お気に入りが1話にして20を超えてました。これ、私の小説の中では最速ペースです。そのおかげで、もう新しいのが完成しましたよ。
みんな、これからもよろしくな!
玄関の扉。それは、家という閉鎖空間から無限に広がる世界への扉であり、人間はそこで初めて自由を得るのだろう。好きなように買い物をしたり、街を散策してみたり、友達と遊んだり。もちろん、勉強など強制力を持つものもあるわけだが……これはちょっと、いや相当異質であり、おかしい。
現在の状況を軽く整理しよう。朝、リサが瞬間接着剤のごとく俺にくっつき、そのまま家を出ると、猫耳キラキラドキドキ少女と、赤メッシュのツンデレ少女がパパラッチのごとく出待ちをしているのに遭遇。香澄ちゃんがものすごい勢いでリサの逆側にへばりつき、それを苦笑いしてみている蘭ちゃんという構図が僅か0.1秒で完成していた。ねえ蘭ちゃん、苦笑いしてる暇があるなら剥がしてくれない?歩きづらいこと極まりないから!
「あっつ……」
その上、二人分の体温が俺に送られてくるため、気温以上に暑苦しい。太陽も容赦なく俺を照りつけ、近くに松岡◯造でもいるのかと思ってしまった。
しかし、それとは対称に、すれ違ったり追い抜いて行く人からの冷たい視線が心の奥底に突き刺さり、心は冷え切った上に、豆腐メンタルが麻婆豆腐並みに崩れてしまっている。
「えへへ……」
それでも、剥がそうにも剥がせないのは、最上の幸せだと言わんばかりの笑顔でひたすら俺の腕に頬ずりする香澄ちゃんやリサに対して罪悪感を感じるからだ。俺は悪くない、こいつらが可愛すぎるのが悪いんじゃ!
「香澄、そろそろ離れないと、その分学校が離れるぞ?」
「あぅ、でも、お兄ちゃんと一緒にいたいもん!」
「香澄、学校に遅刻するのはダメ」
「うぅ……」
蘭ちゃんのお陰で離れてくれたが、そういう蘭ちゃんが俺にくっつきすぎる余り遠回りしてしまい、遅刻する常習犯なわけで。ただ、それを言っちゃうと香澄ちゃんが本当に離れなくなるから、言わないでおいた。
そうして香澄ちゃんと別れると、俺の左手がガラ空きになる。腕を休められるからありがたいんだけどね、そこで何か言いたそうに一瞬ちらっと俺の方を見たかと思いきやすぐに目をそらしたり、何やらブツブツ呟いたりと、どうも落ち着かない蘭ちゃんのことが気になって気になって仕方がない。
「ほら、蘭も思い切っちゃえばいいって!」
「は、はぁ!?べっ、別にいいし・・」
そんな蘭ちゃんを見かねたリサが、余計な一言を放った。案の定ツンツンしているが、尻すぼみになって固まってしまった。と思ったら、今度は俺の方を向いた。
やっ、やめて!そんな涙目かつ上目遣いで俺を見ないでっ!
「ほら……」
もう一度言おう、これは俺が悪いのではない。天使すぎるバンドリのキャラ達が悪いのだ。
で、蘭ちゃんは一瞬俺の方をちらっと見たあと、誰にも渡すもんかと言わんばかりにものすごいスピードで俺の腕にしがみついた。ちなみに、恥ずかしいのか、顔は真っ赤に染まっている。いやだから恥ずかしいならやるなって。それとその涙目やめろって、俺が蘭ちゃんを泣かせたみたいじゃねえか。
だってほら、今すれ違った女子高生が俺の方を見ながらヒソヒソ話してたじゃねえか。絶対気持ち悪がられたよな。ああ、視線がドライアイスのように痛い……。
そうして向こうでもよく見た景色の中を進んでいく。それだけなのに、どうしてこんなに疲れるのだろうか。この二人であることは一目瞭然なんだが、二人して遠いどこかの世界に旅立っているのか、しちゃいけない顔で俺にへばりついている。そろそろ学校のそばに来るのになぁ。
「ほら、離れろ。これ以上はダメだ」
「……」
「……お願い」
「ったく、もう少しだけだ」
もうね、顔が『我が生涯に一片の悔いなし……!』って言ってるもん。すごいよ。桃源郷にいるのかってくらい幸せそうなんだよな。何度罪悪感に襲われれば済むのやら。
それで、仕方なく5分ほど延長してつき合ってあげたのだった。そのかわりに、真夏でもなんでもないのに俺は汗だくになっていた。
▼◻︎▼◻︎▼◻︎▼
学校は地獄である。理由は勉強がダルいからだとか、ぼっちだからだとか、アニメのような青春が送れねえクソ野郎だとか様々だ。
ただ、この世界にやってきた俺は、特殊な理由で学校が嫌いになりそうだった。
「佐々木、お前何回言えば分かるんだ。仲のいい女子高生にお兄ちゃんと呼ばせるのはやめろ、羨ま──学校に苦情が寄せられるから」
「俺だって是非離れてほしいしお兄ちゃんなんて呼び方今すぐやめてほしいですよ。ただ、俺に言われてもどうしようもないです。いつの間にかあんな風になってたんです。今すぐ俺から離れて自立してほしいくらいですから」
「こっ、これが強者の余裕かっ……」
先生が何やら呟いた後、なぜか俺を睨んだ。いやいや、俺何もしてないから。朝起きたらエプロン姿のリサに遭遇してーの、養われーの、玄関扉を開けたら妹が3人に増えーの、トツギーノだから!全部俺の意思ないから!
まあ当然そんな俺の苦労を暴露しようものなら、嫌味か、とか言われるんだろうなぁ。ウンウン、李徴の気持ちがよくわかるゾ。えっ何それって人は『山月記』って調べろよな!
そんなことはさておき、俺はここでもぼっちである。そして向けられる視線は嫉妬オンリー。オンリーワンっていいよね(唐突)。
「おいリア充」
「んあ?」
「爆ぜろ」
「えぇ……(困惑)」
突然誰かに話しかけられたかと思いきやこれである。でもね、聞いて!今俺すっごく嬉しいの!爆ぜろとか言われて大喜びしてるからMって訳じゃなくて『リア充』呼ばわりされたことがめっちゃ嬉しいのよ!今までリア充に爆ぜろとか思ってたけど、思われる側はいいなぁ(高みの見物)!でも、そのかわりに女子からは冷ややかな視線を送られた。悲しい。俺悪くないのに。
ちなみに、これ一日で5回くらい言われた。なんとも言えない気分だった。
そうして、それ以外の会話が一切ないまま下校時刻を迎えた。なるべく早く下校して、誰かに捕まる前に帰ってしまおうそうしよう!
「おにーちゃーん!!」
「はぁ……」
なお、校門前に人だかりがあって何が起こってるのかなー?とか思ってたら、また妹が増えました(定期)。
さて、次回は誰なのでしょうかね?
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