デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
3日目を迎え、気持ちのいい天気に反して、士道の気分は最悪だった。
だがそれも当然の事だった。
ーーーー四糸乃と、山吹亜衣の2人が、昨晩〈贋造魔女<ハニエル>〉によって消されてしまったのだ。
「四糸乃に・・・・山吹・・・・、俺の、せいでーーーー」
《・・・・それは違う》
こんな時ドラゴンならば、尻尾ド突きで気合いを入れてくれるが、今はそれがなく、士道は呻くように独り言を言うと、インカムから令音の声が響く。
《・・・・君は限られた情報の中で良くやっている。決して、君のせいなどではない》
「でも・・・・四糸乃は、俺が指名したから消えたんじゃ・・・・ないんですか?」
〈ラタトスク〉から、亜衣の他に四糸乃が消えた事を伝えられた時。
『毎晩消える人数の1人』と、『士道が犯人指名を間違えれば、その指名された人物も消える』。
と、士道と琴里が仮説を建てた。
《・・・・その可能性は高い。だが、シン。それはーーーー》
「・・・・大丈夫です。分かってますよ。それとこれとは別です。こんな時にドラゴンが起きていたら、【貴様が蛆虫のようにウジウジしてても、状況は変わる訳ではないだろうが、このド底辺生命体】って言われますし、いつまでもショボくれた顔をしてちゃ、ドラゴンに半殺しにされます。それに・・・・折角俺の為に貴重な時間を割いてくれた多忙な“アイドル”に悪いですから」
そう。今日の最初のデートの相手は、大人気アイドル・誘宵美九なのだ。
言って士道は頬を張った。正直ドラゴンの尻尾ド突き程の気合いは入らないが、それでもニッと笑顔を作る。
《・・・・ん、そうだね。・・・・すまなかったね、シン》
「?」
《・・・・君の強さと成長は理解しているつもりだったのに、また余計な気を回してしまいそうになったからさ》
令音が自嘲気味に小さく笑う。珍しい反応に、何故か気恥ずかしくなって、頬をポリポリとかいて、辺りを見回した。
今士道がいるのは、琴里のデートしたオーシャンパーク・アミューズメントエリアの中央広場なのだが、何故か今日は個性的な衣装、いや、アニメやゲームキャラの衣装に身を包んだ、所謂コスプレをした客達ばかりだった。
「令音さん、変わった格好のお客さんが多いんですが・・・・」
《・・・・ああ、それはーーーー》
「だぁぁぁぁりぃぃぃぃぃぃんっ!」
「おう・・・・って、え?」
と、令音の言葉を遮るように、アミューズメントエリアの入り口から、聞き覚えのある声に目を向けると、美九が走りよってきた。
が、白と紫を基調としたフリフリのコスチュームを纏い、顔には目元を覆い隠すマスクを付けた美九だった。これから仮面舞踏会にでも参加するような姿に、ポカンとなった。
「美九・・・・。どうしたんだ、その格好?」
問うと、美九は得意気にフフンと鼻を鳴らして、バッ! と可愛らしいポーズを取って見せた。
何でも日曜の朝に放送されている『ワルキューレ・ミスティ』と言う女の子向けアニメの『月島カノン』の衣装らしい。以前四糸乃が見てたのを思い出した。
四糸乃も知っていた事を嬉しそうに笑う美九。
「それで・・・・何で美九はそのカノンちゃんの格好をしているんだ?」
「え? 令音さんから聞いてないんですかぁ? オーシャンパークのアミューズメントエリアは、今週ハロウィンイベントって事で、園内でのコスプレが自由なんですよー」
「え・・・・っ、そうなのか?」
士道が目を丸くしたが、道理でコスプレイヤーばかりだと思った。令音も事前に言っておいて欲しい。〈ラタトスク〉には報告・連絡・相談のホウレンソウが無いのかと疑ってしまう。
「なるほど、そう言う事か。にしても、美九がコスプレ好きとは知らなかったな」
「まあ、それもありますけどぉ、ほら、私有名人なのでー」
「あ・・・・そうか」
言われて得心がいった。こんな風に仮装した人達の中なら、大人気アイドルの誘宵美九だと気付く者はいないだろう。
「まあ、別に私はバレても良いですけどぉ、だーりんが気にしてるみたいですしー・・・・それに、折角のデートを邪魔されるのも嫌じゃないですかー」
「はは・・・・いや、まあ、うん、お気遣い感謝するよ」
と。士道が苦笑すると、美九は士道もコスプレしようと言い出し、断ろうとすると、予備で持ってきた女の子キャラのコスプレをさせようとしていたので、慌てて男性用コスチュームを着ると叫ぶと、美九は満面の笑みを浮かべた。
そして、更衣室から出てくるとーーーー。
「キャー!!」
身体をくねらせながら、美九が黄色い声をあげた。
「すっごーい! 似合ってますぅー! 格好良いですよだーりーん!」
「そ、そうか・・・・?」
士道は額に汗を滲ませる。全身を覆う漆黒の外套に、顔を覆い隠す仮面、長髪のウィッグを被っていた。
「・・・・これ、極端な体型の違いさえなければ、皆同じが外見になるんじゃないのか?」
「いーえっ! そんな事ないですよー! だーりんはこつ、滲み出るオーラパワーが違います! まさに地上におりた神秘の泉! 神の住む星です!」
「オーラパワー・・・・ね」
「はいっ! 実はこのキャラって、こんな格好してますけど、その正体は女の子なのでぇ」
「オイコラちょっと待て、聞いてないぞ」
「あははー、そうでしたっけー?」
美九が可愛らしく、てへぺろし、怒るに怒れなくなった。まあ、以前のように士織ちゃんにされなかっただけマシだろう。
「よし、じゃあ美九。いつまでも更衣室の前にいるのも何だし、ちょっと移動しようか。ーーーー折角のデートだから、色々話そうぜ」
「はいー! 喜んでぇ! ハニーも起きてくれていたら、マスコットキャラにコスプレしてほしかったですねぇ」
「その後は俺に八つ当たりをする未来が見えるな・・・・」
苦笑いする士道の腕に美九は自分の腕を絡ませ、そのまま身体を密着させる。コスチュームの仮面のお陰で顔が赤くなっているのがバレなくてすむ。
それから士道は美九に、そこはかとなく探りを入れるが、美九は何となく答える。
途中、美九と同じアニメのコスプレをした女の子2人に写真を撮らせて欲しいと頼まれ、美九が快く引き受け、士道と一緒に不安定極まりないポーズを取って写真を撮られていく。
「うわ・・・・っ!?」
「きゃっ!」
が、美九がポーズを変えたとき、士道は崩れ、美九を押し倒すような格好でその場に倒れた。
「す、すまん! 大丈夫か!?」
「うぅん・・・・だーりんたら、ダ・イ・タ・ン♥️」
「・・・・大丈夫そうだな」
頬を赤く染めながら、士道の仮面の鼻の部分をツンとつく美九。どうやら怪我はないようだ。士道は半眼で言うと、すくっと立ち上がって、手を引いて美九を起こした。とーーーーそこで異常に気づいた。
先ほどまで写真を撮っていた少女達が、ポカンと眼と口を開け、呆然と立ち尽くしていた。
「み、“美九たん”・・・・?」
「嘘、ホンモノ?」
「・・・・っ!?」
少女達の言葉を聞いて、士道はハッと気づいた。倒れた拍子に、美九のマスクが外れていたのだ。
「あらー?」
美九が緊張感のない声で言うと、少女達が驚きが、周囲のコスプレイヤー達にも伝播していく。
「え? 美九? 美九ってあの?」
「誘宵美九のコスプレがいるって? え? そうじゃない? ホンモノ?」
「うわ・・・・っ、マジで? 俺大ファンなんだけど・・・・」
「て言うか一緒にいるあれ、誰だよ。男? 女?」
にわかに、辺りがざわつき出す。
「ぐ・・・・行くぞ、美九っ!」
士道が仮面越しで渋面を作り、未だに呑気に眼を丸くしている美九の手を取って、その場から離れようとするが、美九はそれに抵抗するように手に力を入れる。
「ど、どうしたんだよ美九。このままじゃもっと人が集まって来ちまうぞ」
「んん・・・・ちょっと足を挫いちゃったみたいでぇ・・・・」
「え? さっきは何も・・・・」
士道が言おうとすると、美九は人差し指を士道の被った仮面の口元に押し当てる。
「だ・か・らぁ・・・・抱っこしてください」
「ウ・・・・ウェイっ!?」
美九の突然の要求に、士道は仮面の中で目を丸して、奇妙な声をあげる。
「お、お前、何を・・・・」
「ほぉらぁ・・・・早くしないと人が集まって逃げられなくなっちゃいますよぉ?」
【≪普段なかなか一緒にいられない〈ディーヴァ〉の為に、少しはサービスでもしてやれ。この気の利かないボンクラ唐変木≫】
「ん?・・・・」
何故かドラゴンの嫌味が聞こえた気がしたが、そんな事を気にしている暇は無いのか、美九の肩と足を抱える、所謂お姫様抱っこで全力疾走した。
「キャー! だーりん格好いいー! チョーイイネ! サイコー!」
「だから、あんまり人に聞こえる所でだーりんって言うなって・・・・!」
士道の首に手を回して嬉しそうに叫びをあげる美九。士道は悲鳴じみた声をあげながら、コスプレイヤーで溢れる遊園地を走り抜けた。
◇
「きっつぅ~・・・・」
「はは、お疲れさん士道」
時刻は16時。
何とかあの後トイレに駆け込み、[ドレスアップ]で、美九を別の衣装に変身させて窮地を逃れた。
そして、美九とのデートを終えた士道は、面影堂にやって来ると、ソファーに倒れるように横になる。
すると、ゴーレムと一緒にお茶を持ってきた輪島のおっちゃんが話しかけた。
ここに来た理由は、輪島のおっちゃんも、容疑者の1人だからだ。休憩もかねて探りに来た。
「なあおっちゃん。俺が初めて使ったリングって、[スメル]だったよな? あの時は凄く臭くて、暫く店の扉や窓を全開に開けて、その後消臭スプレーをかけまくったよな?」
「・・・・いや、確か初めて使ったのは、[スリープ]の魔法だったろう? その後寝ちまったお前をソファに寝かせて、後からやって来た琴里ちゃんが水性ペンで猫の髭や目元に○を書いたりと落書きをしていたじゃないか」
「・・・・こっちもボロを出さないか」
自分と輪島のおっちゃん、後はドラゴンしか知らない筈の過去の話をした。
[バインド]に失敗して、士道が自分の身体を簀巻きにしてしまった事。
[ビック]の魔法を失敗して、士道の頭がデカくなり、落第忍者に出てくる頭のデカい忍者隊首領のようにひっくり返った事。
[スモール]の魔法でメロンを1切れ食べたら、食べ過ぎて倒れた事。
ハリケーンスタイルでの飛行に馴れず、壁や地面に何度もぶつかった事。
[エクステンド]に失敗して、伸びた手足が絡まった事。
士道がおっちゃんに貰った魔法での失敗談。中には嘘を混ざらせて問うが、おっちゃんは難なく答えていった。
「(・・・・おっちゃんは、違う気がするな)」
◇
おっちゃんの調査を終えた士道が次に向かったのは担任の岡峰先生ことタマちゃん先生だがーーーータマちゃん先生が勘違いして、『婚姻届』を出して暴走してしまい、それから逃げ出した。
「・・・・・・・・」
そして19時。最後の容疑者とのデートの為に夜の街を歩いている士道は、顎に手を当てながら、これまでの調査をまとめていた。
現在残っている容疑者は10名。今日デートした美九も、話をしたおっちゃんも、話をあまりできなかったがタマちゃん先生も、七罪が化けているとは思いづらい。
最後の1人が七罪なのか? それともーーーー〈贋造魔女<ハニエル>〉は人の記憶までトレースできるのだろうか?
「(あぁくそっ! 認めるのは嫌だけど、本当にドラゴンがいないのが厳しいぜ・・・・!)」
不本意だが、ドラゴンがいれば精霊達を容疑者から外せる事ができるし、これまでの調査で七罪が化けている人間の目星もつけている可能性も十分ある。起こしたくても自分が声を掛ければ容赦なく尻尾ド突きを繰り出すし、琴里の方も呼び掛けても『只今休眠中』と交信不能になっている。
このままでは、また1人、誰かが消されてしまう。
しかし・・・・なんだろうか。
士道の頭には、ずっと小さな違和感が燻っていた。“何か”が、“何か”が頭に引っかかる。だがその“何か”の正体が分からず、気持ちの悪い感覚に頭をガリガリとかきむしる。
《・・・・シン。そろそろ目的地だ》
「・・・・、あ・・・・」
令音に言われ、士道はハッと顔をあげると、いつも間にか目的地に到着していたようだ。士道は気持ちを切り替えようと深く深呼吸すると、前方から、聞きなれた声が聞こえる。
「ーーーー士道」
「ああ、折紙」
最後の容疑者、鳶一折紙だ。
「すまん。待たせたか?」
「今来たところ」
《・・・・一応確認しておいたが、1時間前から待っていたようだね》
士道が聞くと折紙が小さく首を横に振り、令音が補足した。
士道はそこまで楽しみにしてくれてたのか、と苦笑する。
「? どうしたの?」
「い、いや・・・・ほら、折紙と出かけるのも久しぶりだなと思って」
「そう。私も、嬉しい」
「お、おう」
表情はピクリと動いていないが、長い付き合いでその感情は本当に嬉しいのだと気づいた。
そして、折紙とデートとして映画に向かったーーーー士道は何故か、ソコにうすら寒い悪寒が背中を走ったのを感じた。
◇
「今日は・・・・特に、キツかったな」
折紙から解放されたのは23時を回った後。
折紙とのデートは終始折紙のセクハラ紛いのデートだった。映画を見ている途中、折紙が士道の手を甲を撫で指の1本1本を慈しむようになぞったり、エロティックな動きで絡めたり、士道がストローで飲み物を飲もうとすると、そのストローの先を折紙が咥え、チュルチュルと吸ってきた。
折紙は能面にそれらをやっており、〈フラクシナス〉クルーは満場一致で折紙を本物認定した。七罪が折紙の強烈な積極性をトレースできるとは、誰も思えなかったからだろう。
そして、容疑者全てとのデートを終えた。
士道が家に入ろうと門を開けようとした瞬間ーーーー。
「シドー!」
「十香? どうしたんだこんな夜遅くに」
「それはこちらの台詞だ。一体こんな時間まで何処に行っていたのだ?」
隣の精霊マンションから、パジャマ姿の十香が、士道の方に歩きながら言ってくる。
怒っているよりも、純粋な疑問を発している感じだ。
「あー・・・・すまん、ちょっとな」
「むう・・・・」
はぐらかす士道に、十香が少し不満そうに頬を膨らませる。
「ここ数日、シドーは忙しそうだな。学校も休んでいるし、お弁当も晩御飯も作ったくれなくなった」
ドラゴンが聞いたら尻尾ド突き(強め)10連発はくらっているような事態だ。
「わ、悪い。色々終わったらまた作ってやるから。な?」
言って手を合わせて頭を下げる士道に、十香は慌てて首を振った。
「いや、違うのだ。そう言う訳ではなく、だな。・・・・ん? シドーのご飯を食べたいのは正しいから、違う訳ではないのか・・・・?」
むむうと唸りながら悩む十香は思い直すと、士道の手をガッと握る。
「兎に角だ! 何か事情があるのだろう? 私の事は気にするな。鳶一折紙とも喧嘩しないようにするし、食事も何とかする。だから、シドーは自分がやるべき事をやって来れ」
「十香・・・・」
「・・・・だが、ずっとシドーがいないのは、その、なんだ・・・・寂しいぞ。私にできる事があったら言ってくれ。シドーの為ならば、何をおいてでも駆けつけよう!」
ふっと頬を染めると、十香はギュッと手を握ってくる。
その真っ直ぐな視線が、言葉が、たまらなく嬉しくて、士道はその手を握り返した。
「・・・・ああ、ありがとう十香。お前がいてくれたら千人力だ」
「うむ、言いたかったのはそれだけだ! ではおやすみだ、シドー!」
「ああ、おやすみ、十香」
十香はとても嬉しそうに笑みを浮かべマンションに戻ろうとし、士道が手を振ると、その何倍も元気良く腕をブンブン振って、走っていった。大きな欠伸をしてマンションの中に入る姿を見て、いつもは早寝の十香がこれを伝える為に起きていてくれて、申し訳なさと可笑しさと愛おしさが込み上がり、小さく笑みが浮かんだ。足取りが少し軽くなった気がする士道は玄関を開けた。
するとーーーー。
「遅い」
待ち構えていたのように、妹様が仁王立ちしていた。
「そう言うなって。こっちだって大変だったんだよ・・・・」
「・・・・それは分かってるわよ。こっちだって事情は理解してるんだし、別に怒っている訳じゃないわ。ただーーーー」
琴里がフゥと息を吐くと、忌々しげに眉をひそめながら言葉を続ける。
「ーーーーそろそろ、時間でしょ」
琴里がそう言った瞬間、空間がグニャリと歪み、〈贋造魔女<ハニエル>〉が現れた。
「く・・・・出たわね」
「もう0時なのか!?」
顔をしかめ、奥歯を噛みしめる士道。十香といる時に現れなかったのが不幸中の幸いだった。心を落ち着かせようと深呼吸すると、それに合わせるように、〈贋造魔女<ハニエル>〉が展開し、七罪の姿が映し出された。
《は・あ・い。1日ぶりね士道くん。寂しかった?》
「七罪・・・・お前は・・・・!」
《いやん、怖いお顔。もっとゲームを楽しみましょ?》
楽しげに微笑む七罪に、士道は手のひらに爪を食い込むばかりに拳を握るが、ここで感情に流されても何の解決にならないし、消されてしまった夕弦と四糸乃と亜衣に危害が及ぶ可能性もあるので、心を落ち着かせる。
七罪はそんな士道の心情を見透してるのか、ニヤニヤ笑みを浮かべて言葉を続ける。
《ふふっ、ゲーム3日目が終わったわね。もう全員調べ終えたかしら? さ、答えてちょうだい。ーーーー私は、だぁれだ》
「・・・・・・・・っ」
士道は息を呑みながら、容疑者達を思い起こす。が、未だ明確な証拠を掴めていないので、答えを口にできなかった。
「士道、時間が無いわよ」
「・・・・分かってる」
琴里の声に答える。常に頭にまとわりつく“違和感”と、ぬいぐるみにされる前に、ガルーダ達は自分に何を伝えようとしていたのか。
これが士道の思考を強く縛っていた。
「(ーーーー何か。根本的なところを、俺は勘違いしているのか・・・・?)」
そんな根拠のない疑念が、士道の言葉を止める。
「ーーーー士道!」
「・・・・っ!」
琴里の叫びでハッと目を見開く。
だがーーーーもう遅い。士道が我に返った瞬間、七罪が手で大きな×を作る。
《ブー! 時間切れよ。残念でした。また明日チャレンジしてね~》
そして〈贋造魔女<ハニエル>〉の姿が消え、玄関には五河兄妹だけが残された。
「・・・・責めはしないわ。指名が外れていたらその人が消えてしまうだなんて状況で、決定的な証拠もないのに、おいそれと答えを出せる筈はないもの」
頭をかきながらフウと息を吐く琴里は口を開く。
「でも、もう既に何人もの人が消されているって事、そしてーーーーあなたが七罪を見つけない限り、このゲームは終わらないって事だけは、覚えておいて」
「・・・・ああ。・・・・ごめん」
琴里の尤もの言葉に、士道は頭をかいて、自分の決断力の無さに歯噛みする。
と、そこで令音からの通信が入る。
《・・・・シン。聞こえているかい、シン》
「令音さん・・・・? どうしたんですか?」
《・・・・先程、容疑者達を監視している自律カメラに、〈贋造魔女<ハニエル>〉が現れた》
令音の言葉に、士道は心臓が引き絞られるのを感じだ。
分かっていた筈だった。昨日も同じだった。士道の回答の後、〈贋造魔女<ハニエル>〉は容疑者の内1人を消してしまう。それは、理解している筈だった。
だが、改めてその状況を知らされると、痛いほど、苦しいほど、動悸が激しくなってしまう。
「・・・・一体、今日は、誰が」
消えてしまったんですか、とその言葉が出なかった。それで現実が変わってくれる訳でもないが、身体が拒絶しているように、その言葉を発音できなかった。
《・・・・ああ。今日消えたのはーーーー》
令音が一瞬躊躇うように、それこそ、士道にその情報を伝えてよいものかとどうか悩むようにーーーー言葉を切ってから、続けてきた。
《・・・・十香、だ》
「え・・・・?」
令音の発した言葉に。
士道は、足元が砕けて、奈落の底に落ちていくような感覚を、感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーピクッ・・・・!
そしてーーーー“何か”が動き出したのを、誰も気付かなかった。
いよいよ次で最終局面に行きたいですね。