機体開発による弊害と考察を────。
メイは造る。
部品たちの声を聞き届けて。
■ジョン日誌14
予想どおり高価な試作パーツの山(ゴミ)だ。
試作機とは、採算度外視で造るモノ。
その時の最高能力を仮定した仕様だからね。
予算を食い潰す試算で、無駄に高価な部品を使用。
耐久性が高くて、演算性能が速くて。
ひとつひとつが芸術品という極み。
試作機が高価という謂れ因縁の元凶だろう。
そこから性能と価格を削ぎ落として、制式機に。
大量生産を優先させるコストに調整。
マイナーダウンという作業に当たる。
ガンダムのマイナーダウンが、ジムという理屈さ。
連邦だと、マイナーダウン感覚では無いかな。
ガンダム → 陸戦型ガンダム → 陸戦型ジム
という、稀有な成功例はあるけどね。
上層部の思惑から外れたから、更に劣化してジムに。
コストダウンによる劣化鋳造品だったりする。
連邦の流れだと──。
試作機 → 実証機 → 隊長機 → 汎用機 → 専用機
連邦のエース機体が汎用機並な悪因だね。
その状態から、出力を弄ってピーキーに。
専用機というより、出力調整による差異かな。
武装強化とかしてるのは個人裁量だし。
ジオンは、その構図が真逆ではある。
試作機 → 汎用機 → 隊長機 → 専用機 → 実証機
汎用機にする過程の落差が酷い。
最低基準から底上げで、高級機にしていく。
その階級特権(政治)が大層面倒なのだ。
パーソナルカラー許可は、ザビ家認証の裁量。
試作機をそのまま、専用機にする流れすらある。
話は逸れたけど。
技術者は勘違いしている生きモノであるかな。
軍の予算ではあるが、研究費なのだ。
未来への投資として、好き勝手している生態さ。
『キング・オブ・穀潰し』だね。
国民の血税で『贅沢三昧』をしている。
彼等にとって給与より、研究開発だからね。
結果、贅沢三昧の産物が溢れている。
小さな部品ひとつで、国民一人が一生暮らせる。
そんな馬鹿げた話がまかり通っているものさ。
故に、隠蔽する。
人気が無い場所に隠す習性。
もしくは、ゴミと共に廃棄処理行きかな。
アナハイムは、そこのところ民間企業だからか真面。
歴史資料館張りに、保管展示してたりする。
まあ、とびっきりのゴミだよ。
そのお蔭で、容易に現地調達できてるんだけどね。
今は、メイの審美眼による選定だのみだね。
ジオンの最初期開発機体に詳しくないのもある。
メイが怒りながらも、お宝発見に悦んでる。
素性の良い機体が出来上がるか楽しみだな。
□メイ日誌13(メイ視点)
お宝の山の光景に我を忘れました。
あの時に欲しかった部品が散乱してるよ。
欲を言えば、全てお持帰りしたいよ~~。
───っ!?
いけない、いけない───。
御父さんを救出するのが目的だったよ。
夢の光景に目的意識が霞んだのは、内緒。
使えそうな良好な部品の山から、選定です。
機体の原型があれば楽なのに。
都合よく落ちてたりしないよね?
彫像のようなフォルムの機体が複数ある。
胴体部分だけだけど。
これ、たぶんだけど、ブグな気がする。
『プロトタイプ・ザク』の前身。
ザクIの前の制式機だよ。
『MS-03 ヴァッフ』の改修機だったかな。
特務部隊に少数配備されただけだから。
かなりレアな機体だと思うよ。
型番検索してみたら、出てきたよ。
『YMS-04 ブグ』
私も実機に触れるのは初めて。
感動の瞬間だけど、惚けてる場合じゃないよ。
機体状況は良好。
他の部品は、ザク系が多いね~。
ブグ本体で、ザクとの複合型がベストかな。
高価な試作パーツを使える機会だよ。
そんなチャンスは、なかなか来ないよね?
なので、私は自重することを放棄したよ。
想うままに、思い付くままに。
ジョンが生暖かい視線で視てたことに気付かず。
私は頑張ってレストアしていた。
私と別行動していたジョンは、武器を漁っていた。
機体だけで勝てないからね。
武器を見つけるのが重要なのは解るけど。
ジョン~、一緒にレストアしよう?
私は、満面の笑みでジョンを呼び寄せた。
其処からは夢の時間に突入だったよ。
本当に楽しい一時。
ひとりで造るより、ふたりの方がいい。
以前は大人に混じって作業してたけど、こんな心地好さは無かったかな。
その頃は、熱意にまみれてたけど。
御父さんと一緒に、とか、そんな感じだった。
好きなヒトと一緒の共同作業は別格だね。
自重しなくなった技術者ふたりがここに居ました。
高価過ぎた部品に目が眩んだのです。
この子達が活躍したいとお願いしてたよ。
なので、ふんだんに使いました。
その甲斐あってか、ザクII並の水準で完成。
一時的に出力最高にする機能を添えて。
臨界機動する諸刃のつるぎ。
代償は、内燃機関などの部品状態悪化かな。
急造品質だから、自壊する危険性。
操縦士は、ジョンになりました。
メイだと怖いとジョンは宣う。
ジョンの方がパイロット適性が高いけど。
理由は、メイを戦場に立たせたくないっぽい。
いつか横に並んで、有事でも隣に居たいよ。
御父さんを確実に救うために我慢。
完成した機体を使って、武器漁りを再開。
ジョンが開発したパワード・パックの雛型を発見。
これも高価な部品で試作したのか……。
ジョンが言うには、仕様よりだいぶ高品質で重い。
戦艦とかで使う骨格に見えると。
採算度外視とかいう基準じゃないね。
もしかしたら、艦船でパワード・パック使用を模索?
あり得無いとは思いたいけど。
タガが外れた常識外の技術者なら転用しそう。
乾いた笑いをするふたり。
身震いしたので、この先の談話は止めたよ。
再び、武器漁りをしたよ。
試作重火器とか、放置したら危ないと思う。
いろんなビックリ兵器とかある。
あれも欲しい、これも欲しい。
ジョンも心底惜しんでいたけど、諦めてた。
これから戦闘しに行くのに。
信頼感がまるでない武装は死蔵だと。
投げつければ、鈍器にはなるかもだけど。
重火器を近接武装代替にしたら、暴発三昧。
自刃する行為とか馬鹿げてるし。
ジョンの安全性が最優先だよ。
現行武器に近しい武装をありったけ積みました。
『芝刈りに行く』お爺さんに見えるとジョンが言ってた。
射程距離ギリギリで先制したら、いいと思うよ。
武器重量が軽くなれば、軽快な動きになるよ。
ジョンなら出来るよと太鼓判を押してみた。
コロポックルを貨物便近くに係留。
係留させたのは『突貫くん』だけ。
メイも随行するので、MK-2は私が操縦。
ジョンを落とさないように、大切に抱えて移動。
引き返して、ブグ改ザク複合型を取りに戻ったよ。
強襲する時間帯は、夜明け前。
眠気が強い時間帯かな。
こっそりとメイが施設に麻酔ガス注入するんだけど。
陽動と殲滅を兼ねて、ジョンは矢面に立つ。
二段構えの作戦を確認して、私達は仮眠をとった。
救出作戦は、明日に持ち越ししたよ。
メイと共にレストアした産廃産のブグ改。
一夜限りの舞台にて、機体は踊り出る。
夢焦がれた戦場に。
約束されたその場所へと急行していく。
ジョンは焦る。
想定以上に、じゃじゃ馬なんだけど!?