あの冬の日...僕は家のお手伝いとして、いつもどうり新聞をポストから取っていた。
「....?なんだろうこれ?」
そこには新聞と一緒に茶封筒が入っていた...滅多に届かないから送り主が気になったけど、送り主の名前の代わりに
『式くんへ』
と書いてあった。だから僕は自分に来た手紙だと思い、新聞をお父さんに渡した時に封筒の事は言わず、部屋に戻った。
「中に何が入ってるんだろう....」
ワクワクした気持ちで僕は封筒を開けた。そこには紙が入っていて..読むことにした。この後は仕事があるからなるべく早く読まなきゃ....
『はじめまして、こんにちは。丸山式くん...今から言うことはお父さんとお母さん...周りの人に言っちゃダメだよ?』
なんだろう...?なんでダメなんだろう?そして誰なのかなぁ?
僕は続きを読み始めた。
『かんたんに言うと、式くんには仕事をやめてほしい。今すぐに。今日の仕事から』
えっ...?イヤだよ...僕、この仕事が好きだもん
何か変な感じがしたけどさらに続きを読む。
『多分...君は嫌だよね?だけど...止めないなら...』
あれ?あれれ?これで終わりかなぁ?
そう思い紙を裏返すと...
『君の大切な人を消す』
赤い...大きな字で書いてあった。
「えっ....?嘘だよね?マネージャーさんもこう言うのはイタズラだから気にするなって言ってたし...」
こう言う迷惑な物が来たら教えてってマネージャーさんが言ってたし。仕事に持ってこう!
「式くん!お迎え来てるよ!」
姉さんが部屋に入ってきた。
「...?何見てるの....」
姉さんが近づいてくる。姉さんにもこれを教えよう。
「あのね...こんな手...」
『周りの人に言っちゃダメだよ?』
頭の中であの文字が浮かんでくる。ダメだ...姉さんには見せてはいけない...
「て?手が痛いの?」
「うっ...うんうん。なんでもないよ、行ってくるね!」
僕はその後...仕事に行った。あの手紙の仕事に行くなって書いてあったのを無視して。
仕事はいつもどうり無事に終わり。一緒に共演していた千聖ちゃんのもとにいく。
「あの千聖ちゃん....実はこんな手紙が...」
僕は千聖ちゃんに全部話した...ダメって言われたのに。千聖ちゃんは家族の次に信用出来るから。
「マネージャーさんにいいましょうよ。私も一緒に行ってあげるから!」
そのまま僕は千聖ちゃんと一緒にマネージャーさんに言いに行った。
すると相談にのってもらえて、何かあったらひがいとどけ?を出すらしい...
「じゃあ、気をつけてね?ばいばい、式くん」
「うん、ありがとう!またね!千聖ちゃん!」
千聖ちゃんと別れた僕はマネージャーさんに家まで送ってもらっていた。
「あっ、姉さん」
窓を見ていると友達と遊んで帰る途中であろう姉さんを見つける。
そこで僕は車から降り、姉さんの方へ走る。
「姉さん、一緒に帰ろう!」
「あっ、式くん!うん、帰ろー!」
僕と姉さんは歩いて家まで帰る、なんか久しぶりに一緒に家まで帰る気がするなぁ〜嬉しい!
一緒に帰る道はとても楽しくて...家まではあっという間だった。
楽しくて周りの事なんて気にすることも無く帰っていた...
そう。周りの事を気にせずに...歩いていた。二人とも...焦げた匂いも気にせずに。
「ねぇ...式くん」
「....どうしたの?」
先に家までの道をまがった姉さんが歩くのを止めた。
なんでだろう...あれ?なんか焦げた匂いが.....
僕もまがってみる、すると家が燃えている。
そこで僕は頭の中に『君の大切な人を消す』と言う言葉が浮かんできた。
「あぁぁぁぁ....」
僕の家が燃やされている....もしかして.....
『君の大切な人を消す』『君の大切な人を消す』『君の大切な人を消す』
「父さん達が家の中に......」
『君の大切な人を消す』『君の大切な人を消す』『君の大切な人を消す』
「君の大切な人を消す」 『君の大切な人を消す』『君の大切な人を消す』
あれに書かれていた事は本当だった...今日は仕事に行くべきじゃなかった..
仕事は止めるべきだったんだ...
「ねぇ!なんで家が燃えてるの!式くん!どうしたらいいの?!」
その時....僕は....
「.......」
何も答えられなかった....僕は....
「何も答えられなかったんですよ....!」
ドン、と机を叩く。今の僕は自分の事が嫌いで嫌いで仕方がない。
「その後犯人は捕まりましたが...僕は芸能界を引退しました...」
「....それ、本当の話....なの?」
「えぇ...嘘だったら良かったんですけどね....」
本当に嘘なら良かったのに....僕が何をしたって言うんだ....
「その時の事..彩ちゃんは覚えてるの?」
「覚えてますよ...火事が起こって、父さん達が亡くなった事も」
そう、1つを除いて全てを覚えていた。1つを望いて....
「...どういう事?それって全部覚えてるじゃん。それだったら式くんが名前を偽る意味も....」
「火事が原因で亡くなったと言う事は覚えてます。でも...姉さんは僕の事を覚えてなかったんです.....」
「...えっ?でも今は普通に話せて...」
「自分の名前を偽ったまま話をするなんて、普通な訳ないでしょう?!」
本当にこんな事が普通と言えるのだろうか?そんなはずない。ふざけるんじゃない!
「最初は僕の事を覚えてないって警察に伝えられたんです...その時の僕は小さくて意味が分からなかった!長い間姉さんに話さないの事がお互いのためだって...医者にも言われたよ!でも...でも...僕は姉さんと話したかった....!」
あの時...僕は父さん達がいなくなって姉さんまでもいなくなったら...そう考えただけで僕は怖かったのだ。
異常がないか調べるために病室に入院していた姉さんはとても悲しい顔をしていた事を覚えている。
そんな事を思い出すとまた涙が出てきた...
「そこで...隠れて姉さんの病室に行ったんです。『本当に僕の事覚えてないのって?』いきなり聞きましたよ!そしたら....『お名前はって?』もしかしたら思い出すきっかけになるかもって...『丸山式』そう言いましたよ...そしたら...」
「悲鳴を上げて気絶しました...その後医者には怒られ...こう言われました」
『君は彼女の中で 火事の時に近くにいて1番身近にいた存在...だから。式君の名前=火事の記憶で彼女にとっては火事の時を思い出す切っ掛けが式君になってるのかも....もしかしたら..』
『永遠に会わない方が良いのかもしれない....』
「....それでどうしたの.....」
「僕は紙を黒に染めて口調も完璧に変えて。あの時にいた僕を思い出させないように..細心の注意を払って生活してます」
よって保険証、学生証。その他自分の名前が書いてる物全てを鍵付きの箱に入れている。
「迅って名前には覚えがあったようで...もちろん僕の芸名ですからね。少しは記憶に残ってたのでしょう」
皮肉なものだ...トラウマになった芸能界の時の名前は覚えてて。しかも姉さんは今、芸能界にいるのだ...こっちからしたら最悪の気分だよ..
話していると、少しだけど落ち着いてきた..
「だから僕は...迅と言う名前の弟がいるって事をお母さん側の祖母の家にいた姉さんに伝えてもらいました..」
「もちろん僕はお父さん側の方にいました...再会したのは火事から4年...僕が中学2年で姉さんが3年生だった時です...」
「最初は話す事すら大変だったけど...今では普通に話せるようになりました.」
普通よりいい関係かもしれないが...”式”ってもう一度姉さんに呼ばれたい思いはまだ...残ってる。消したいけど..この思いは永遠に続くんだろう。
「すみません..熱くなりました...」
「うんうん、ごめんね...辛い事思い出させちゃって..」
今日はもうダメだ...ご飯なんて食べないで寝よう...意識が薄れてきた。喋りすぎによる酸欠...いや、やっぱり熱か何かそうあるのかなぁ?
「大丈...夫ですよ」
とりあえず布団の方に歩き出す。
「やっぱり...調子が戻ってなかったみたいだ..」
「えっ、迅くん大丈夫?!」
日菜さんが...姉さんに見えてきた..あぁ..姉さん....姉さんかな?
「姉さん....?あぁ...ごめんね。いつも迷惑かけて...本当に...ごめ...ん。あぁ..いつもみたいに...布団に入ってきても...良いから...」
「ん?いつもみたいにって..えっ?!」
「おやすみなさい...」
こうして..僕の怒涛の一日が終わった。
こうやって誰かに言えたのは良かったのかもしれない。後は2人がどう思ったのか...特に日菜さんにはさらに踏み込んだ話をした...嫌われるかもなぁ...
「るん...って来るのはいいけど....どうしよう..同じ布団に寝ても良いのかな..」
あれ...僕、日菜さんと姉さんを勘違いして...なんて言ったんだろう?
眠いから...いっか。
蘭ちゃん...後少しだぁーー!