デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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お久しぶりです。新しい作品のネタが入り、その執筆をしていたり、スパロポ30に夢中になって、投稿ができませんでした。すみません。


調査・精霊1

ー士道sideー

 

士道は今、信じられないものを見た気持ちだった。だが、それも無理からぬ事、あり得ないものが目の前に現れたのだ。

あの! 精霊達の中でもーーーーと言うよりも、士道の知っているに人物の中でも、群を抜いた健啖家のあの十香が、大好物のはんぐり~のドーナッツを少量で頼んだのだ。

本来の十香ならば、はんぐり~の全種類のドーナッツを3個ずつ、オスペドーナッツならば3個か、気に入れば5個は食べるあの十香が、たった3個のドーナッツだけにしたのだ。

 

「・・・・・・・・」

 

人間、あまりに動揺すると声を発せられなくなるのか、士道は無言で、緊急事態を伝えるようにインカムを小突くが、〈フラクシナス〉でも動揺が走っていた。

 

《そんな・・・・十香ちゃんが、あんな程度の量で・・・・!?》

 

《シンジラレナ~イ!!》

 

《まさか、体調が!?》

 

《馬鹿な! あのハングリー・モンスターが!?》

 

《誰かっ! 早く避難警報を! 隕石が降ってくるぞ!!》

 

クルー達のざわめきと、コンソールを操作する音が右耳を震わせる。若干失礼な言葉が出ていた気がするが、とりあえず無視した。

もしかして、七罪ではないかと考える士道が、令音に聞こうとするとーーーー。

 

「わあぁあああああああんんん!!!」

 

何と、店長が突然両膝を付いて号泣したのだ。

 

「て、店長殿、一体どうしたのだ?」

 

「どうしたのだ? じゃないわよぉ! 十香ちゃん! アタシのドーナッツ、嫌いになっちゃったのね!!」

 

「店長! 泣いては駄目です! 女の子の好みなんてまるでこの秋の空のように変わってしまうモノなんです!!」

 

「それでもアタシは! アタシの作るドーナッツをいつもいつも美味しそうに! 幸せそうに食べてくれる十香ちゃんの笑顔が嬉しくて嬉しくて堪らなかったよっ!! その十香ちゃんが・・・・十香ちゃんがぁぁ・・・・!!」

 

店長と店員が手を取り合って、ヨヨヨのヨ~! と泣き初めてしまった。

それを見た十香はオロオロとするばかりだった。

 

「・・・・十香。店長達が可哀想だから、なんでこんなにドーナッツを少なくしたのか、訳を言ってくれよ」

 

店長達が騒いでくれたお陰か、逆に冷静になれた士道が十香にそう問うと、十香も観念したように顔を上げた。

店長達は2人の会話に聞き耳を立てていた。

 

「・・・・昨日見たテレビで、『男よりもたくさん食べる女の子にドン引き!』 と言うのをやっていてだな・・・・」

 

「へ・・・・?」

 

「「ん・・・・?」」

 

「それで・・・・シドーに『どんびき』と言うのをされたくなくて、だな」

 

十香が恥ずかしそうに肩をすぼませると、店長が勢い良く立ち上がり、十香に近づいた。

 

「それじゃ! アタシのドーナッツが嫌いになった訳じゃないのね十香ちゃん!!」

 

「う、うむ。・・・・だが、シドーに・・・・」

 

「安心しなさい! こんなに可愛くて素敵な十香ちゃんの事をドン引きするようなヤツは、ミッツ・マングローブが許しても、マツコ・デラックスが許しません! そんなシドくんなんて、寸胴鍋に放り込んで、こんがりドーナッツにしてやるわっ!!」

 

店長の後ろで店員が何処からか、体を丸めれば人間1人が入れる大きさの寸胴鍋を持ってきて、ウンウンと頷く。

言われた士道は、十香のすがるような視線と、店長達の本気の視線に、はぁと気が抜けたように息を吐くと。

 

「俺は、元気にいっぱいご飯を食べてくれる女の子の方が好きだけどなあ」

 

「! ほ、本当か!?」

 

「ああ。むしろ、ご飯を残されたら悲しくなるよ」

 

士道が言うと、十香はハッとした様子で息を呑み、すぐに力強く首肯し、店長達に追加のドーナッツを頼もうとするが、すでに店長達は本日のオスペドーナッツ『ジャックランタンのパンプキンドーナッツ』とお店のドーナッツ全種類を大皿に山のように盛り付け、まるでお姫様に献上するかのように片膝を付いて差し出した。

十香はそれを嬉しそうに受け取り、店長達に礼を言うと、大皿をテーブルの上に置き、

 

「いただきますだ!」

 

美味しそうに、幸せそうに笑みを浮かべて、ドーナッツを次々と食べていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもの十香・・・・だったよな」

 

時刻は15時15分。

自宅に戻った士道は、あの後買い物を済ませ、その間の会話から、十香に可笑しな店は見受けられなかった。

令音の指示で鎌をかけてみたり、十香しか知り得ない情報も聞いてみたりした。十香はそれらを平然と答え、七罪が化けているようには思えなかった。

 

「やっぱり別の誰かなんですかね?」

 

《・・・・まだ何とも言えないな。兎に角、今は七罪の変身能力に綻びがある事を信じて、行動を続ける他ない。そろそろ次官だ。2人目の調査に入ってもらうよ》

 

インカムから令音の声が響き、士道は首肯する。

 

「ーーーーはい。次は誰ですか? 俺は何処に行けば・・・・」

 

《・・・・ん、シンはソコにいてくれればいい。タイミング良く、本人からの希望が重なってね。折角なので同時に消化してしまう事にしたんだ。もうすぐ付く頃だとーーーー》

 

と、ソコで、ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。

 

「ん? 誰だ?」

 

インターホンの画面サイズ見ても誰も映っていない。士道は一応携帯電話を持って玄関に行き、ドアを開けた。

 

「はい、どちら様ーーーー」

 

『バァっ!』

 

「うおっ!?」

 

ドアノブを捻った瞬間、ドアの隙間から目の前に何かが飛び出し、思わず身体をのけ反らせた。

その際、携帯が手からすっぽ抜け、玄関から顔を出した『ソレ』に飛んで行くが、『ソレ』は華麗な身のこなしでかわし、小さな腕を器用に組ながらプリプリと怒る。

 

『もー、士道くんたら。危ないなー』

 

四糸乃の友達『よしのん』だった。のだが、顔中に縫い傷が、頭部には巨大なボルトが刺さり、まるでフランケンシュタインのような様相だった。

 

「よ、よしのん・・・・だよな?」

 

『ハーイ。皆のアイドル! よしのんだよー!』

 

おどろおどろしい格好をしているが、中身はいつもの『よしのん』らしく、おどけてみせた。

と、地面に落ちた携帯を拾い上げた士道目の前のドアがゆっくりと開くと、その隙間から恐る恐るといった様子の少女が、こちらを覗き込んだ。四糸乃だ。士道がドアノブから手を離してしまったため、左手の『よしのん』だけがこちらに入ってきてしまったようだ。

 

「おう、四糸乃も。悪いな。ちょっと驚いてドアを・・・・」

 

開きかけたドアを大きく開くと、士道はまたもビクッと肩を震わせた。

つばの広い黒いとんがり帽子と真っ黒なローブ。右手に小さな箒を握り、まるで七罪の霊装のような魔女の姿の四糸乃だった。

 

「よ、四糸乃・・・・それは・・・・」

 

『ほらほら、四ー糸乃』

 

「う、うん・・・・と、トリック・オア・トリート・・・・っ」

 

「へ?」

 

一瞬ポカンとなるが、その意味を理解してポンと手を打ち、ハロウィンの仮装であると理解した。どうやらよしのんはフランケンシュタインの仮装ようだ。

令音が言うに、ドラゴンが出した課題を終えた四糸乃が、テレビでハロウィンの事を知り、やってみたいと相談されたようだ。

 

「ん、可愛いぞ、四糸乃」

 

「・・・・っ」

 

士道が言うと、息を詰まらせ、恥ずかしそうに顔を俯かせる四糸乃。

それからお菓子が無いから家に上がらせると、四糸乃にホットケーキをプレゼントした。

 

「・・・・!」

 

それを食べて四糸乃はカッと目を見開き、バンバン、とテーブルを叩いてから、士道にグッと親指を立てた。四糸乃が未知の味に感動した時のリアクションである。

和やかなムードの中、令音が四糸乃に探りを入れるように指示を出すと、「初めて四糸乃にふるまった料理は何だたっけ?」と質問すると、四糸乃は「親子丼、です」と答え、よしのんは『よしのんが折紙ちゃん家にいたときの事?』と聞くと、士道と四糸乃は首肯した。

それからよしのんが四糸乃をからかい、四糸乃が顔を赤くしてよしのんの口を塞ぎ、よしのんがもがいた。

 

ーーーーカンカン、カンカン・・・・。

 

「ん? おっ、ガルーダ。ユニコーン。クラーケン」

 

リビングの窓を何かが小突く音が聞こえ、目を向けると、ここ数日、七罪を探していた『プラモンスター実働部隊』が戻ってきた。

士道が窓を開けると、3体を家に入り、友達の四糸乃とよしのんがいるテーブルの上に行った。

 

『ピュゥウ!』

 

『ヒヒィィン!』

 

『キュイキュイ』

 

3体がよしのんが苦しんでいるようだから、四糸乃に落ち着いてと言わんばかりに声を発していた。

プラモンスター達に言われて、四糸乃も手を離した。

 

「! あ・・・・ご、ごめん、よしのん・・・・!」

 

『けほっ、けほっ・・・・ふぃー・・・・死ぬかと思ったよぉー・・・・』

 

『ピュ?』

 

『ブルル・・・・』

 

『キュゥゥ?』

 

プラモンスター達が心配そうによしのんに話しかける。

 

『・・・・大丈夫だよ皆の衆、心配ないよー・・・・士道くん、この子達が伝えたい事があるようだよー?』

 

「ああそうか、皆、どうした?」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

士道が聞くと、3体は無言になり、士道に顔を向け、何かを伝えようと身振りしようとした瞬間、その姿がリングへと戻ってしまった。

 

「あ、皆・・・・」

 

「魔力切れか・・・・後でちゃんと戻してやろうか」

 

士道がリングを拾うと、よしのんが話を変えるように声を発する。

 

『あ、そう言えば士道くん。ホットケーキって、オヤツの時間に食べる人もいるけど、よしのんの記憶が正しければ、朝御飯に食べる人もいるんだよねー?』

 

「え? ああ、そりゃまあ、いるだろうな」

 

『だよねー。じゃあ、これを『お菓子』って呼ぶかは微妙なセンじゃなーい?』

 

「お、おいおい・・・・」

 

しっかり食べきってから言われても困るが、そこで四糸乃が士道の唇の端っこにシロップが付いている事を指摘され、四糸乃が拭き取ろうと、テーブルの上に置かれたウェットティッシュを1枚手に取り、士道に近づき、士道も厚意に甘えるとーーーー四糸乃は自分の顔を近づけ、士道の唇とも頬ともつかない位置を、

 

ーーーーペロッ。

 

と舐めた。

 

「うわッ!? よ、よよよよ四糸乃・・・・っ!?」

 

「あ、あああああの・・・・」

 

予想外の一撃に、士道は動揺して飛び退き、四糸乃も士道に負けないくらいに動揺して、しどろもどろになりながらあたふたと手を動かした。

 

「こ、これは、その・・・・ホットケーキは、ご飯とお菓子の真ん中くらいなので・・・・いっ、『イタズラ』です・・・・っ!」

 

四糸乃は目をグルグルと泳がせながらそう言い残し、パタパタと足音を鳴らして家を出ていってしまう。

1人残された士道は、暫し呆然としたのち、令音に聞く。

 

「れ、令音さん・・・・今の、本当に四糸乃・・・・ですよね?」

 

《・・・・さあ、どうだろうね》

 

何とも判断に困る返答が返ってきた。

 

【≪・・・・〈ハーミット〉、将来清純な貌をした魔性の女になるかもしれん・・・・!!≫】

 

ドラゴンが起きていれば言っていただろう台詞が頭をよぎり、士道は思わず首肯した。

 

 

 

 

「はぁ・・・・」

 

士道は1人夜道を歩きながら、小さくため息を吐いた。

四糸乃の後、プラモンスター実働部隊に再び七罪の捜索に出て貰った。その際、プラモンスター達が何かを伝えようとしていたが、待ち合わせの時間が迫っていたので気に止められなかった。

今度は殿町と健康ランドに行って探ってみたが、データが欲しいと令音に言われ、只でさえ先日の七罪が士道に化けて起こした騒動で気まずくなった殿町の太腿とかを触ったりしたので疲れたのだ。

しかし、今日の最後の1人と待ち合わせをしているので、待ち合わせ場所である高台の公園に、マシンウィンガーで向かっていた。

程なくして、指定された公園にたどり着き、バイクから下りると、街灯に照らされたベンチの前には既に、1人の少女の姿があった。

淡い柄の入った長袖のブラウスに黒のフレアスカートと清楚な服を纏った、グラマラスな少女、八舞姉妹の片割れーーーー八舞夕弦だ。

 

「憤慨。人を呼び出しておいて遅れるとは良い度胸です」

 

半眼を作る夕弦に、士道は手を合わせて頭を下げた。

 

「すまん、夕弦。前の用事が長引いてよ」

 

「赦免。まあ、良いです。夕弦は心が広いので、5分位は誤差としてあげます」

 

言って、夕弦はふうと息を吐いて腕を組む。

そんな様子を見て、士道は、普段の夕弦は耶倶矢と一緒にいる事が当たり前なので、珍しさと軽い違和感に頭をかいた。

それを察したのか、夕弦がやれやれだぜ、と肩をすくめる。

 

「溜息。夕弦1人では物足りませんか?」

 

「! いや、そんな事はないよ。ちゃっと珍しいなと思っただけで・・・・」

 

「否定。別に無理にフォローする必要はありません。夕弦と耶倶矢は一心同体です。寧ろその感想は、夕弦と耶倶矢の結び付きを保証するものになります」

 

夕弦が不敵に微笑む。八舞姉妹は今日も仲良しのようだ。

それから、夕弦と2人で話がしたいと言って、夕弦が士道の腕を取り、ピトッと身体を寄せ、その豊満なバストをギュウと押し付けられ、甘い吐息を首もとに吹き掛けられた。

妖艶な夕弦のアプローチに赤くなる士道は、そのまま夕弦と公園を散歩する。

散歩の途中、日頃はあまり見せない愛らしい表情に、ドキッとする士道。

 

「呼掛。ーーーー士道」

 

「ん・・・・なんだ?」

 

夕弦が静かに呼び、士道が答えると、夕弦はコクン、と喉を鳴らしてから続ける。

 

「請願。正直に答えてください」

 

「あ、ああ・・・・だから、何だ?」

 

「質問。士道はーーーー夕弦と耶倶矢、どちらが好きですか?」

 

「え・・・・? な、何をそんな・・・・急に言われても選べねえよ。どっちも・・・・大切だ」

 

予想外の質問だが、夕弦のその目は真剣に聞いていた。

額に汗を滲み出るのを感じたが、その事を伝えると、夕弦が呆れたような肩をすくめる。

 

「嘲笑。やれやれだぜ、です。1番軟弱で情けない答えを選びましたね。これではドラゴンの日頃の苦労が分かります」

 

「う、うるせっ、そんなのいきなり聞かれたって答えられねえよ!」

 

「確認。なら、準備期間を差し上げればちゃんと答えてくれるのですか?」

 

「う・・・・っ」

 

士道が夕弦の言葉に口ごもると、夕弦は再びため息を溢す。

そんな夕弦に、士道は頭をかきながら言葉を返す。

 

「じゃあ、お前はどっちを選んで欲しかったんだよ」

 

「思案。・・・・そうですね」

 

夕弦は考えを巡らせてから、再度士道に視線を向けた。

 

「回答。ーーーー耶倶矢を選んでくれていたら、偉い偉いと褒めてあげました。夕弦を選んでいたらプンスカです」

 

言って、イタズラっぽく微笑んだ。

耶倶矢と夕弦はこうだ。自分よりも互いの方が好きでたまらないのだ。

 

「・・・・勉強になったよ」

 

と、士道はため息混じりにこぼした。

 

「追加。でも、夕弦を選んでくれたら・・・・嬉しかったです」

 

「えーーーー」

 

だが、その後に続けられた夕弦の言葉に、士道は心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。

それを夕弦に悟られないように、誤魔化すように言葉を続ける。

 

「け、結局どっちなんだよ」

 

「溜息。聞いての通りです。どちらでも、夕弦は構いません。なのにあのチキンな回答。士道にはガッカリゼンカイです。ザンネンツーカイです。ヘッポコピーです。本当に日頃からドラゴンに気苦労をかけている事が分かります」

 

「うぐ・・・・」

 

何を言い返せず、唇を噛んでうめき声を発する。

夕弦は気にする風もなく、言葉を付け加える。

 

「請願。ただーーーーもし。もし、です。耶倶矢が今の夕弦と同じような問いを士道に発したなら・・・・その時は、絶対に『耶倶矢』と答えてあげてください」

 

「え、それは・・・・」

 

「予想。きっと耶倶矢は怒ります。何で夕弦を選ばないのよ! という風に。・・・・でも、心の中では嬉しくて堪らない筈です」

 

「夕弦・・・・」

 

「確信。耶倶矢は、普段は“あんな”ですが、士道の事が大好きですよ。夕弦が言うのだから間違いありません。夕弦と耶倶矢は元々一心同体。夕弦が嫌いなモノは耶倶矢も嫌いです。同じようにーーーー夕弦が好きなモノは、耶倶矢も大好きなんです」

 

「え、それって・・・・」

 

士道が眉をピクリと動かすと、夕弦が少し目を見開いた。そして口元を塞ぐように片手を当てながら、士道から身を離し、距離を取った。

 

「迂闊。余計な情報でした、これ以上いらない事を言う前に退散する事にします」

 

「あ、おいっ、夕弦!?」

 

士道が名を呼ぶと、夕弦はクルリと振り返り、笑みを浮かべてきた。

 

「請願。嘘は言っていませんよ。耶倶矢は、士道の事をとても気に入っています。士道は夕弦達の、『希望』になってくれましたから。だからーーーー耶倶矢の事、よろしくお願いします」

 

夕弦はそう言うと、ペコリと頭を下げ、そのまま風の精霊らしく、夜闇の中を走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

五河家に帰った士道は、夕弦を1人で帰した事で琴里からお説教タイムを受けていた。

同席していた令音が助け船を出してお説教を終えると、今回のデートで3分の1の容疑者を調べ、七罪が化けているのは誰なのかと琴里が聞くが、士道もまだ分からないとしか言いようが無かった。

こんな時こそ、切れ者のドラゴンの存在が必要なのだが、生憎とまだ休眠中でそれもできない。

明日に備えて休むように琴里が言い、士道はコクリと首肯すると、令音に明日の最初の相手は誰なのかと聞くとーーーー。

 

「・・・・琴里、だね」

 

「・・・・っ!」

 

令音の言葉に、ソファにふんぞり返っていた琴里がビクッと肩を震わせる。令音はそれに気づくとーーーー。

 

「・・・・ああ、そうか。やけに明日寝坊しないよう言うと思ったらーーーー」

 

「ーーーー! ばッ! 別にそんなんじゃないわよ! 私はただ司令としてーーーー」

 

そこで士道の視線に気づいた琴里が、クッションを投げてきた。

 

「うわっ、おい、何すんだよ」

 

「うっさい! さっさと寝ろ!」

 

士道はそそくさと自分の部屋に退散した。

 

 

 

 

 

 

ーーーー午前0時。カチリと時計がーーーー“ゲームの1日目が終わったのを告げた”。

 

「ふふ・・・・」

 

闇の中で、『誰か』そっくりに変身した七罪は、小さな小さな笑い声を発する。

1日目。士道は結局自分を見つけられなかった。

とは言え、容疑者は10人を越え、ルールも曖昧。程度の差はあれ、1日目でできる事などたかが知れているので仕方ないとも思える。

だが、ゲームは1日目を終えてしまったのも、事実である。

そして、七罪は誰にも聞こえないくらいの声で呟き、指先をピクリと動かした。

 

「ーーーー〈贋造魔女<ハニエル>〉。時間よ」

 

それだけで良い。後は〈贋造魔女<ハニエル>〉が仕事をする。

丁度、自分の事を嗅ぎ回っていた“士道の使い魔達を、ぬいぐるみにしたように”ーーーー。

 

「さあ・・・・先ずは、1人。私をちゃんと当てられる士道くん?」

 

くす、くすと。

魔女が、嗤う。

 

「ーーーー誰も、いなくなる前に」

 

 

 

 

朝。士道は玄関から鳴り響くチャイムの音で目を覚ました。ひっきりなしにピンポンピンポンと鳴る音に悪態を付きながら玄関にたどり着いたあたりで、謎の訪問者は痺れを切らしたのか、門をくぐってドアノブをガチャガチャと鳴らし始めた。

 

「うお・・・・っ!? ど、どちら様・・・・?」

 

『! 士道!』

 

恐る恐る声を発したのが士道であると察したのか、扉の向こうから、興奮した少女の声が聞こえた。この声はーーーー耶倶矢のものだ。

 

「耶倶矢か? 一体どうしーーーー」

 

玄関の扉を開けると、額に汗をビッシリ浮かばせた耶倶矢が、士道に飛び付いた。

 

「うわっ、おい、落ち着けって! 何があったんだよ!」

 

「し、士道! こっちに夕弦、来てない!?」

 

いつもの高慢そうな厨二口調さえ忘れた様子で、耶倶矢が叫ぶと、士道は訝しげに首を傾げる。

 

「夕弦・・・・? いや、来てないけど・・・・どうかしたのか?」

 

「い、いないの・・・・朝起きたら、夕弦が何処にもいないの!」

 

「なんだって・・・・!?」

 

耶倶矢の悲鳴じみた叫びに、士道は眉根を寄せながら返した。

 

 

ーーーー思えばこの時、漸く七罪の『ゲーム』はスタートしたのかもしれない。




スパロポ30。
面白かったけど、オリジナル艦長がストーリーの前に出過ぎなのと、男主人公と女主人公の義兄妹コンビの絡みがあまり無かったのと、主人公達の過去が艦長以外(一部を除く)のメンバーに明かされなかったのと、女主人公が『兄離れ』をして『独り立ち』を宣言しても、オリジナル艦長に『依存』していて、『独り立ち』出来てないじゃんと思い、それらがいただけませんでした。続編あるのかなぁ?
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