デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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最後の調査・七罪

ーウッドマンsideー

 

天宮市近郊に複数存在する、〈ラタトスク〉所有のビルの内の1つの地下3階に、ウッドマンとカレンが訪れた。

 

「ーーーーこちらです。ウッドマン卿」

 

若い機関員に先導され、鉄格子に仕切られた牢のように手狭な居住スペースについた。

そこには簡素な作業服を着て、顔から身体中に、つい最近できたと思しき傷が幾つも残る初老の男がいた。

八舞姉妹と出会った或美島で捕らえられた、『DEMの第二執行部大佐相当官ジェームズ・A・ パディントン』であった。

九死に一生を得た彼は〈ラタトスク〉に捕縛されてから、何度も顕現装置<リアライザ>を使った尋問を受けても、まるで記憶が抜け落ちたかのように様子で、何も反応しなくなった。

 

「ーーーー奴の使いそうな手だ」

 

所詮目の前でベッドに横たわる男も、『使い捨ての道具』でしかない。ウッドマンは目を細めてそう言った。

機関員にパディントンと話をさせてくれ、と言うと、機関員は怪訝そうな顔をしながらも後ろに下がり、ウッドマンはカレンに命じ、車椅子の向きを檻の中のパディントンに向けさせた。

 

「ーーーーやあ、ジェームズ。少し私と話をしないかね」

 

「・・・・!」

 

「うお・・・・ッ!?」

 

ウッドマンが声をかけた瞬間、今まで無反応を貫いていたパディントンが、バネ仕掛けの人形のようにベッドから跳ね起き、機関員が肩を震わせる。

が、パディントンは構わず、ユラユラとおぼつかない足取りでウッドマンの方へ歩くと、ガシャン、と音を立てて鉄格子にもたれ掛かる。

焦点の合わない目と、涎にまみれた唇が、ウッドマン達の面前に押し付けられる。

 

「あ、あ、ああああアアアアあぁああ、う、う、ウウウウウウウっど、ま、まままン」

 

喉の奥から壊れたレコードのような声を響かせ、頭を小刻みに震わせるパディントン。

しかし、数秒後。パディントンの喉から発せられた奇妙な不協和音が、声として聞き取れるくらいに安定していき、そしてーーーー。

 

「『ーーーーやあ、久しぶりだな、『エリオット』』」

 

パディントンとは異なる声を発した。

否・・・・パディントンの顔は今までと変わっておらず、唇や下さえ動いておらず、言葉を発していると言う表現は正しくないのかもしれない。まるで、人間の形をしたスピーカーから、別の声が響いていると表現した方が適当だ。

 

「な、こ、これは・・・・」

 

機関員が狼狽するするが、それも無理はない。

ウッドマンは小さく肩を竦めてから、パディントンーーーー否、その先にいるのであろう男に返した。

 

「ああ・・・・30年振りだ。壮健かね、『アイク』」

 

「『お陰様でね。君はどうだいエリオット』」

 

「私の方は自信がないな。最近はすっかり目も悪くなってね」

 

「『それはそれは。・・・・エリオット。『伝承の魔獣』と『古の魔法使い』が現れたね』」

 

「ああ。まさか、『里』のお爺さんやお婆さん達のお伽噺話くらいにしか思っていなかった存在が、現実に実在するとは、私も思っても見なかったよ」

 

「『いやはや、年寄りの話と言うものは以外と馬鹿にできないねぇ』」

 

「ああ。自分もこの歳になって実感するよ」

 

「『覚えているかい? あのお伽噺話を聞くと、エレンはいつも泣いてしまって、夜1人で眠る事ができなくなっていたね』」

 

「その度に、私かカレンに抱きつかないと眠れなくなってしまったね」

 

それから、ゾンビのような有り様になったパディントンから発せられる正体不明の『声』と、暫しの間談笑する様子を、横から機関員が気味が悪そうな目で見ていた。

 

「『ーーーー所でエリオット。私達の元に戻ってくるまでつもりはないかね。君も知っての通り、〈プリンセス〉は反転したのだよ。我々の悲願が成就する日も近い。『伝承の魔獣』、イヤ、〈魔獣ファントム〉の力添えもあるが、君がいればより確実なものとなるだろう。エレンもさぞ喜ぶだろうさ』」

 

「生憎だが、私にそのつもりはないよ、アイク。それは30年前にさんざ話し合った事だろう」

 

ウッドマンが言うと、『声』は残念そうに吐息した。

 

「『残念だ。30年もの時を経っても、君を冒した熱病は完治していないようだ』」

 

言うと同時に、パディントンの身体が、ズルズルと鉄格子から落ちていく。

 

「『ーーーーならば、次に見える時は容赦できない。精霊は、我が悲願の為に利用させてもらう』」

 

「そうはさせんさ。その為の〈ラタトスク〉だ。・・・・それに、『古の魔法使い』、イヤ、〈仮面ライダー〉もいるしね」

 

「『ふ・・・・』」

 

それきり、『声』は聞こえなくなり、パディントンが床に突っ伏すと同時にーーーー大量の血を口から吐いた。

 

「! な・・・・!?」

 

機関員が泡を食って端末を操作し、上層階に連絡をいれ始める。

ウッドマンは微かに眉根を寄せた。

 

「お前は変わらないな、アイク。ーーーー全てが30年前のままだ」

 

顔の向きを変えないまま、車椅子のハンドルを握るカレンに声をかける。

 

「そう遠くない内に、DEMとの直接対決もあり得るかもしれない。・・・・覚悟だけはしておいてくれ、カレン」

 

「何も問題ありません。『姉さん』とわかり合えない事は、何年も前から理解しています」

 

『カレン・N・メイザース』は、声のトーンを変えないまま、ウッドマンの言葉に答えた。

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

同時刻。アイザック・ウェスコットは、DEMインダストリー英国本社ビルの業務執行取締役の部屋で、フウと吐息をし、手元のボタンを操作して、外部から人を呼ぶ。

すると数秒も経たず、部屋の扉がノックされた。

 

「ーーーー失礼します。何かご用ですか、アイク」

 

言ってエレン・M・メイザースが入室してきた。

 

「いや・・・・大した事ではないのだが」

 

ウェスコットはエレンの方に視線を向け、前の取締役会で、マードックの意見で、大量の魔術師<ウィザード>を失ったのは大きな損失である事を認めた。

真那とジェシカ。エレンに次ぐアデプタスナンバー2と3を失い、このままでは精霊の捕獲に支障がでると伝えた。

エレンは補充要員の事と理解し、自分がいるのに、と少々不機嫌になるが、前回の戦いで〈仮面ライダー〉に敗北した手前、強く出られなかった。

ウェスコットはエレンの心情を察しているのか、あくまで『保険』と言い、エレンはフウと息を吐くと、ウェスコットに再び目を向け、『SSSのアルテミシア』の事を聞いた。

彼女の実力ならばアデプタスナンバーに入れるだろうが、彼女自身はDEM対して懐疑的であり、交渉は上手く行っていないと告げる。

が、ウェスコットは唇の端を上げながら、エレンの言葉を遮り、こう言った。。

 

「ーーーーいるじゃあないか、1人。君の身体に傷を付けた、とびっきりの魔術師<ウィザード>が、“日本”に」

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「・・・・・・・・」

 

士道は部屋の窓から覗く朝日を一瞥してから、〈ラタトスク〉が調べあげた容疑者全員のデータと一晩中にらめっこしていた。

 

「・・・・もう・・・・朝、か」

 

霞む目を擦りながら残っている容疑者のリストをパソコンに表示させた。

ーーーー十香が消えてから早2日。

その間、2度も犯人指定にしくじり、タマちゃん先生と殿町、麻衣と美衣が消されてしまった。残るは琴里、折紙、耶俱矢、美九、輪島のおっちゃんの5人。

しかし、全員をいくら調べあげても、七罪の痕跡は見つからなかった。

 

「・・・・・・・・」

 

しかし。士道の思考はーーーー何かが頭の中で引っかかっていた。

 

「・・・・もしかしたら、これはーーーー」

 

と、士道が無言で考え込んでいると、背後の扉が不意に開き、琴里が入ってきた。

 

「士道・・・・って、ちょっと。あなたまさか、寝てないの?」

 

眉をひそめた琴里が、士道に歩み寄る。

 

「・・・・おう、琴里」

 

「言ったでしょ、無理はするなって。気持ちは分かるけど、あなたが体調を崩したら元も子もないのよ」

 

「・・・・大丈夫だよ、これくらい。今日は・・・・再調査がある日だもんな。ええとーーーーまずは耶俱矢からだったけか?」

 

士道は明らかに睡眠不足の目で答え立ち上がろうとしたその時、目眩がしてその場に膝を突く。

 

「う・・・・」

 

「ああもう、だから・・・・!」

 

琴里が苛立たしげに言って、士道の手を取り、朝ポストに入っていた七罪からの挑戦状のカードを渡した。

 

『そろそろゲームも終わりにしましょう。

今夜、私を捕まえて。

でないとみんな、消えてしまう。 七罪』

 

「な・・・・」

 

士道は息を詰まらせると、身体を起こして琴里の手からカードをひったくって、ゴクリと息を呑んだ。

 

「今夜・・・・七罪を見つけないと、残った容疑者が全員消されてしまうって・・・・事か?」

 

「額面通りに受け取るなら、そう言う事になるわね」

 

琴里が肩を竦めて言い、士道は奥歯を噛み締めながら額に手をやる。

できる事はやった。調べ尽くした。しかしそれでも、未だに残る5人の中から、七罪を選定できていないのだ。

しかし、遂にタイムリミットがやって来た。焦るなと言う方が無理だ。

ーーーー今日、士道が判断を誤れば、残る全員が消されてしまう。

その途方もない重圧に、士道の心臓はキリキリと締め付けられる。だがーーーー士道は、グッと奥歯を噛む。

 

「・・・・琴里。1つ頼みがある。聞いてくれるか?」

 

「何? 可能な限りは善処するわよ」

 

神妙な顔で琴里が聞き返すと、士道は考えを纏めながらゆっくりと提案を口にして数分後、琴里はフウムと唸って顎に手を当てる。

 

「成る程。良いわ。手配して上げる」

 

「・・・・助かる。正直まだ、最後の決め手に欠けているんだ」

 

「その代わり、それまでの間しっかりと睡眠を取る事。それが条件よ」

 

「・・・・ああ、了解したよ」

 

士道は素直に頷き、琴里が部屋を出ると、身体をベッドに横たえ、『スリープリング』をバックルに翳そうとした。

未だ、七罪が誰に化けているのかの確証はない。最後のキーワードが欠けている状態だ。

だから、七罪の挑戦状が届く届かないに拘わらず、琴里に頼んだのかもしれない。

 

[スリープ プリーズ]

 

「ーーーー七罪。今夜・・・・絶対に、お前をーーーー見つけてやる」

 

魔法陣が自分を通過し、凄まじい睡魔に襲われながら、士道は虚空を見つめ、呟くように言った。

 

 

 

 

 

 

ー七罪sideー

 

「うふふ・・・・ふふふ・・・・っ」

 

『・・・・』に化けた七罪は、段々身近な人達が消えた時の、士道の顔を思い返して、機嫌良さそうに笑みを浮かべる。

戦慄。焦燥。狼狽。そして絶望が入り交じった得も言われぬ表情が、脳裏に思い描く度に、恍惚とした快感が身体を駆け抜ける。

しかし、駄目だ。

ーーーーもう、それでは足りない。

七罪は渇望する。今までよりも、もっともっと大きな恐怖を。極限の絶望に苛まれた士道の表情を。

だからこそーーーー挑戦状を出した。

残った容疑者を全て消し去り、その瞬間の士道の人を見るために。

そうして全てが終わったらーーーー失意に崩れ落ちる士道すらも、飲み込んでしまう為に。

 

「私の秘密を見た者は・・・・絶対に許さない。ただ消すだけじゃ済まさない。仲間を全て失って、失意の中で絶えていけ」

 

七罪はそう呟き、ギリと奥歯を噛んだ。

 

「どうせ誰も・・・・私を見つけてなんてくれないんだから」

 

そう言った七罪の瞳には、何処か、寂しさがあるように見えたーーーー。

 

 

ー士道sideー

 

その日の夜。

たっぷり睡眠を取った士道は琴里と共に、〈ラタトスク〉が所有する施設の地下の部屋にいた。

20畳ほどあり、所々に背の高いテーブルが置かれ、ダンスホール程の広さがある薄暗い部屋だ。

〈フラクシナス〉の会議室を使う訳にはいかないので、こちらを使っているのだ。

とーーーー程なくして、部屋の扉が開き、そこから3名の少女達と1人の男性が、ゆっくりとした足取りで部屋に入ってきた。

 

「くく、何ともお誂え向きではないか。我が、彼の邪王に審判を下すに相応しき舞台よ」

 

「すごーい、何だか秘密基地みたいですねー」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「士道~。琴里ちゃ~ん。来たぞ~!」

 

耶俱矢と美九、折紙に輪島のおっちゃんの4人であった。

ここに士道と琴里を含めて6人。つまり、残った容疑者全員を集めたのだ。

士道が琴里に頼んだのは、残った容疑者を1ヵ所に集め、全員と話せる環境を作って貰い、“最後の確信”と皆の意見が欲しかったのが本音だ。

皆は既に、〈ラタトスク〉の機関員からあらましを説明されている。不幸中の幸いか、『精霊』の存在をしる面子だけが残っていたからこそ使える手段だ。

 

「ーーーー良く来てくれたわね、皆」

 

琴里が言うと、4人は少し戸惑う様子を見せながらも、士道と琴里の元へ歩いてきた。

士道はスウっと息を吸うと、皆に順繰りに視線を這わせる。

 

「・・・・皆、もう話は聞いてると思う。まずは・・・・謝らせてくれ。ごめん。俺のせいで皆を巻き込んじまった。・・・・本当に、ごめん」

 

深々と頭をさげると、皆がざわめく。

 

「ふん、気にするでない。どちらかと言えば、そのような重大な問題を我らに黙っていた事を謝ってほしいくらいだな」

 

「うーん、あのデートは調査の一環だった訳ですかー。それは少し残念ですねー」

 

「士道。こうなってしまったら、もう仕方ない事だ。謝罪よりも、この事態をどうにか解決する方を優先しろ」

 

「・・・・・・・・」

 

折紙以外が口々に言って、士道はもう一度深く頭を下げてから、ゆっくりと顔を上げる。

 

「身勝手だってのはわかってる。でも・・・・頼む。皆の力を・・・・貸してくれ・・・・っ!」

 

訴えかけるように言うと、皆が一様に力強く頷いた。

ただ1人を除いて。

 

「士道」

 

先ほどから無言を貫いていた折紙が、ジッと士道を見つめながら口を開く。

 

「一体、これはどういう事」

 

「! すまない、折紙。でも、頼む。お前の力が必要なんだ」

 

士道が懇願するように言うと、折紙はふっと目を伏せて首を振る。

 

「勘違いしないで欲しい。士道に力を貸すのは当然。精霊が関わっているのであればなおさらに。ーーーー私が聞いているのは、その事ではない」

 

「え? って言うと・・・・」

 

「ここは一体どこ? 先ほど私達に事情を説明したのは一体誰? 前からずっと思っていた。あなたは一体、何と関わりを持っているの?」

 

「そ、それは・・・・」

 

ASTの折紙に〈ラタトスク〉の事を話す訳にはいかず口ごもるが、折紙からしてみれば当然の疑問だ。

 

「あんまり細かい事を気にしすぎると、皺が増えるわよ」

 

士道の隣に立つ琴里がそう答えるが、折紙は刺々しい視線を琴里に向けた。

 

「・・・・五河、琴里」

 

「・・・・何よ」

 

折紙の声に、琴里は半眼になって答え、2人の視線が交じり合う。

折紙は1度、琴里が自分の両親の仇と疑い、襲撃を仕掛けてきた。それ以来2人には、奇妙な因縁が生まれたのだ。

一応誤解であり、士道が間に入って水入りとされたが、2人の微妙な関係性が解消された訳ではなかった。

だが、折紙は無言で目を伏せると、小さく息を吐いて琴里から視線を逸らした。

 

「ーーーー話は、後で聞く。兎に角、士道に協力する事に異論はない」

 

「あ、ああ・・・・ありがとう、折紙」

 

「構わない。でも」

 

「でも?」

 

「急に呼び出されたから、少し、期待した」

 

「・・・・それは・・・・何と言うか、すまん」

 

そうとしか言えず、小さく頭を下げる。

実際に全員を集めたのは令音なのだが、どんな呼び出し方をしたのかは知らなかったのだが。

 

「くく、話は纏まったようだな」

 

と、そこで耶俱矢がバッと両手を広げ、ポーズを取りながら高らかに声を上げる。

 

「ならば始めようではないか。われらが中に潜みし悪逆の者を炙り出す、選別の儀を!」

 

「あら、随分気合が入っているわね」

 

「当然ではないか!」

 

琴里が茶化すように言うと、耶俱矢は大仰に両手を広げる。

 

「この中に、夕弦を拐かした不届き者がおるのであろう!? ならばソヤツを見つけ出し、相応の代償を支払わてやらねばーーーー気が済まないし・・・・!」

 

後半で素が出たのを気づき、耶俱矢はコホンと咳払いをしてポーズを取り直す。

 

「兎に角だ! 夕弦達を消した精霊とやらは、我が必ず見つけてみせる!」

 

グッと拳を握る耶俱矢。今まで夕弦が突然いなくなってから、溜めるに溜め込んだ行き場のない感情を、全て犯人である七罪に向けているのだろう。

 

「ハイハイ、テンションMAXのめっちゃメラメラなのは分かったから、取り敢えず落ち着きなさい」

 

琴里は咥えていたチュッパチャプスの棒をピンと立て、唇を動かす。

 

「状況は、この部屋に入る前に説明した通りよ。この中に1人、変身能力を持った精霊が紛れ込んでいて、私達はソレを見つけなければいけない。今まで行った調査の結果は、この資料に纏められているわ。何か質問や気になることがあったら、どんな小さな事でも構わない。遠慮なく言ってちょうだい」

 

言って、近場のテーブルに置かれている、ダブルクリップで留められた数セットの書類を示す。皆がその資料を手に取り目を通した。

そして暫く経つと、美九がフウと息を吐いてきた。

 

「なるほどー・・・・デートの時にだーりんが質問をしてきたのは、こういう意味だったんですねぇ」

 

「・・・・だーりん?」

 

と、折紙が美九の『だーりん発言』にピクリと眉を揺らす。士道は慌てて声を発する。

 

「ま、まあ、それは後でいいじゃないか」

 

「・・・・・・・・」

 

折紙は不服そうに、しかし素直に黙ると、再び資料に視線を落とした。

すると、それと入れ替わるように、輪島のおっちゃんが声を発した。

 

「ところで士道、その・・・・七罪ちゃん、って精霊はどんな姿をしているんだ? オレ達は彼女を知らないから分からんぞ?」

 

「うむ。もしかしたら我らも、何処かで見たのやも知れんからな」

 

おっちゃんに同意するように、耶俱矢も頷いた。

 

「え? ああ、それはーーーー」

 

「ーーーー見るもおぞましい、酷い不細工面よ」

 

士道の言葉を遮るように、琴里が言う。

 

「例えるとするならば、車に轢かれたヒキガエルみたいの顔だったわ。ギョロっとした目は異様に離れ、鼻は豚のように上を向いていて、肌は月のクレーターみたいに痘痕だらけだったわね。身体は丸々太っていてカバのようよ。もうバストウエストヒップが全部同じ数字じゃないかと思えるくらいの酷い体型よ。そして兎に角、顔が大きいの。多分3頭身位じゃないかしら。何かもう精霊ってより蛙の冥府の神のようなずんぐりむっくりのモンスターね」

 

琴里が真顔で、ペラペラと七罪の容姿を説明するが、それは全くの出鱈目な情報だった。

 

「おい、琴里・・・・」

 

士道が声をかけると、琴里が「しっ」と指を1本立てるのを見て察した。

これはこの中にいるだろう七罪のリアクションを誘っているのだ。ここまで自分の事を悪し様に言われて、全く気に留めない者などそうはいない。例え表情や行動に表れずとも、この部屋に仕掛けられた観測装置に、何らかの反応がある筈だ。

耶俱矢と美九は琴里の発言から七罪の容姿を想像したのか、ゲンナリとした顔色となり。

折紙は琴里の意図を察していたのか、琴里の発言のほぼ最初の方から、全員の動きに視線を動かして探り。

輪島のおっちゃんも途中で察したようで、苦笑いを浮かべていた。

だがーーーー。

 

《・・・・それらしい反応はないね》

 

右耳のインカムから、令音の声がそう報告した。




士道は七罪を見つけられるのだろうか!?
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