デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回で、七罪の捜査も最後になります。


最後の調査・七罪2

ー士道sideー

 

令音からの報告を同じく聞いた琴里は、チッ、と舌打ちをし、テーブルに置かれた小型端末を操作する。

 

「・・・・何てのは冗談よ。これを見てちょうだい」

 

琴里が言うのと同時に、端末の画面に七罪の姿が映し出された。魔女のような霊装を纏った、エメラルドを溶かしたような長髪と美九よりも整ったプロポーションをした美しい大人の女性である。

 

「えぇー・・・・話と全然違うじゃないですかー。琴里ちゃんたら怖い子」

 

美九が頬に汗を垂らしながら眉根を寄せる。次いで口を開いたのは耶俱矢であった。

 

「しかし、士道や琴里がこれだけやって尻尾も掴めぬと言うのは、些か気になるな。そもそもこの中に七罪とやらがいるのは確かなのだろうな? 実は誰かに化けているなどと言うのは嘘で、慌てる士道を見て愉悦に浸りたかっただけ、と言う可能性もあるのではないか?」

 

「・・・・勿論、その可能性もゼロじゃないわ。でもーーーー」

 

首を傾げる耶俱矢に、琴里が腕を組みながら、士道に目配せをする。それに応えるように小さく首を前に倒して、士道が口を開く。

 

「ああ。俺もそんなに長い時間話した訳じゃないんだけど・・・・多分、嘘は吐いていないと思う」

 

「ほう? 何故其のような事が言えるのだ? 相手は夕弦達を消してしまうような精霊なのだぞ? 信頼せよと言う方が難しかろう」

 

「ん、何て言うのかな・・・・七罪は、自分の能力に物凄い自信を持っているように感じたんだ。それに、確かに七罪は【この中に私がいる】って明言した。ルールの隙を衝くなら兎も角、明らかなルール違反はしてこないと思う」

 

「ふむ・・・・なるほどな。まあ、直接七罪と会話した御主が言うのだ。信じようではないか」

 

難しげに唸るが、納得を示すように頷く耶俱矢は、視線を資料に戻す。

それから暫くして、全ての資料を読み終えた折紙が顔を上げる。

 

「士道。精霊〈ウィッチ〉が送ってきたと言う写真とカードを見せて貰う事は可能?」

 

「ああ、勿論」

 

士道は頷くと、持参していた鞄から白い封筒を取りだし、折紙に手渡した。

折紙は受け取った封筒から、中の写真とカードをテーブルの上に並べる。

 

「ふん・・・・なるほどな。隠し撮りをしておったと言う事か」

 

「ちょっとー! 私目が半開きなんですけどぉー!」

 

横からソレを覗き込む耶俱矢が鼻を鳴らし、美九がプリプリと怒るが、折紙はそんなものを気にも留めず、並べた写真とカードに、順繰りに視線を這わせ、暫しの間無言で顎に手を当てた後、顔を上げる。

 

「ーーーー1つ、確認しておきたい事がある」

 

「ああ、何だ?」

 

「〈ウィッチ〉の変身能力と言うのは、人間や精霊以外のモノに変身する事も可能なの?」

 

「え・・・・?」

 

言われて。士道は目を丸くした。

 

「人間や精霊以外の・・・・?」

 

「そう。もっと詳しく言うのなら、生命活動を行っていない物質、また、元の姿から明らかに体積の違う存在に変身する事が可能か、と言う事。例えば、手のひらに収まる位の大きさになったり、紙のように薄くなったり」

 

「・・・・多分、可能だ。ただ、極端に大きさの違うモノに変身できるかどうかは・・・・分からない」

 

折紙の言葉に、七罪と最初に会った時に、ASTに行った事を思い出して、士道は小さく頷いた。

 

「不可能とは言い切れない、と言う事?」

 

「ああ・・・・そうなる」

 

「そう」

 

折紙が頷くと、その隣に座る美九が、何かを思い付いたようにポンと手を打つと、テーブルに並べられた写真を指差す。

 

「え、それってもしかしてー・・・・。精霊さんが、“この写真のどれかに化けているかもしれない”・・・・とか、そう言う事ですかぁ?」

 

「写真・・・・」

 

士道は顎に手を置いた。確かに・・・・完全に否定できない。

 

【この中に、私がいる。誰が私か、当てられる?】

 

その文面だけで考えれば、確かに文字通り、『この中』ーーーー写真そのものの中に七罪がいると言う事もできる。

 

「そう」

 

折紙は美九の方を一瞥すると、コクリと頷いた。

 

「通常、写真に示されて【この中に、私がいる】と言われれば、写真に写っている人物の中に精霊がいると考える。ーーーーしかし今回の場合、そう明言されているわけではない。そもそも、このルール自体に違和感がある。時間が進めば進む程、容疑者の数が減っていく。確かに士道の焦燥を植え付けるには効果的な手段かも知れない。しかし、それと同時に自分が見つけやすくなるリスクをも負う事になる。ーーーー“絶対に自分が見つからないと言う確信が無ければ”、こんな方法は取らない筈」

 

テーブルに並べられた写真を睨め付けながら続ける折紙の言葉に、士道は頷いた。それは、士道がずっと感じている違和感でもあったのだ。

話を聞いた耶俱矢が、フンと鼻を鳴らしながら腕組みをする。

 

「ーーーー成る程な。だが、仮にそうだとして、どうする? 写真は13枚もあるのだぞ? まさか1枚ずつ指名していくと言うのか?」

 

「そんな必要はない」

 

そう言うと、折紙は写真を束ねた。

 

「折紙?」

 

「見ていて」

 

そして次の瞬間。

 

ーーーーカッ。

 

懐に手をやった折紙は、束ねた写真の上に、トレンチナイフを突き立てた。刃は完全に写真を貫通しており、テーブルにまで達していた。

 

「い・・・・ッ!?」

 

「これが最も簡潔かつ、速やかな確認方法」

 

眉1つ動かさず折紙は言うと、グリッとナイフで写真を抉った。

が、何の反応を示されなかった。

 

「・・・・どうやら、違ったらしい」

 

折紙は微かに残念そうな声を発すると、ナイフを懐にしまい直した。

士道は、もし本当に七罪が写真に化けていたらと思うと、冷や汗をかいた。

最も、精霊がただのトレンチナイフで傷を負わせられるなら、苦労はしないだろうが。

また振り出しに戻り、耶俱矢は焦れ始め、美九と口論になりそうだったが、琴里が間に入って止めた。

が、その間、士道は無言で口元を押さえ、皆の言動に注視し、輪島のおっちゃんは折紙から写真を手渡して貰い、ジッと写真に写る容疑者達を入念に見ていた。

 

「士道・・・・? どうしたのよ」

 

「・・・・ああ、やっぱり、もしかしてーーーー」

 

士道は独り言を呟き、ガリガリと頭をかいた。

 

「おっちゃん、ちょっと写真を見せてくれるか?」

 

「・・・・ん、ああ」

 

写真をジッと観察していたおっちゃんが、束ねた写真を手渡し、士道はナイフで穴だらけになった写真を手元に並べて、ジッと凝視した。

 

「残った容疑者は五人・・・・でも、どれだけ捜査しても、この中に七罪らしき者は見つからない・・・・ルールの隙を衝いて、絶対に自分が当てられないようにしている・・・・【この中に、私がいる。誰が私か、当てられる?】・・・・」

 

昼夜問わずあらゆる情報を捜査し、考え続けた士道が見出だした1つの可能性だ。

呪文のようにブツブツと呟き、細く息を吐き、そして皆に視線を巡らせながら、士道は言葉を発した。

 

「ーーーーもしかしたら、皆の中に、七罪はいないのかもしれない」

 

『・・・・は・・・・?』

 

士道が言うと、皆が目を丸くした。

いや、皆ではなかった。輪島のおっちゃんだけは、顎に手を当てながら、思考を巡らせ、口を開ていた。

 

「・・・・つまり、“写真の中の人物”ではなく、“今残っている俺達の中には、精霊はいない”って事か士道?」

 

「(コクン)」

 

「・・・・!」

 

おっちゃんの言葉に頷く士道を見て、琴里はその意味を察したのか、眉をぴくりと動かし、凄まじい速さで手元の資料を繰り始め、その様子を耶俱矢と美九がポカンととした調子で見る。

 

「成る程・・・・まさか・・・・でもそれなら・・・・」

 

「えっ? えっ? ちょっとー、納得してないで教えて下さいよー」

 

美九がせがむように言うと、琴里は額に汗を滲ませながら頷いた。

 

「・・・・ええ。もしかしたら、これってーーーー」

 

と、琴里が言いかけたその時。

部屋の中心の空間が一瞬歪んだと思ったら、その場に淡い光が溢れーーーー天使・〈贋造魔女<ハニエル>〉が現れた。

 

『な・・・・っ!?』

 

皆の狼狽が、部屋中に響き渡り、士道は慌てて部屋の時計を目をやると、23時20分ーーーー時間が残っていた。

 

「どういう事だ? まだ今日は過ぎてないじゃないか!」

 

《ーーーーうふふ、そう慌てないの。最後の夜なんだから、もっと楽しみましょう?》

 

士道が叫ぶと、それに答えるように〈贋造魔女<ハニエル>〉の先端が展開され、鏡に浮かんだ七罪が楽しげに笑っていた。

 

《最後の夜の特別ルールよ。今日の指名時間は、いつもの10倍、10分間あげるわ。10分で私を当てられなかった場合、もしくは指名がなかった場合、また10分間の指名時間をあげる。最終的に、容疑者が1人になるまでに私を当てられなかったあなたの負けよ。今ここにいる皆の『存在』は全て私がいただくわ》

 

「く・・・・!」

 

士道が顔をしかめ、折紙がさらに詳しく教える。

残った容疑者は五人。今から、犯人を指名せずにタイムオーバーになれば、ちょうど午前0時には容疑者は1人だけとなり、日付が変わればその最後の1人を消し、このゲームを終わる事を教えると、士道は拳を握り、他の皆も、緊張と焦燥と恐怖が表情に彩られていた。

いや、輪島のおっちゃんだけは、再び写真に視線を泳がせていた。

この中に七罪がいるとは思えないと士道の思考を中断させるように、七罪が言葉を続ける。

 

《ああ、そうそう。折角皆集まってくれてるんだし、今日は士道くん以外が私を指名しても構わないわよ。でも勿論、指名タイミングは10分に1回だから、良く考えて指名してね。もし投票が同数だった場合は、その指名は無効とさせてもらうから》

 

「・・・・随分、勝手してくれるな」

 

目まぐるしく追加ルールが加えられ、眉をひそめる士道だが、いつまでも混乱していられない。40分で4回きりの指名なのだから。失敗は許されない。

そんな中、琴里が七罪に目をやる。

 

「ーーーーちょうど良いわ。ゲームマスターに確認しておきたい事があるの」

 

《あら、何かしら?》

 

「このゲームのルールは、この写真の中にあなたがいる。当てられなかった場合、1日につき1人が消されてしまう。犯人の指名を間違った場合、間違えられた人も消えてしまう・・・・で合っているわね?」

 

《さぁ、どうでしょう・・・・と言いたい所だけど、まあ、それ位なら答えてあげる。ーーーーあなたの認識は間違いないわ》

 

「・・・・そ」

 

おどけるように肩をすくめて言う七罪に、琴里は小さく鼻を鳴らしながらチラっと士道に視線を寄越し、その視線に頷きで返す士道。

 

「ど、どういう事だ? おい琴里、説明せぬか」

 

耶俱矢が眉根を寄せながら言うと、琴里は資料をテーブルの上に放って、言葉を発した。

 

「もしかしたら私達は、大きな勘違いをしていたのかもしれないわ」

 

「何・・・・?」

 

琴里はテーブルに並べられた写真を選り分けながら続ける。

 

「私達は、この写真に写っている人物の中から、七罪を見つけようとしていた」

 

「うむ・・・・だがそれがゲームのルールなのであろう?」

 

「ええ。その前提条件は間違っていない。でもーーーーその後の思考が、完全に方向付けられてしまっていたとしたら」

 

言いながら、琴里は残っている容疑者と消えてしまった容疑者の写真を分ける。

 

「ど、どういう・・・・事だ?」

 

「相手は精霊。こちらの予想を超える力を持っていたとしても何も不思議はない。でも、もし仮にーーーー“既に”この中に七罪がいないのだとしたら、全てに説明がつくのよ」

 

「な・・・・!?」

 

「えぇっ!?」

 

「・・・・・・・・!」

 

「う~む・・・・」

 

耶俱矢と美九が狼狽し、折紙は目を見開いて、持っていた資料を繰り始め、おっちゃんは何かを考えるように腕組みをした。

そして資料を見ていた折紙が、ゆっくりと顔をあげる。

 

「ーーーー成る程。確かに、どこにも書かれていない」

 

「ちょ、ちょっと待ってください、それって・・・・」

 

混乱しそうになる美九に、士道が口を開く。

 

「・・・・そう。普通に考えれば、犯人は残った容疑者の中に存在する。ーーーーでも、これは推理小説じゃない。消えてしまったからといって、容疑者は死んでいる訳でも無い。“1日の最後に消えてしまうのが七罪じゃないだなんて、ルールには書かれてなかったんだ”」

 

「「・・・・ッ!?」」

 

耶俱矢と美九は目を丸く見開き、息を詰まらせた。

これがーーーー士道が辿り着いた可能性。

いくら調べても怪しい箇所がない残りの容疑者。

進めば進むほど七罪が不利になるゲームルール。

この仮定が正しければ、それら全てが繋がる。

 

「ならば士道。琴里。御主らは今ここにいる面子ではなく、既に消えてしまった容疑者の中に七罪がいると言うのか?」

 

頬に汗を垂らしながら耶俱矢が問うと、琴里は難しげな顔をして顎に手を当てた。

 

「もっと正しく言うのならーーーー既に消えてしまった人物の中でも、士道に指名されて消された人物の誰か、よ。士道に指名されていながらしらばっくれるのは、流石にルール違反でしょうから」

 

言って琴里は、指名された四糸乃、タマちゃん先生、麻衣の写真を除外した。

が、おっちゃんは何故か、その中の写真の1枚を手に取ったが、全員は残った五人の写真、七罪によって1日の終わりに消されてしまった面々に目が行って気に止めなかった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいー。それって今よりも難しくなってませんかー? 容疑者の数が増えちゃったじゃないですかぁ!」

 

美九が悲鳴じみた声をあげた。チャンスは少ない状況で、残った容疑者の他に、更に選択肢を拡がったのだ。

が、それを否定したのは折紙だ。

 

「ーーーー確かに数の上ではそう見える。しかし、実際はそうではない。資料を見る限り、1人だけ、ほぼ確実に安全圏を確保できた人物がいる」

 

「え・・・・?」

 

折紙の言葉に、そこまで辿り着けていなかった士道が眉をひそめた。

が、琴里は折紙の言葉に同意するように首肯した。

 

「そう。確かに指名される前に消えてしまえば、私達の頭の中からは、その人が七罪である。と言う思考が無くなる。そうなれば、安全圏に脱する事ができたも同然よ」

 

眉を歪めながら、琴里は続ける。

 

「でも、例えそうだとしても、最初の条件は皆と同じ筈。確率は低いにせよ、自ら消える前に士道に指名されたなら、七罪は負けてしまうでしょう。ーーーー士道、良く思い出して。1人だけ、いた筈よ。偶然に頼らず、あなたの指名を逃れ得た人物が、たった1人だけ」

 

言われて、琴里と折紙が言っている人物が思い当たったそれはーーーー。

 

「・・・・夕弦・・・・?」

 

そう。1日目の夜に消えてしまった夕弦だった。

それを聞いて耶俱矢が不機嫌そうに顔を歪め、士道に詰め寄り、顔を寄せようとするが、「1日目は〈贋造魔女<ハニエル>〉が現れず、2日目から現れ、犯人指名が始まったのよ。1日目の夜に消されたのなら、言い換えれば、もう絶対に犯人と指名されなくなったと言う事」、と琴里に諭され、不満そうだが、耶俱矢は口をつぐんだ。

何とも性悪な思いつきだが、琴里は七罪が化けているのは夕弦だと言った。

確かに、筋は通っているが・・・・何故だろうか、士道はまだ決定的な“何か”を、見落としているように感じた。

近くを見ると、おっちゃんも、眉根を寄せながら考えていた。

が、七罪の余裕綽々の声に士道はハッとなる。

 

《ふうん・・・・それで良いのね? ちょうど10分よ。琴里ちゃんの意見に賛同する人は挙手を頂戴》

 

琴里が言うと、士道とおっちゃん以外が手を挙げた(耶俱矢は躊躇いガチだが)。

 

「・・・・士道? おじさん?」

 

琴里が怪訝そうに顔を向けるが、それでも2人は手を挙げなかった。

それを見て、七罪がニィ、と唇の端を歪める。

 

《はい、では締め切り。賛成多数により、八舞夕弦ちゃんが指名されました》

 

言って、鏡に映った七罪が、パチンと指を鳴らした。するとーーーー。

 

「なーーーー」

 

その場に立っていた折紙の身体が淡く輝き、〈贋造魔女<ハニエル>〉の鏡の中に吸い込まれてしまった。

 

「お、折紙・・・・っ!?」

 

《ーーーーふふ、ハ・ズ・レ。発想は面白かったんだけど、残念でした~。ま、指名されたのが既に消えた夕弦ちゃんだから、1人しか消せなかったのは残念だけどね。ーーーーさ、指名時間リセットよ。次に指名する人を選んでちょうだい。ふふ、チャンスはあと4回。私を当てられるかしらぁ?》

 

七罪は可笑しくて堪らないと言った様子で笑い、挑発するようにクルクルと指を回すが、琴里はその挑発に乗る余裕がないように、戦慄した顔になる。

 

「そ、そんな、まさか・・・・夕弦じゃなかったって言うの・・・・!? じ、じゃあ一体、誰が・・・・!」

 

言って、愕然とした表情を浮かべながらテーブルに肘を突いた。

この状況で全てが振り出しに戻り、時間も刻一刻と減っていく。皆の鼓動が速くなっているのが手に取るようにーーーーいや、ただ1人だけ、平静な人物がいた。

 

「・・・・おっちゃん?」

 

そう、輪島のおっちゃんだけは、冷静にある人物の写真と、その人物の資料に目を走らせていたのだ。

 

「おっちゃん・・・・何でそんなに、冷静なんだ?」

 

士道の言葉に、思考が堂々巡りしそうになっていた琴里達も目を向けた。

おっちゃんは顎に手を当て、少し考えるように唸り声をあげると、静かに口を開いた。

 

「・・・・・・・・もしかしたら俺達は、“難しく考え過ぎていたんじゃないか”?」

 

「え・・・・?」

 

難しく考え過ぎていた。

それはどういう事なのだろうか。

 

「・・・・ちょっと頭を捻らせて、目の前にある情報を、少~し角度を変えて見ればーーーーこのゲーム、案外と、それこそ簡単に、もっと早い段階に攻略できたかも知れないな」

 

そう言って、おっちゃんは写真と資料をテーブルの上に置き、全員がそれを見るがーーーーその人物は、“士道が指名して、七罪に消されてしまった人物だった”。

 

「おっちゃん、『ーーーー』じゃない! だって“彼女”は俺が指名して、消されてしまったんだぜ!?」

 

 

「・・・・士道、少し見方を変えるんだ。正面から見るだけが情報じゃない。その情報の中身を、少し角度を変えて見れば、以外な『答え』が出てくるかも知れないぞ」

 

「ーーーーそれって・・・・?」

 

が、おっちゃんの言葉を遮るように、七罪が少し声を張り上げて言葉を発した。

 

《ーーーーさあ! そうこうしている間に時間よ! まだ指名されていないようだけど、どうするの!?》

 

どうやら時間が迫っていたらしい。しかし、何処か七罪が焦ったように声を張り上げ、皆を見渡すように視線を、イヤ、一瞬だけだったが、おっちゃんの方に鋭い視線を寄越したように見えた。

 

「おっちゃん! どういう事なんだよ!? 教えてくれよっ!」

 

「ーーーーすまん士道。これは俺が言っては意味が無い」

 

「はぁっ!?」

 

おっちゃんは士道が両肩に手を置くと、諭すように口を開いた。

 

「お前が“答え”を導き出さないと、あの精霊にーーーー七罪に勝った事にならない・・・・。“お前が気づいてあげないと意味が無いんだ、七罪の為にもな”」

 

「何だよそれ!?」

 

《指名しないの!? それならーーーー》

 

おっちゃんに詰め寄ろうとする士道を止めるように、七罪が声を張り上げる。七罪が言いかけた所で、琴里が叫び声を発する。

 

「ーーーー十香よ!」

 

「こ、琴里? 十香が七罪なのか?」

 

「・・・・正直、当てずっぽうよ。でも、おじさんの推理が正しいのか分からないし、貴重な犯人指名の機会を逃す訳にはいかないわ」

 

「明らかに、次に消されるのはーーーー輪島のおじさんだと妙な確信が有るけどね」、と琴里は小さな声でそう呟いた。

 

《・・・・それで、十香ちゃん、で良いのね?》

 

「~~~~~~~~~~!!!」

 

余裕を取り戻したように、七罪が問うと、士道は思い当たる者はいなかったので、苦々しげに首肯しようとしたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪・・・・待たんか、このヘボ探偵にヘッポコ警部以下のボンクラでポンコツなド低能のド底辺、恥と言う概念すら脳内データから失っている生命体≫

 

ーーーーバシィイイイイインっ!!!

 

「ゆべしっっ!!?」

 

突如士道の、イヤ、琴里に耶俱矢に美九の頭に響いた声と、士道にとってはお久しぶりの衝撃が、脳天から全身に響いた。




輪島のおっちゃんが気づいた事とは?
そして、遂に相棒ーーーーと言うよりも、飼い主が目覚めた!
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