妹のように甘えてくるみんなが可愛すぎて死にそう   作:青虹

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どうも、青虹です。

隙あらば叩く手を動かすと、あっという間に書きあがってしまうらしいです。
今回は前半R-17.99くらいの過激さになってしまっています。無理という方、少し飛ばす(2つ目の******へ)かUターンを推奨します。
中盤は、書いてて訳が分からなくなるような話が続きます。

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みんなの平和を守る為に

 ──It is impossible to love and to be wise.

 

──Francis Bacon

 

(──恋をして、しかも賢くあることは不可能なことだ。

 

──フランシスコ・ベーコン)

 

 

 

 ******

 

 

 

 ゲームとはとても面白いものだ。試行錯誤して難しいクエストをクリアしたり、仲間と協力プレイしたり、そのゲームの話題で盛り上がったり。そういうゲームは、どんどん人気に火がつくのだろう。

 ただ、あまりにも難しすぎて課金しないとクリア出来ないようなゲームは絶対に人気が出ない。バランス調整おかしいとか散々叩かれた挙句、表世界から静かに姿を消していく。

 そういう類のゲームにおいてよく起こること、それが『詰み』だ。圧倒的不利な状況に追い込まれ、突破しようがなくなる時、人々はそう言う。

 

「ふふっ、これからは()()私が兄さんの為にお世話してあげるわ」

 

 随分と角の取れた微笑みを俺に見せる氷川紗夜。学校では風紀委員を務め、規律には厳しい。そんな彼女が俺に対し起こした行動は──

 

「紗夜って風紀委員だよな?」

「そうよ。それがどうかしましたか?」

「問題しかないんだが!?何で俺馬乗り状態にされてんの!?しかも紗夜下着姿じゃねえかッ!」

 

 普段の紗夜からは考えられないような、風紀を乱すこと。簡単に言えば、襲われそうな状況だ。

 

「この前、千聖と随分仲良くしていたって日菜が言ってたわ」

「はぁ?俺拘束されてただけなんだけど」

「だから、私と兄さんが既成事実を作れば誰も手出し出来ませんよね?」

「絶対にその発想はおかしいから!下着まで脱ぐな!」

 

 しかし、行動範囲が狭まった俺の足掻きは意味を成さなかった。

 上半身裸で俺に覆いかぶさる紗夜。雪のように白い柔肌を惜しげもなく晒している。決して大きくはないものの、しっかりと存在感を放っている胸。思わず、見惚れてしまう。

 

「兄さん?あなたはただ快楽に身を委ねればいいだけなのよ?」

「ぐっ……!」

 

 何とか脱出しようと試みるも、体に力が加わらない。薬でも飲まされたのだろう。

 何もすることができず、事の行方を見ていることしかできない。

 

「……んんっ……!」

 

 紗夜が俺に覆いかぶさり、強引に唇を奪われる。

 紗夜の顔がすぐそこまで近づく。全身から紗夜の体温を感じる。

 

「ふふっ、体は正直じゃない」

「……離せ……!」

「ここまで来たら、もう引き返せるはずないわ」

 

 ──嗚呼、いつから歯車はおかしくなったのだろう。少しずつ広がった錆びは、規則的な動きを狂わせた。紗夜の息遣いが、舌捌きが、俺を快楽の沼に嵌めんとしている。

 必死の抵抗も、本能の前には成すすべもない。理性の壁は音を立てて崩れた。

 俺に残された道は快楽に身を任せる、それだけだった。

 

 

 

 ******

 

 

 

 窓は閉め切られている。故に、現在時刻を知ることは出来ない。

 寝起きのはずなのに、強烈な倦怠感に襲われる。

 

「はぁ……」

 

 隣で生まれたままの状態で眠る紗夜を見ると、ため息を吐かざるを得ない。

 あんなこと、もう思い出したくもない。

 布団から抜け出すと、服を着る。そのまま風呂に直行する。汗だくで、気持ち悪くて仕方がなかった。

 シャワーで汗を流す。温かなお湯が少し疲れを取ってくれる。

 湯船に浸かろうとは思っていなかったので、さっさと洗って出よう。そう思っていたが。

 

「兄さんいたのね」

「……何故来た」

「兄さんが遠くに行ってしまうような気がしたからよ」

 

 何を言っているのやら。何時ぞやに千聖に捕まって以来、もう逃げ出すことすらも諦めた。逃げても逃げても無駄だから。何処へ行こうとも、先回りされて捕まってしまうのだ。

 

「……ねえ兄さん」

「……何だ」

 

 紗夜は椅子に座る俺の背中にへばりつくと、耳元で囁く。決して傾けてはいけないのに、嫌でも言葉が脳に染み渡っていく。

 

「私は兄さんと離れたくない」

「……」

「ずっと、兄さんの側にいたい」

「……何故?」

「私は、()()()()()()()()()()

「……は?」

 

 頭が混乱する。()は紗夜を助けた記憶はない。そもそも、そんなことは無かったはずだ。

 ……いや、待てよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 クソ女神が生み出した世界?いやいや、例え神と言えども、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまり、この世界は元からあった世界なのではないか。そこに、何らかの理由で俺が送り込まれた。

 ……じゃあ、あの世界もそうなのか?何処かで介入が加わり、運命が狂ってしまった。その結果、性格も狂ってしまった。

 考えるほどに謎が深まる。謎が謎を呼び、思考をより深淵に導く。

 

「私はあの時、兄さんの言葉に救われた。だから日菜と仲直り出来た」

 

 待て、それは()()()()()。俺がここに来たときには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それから、私は兄さんに憧れた。兄さんはとても強くて、芯の通った人。でも、私は──私たちは兄さんに恋心を抱いてしまった」

 

 やめろ。俺は人一人のことも考えてあげられなかった弱い人間だ。それに、()()()()()()()()()()()()()()()

 みんなに申し訳なくなる。()()()()()()()()()()は俺なんかじゃない。

 

「だから、みんなで『兄さん』と呼ぶことで恋心を隠し続けた。でも──抑えきれるはずがなかった。だから私は──」

 

 紗夜は、一度そこで言葉を止めた。流れる静寂は、嵐の前の静けさのようで、恐怖心を掻き立てる。激しく鳴り響く鼓動は、紗夜が密着しているからとかそんなものではなかった。それを意識するほどの余裕は俺にはなかった。紗夜が発そうとする一言への恐怖なのだろう。

 数秒か、数分か、はたまた数時間か。時計を見ることも許されない空間で、流れた時間は短くも長くも感じた。

 そして、紗夜は口を開いた。

 

「兄さんの全てが欲しい。他は何もいらない」

 

 ダメだ。お前が欲しているのは俺じゃない。俺の知らない誰かなんだ。絶対に後悔する。

 そいつはみんなを救い続けたのだろうけど、俺はそんな事できやしない。

 

「……それは出来ない」

「……どうして」

「お前、みんな俺のことが好きだと言ったな。それがもし本当なら、お前一人だけというわけにはいかない」

 

 それっぽい嘘で誤魔化すしかなかった。俺は俺じゃないなど、到底言えるはずもない。そんなの、誰も信じないから。

 その俺の言葉を聞いた紗夜は──。

 

 

 

 

 

「じゃあ、みんなコロセバイイノネ。フフフフフフ……」

 

 

 

 

 

 歪んだ顔で、嗤っていた。

 

「馬鹿、それはダメに決まってんだろ!」

「私には兄さんしかいらない。兄さんの為なら何でも捨てる」

「お前、狂ってる」

「でしょうね。私だって、今までに感じたことのない感情に包まれているの。でも、それが今の私だから」

 

 俺の為なら全てを捨てる……日菜ちゃんも捨てかねない。何とかして止める方法はないのか……!

 俺はアホだ。俺は未熟だ。だから選択を間違える。選んではいけない道ばかりを進む。

 

「でも、紗夜──」

 

 紗夜の姿は、もうどこにも無かった。

 

「くっ……早くしないと……!」

 

 濡れた体で、着替える間も無くスマホを手に取る。スマホの画面をタップし、日菜へ繋げる。

 

『もしもし、どうしたの?おにーちゃん』

「紗夜には気をつけてくれ。下手したら、お前やみんなが殺されるかもしれない」

『どういうこと?急にそんな怖いこと言わないでよ』

 

 日菜にとって、紗夜は大切な存在。紗夜に殺されるかもしれないなど、信じられるはずがない。それに、日菜の天才さ故に伝わりにくいことも多い。でも、俺はやらなければならないのだ。

 もう、間違えたくないのだ。

 

「お願いだ……ッ、これは……みんなを守る為なんだ……!」

 

 風呂上がりでまだ体を拭いていないからなのか、それとも汗なのか、涙なのか。正体の分からない水が頬を伝って零れ落ちる。声は震えている。誰一人として殺させたくない。ただの感情論をがむしゃらにぶつける。

 

『わ、分かったよ。気をつけておくね!』

「ああ、ありがとう。……それと、すまない」

『何でおにーちゃんが謝るの?』

「俺が紗夜を狂わせた。俺が不用意な言葉を口にしなければ、こんなことには……!」

 

 結局俺はダメ人間。人間の本質は、いつまで経っても変わらない。

 変わりたくても、変われない。非力な自分に怒りを覚える。

 

「……俺が弱い人間で本当にすまない」

『おにーちゃんは弱くなんかない!』

「……」

 

 日菜の絶叫が俺の耳を揺さぶる。その波紋は次第に全身に広がっていく。

 

『おにーちゃんは、いつもあたし達を助けてくれたじゃん!』

 

 違う。違うんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺は、その皮を被っただけの最低な人間なんだ……!

 

「俺は……何もしてやれてない。俺は、弱い人間だ」

 

 俺とは別人の誰かの栄光を、俺が盗み取ってその権利を悪用しているだけ。それ以外の何でもない。

 

『違う!おにーちゃんは……っ!おにーちゃんはっ!』

 

 耳元で轟く怒号に、思わず耳を離してしまう。落ち着いたところで、もう一度耳を当てる。

 ちゃんと、みんなの声を聞いてあげないといけない。

 

『おにーちゃんといるだけで、みんな救われてるのっ!』

 

 発せられる一音一音が、脳内で処理されて溶けて混ざり合っていく。

 俺といるだけで救われている。そんな簡単なことで救われたのなら、それは嘘で塗り固められた虚偽の救いに過ぎない。

 それは、救いという名の裏切りなのだ。

 

 

 

 

 

 ──おにーちゃんが強いか弱いかなんて、おにーちゃん自身が決めることじゃない!救われたあたし達が決めることだよ!

 

 

 

 

 その言葉は、何処かで聞き覚えがあった。

 ──ああ、こころか。貰った勇気は貰った方が決める。

 やっぱり、どこか二人は似ている気がするな。思わず、笑いが零れる。

 

「日菜ちゃん、ありがと。救われた気がする」

『……良かった──ッ!?』

「日菜!?」

『た、助けて……おにーちゃん……!』

 

 恐怖に震えた声は。恐怖から逃げようとする震えは。

 紗夜(殺人鬼)の到来を告げている。そう悟るのに時間はほとんど要さなかった。

 

「待ってろ、すぐ行く」

『ダメだよ、おにーちゃんには死んでほしくない!』

「俺は行かなきゃいけない。俺が俺を強い人間だって認めるために。だから、絶対に助けに行く」

 

 返事を聞かず、画面を落とす。

 武器は持って行けない。そんなことをしたら捕まってしまう。

 通報できない。紗夜と日菜が悲しむ。誰もが悲しまない解決をしなければならない。

 

 ──俺は主人公みたいに強くない。でも、()()()()()としても、いいはずだ。

 

 俺は、全速力で家を飛び出した。

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