軟禁されている御父さんを発見。
監獄から出ては驚く。
ジョンの惨状を────。
■ジョン日誌16
UC0078/08
サイド3の片隅に位置するとある監獄。
人気を感じさせぬ程の静けさ。
ジョンが、駐屯部隊を物理的に沈黙させ。
メイが、麻酔ガス注入で施設の人員を鎮静化。
御父さん救出作戦の経過は順調であった。
ブグは、ズタボロだった───。
避けられるはずの弾道を受けていた。
戦車に備えられている機銃程度は痛くない。
表面装甲を甲高く戦慄いてのかすり傷。
無数に浴びさせられてた弾痕が痛ましい。
致命傷になるMSの銃撃だけが脅威であった。
駐屯部隊は、暴徒鎮圧の対人仕様にある。
戦闘車両の戦車と言っても『軽戦車』が主体だ。
重戦車やマゼラ・アタックは配備されていない。
集中放火を受けても、損害は軽微。
表面装甲を蜂の巣にされるだけという見積りだった。
なのに、この惨状はどうしたものか。
ジオンの底力という補正力か。
死物狂いの無慈悲の果ての産物か。
そう考えるのは早計である。
これは、フレンドリーファイア前提の交戦である。
全ての照準に互いが全力射撃をしただけである。
無差別乱射乱撃の賜物だろう。
精密射撃による弾道は先読みしやすい。
避けられる機動力があれば、当たらないのだ。
ジョンの戦い方は、悪手である。
致命的な攻撃だけ避けて一掃するという目的。
それを優先させただけの結果である。
引き連れて釣り上げ、1部隊ごとに対応が面倒。
そのような思考を元に展開されたのだ。
ジョンは、監獄に移動中のブグに対して思いもよらぬ『じゃじゃ馬』さに辟易していた。
機動推進ピッチのアップダウンの癖が強すぎた。
エース気質並のピーキーさに手を焼いた。
故に、移動力を棄てたのである。
避けられる性能がありながら、トリガーに集中したいがために。
ブグは、大層嘆いていた───。
メイの謹製OSが積まれており、ご機嫌であった。
たかだか戦車ごときの弾道で我が身を晒す。
敢えて受けて立つという愚かさに、ご立腹である。
腹立たしかったので、搭乗者にも罰を与えた。
機械の意志という理不尽さは、常識を揺るがす。
致命的とならない攻撃でも、当たり方次第。
角度が悪ければ破損し、内部構造が露出。
其処に集中放火を受ければ、やがては壊れる。
その繰り返しで、自壊したのだ。
ジョンは確かに、MSからの攻撃は避けた。
戦車からの銃撃は無視していた。
装甲で跳ね返せると慢心して、避けなかった。
搭乗者の意識に呼応して、愛機が限界を超える『美談』はよくよく聴かされるモノだが。
搭乗者の理不尽に対して、機体が反抗するのは…なかなかに無い珍事(惨状)と云える。
この惨状を見たメイは、ジョンを手酷く怒り倒し。
反面に、ブグを大層褒め称えていた結末につながる。
ブグは、してやったり…と、ご満悦であった。
そんなブグではあったが、この後に自爆させられた。
因果応報である────。
カーウィン卿の救出後に、ジョンはメイと合流。
そそくさと、監獄から離脱した。
ミッションコンプリートである。
そして、一時的に別れた。
自分たちの痕跡となる後始末のお掃除だった。
メイは、御父さんとの再会と説明があるだろう。
ジョンは、ブグを処理してくると言い残して消える。
ジョンは、当初から『クルスト博士への襲撃』を計画してきたのである。
機体が無事なら、ブグは何処かに隠して帰り。
博士が居る施設に、時限爆弾を設置して爆破する心積りであった。
ブグは、想定以上に損壊していた。
それならば、MSに爆弾を積載して道連れにした方が得策である。
ジョン的には、ブグに有終の美を贈ったに過ぎない。
ブグは、儚く昇天する。
次の機会が貰えるなら、彼の搭乗者に罰を与えてやると誓いながら。
機械とはいえ、魂はあるものなのだろう。
善意を与えれば呼応し、守護霊になり。
悪意を与えれば反旗し、悪霊になる。
ジョンは、フラグをコツコツ積み上げた。
最良の手段と信じたルートを邁進する。
その側面で、地雷ルートの恩恵は憑いて廻っていた。
□メイ日誌14(メイ視点)
UC0078/08
ジョンがやり過ぎて、駐屯部隊と全面戦争に。
ブグの性能的には、大丈夫だとは思う。
距離を空けて、機動力を生かしながら戦えば。
ジョンの腕なら、無傷とはいかなくても…軽微?
施設内に残っていた部隊も、ジョンが引き連れて行ったみたい。
藻抜けの空になってる状況かな。
危険度はかなり下がったところで、メイの出番。
施設内に侵入して、麻酔ガスをダクトに噴射。
程度がわからないから、使いきったよ。
施設内のコンピューター機器に接続し、ハッキング。
御父さんの居場所を突き止めた。
独房の映像を見て、涙腺が緩み零れた。
(よかった…疲弊してそうだけど、五体無事そう)
拷問されてたのかもしれないけど、生きてる。
ようやく再会できたのだ。
あの頃の現状のままだったら、御父さんは獄死させられていた。
いろいろと会話したいけど、連れて帰らなきゃ。
麻酔ガスで御父さんも気絶している。
起こすのは、隔離した場所でね。
込み上げる気持ちを抑えて、端的に行動したよ。
他にも捕まっている人たちが大勢居たよ。
政治犯なのかな?
普通の民間人が多い気がする。
出していいか解らないけど、鍵は全て解除した。
運が良ければ、貴方たちも逃亡してね。
御父さんだけが消えたら、上層部に察知される。
特定人物だけ消えるのは悪手だと。
何人か居なくなる痕跡を残すのが大事と、ジョンが言っていたのを思い出す。
捕まっている人たちを利用するようで、心がチクチクするよ。
申し訳なさはあるけど、ごめんなさい。
私には、御父さんを助けることしか出来ない。
貴方たち個人に敵意は無いんだよ。
管理室や司令塔などをそこかしこ傷付けた。
如何にも、複数人が侵入した風の偽装。
細々とした工作を終えて、御父さんを大きめの布地でくるみあげ…施設内から脱出した。
外で待機しているであろうジョンと合流するために。
無事に、合流したよ───…………。
ブ、ブグが、居た…けどさ。
なんで、そんなにズタズタになってるの?
ジョンは、無事みたいだけど…ブグが半壊だよ。
呆れて言葉がうまく出てこない。
ジョンは、無事だからいいんだけどね。
いいんだけど、何かは…言いたい。
怒り捲って、正座させてのお説教コースだよね。
取り敢えずは、此処から遠退くことが先決。
情事は、人目が居ないところでする慎ましさは忘れてないよ。
人気が居ない軍部が来ない場所まで逃亡。
というかブグが居る時点で、商業施設に行けない。
御父さんの介抱もあるのです。
親子の会話を水入らずとの配慮で、ジョンが消える。
半壊したブグの後始末らしい。
ブグは、連れて帰れないから割りきろう。
ブグの勇姿を心に刻む。
御父さんを助けてくれたことに感謝を捧げたよ。
「…………………うっ?」
「御父さん、起きたんだね。久しぶりだよ御父さん」
「メイ……!?」
「だいじょうぶだよ。御父さんはたすかったの」
「なんて無茶苦茶なことを…助けられた身の上で言えたものではないが、どうやって救出したんだい?」
「詳しくは今は話さないけど、地球に行った後でお話します。私だけで出来たことじゃないの」
「それは、そうだな。誰が助力してくれたんだい?」
「私の……大事なひと…だよ」
「──────お前、男が出来たのか!?」
「私も13歳です。子供ではありません(怒)」
「いや、いやいやいやいや…子供だろう?」
「今回の功労者が彼(ジョン)だよ御父さん。命懸けで、MS戦闘したんだから!」
「………───なっ? 何と…いう…こと…だ……娘に、男の影が居たのを知らなかったとわ!」
「御父さんも知ってるひとだよ。御父さんが、直接知らないだけだから。交際歴は8年なんだから!」
「────8年? メイが5歳の時からとか、どういう経緯だ……た、頼む、り、理解………でき…る…ように、噛み砕いて…伝えてくれないか?」
男の影が微塵も感じなかった愛娘に、彼という衝撃発言。
どういう経緯を経たのか、男が出来ていた。
かなり信頼されている実績あり。
しかも、8年という長い交際の積み重ね。
いや、5歳から付き合うとは…相手はロリコンか?
この信頼しきってる間柄は相当なものだが。
私を助けるために、MS戦闘をしでかす豪胆さ。
メイが無傷で居る配慮は、信用に値する。
しかし、見知らぬ男に…愛娘を奪われる屈辱。
私は思考を巡らせていた────。
愛娘は、相当な入込みようである。
別れさせた場合…いや、離縁されるのは私の方か?
親子の絆より、男女の絆と相場は決まっている。
血涙を流すかのような断腸の思いで、娘に語る。
「話をしようじゃないかメイ…彼との馴れ初めを」
「したいけどね。此処は敵地だよ御父さん。地球が私の居場所なんだよ。私も軟禁されていたんだから、助けに来てくれたのも…ジョンなんだから!」
彼…と、おぼしき相手の名前は『ジョン』らしい。
犬の名前のようだな。
愛犬だったら良かったのに。
彼の姿を直接見たのは、宇宙港の前だった。
金髪もじゃの優男である。
年齢は16歳。
地球育ちで、連邦軍所属の士官候補生らしい。
メイの専属技術顧問として、ジオニックに招聘。
娘が、ゴリ押しで呼んでいた…あの彼か。
父娘共々、窮地から救われた恩義は高いだろう。
理性的な交際らしく、純愛路線は頼もしい。
愛娘によると、一線は超えてないらしいが。
まぁ…何処ぞの馬の骨に奪われるよりかは、よほど優良物件だと感じる。
義理の息子として認定するのは、吝かでも無い。
私は、彼が設立した私設軍の技術顧問になった。
聞いて見たものも、当面の問題はかなりある。
障害は、そびえ立つほどの山積みと云える。
私設軍と云えるほどの規模が無い。
物資は、到底足りてない。
部品は、鹵獲からの分解で賄う。
人手も、私と娘だけ。
彼も含めて、創設メンバーが3人という少なさ。
今後、資材・人材は拡充するらしいが。
生産工場は無いが、町工場的な規模。
始まりの場所としては、相応しいのだろう。
ジオン愛国者という肩書きは棄てた。
連邦に加担する気は無い。
ここから始まる反撃の烽火に加担する覚悟は出来た。
────でも、だね。
いくら匿うための措置と、謂れてもだ。
度が過ぎる行為では…なかったかな。
助けられた身の上は、弁えているつもりだ。
安全策なのは、だいたい解るつもりだ。
宇宙港入口に入れたのは、彼と娘だけだった。
私は、貨物便として…箱詰めにされたのだ。
ジオンから出国するための『私の偽造パスポート』を作成して無かった…と、聞いた。
偽造は、直前に用意するのが厳しいのは解る。
その彼が、作業用MWを宇宙適応に改造したと言う。
仮に事故が起き、宇宙に放り出されたとしても…生きられる対処とは素晴らしい限りだな。
格段の配慮とは、頼もしくも思う────。
「不憫だとは思うのですが、安全策なので。大人しく箱詰めにされてください…御父さん。水と食料は10日分はあります。酸素ボンベも多めに、操縦席周りに積載してありますから」
「御父さん、大人しくしてね。騒いで密航がバレたら不味いんだよ。確実性重視なのは解るよね?」
と、貨物倉庫の前で語られた言葉に耳を疑う。
娘が、それを容認していたことも驚きだった。
宇宙服と携帯食料を渡された時は、唖然とした。
安全圏に入るまでは、作業用MW内の操縦席で過ごすようにと厳命されたのだ。
だとしても、ジオン圏内からの地球への『直送便』は過酷ではなかろうか。
コロニー経由では、行けなかったのかい?
貨物便で、地球に配送させるとか『鬼』だ。
娘を密航させた手段は使えなかったのかね!?
安全性が維持されてても、生きた心地はしなかった。
私が暗がりの中を独りで過ごしている最中に、娘は彼と御執心の睦愛。
私は、そんな彼への羨ましさで嫉妬に燃えていた。
その熱が、恐怖を忘れさせたのだが。
獄中生活者に対する仕打ちではなかったぞ。
この仕打ちは、絶対に忘れないからな(哀)。
愛娘との安易な結婚式は、挙げさせないぞぉ!!
機械にも、五分の魂。
メイは機械(部品)に好かれている説。
メイの期待に応えて、性能は上がる。
ジョンのためではなく、メイのために。
御父さんから公認された。
ただ、結婚式は遠ざかった気がするね。