「....あぁ!負けた...燐子さん強いなぁ」
今は対戦系のネットゲームをして凛子さんとかと遊んでいる。
「次こそは...!」
ピンポーン
誰だ..いい所なのに。今日は姉さんも仕事で他県に行っているので僕が出るしかない。しかも今日の夜は僕一人だ...心配だけど姉さんも『イブちゃんと一緒に頑張って来る〜!』って張り切ってたから大丈夫だろう。
「....」
インターホンを覗いてみるとそこには日菜さんと紗夜さんが...なんの用だろうか?
「はぁ...仕方ないか」
僕はゲームをしていた燐子さんに予定が入った事を言いゲームを止めた。
僕達が住んでいるのはオートロック型のマンションなので、ロックを開けなきゃ入っては来れない...ぶっちゃけ居留守を使おうかとも考えたが後々面倒くさくなりそうなので今回はロックを開けた。
ピンポーン
「はいはい、急にどうしたんですか?」
「すみません..突然。でも彩さんがいないこのタイミングを逃す訳にはいかなかったんです。」
「姉さんがいない時に...?まぁ入ってください。飲み物は何がいいですか?」
「なんでも良いよ〜お姉ちゃんもいいよね?」
「えぇ」
部屋に入ってもらったは良いが...姉さんがいない時に話したい事。何だろうか?
「はい、すみませんお茶しかなかったです。それで話と言うのは?」
すると...紗夜さんは紙を取り出し、こちらに見せてきた。
「....まだこの人を探してたんですか?すいません、姉さんに聞いてなかったので協力は出来なそうです...」
その紙はコンビニでモカさんが見ていた昔の芸能人についての紙だった。
「うんうん、別に彩ちゃんには聞かなくていいの。だってこの人が誰か分かったんだもん」
「何が....言いたいんですか?」
多分...この2人は正解にたどり着いたんだろう。だからここに来た。僕に会いに来たんだろう。
「だってこの人の名前は...」
「丸山迅...迅くんの名前だったんだもん。」
「はぁ...たどり着つきましたか。僕に...髪の毛も黒にして、しかも子供の頃だからバレる事はないと思ったんですがね?」
失敗だ...あの時に無理矢理にでも話題を変えるべきだった。
自分としては今日で..いや、今年1の後悔をしていると。まだあちらには言いたい事があるようで、話の続きが始まった。
「私が日菜に聞いて調べてもらったんです。そしたら日菜の事務所に所属していた事が分かって...名前を知りました」
「....なるほど。確かにそれなら納得です。自分で言うのもあれですがなかなか有名でしたからね。資料があってもおかしくはありません」
当時、あの火事の日までは仕事の事をずっと考えるような生活を送っていた。
それなりに仕事を貰っていたし、知名度もあったので資料があっても仕方ない、そう思おう。
「この先の話を知ったのは昨日のことです。日菜があの後も、芸能人の丸山迅を調べいた時に、日菜が見つけたのは....」
更に、もう1枚の紙が出てくる。
「!」
この記事は...?やばいやばいやばいやばい。バレてしまう...僕の長年の嘘が...こんなくだらない記事がきっかけで?ありえない...そんなのしんじないぞ?!
その記事の見出しにはこんな事が書いてあった。
『丸山迅は本名ではない?!本当の名前は?』
「ねぇ...迅くん本当なの?」
日菜さんが聞いてきた...それを聞いた僕は...
「.......あはは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「そうですよ!僕の本当の名前は迅じゃあないですよ?!バイト先にも学校にも頭を下げましたよ!何度も何度もお願いして!迅と呼んで貰える所を探したんです!だから姉さんとも同じ学校に通えなかったし、バイト先にも出来なかったんですよ!」
もう限界だった...長年の嘘がバレた僕は何にも考えずに言葉を発して。全てを使い果たしたみたいに...力が抜けて下を向いている。
「どうしてそんな事を...」
「僕は..僕の名前は..迅なんかじゃない...学生書や保険証や履歴書...そんな物を見たり、書いたりする度にいつまでこんな嘘を続けるんだろうって思ってた..でも、でも!姉さんが昔の事を思い出して悲しむぐらいなら...紗夜さんも日菜さんも分かるでしょう?自分の兄弟が悲しむぐらいなら。自分が我慢して悲しまないなら..嘘なんて喜んでつきますよ...」
「....という事は彩ちゃんもこの事実を知らないんだよね」
「はい...姉さんも知りません」
部屋の中の空気が重い...僕のせいだろう。それはそうだ、こんな嘘をつく人間と関わっていたと思って。怒っているんだろう、また友人も誰もいない関係に戻るのだろう..
「やっぱり気持ち悪いですよね...こんな嘘をついてた人間は...すいません。今日は1人にして貰っていいですか?」
「でも...今の迅さんを1人にする訳には...!今日は丸山さんも帰って来ないのでしょう?だから...!」
「僕の名前は迅じゃないですよ、紗夜さん。僕の名前は...」
「丸山式って言うんです。迅は僕のお父さんが考えた名前の1つです...でも、やっぱり僕の事は迅って呼んでください...これからも姉さんには隠していくつもりなんで..」
「迅くん...彩ちゃんもこんな事望んでないよ...私だったらお姉ちゃんにそんな嘘をつかれたくはないもん...きっと彩ちゃんも」
「そうかもしれません..これは僕のエゴみたいなもんなんです。姉さんには悲しんでほしくない..紗夜さんならこの気持ち分かりませんか?」
「....そうかもしれません。それでも今は貴方のことが心配です、本当に大丈夫なんですか?」
ここまで心配してくれるなんて...2人は優しいんだな。
「ありがとうございます。でも、2人に迷惑をかける訳には...いか...ないので」
僕は立ち上がろうとしたが、目の前がボヤけ倒れこんでしまった。
さっきまでは元気にゲームしてたのになぁ...どうしてだろう?
「迅くん?迅....ん!大丈...?!」
「迅さん....じ...さ...」
意識が薄れていく..あぁ僕って案外弱いんだな...
そう思って僕は意識を手放した。
ふぅ...次回に続きますよー!