ジョブ・ジョンの野望   作:休眠シート

21 / 27
ジョンの独自解説が光る。
機体開発による弊害と考察を────。

メイは造る。
部品たちの声を聞き届けて。



★UC0078/08 ジョンはメイと共にレストアする

■ジョン日誌14

予想どおり高価な試作パーツの山(ゴミ)だ。

試作機とは、採算度外視で造るモノ。

その時の最高能力を仮定した仕様だからね。

予算を食い潰す試算で、無駄に高価な部品を使用。

耐久性が高くて、演算性能が速くて。

ひとつひとつが芸術品という極み。

試作機が高価という謂れ因縁の元凶だろう。

 

そこから性能と価格を削ぎ落として、制式機に。

大量生産を優先させるコストに調整。

マイナーダウンという作業に当たる。

ガンダムのマイナーダウンが、ジムという理屈さ。

連邦だと、マイナーダウン感覚では無いかな。

ガンダム → 陸戦型ガンダム → 陸戦型ジム

という、稀有な成功例はあるけどね。

上層部の思惑から外れたから、更に劣化してジムに。

コストダウンによる劣化鋳造品だったりする。

 

連邦の流れだと──。

試作機 → 実証機 → 隊長機 → 汎用機 → 専用機

連邦のエース機体が汎用機並な悪因だね。

その状態から、出力を弄ってピーキーに。

専用機というより、出力調整による差異かな。

武装強化とかしてるのは個人裁量だし。

 

ジオンは、その構図が真逆ではある。

試作機 → 汎用機 → 隊長機 → 専用機 → 実証機

汎用機にする過程の落差が酷い。

最低基準から底上げで、高級機にしていく。

その階級特権(政治)が大層面倒なのだ。

パーソナルカラー許可は、ザビ家認証の裁量。

試作機をそのまま、専用機にする流れすらある。

 

 

話は逸れたけど。

技術者は勘違いしている生きモノであるかな。

軍の予算ではあるが、研究費なのだ。

未来への投資として、好き勝手している生態さ。

『キング・オブ・穀潰し』だね。

国民の血税で『贅沢三昧』をしている。

彼等にとって給与より、研究開発だからね。

 

結果、贅沢三昧の産物が溢れている。

小さな部品ひとつで、国民一人が一生暮らせる。

そんな馬鹿げた話がまかり通っているものさ。

故に、隠蔽する。

人気が無い場所に隠す習性。

もしくは、ゴミと共に廃棄処理行きかな。

 

アナハイムは、そこのところ民間企業だからか真面。

歴史資料館張りに、保管展示してたりする。

 

 

まあ、とびっきりのゴミだよ。

そのお蔭で、容易に現地調達できてるんだけどね。

今は、メイの審美眼による選定だのみだね。

ジオンの最初期開発機体に詳しくないのもある。

 

メイが怒りながらも、お宝発見に悦んでる。

素性の良い機体が出来上がるか楽しみだな。

 

 

 

 

□メイ日誌13(メイ視点)

お宝の山の光景に我を忘れました。

あの時に欲しかった部品が散乱してるよ。

欲を言えば、全てお持帰りしたいよ~~。

 

───っ!?

 

いけない、いけない───。

御父さんを救出するのが目的だったよ。

夢の光景に目的意識が霞んだのは、内緒。

 

 

使えそうな良好な部品の山から、選定です。

機体の原型があれば楽なのに。

都合よく落ちてたりしないよね?

 

彫像のようなフォルムの機体が複数ある。

胴体部分だけだけど。

これ、たぶんだけど、ブグな気がする。

 

『プロトタイプ・ザク』の前身。

ザクIの前の制式機だよ。

『MS-03 ヴァッフ』の改修機だったかな。

特務部隊に少数配備されただけだから。

かなりレアな機体だと思うよ。

 

型番検索してみたら、出てきたよ。

『YMS-04 ブグ』

私も実機に触れるのは初めて。

感動の瞬間だけど、惚けてる場合じゃないよ。

 

機体状況は良好。

他の部品は、ザク系が多いね~。

 

ブグ本体で、ザクとの複合型がベストかな。

高価な試作パーツを使える機会だよ。

そんなチャンスは、なかなか来ないよね?

 

なので、私は自重することを放棄したよ。

 

 

想うままに、思い付くままに。

ジョンが生暖かい視線で視てたことに気付かず。

私は頑張ってレストアしていた。

 

 

私と別行動していたジョンは、武器を漁っていた。

機体だけで勝てないからね。

武器を見つけるのが重要なのは解るけど。

ジョン~、一緒にレストアしよう?

 

 

私は、満面の笑みでジョンを呼び寄せた。

其処からは夢の時間に突入だったよ。

 

本当に楽しい一時。

 

ひとりで造るより、ふたりの方がいい。

以前は大人に混じって作業してたけど、こんな心地好さは無かったかな。

その頃は、熱意にまみれてたけど。

御父さんと一緒に、とか、そんな感じだった。

 

好きなヒトと一緒の共同作業は別格だね。

 

 

自重しなくなった技術者ふたりがここに居ました。

高価過ぎた部品に目が眩んだのです。

この子達が活躍したいとお願いしてたよ。

なので、ふんだんに使いました。

その甲斐あってか、ザクII並の水準で完成。

 

一時的に出力最高にする機能を添えて。

臨界機動する諸刃のつるぎ。

代償は、内燃機関などの部品状態悪化かな。

急造品質だから、自壊する危険性。

 

操縦士は、ジョンになりました。

メイだと怖いとジョンは宣う。

ジョンの方がパイロット適性が高いけど。

理由は、メイを戦場に立たせたくないっぽい。

いつか横に並んで、有事でも隣に居たいよ。

 

御父さんを確実に救うために我慢。

 

完成した機体を使って、武器漁りを再開。

ジョンが開発したパワード・パックの雛型を発見。

これも高価な部品で試作したのか……。

 

ジョンが言うには、仕様よりだいぶ高品質で重い。

戦艦とかで使う骨格に見えると。

採算度外視とかいう基準じゃないね。

もしかしたら、艦船でパワード・パック使用を模索?

あり得無いとは思いたいけど。

タガが外れた常識外の技術者なら転用しそう。

 

乾いた笑いをするふたり。

身震いしたので、この先の談話は止めたよ。

 

再び、武器漁りをしたよ。

試作重火器とか、放置したら危ないと思う。

いろんなビックリ兵器とかある。

あれも欲しい、これも欲しい。

 

ジョンも心底惜しんでいたけど、諦めてた。

これから戦闘しに行くのに。

信頼感がまるでない武装は死蔵だと。

投げつければ、鈍器にはなるかもだけど。

重火器を近接武装代替にしたら、暴発三昧。

自刃する行為とか馬鹿げてるし。

ジョンの安全性が最優先だよ。

 

現行武器に近しい武装をありったけ積みました。

『芝刈りに行く』お爺さんに見えるとジョンが言ってた。

射程距離ギリギリで先制したら、いいと思うよ。

武器重量が軽くなれば、軽快な動きになるよ。

ジョンなら出来るよと太鼓判を押してみた。

 

コロポックルを貨物便近くに係留。

係留させたのは『突貫くん』だけ。

メイも随行するので、MK-2は私が操縦。

ジョンを落とさないように、大切に抱えて移動。

引き返して、ブグ改ザク複合型を取りに戻ったよ。

 

 

強襲する時間帯は、夜明け前。

眠気が強い時間帯かな。

こっそりとメイが施設に麻酔ガス注入するんだけど。

陽動と殲滅を兼ねて、ジョンは矢面に立つ。

二段構えの作戦を確認して、私達は仮眠をとった。

 

救出作戦は、明日に持ち越ししたよ。

 

 

 

 




メイと共にレストアした産廃産のブグ改。
一夜限りの舞台にて、機体は踊り出る。
夢焦がれた戦場に。
約束されたその場所へと急行していく。

ジョンは焦る。
想定以上に、じゃじゃ馬なんだけど!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。