トリオン怪獣は2人居る 作:ぼっくん
界境防衛機関・・・通称ボーダーが創設された。
ほんの数ヶ月前、隣の三門市に大量の化け物が襲ってきた。犠牲者は1200人以上。現時点では半数近くが行方不明のままだ。きっと瓦礫の撤去などが進めば発見される人もいるだろうけど、存命は絶望的だろう。たとえあの日に生き延びていたとしても数ヶ月飲まず食わずなら生きていられるわけがない。
数ヶ月たった今でもテレビのニュースはその事ばっかりだ。近界民、ボーダー、その2つを延々と垂れ流している。そのニュースを食い入るように青い顔で見つめるのは双子の姉の千佳だ。怖いなら見なければいいのに。
「千尋・・・あの、あのね、わたし・・・」
「うん、なあに?」
「わたし、わたしこの近界民に今までずっと狙われてて」
「うんうん、それで?」
「こ、怖くて、誰も信じてくれなくて、お父さんもお母さんも兄さんも千尋も信じてくれないんじゃないかなって思ってて、言えなくて、私の妄想なんじゃないかなって」
「そうね、それから?」
「このニュース見て、本当にいたんだなって。わ、わたしがもっとちゃんとみんなに言ってたら、こんな大事にならなかったんじゃないかなって思ったら、怖いの・・・!」
「千佳、それは傲慢だよ」
「・・・え?」
千佳の言うことを信じなかったのは周りの人間だ。信じないという選択をしたのは千佳じゃない。信じなかったのはただの自己責任。千佳のせいではない。そもそも千佳の話を周りが信じたとして、誰もアレを止められはしない。近界民の侵攻なんて天災のようなものだ、分かっていたとして防ぎようがない。自分のせいだなんて思うこと自体間違っている。
呆然としている千佳にそういうと、千佳は納得したようで青い顔が少しだけましになっていた。最近の千佳は目の下に酷い隈を作っていたが、もしかしてそれを考えていて眠れなかったのだろうか・・・?
「千佳が気にすることじゃないよ」
「あ、ありがとう、千尋」
「まあ私も近界民に狙われてたけど、誰にも言わなかったし。千佳のせいっていうなら私のせいにもなるね」
「え・・・!?」
驚き顔の千佳を残して、家を出た。今日は学習塾に行く日なのだ。頭がいいからと軽い感じに中学受験を進められて、まだまだ先なのに塾通いが始まった。まあ、良い学校に進学して楽しく過ごせるなら御の字だろう。普通の公立と比べたら人間関係もラクかもしれない。ただの偏見だけど。進められたのは中高一貫のお嬢様校だし、高校受験がないのは魅力的だ。頑張ろう。