから、みんな気をつけよう。

 でもさ、俺は思ったんだ。RASの方はいいのかと。ちゃんと行ってくれないと俺ちょっと心配だよ。

 

「今日は予定ないのか?」

「うん、ないよ」

「バンドの練習とかないのか?」

「うん、今日は休みだからね」

「ならいいけど」

 

 言質は取った、例え誰になんと言われようとも俺は責任を取らないぞ。

 そう心に誓ったはいいが、目的地を決めぬまま歩いている。

 

「これどこに向かってんだ?」

「ファミレスだよ。ハンバーグを食べるんだ」

「だから金ねえって言ってるだろうが……」

 

 天然ほんと怖い。会話のキャッチボールが全く成立しねえ。

 誰かさん。おたえの制御をしてくれ。俺には手に負えん。

 歩みを止めるつもりはないらしく、ファミレスの方へ進んでいるので、本当にハンバーグを食べるつもりらしい。俺は奢らないからな。

 

「金ないから自分で払ってくれよ」

「えっ。私財布持ってきてないよ。お兄ちゃんが奢ってくれるんじゃないの?」

「だから金ねえって言ってたんだけど……食い逃げになるから帰るぞ」

「そんなぁ……」

 

 やめてっ。そんな悲しい目しないでっ!家で美味しいやつ食えるからっ!(多分)

 それでも、犯罪を犯すよりはマシである。心を鬼にして連れて帰る。

 

「そうだ。お兄ちゃんがご飯作ってよ」

「えぇ……(困惑)」

「ハンバーグ食べたい」

「お前ハンバーグどんだけ好きなんだよ」

 

 さっきからずっとハンバーグハンバーグ言いやがって。もう少しでゲシュタルト崩壊起こすぞ。そのせいで変なのが生まれても文句言うなよ。

 

「……分かったよ。ただし味には期待するな。料理なんてほとんどしたことないし」

「やった。お兄ちゃん大好き」

「ひっつくな暑苦しい」

 

 なんでみんなこんなにえっちくて無防備なんだよ。若さか?違う、二次元生まれだからだ(確信)

 結局二次元のキャラなんて欲望が詰まった結果出来たものだ。現実に二次元ほど可愛い子が現れないのも、目や髪の色がカラフルなのも、やたらと嬉しいイベントが発生するのも、全て人間の欲望から来るものだ。その結果俺らも満足できるからもっとやれ。

 

「ただいまー」

「おじゃましまーす」

 

 家に帰ってきたが、珍しく誰もいない。リビングの机の上には、置き手紙がある。

 母上が書いたものなのだろうが、なぜラブレターに使いそうなハート全開のものを選んだし。普通のにしろや。

 ……なになに。

 

 明日の朝まで帰ってこないから二人きりだろうけど仲良くしてね。by母

 おいリア充爆ぜやがれ!by父

 

 母上さん、なぜ俺が誰かと一緒にいること前提にしてるんだ。今回は合ってたけど。

 それと父上。あんたも母上と結婚してる時点で一応リア充や。

 

「お兄ちゃん、ハンバーグ」

「へいへい。俺よりもハンバーグなんすね分かります」

「違うよ。お兄ちゃんが作ったハンバーグが早く食べたいだけ」

「よし任せろ最高のやつを作ってやる」

「おぉ……!」

 

 おたえにそんなこと言われたら頑張るしかないじゃないか。張り切っちゃうぞお兄ちゃん!

 さーて、えっと、作り方……っと。

 まず、合挽き肉は……冷蔵庫に移して解凍済み。

 玉ねぎをみじん切りにして……うわぁ、超ぎこちなっ。手傷つけそうなんだけど。

 あっ、あまりにもグダったから割愛な。

 なんでこうなったか、明日までに考えてきます。ほな。

 痛え、指切っちったぜはっはっはっ。

 

 

 

 ******

 

 

 

 悪戦苦闘すること約1時間、なんとか作り上げることに成功した。

 時々茶々を入れてくるおたえをあしらうの意外と疲れた。それに、あと少し遅かったら不機嫌のあまり花園ランドが開園するとこだった。死の危険を回避した。

 でも、意外と料理って楽しいんだな。母上働かねえし、代わりに作るってのもいいな。

 

「美味しそう」

「美味しいかどうかは別だけどな」

 

 美味しそうに見えて、実は食感最悪とかシャレになんないからな。

 心の準備ができていない俺をよそに、期待マックスで口にハンバーグを運ぶおたえ。

 

「……」

「ど、どうだ?」

「……」

「なんか言ってくれよ」

「……変態だ」

「それバカにしてる?」

「ううん、すっごく美味しい」

「よかった……」

 

 ほっと胸を撫で下ろす俺には目もくれず、どんどんハンバーグを食べ進めるおたえ。

 ……こうやって自分が作った料理を幸せそうに食べてくれるって、すごく嬉しいな。みんなに出来ることがまた一つ増えた。そう思うと、胸が踊る。

 

「お兄ちゃん、食べないの?冷めちゃうよ」

「……ああ、分かった」

 

 おたえの隣に座り、ナイフで切り分けで口に運ぶ。肉汁と肉のジューシーな味わいが口の中に広がる。

 ──美味え。

 自分で苦労して作った料理は、なぜか一番美味しく感じる。そういうような話を聞いたことがあるが、その意味がよく分かった気がする。

 自分で苦労して作って、成功した喜びや達成感。そういう喜びが、こうやって料理に現れるのだろう。

 

「お兄ちゃん」

「なんだ急に」

 

 もう既に完食していたおたえが俺を呼ぶ。外から吹き込む春の涼しい風が黒髪を揺らす。

 まるで絵に描いたような、それほどに美しかった。

 

「ありがとう。私のわがままを聞いてくれて。指も切っちゃって。でも、今までで一番美味しかった」

「……俺もありがとうって言いてぇよ。料理の楽しさに気づけたしな。指は自業自得だから気にすんな」

 

 誰かのために何かしてあげること。それがこんなにも幸せで、温かさに満ち溢れていたとは。

 そんな喜びを噛み締めるとともに、妹にしてあげられなかった後悔が胸いっぱいに広がる。

 

「お兄ちゃん、また作ってくれる?」

「ああ。今日より美味いの作ってやる。首を洗って待っとけ」

「お兄ちゃんからの挑戦状、確かに受け取った」

「やべえ……ハードル上げちゃった……」

「ふふっ。お兄ちゃんが作った料理なら何でも美味しいから、安心していいよ」

「そりゃ嬉しい事だな」

「だって、お兄ちゃんの料理には──」

 

 いつもは天然で。ネット上ではサイコパスとかアスぺとか言われ、公式にもヤバいやつ認定されてるおたえだけど。

 

 

 

 ──『愛情』がたくさん詰まってるもん。

 

 

 

 本当はいいやつなんだ。

 

「お兄ちゃんが妹に作るんだから、そりゃ『愛情』くらい破裂するくらい詰めまくるわ」

 

 みんながみんなのことを大切にしてる。

 だから今の関係が築けているのだろう。だから俺は、その手伝い出来たらいい、そう思うのだ。

 

「あ、このスープから愛情を感じない……」

「それインスタントだから」

 

 こうやって軽口を叩けているのも、そのおかげなんだろう。

 後悔はたくさんある。でも、後悔は次に活かすためにある。だから俺は、俺に出来る全力をみんなにしなければならない。

 それが俺の罪滅ぼしという進むべき道なのだから。

 

「今度、おっちゃんにも食べさせてあげてよ」

「ちょっとそれは無理がある」

 

 俺の家にはたくさんの女子高生が取っ替え引っ替えやってくる。だから、ここは俺が守らなきゃいけない。


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