ジョブ・ジョンの野望   作:休眠シート

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sidestory:メイ

『嫁候補』限定です。


彼女の想いとは─────。


第1部 閑話
☆UC0070~UC0078 メイの宝箱


メイは、14歳。

今までのジョンとの記録を纏めています。

劇的なラブ・ストーリー。

的確過ぎた展開が、ね。

 

 

 

 

□UC0069(4歳)

私はネットを眺めてた。

どの学術サイトもつまらないよ。

在り来たりで、誰かしらの模倣とかそんなものばっかりでさ。

私はワクワク感に飢えていたんだ。

 

御父さんのお蔭で、仕事場には楽しさがいっぱいいっぱいで。

 

でも、私の渇きを満たすのは何か違う気がしたの。

ネットの底で一つの宝物を見つけた。

在りもしない怪しい技術論議な交流サイト。

 

私は御父さんの影響でその先端に居るわけで、生半可なサイトでは魅了されることなんてあり得ない。

だけども、そこは違ってたの。

サイトの管理者は、ユニーク過ぎる。

普通はそんなこと思いつかないのに、その発想力には心踊らされたんだ。

 

私は心底此処に魅了された。

 

相手が誰かはわからないけど。

交流を重ねていけば、本人に逢えるかも。

────そんな下心を秘めていた。

 

 

 

 

□UC0070(5歳)

サイト管理者の人とのメーリング交流が始まる。

私との対話が楽しいらしくて、お互いに仮名で呼びあっていた。

 

私も実名バレするのは、現時点では怖い。

管理者の人も匿名性を重視してるので、気さくに対応してくれていた。

 

いいよ。

 

この感覚はこそばゆいけども、優しい感じがよい。

私を子供扱いしないのも嬉しい。

相手の性別も不明なのに、妄想が進む。

 

何年か先にこの人が相手なら楽しい人生が確約されるんじゃないかな。

 

まだ漠然としてて、好きだけど。

恋とかじゃないと思うよ。

そもそも恋とか、よくわからないのだけどね。

 

 

 

 

□UC0071(6歳)

管理者の人との交流が続いていた。

私にしては、かなり固執してるのだと思うよ。

この人が欲しいと思い始めている。

本質が見え隠れしてるけど、私を試してる素振りが生意気かな。

 

こう見えてもメイちゃんは博識なんだというのを精一杯見せつけてきた。

その反応を重ねていくうちに、管理者の人はかなり賢いことにも気付かされた。

 

何か巧みにミスリードしていて、此方の対処法を観ている感じだった。

ちょっとの怖さと引き換えに、この駆け引きに熱意が隠れている。

隠れていると感じてるのは、私なりの感性だけどね。

管理者の人も、私に御執心してるのだと想うと、なんか心地好い気がする。

 

此が独占欲だと気付くのは数年先だったけど。

この時点で、恋に落ちてたのだと想う。

 

 

 

 

□UC0072(7歳)

お互いの信頼感が募り、待望の音声交流が始まる。

管理者の人は男の子だったよ。

年齢的に大差ないのがかなり嬉しい。

 

私の同類がここに居たんだと実感できたときには、思わず涙腺が緩んだ。

 

正直に言うけど、感動したの。

私の直感が正しかったことに対してね。

彼への慕情は物凄く高まったんだよ。

それと同時に、どうやって彼を攻略できるかも思案してたりする。

 

彼が在住してるのは地球圏という障害が。

私が在住してるのは、遠く離れたコロニー。

御父さんの仕事場は月の裏側なので、其処を基点に出来れば、もっと親密になれるのでは?

 

 

 

 

□UC0073(8歳)

彼を攻略するために必要な行動に出た。

御父さんにおねだりして、月の裏側にあるジオニック支社に社員登録して貰う。

あくまでも支社限定の見習いだったけどね。

 

子供だろうと実績さえあれば認めて貰えるんだよ。

本国勤務の方が給与はいいんだろうけど、私の狙いは彼を虜にさせること。

子供なり精一杯背伸びして、大人に混じって働いてみた。

 

働くと言っても研究してるだけなので、好き勝手してるのだけだったけど。

此が会社の利益になるのだそうだ。

 

彼を私個人のアドバイザーに勧誘している最中。

遠回しにお願いしてたけど、体よく断られてきた。

最終手段で、強引にオファーを出してみた。

 

 

 

 

□UC0074(9歳)

ふふふ。

交流の末にジョンに直接逢って、フォンブラウンでの工場見学的なデートも行けました。

ジョン本人は、想ってたよりも格好良かった。

普通に女の子にモテそうなのが気がかり。

現時点では、メイだけが知ってる優良物件な人材。

メイの大切なお友達。

 

アドバイザーもなんとか承諾を得られたのが大きいアドバンテージだよ。

これほどの逸材を身近な同世代の女の子が見過ごすのはあり得ない。

この良さに気付いたら、身近に居ないメイには対応しようがないよ。

 

困ったなあ。

 

会社の同僚にして、私専用の技術顧問(アドバイザー)。

大人なら、揺るがない状況にも進められるのに。

 

ジョンとは、親友以上恋人未満の扱いです。

妹ポジションにならないように、もっとメイを意識させたいなあ。

 

 

 

 

□UC0075(10歳)

正式にジョンがジオニックに社員登録したよ。

彼の存在は極秘事項。

的確なアドバイザーとして上層部の大人たちも認めている。

有益な人材として、ジオニックも本人の獲得を薦めてきた。

 

メイもそれは狙ってるよ。

ガードが堅くて、そう簡単にはことが運ばない。

 

年に4回の工場見学的なデートツアーが楽しい。

本当は普通にカップルがしてるデートもしたい。

普通に乙女なとこを知って欲しいけど。

ジョンが、メイのことを技術者フィルターで視てるので、追々シフトしていけたらなあ。

 

 

 

 

□UC0076(11歳)

武器庫と推進パックの一体化という企画書がジョンから届いた。

凄く画期的だよ。

ジョンからしたら、機体に汎用性を求める無理より、装備に汎用性を求める方が楽でしょと示唆された。

 

技術者なら、難解な問題を解決する方に意識が向く。

現場意識とか仕様に必要ないと思ってた。

必要なのは戦線が求める要望を満たすだけの接点。

ジョンは苦笑してた。

必要なのは真逆だよと。

開発者の思惑と現場の使用感は、その剥離の落差が酷いとも。

 

 

 

 

□UC0077(12歳)

ジョンが企画したザク改装計画が実用化された。

『パワード・パック』と呼ばれていて戦線の兵士から大人気と好評されてる。

更に改良して、手に武器を持たない状態でも、砲台として、武器庫の携帯武器を稼働する拡張機能を企画していると。

 

銃器は的確に敵を貫通出来ればいいので、態々手に抱いて射的する必要性がなかったりする。

なのに様式美に拘り過ぎて武器の本質を見落としてるとか本末転倒だと、ジョンは怒っていた。

 

うん。

メイにも理解できたよ。

ジオン本国の技術者たちって、何処か変なんだね。

 

 

『パワード・パック』は好評されてるけど、専用機の開発は絶えない。

政治的配慮で、領地進呈代替の報酬らしいね。

宇宙を分配されても、領域であって資源豊富な領土とは程遠い。

 

戦線では、専用機+パワード・パックでの強襲仕様が最強とか噂されてる。

軍需産業の貢献が高くて誉れ高いかな。

メイも、ジョンに負けないように開発を頑張ろう。

 

 

 

 

□UC0078(13歳)

御父さんがテロリストとか嘘だよ。

メイが御父さんの部屋を見た時に何もおかしいデータは無かったのに、公安の人がその痕跡を見つけたとか何をしたの?

 

何度も嘆願書を送ったのに聞き届けて貰えなかった。

ジオンに尽くしたのに、どうしてこんな酷い仕打ちをしてくるの?

 

 

 

ザク開発技術者だったのに御父さん諸ともに私達は拒絶されました。

今のジオンに私の居場所は無かった。

お払い箱どころか、前線勤務で否応なく従軍させられるのだろうか。

謂われなき罪に怯え、軍部から恫喝される。

ジオニックの同僚だった大人たちは、メイと目線を合わせようとさえしない。

 

 

そんな暗闇から救い上げてくれたのが、ジョンだ。

私の当初の予定では、ジョンをジオン国に移入させたかったけどね。

ジョンは、メイに地球圏亡命を薦めてきた。

 

連邦亡命とは言わなかったのは、驚きだったよ。

ジョンは、ジオンも連邦も同類らしかった。

どうしてそのように想ってるのかは、今のメイにはわからないけど、いつか話してくれるのだろうか。

 

メイには、ジョンが居る。

彼は、私と共に居てくれる道を示してきた。

軟禁状態のメイを亡命させるには、かなり厳しい。

普通に考えても無理難題のはずなのに、ジョンは迎えに行くと。

絶対にメイを手離さないと言ってくれた。

メイは泣いたよ。

ジョンに必要とされてることが嬉しくて。

これはきっと国境線すら超えた『愛』なのだとメイは深く理解した。

 

御父さんも一緒に亡命したかったけど。

御父さんが投獄されてる施設は、メイが軟禁されてる場所よりも警備が重い。

ジョンもそれが解ってるので、もっと強くなってから御父さんを救出して見せるとも言ってくれた。

 

行動は迅速に。

先ずはメイを亡命させて。

ジョン個人の施設で、私達謹製の私設軍を開発。

私達だけで暗躍できるだけの資材を蓄積。

ジョンは、ジオニックから得た資金で個人施設を建設していた。

 

なんて用意周到な段取り。

メイがジョンを欲したように。

ジョンもメイと共に歩ける道を模索していたのだろうか。

 

軍部は信用ならない。

戦争国家の企業は信頼に値しない。

ジョンはそれをメイに伝えてきた。

 

 

 

そうだね。

メイは今までの環境が良すぎたんだと思うよ。

幸せな環境。

子供が認められるような環境だったと、誤魔化されてきただけのお話。

彼等が欲しかったのは、戦争を優位に導ける玩具。

誰が造ったとかどうでもよくて、都合のよい技術者だけを軍部が手厚く保護。

今となっては、軍部は技術者を飼殺しにしてるのが理解できるよ。

 

 

私達が此から戦う相手は、蠱惑で虚悪な大人たちの世界。

ジオンとか連邦とかで区切ることは無い。

 

メイは、ジョンの唯一無二の共犯者になった。

ある意味、終生の伴侶を得たとも言う。

祝福された純白の結婚生活を送れずとも、血と硝煙に彩られた世界で共に生きていけるよ。

 

そんな悲壮なメイの覚悟に驚いたジョンは、私達だけの結婚を告げてきた。

本当の結婚式は戦争終焉の先でしたいと。

啄むようなバード・キッス。

子供らしい口づけ。

私はジョンに飛び付いて強く抱擁していた。

誤魔化されてる気もするけど、超えなくちゃいけない女性の影はメイが踏破しなくちゃいけない。

 

決死の行動でメイを亡命させてるのだから、軍配はメイにあるのは明白。

後は周囲に認識させて、私達の間に隙は無いことを浸透させておかないと。

 

 

 

 

『メイ=カーウィン』の名前はしばらく封印だよ。

 

『メイリィ=クラス』が地球圏での私の名前。

 

愛称で『メイ』と呼ばれてるとこじつけてるから。

ジョンにメイと呼ばれても不審がられることは無い。

 

髪型の結い方は変えた。

おさげは楽だったから好きだったけどね。

 

ジョンに女の子を意識させる結い方と、周囲の獣(モブ)にメイがジョンの相方だと周知させるためにも。




メイは、ジョンの『嫁』です。

純愛路線です。

御父さんは救済しますよ。
私設軍の技術顧問に就任予定です。

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