ジョブ・ジョンの野望   作:休眠シート

27 / 27
sidestory:ジオニック支社


『ザク改装計画の余波』



ジョンへの「還元」が技術だけだと?
災難も「還元」されるフラグ。


※UC0077 ジオニック支社緊急会議

メイ嬢からもたらされた企画草案を見て震えた。

この企画は、ジオニック社に衝撃を与えていた。

企画内容そのものにではなく、その先の転用を見込んだ社独自の見積りである。

 

直接の手柄は発案者の彼にあるが、その先は社に莫大な利益を貢献してくれることだろう。

 

という訳で、緊急会議で幹部会召集!

 

 

 

「部長、緊急の要件ってなんです?」

 

「定例会議まで待てなかったんですか。面倒くさ」

 

「うちらは設計してるんで、早く帰りたいです」

 

 

「諸君、緊急会議に呼び出された態度とは思えんな。ことは、緊迫し急を要するからの緊急会議だぞ?」

 

 

「言葉の揚げ足取りとか要らないっす。要件は?」

 

「僕たちの時間を減らすとか鬼畜ですね部長」

 

 

こんな奴らが我社の幹部とは呆れる。

技術者とはいえ横柄だな。

社会性に欠ける人材ばかりは考えものかも知れん。

 

 

「例の彼からの企画だ。今回のは凄いぞ」

 

「今回もでしょ?」

 

「あの娘の専用技術顧問とか肩書き、うちらにとっては、ありがた迷惑ですよ。大人の尊厳打ち砕くのが目的なんすかね。部下のやる気を奪うのが、部長のお仕事なんすか?」

 

「僻むくらいなら、良い企画を出したまえ。通るかはさておき、査定の点数は稼げるぞ?」

 

「通らない企画を出す意味あるんすか?」

 

「レポート出すくらいなら、無限演算してた方が落ち着くし、暇な奴らのお仕事でしょ…そんなの」

 

 

向上心のない奴らめ。それでも幹部か?

手頃な役職に就いてから、日和見で弛んでないか。

滅私奉公が社員の義務であろうに───。

益体のない問答ばかり並べおって。

 

 

「まあ、聞け諸君。今回の企画は、携帯武器を武器庫にまとめるコンテナ装置の提供。その専用パックの開発だ。それを行うにあたり、部品の共通化を図る」

 

 

「俺の最強装備だぜ~な内容は、本気で採用するんですかその中身で。子供の発想に見えますが?」

 

「まあ、聞け諸君。武器庫コンテナと推進パックの一体化の企画だ。その上で装備武装は、携帯せずとも各自射撃可能な機能を添える。部品統一化は、その武装のセンサートリガー機器を付けるためだと記載されている」

 

 

「部長の説明がおかしい件について──」

 

「前述と後述の差異が酷いですよ。それなら、一考の価値はあるかと。規格部品統一化は、八洲の連中が許容するかでしょう。八洲以外から買うなら、統一化する意味あるんすか?」

 

「八洲以外をディスるな。零細企業も良いモノ造れるんだぞ?」

 

 

「それは否定しませんが、大手が認証受諾しないと中小は従いませんよ部長。統一化による整備向上は、全般的に受けはよくなるかと」

 

「概ね好評なんだな諸君。性根腐れて、反対するかと思っていたら存外まともだな」

 

 

「貶してるように聞こえますよ。どうせ乗り気前提なのに、個人否定しても無意味です」

 

「ほ~」

 

 

「で、これは前置きなんすよね?」

 

「ほ~~」

 

 

「メールで報告しなかった理由が、此処から先の話ですよね。わざわざ召集したんだし」

 

 

不貞腐れてる口調とは裏腹に、物事の核心を見抜いてるとは。

流石は、技術者という業かな。

付き合いが長いからか、先の展開が読めてるのかも知れんがな。

 

 

「よく解ってるじゃないか、諸君」

 

 

「狸と狐の化かし合いは要らないっす。部長の悪巧みは、前置き長いっすよ~」

 

「企画仕様は、MSサイズだな。我社が先行くは、艦船における転用だ。補給艦船などにも転用が効く外部増加武装は、随分と魅力的に見えるだろう?」

 

「確かに魅力的ですが、MSサイズでの検証が前提ですよ。その上で、サイズアップを図らないと機能不全に陥りますね」

 

「ジオンは、MS主流の流れになるのに冒涜的ですね部長。採算は採れるんですか?」

 

「採算が採れるかどうかは、諸君の魔改造次第と言えるな。好き勝手出来る機会を諸君がみすみす手放すとでも言うのかな?」

 

「底意地悪いですよ部長。子供の玩具を取り上げて、その功績を盗み取るとか悪い人だ」

 

「嬉々として悦び溢れてる顔で言う台詞かね?」

 

 

「艦船の砲塔をMSも使用可能とか、真逆の発想もありでしょう。問題は、そのジェネレーターの小型化に尽きますが。実弾兵器での試作を前提にして、実績を創るべきかと。予算を軍から徴収するのも試算しないと」

 

 

 

ジョンの思い付きは、大番狂わせを仕込んでしまったと未だに気付けていない。

ジョンへの「還元」はされるのだろうが、技術応用で刺激された大人は、その先を見据えている。

 

大人たちの持つ願望の先は、子供のそれよりも現実的であり、応用も転用も並行して模索する。

一の効果で、十の効果を得る。

十の効果は、百の効果という膨らみ方だ。

 

スキウレ砲への開発が前倒しになり。

「IGLOO」での試作兵器郡が、陽の目を見る確率が高まっていく。

そのルートの顛末は、史実よりも連邦の疲弊が高くなるというシナリオが加味される。

 

 

 

「砲塔を着脱式にするんですよ。推進装置と一体化してれば、MS兼用の支援兵器として大幅な戦力向上が見込めるでしょう」

 

「ビーム兵器のペイロードは、艦船のジェネレーター依存になりますが。ビームCAP技術が低くても、多角的運用が見込めるなら、要塞や大型戦艦への有効打にうってつけですね」

 

「戦術核兵器よりも、よほど安上がりです。核兵器は威力こそ高いですが、製造コストが高く付きます。その分の核資源を別途使用出来るなら、他開発計画進展に大きく響くものかと」

 

 

 

使い捨ての核ミサイルより、再度使える核兵器だな。

艦船開発に廻すにしろ、早々に地球を占領しなければ、現時点での核武装の増産は見込めない。

要塞占拠や宇宙艦隊に核兵器を使うのはよいが、地球に向けて使用するのは馬鹿げている。

 

連邦を追い出した後は、現地に移住するのだろう。

ジオンの故郷になるのだからな。

軍は、その先々を見てるのか怪しいものだが。

戦局が優位に傾けば、悪手を使わんだろう。

 

 

「各自、開発計画を纏めて提出してくれ。MS支援兵器として確立させた後に、本計画は発動することになるだろう。本国の技術者贔屓から、総帥の目を醒まして差し上げようではないか!」

 

 

「わ~~部長が本気だ。ギラギラしてますね」

 

「録に予算の分配もしない本社を妬んでますね」

 

 

「諸君らも、境遇は同じだろう?」

 

 

 

冷遇されてるからこそ、此処に居るのだ。

割と有能な技術者たちだが、本国よりの技術者との論争に負けて、此処に飛ばされてきた。

謂わば、敗残者────。

 

 

「其処は否定しません」

 

「やる気を与える部長は、上司の鑑っすね」

 

 

「ふははははははははっ。諸君らも口角が上がっているな、ここは互いに笑いあうところだぞ?」

 

 

「それは部長に任せるっす。笑うにも体力が要るんすっよ。その体力は、企画に廻すっす」

 

「心まで卑下したくはないので、部長だけでどうぞ」

 

 

連れない奴らだ────。

 

私だけが、悪者扱いとは著しく気分を害した。

落ちがついたところで、此処に緊急会議は閉幕した。

会議は終わったが、これからが本題なのだ。

 

刺激された頭脳が導く開発計画は、より濃密だろう。

基礎技術研究とて、対比効果が上がらなければ効率は目に見えて悪い。

支社の技術者の活力にも影響している。

支社配属は所謂、左遷に程近い。

地球よりの研究開発という名目は聞こえはよいが、本国の技術者らよりも、総帥の覚えは悪い。

同じジオニック社員だろうと、功績の差は歴然としている。

 

本国連中の方が採用しやすいのだろう。

通信で対話出来るとはいえ、その技術を直接届けるには物理的時間がかかる。

輸送による時間的コストは重い。

 

月面にキシリア閣下は居るのだが、ジオン本国と考えを同じにしているとも言い難い。

 

 

 

 

 

何にせよ────。

 

何かが大きく動くのは、必然的となった。

予定調和とでも言うのであろうか。

 

ジョンの行動の余波は、静かに侵食している。

ジョンがそれを見てしまうのは、一年戦争の始まりの日になる。

 

 

史実の天秤は揺れ動く────。




ジオニック視点の思惑です。

大人の世界は、黒いですね───。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。