デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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龍が起きてGAME END

ー七罪sideー

 

「な、何がどうしたの?」

 

七罪は目の前で何が起こったのか理解できず、間の抜けた声を発するが其も仕方ない。

十香を指名した琴里と、それに苦々しく頷こうとする士道。

勿論、そんな当てずっぽうが当たる訳なく、不正解と言う事で、自分が化けている“者”の目星を付いていそうな輪島のおっちゃんを消そうとしていた。

だが、士道が突然奇声を上げて、頭から床に倒れた。がその時、琴里、耶俱矢、美九の3人の不安や焦燥に染まっていた顔が一気に変わり、安心した笑みを浮かべたのだ。

一体どういう事だ、と思うと、ヨロヨロと士道が動き出した。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「い、今の、声は、まさか・・・・!」

 

脳天に感じる久しぶりの痛みに、たった半月近くなのに、まるで何十年も懐かしく感じる痛みに、ヨロヨロと動きながら、士道はバックルに指輪を翳した。

 

[ドラゴライズ プリーズ]

 

そして、これまで反応しなかった『ドラゴライズリング』が起動し、自分の身体に魔法陣が展開されると、魔法陣から現れたのはーーーー。

 

士道と同じくらいの大きさになった、ウィザードラゴンだった。

 

「ド、ドラゴン・・・・!」

 

『まぁったく、世話の焼けるなこの低能は・・・・!』

 

「ハニーーーーー! おはようございますぅぅぅ! 会いたかったですぅぅぅっっ!!」

 

美九がドラゴンの長い首に抱きつくと、そのままドラゴンの顔にチュッチュッと、キスの嵐を降り注ぐ。

いつもなら冷たくあしらうドラゴンだが、久しぶりなので鬱陶しそうだが、大人しくキスを受けていた。

 

「ド、ドラゴン! 実は・・・・!」

 

『ああ、皆まで言うな。ある程度の状況は把握している』

 

「えっ? それってどういう事だ?」

 

「アンタまさか、起きてたの?」

 

『いや、捜査1日目から、そうーーーー〈プリンセス〉の腹の虫が鳴った時に、【む、いかん。〈プリンセス〉が腹を空かせているのか・・・・?】と思い、少し目を覚ましてな。それまで半醒半睡状態で状況を見ていた。〈プリンセス〉が消えたと聞かされて、漸く目が完全に覚めたのだ。そして、今日小僧が寝た後に、これまでの小僧の記憶を検査し、捜査状況を調べていたのだ』

 

「十香の腹の虫で起きて、十香が消されたと知って目が完全に覚めた訳・・・・?」

 

「十香ちゃんのお腹が空いた音って、ハニーにとっては目覚まし時計なんですかね・・・・?」

 

「どんだけ十香に対して過保護なんだし・・・・?」

 

あまりにもアホらしい起床方法に、琴里達は頬に少し汗を垂らした。

 

「って、そんな事どうでも良いんだよっ! ドラゴン! 起きていたら何でもっと早く話しかけてくれなかったんだよっ!?」

 

『あの折紙<無表情娘>のいるところで、我が姿を見せる訳にはいかんだろう。唯でさえ精霊達がいる空間で、少し殺気を漏らしていたヤツだ。忌々しい事に小僧の中に住んでいる我がいたら、何をするか分からんからな』

 

「たくっ! それよりもドラゴン! 七罪って精霊が・・・・!」

 

『うむ。あれが新たな精霊〈ウィッチ〉に、その天使〈贋造魔女<ハニエル>〉か・・・・?』

 

ドラゴンが視線を向けると、七罪は少し身体をビクッと強ばらせた。

 

《へ、へぇ・・・・士道くんに、そんな隠し玉がいたのね。それで、あなたは私が化けた子が誰なのか分かったのかしら? 唯一知っていたおじさんはとうに消えているけど?》

 

「「「「っっ!!?」」」」

 

『なるほどな・・・・』

 

言われて、士道達は周りを見るとーーーー確かに、ドラゴンの事で目が行っていたが、輪島のおっちゃんの姿が消されていた。

 

『・・・・これは、かなり切れ者な精霊が現れたな』

 

「ド、ドラゴン! 感心してないで、もう分かっているなら、早く『答え』を(バシィンっ!)ブバッ!!」

 

七罪を見ながら感心したような声を漏らすドラゴンに、『答え』を聞こうとした士道だが、懐かしの尻尾ド突きによって黙らされた。

 

『たわけが、ここまでやって来たなら、自分の力で『答え』を導きだそうと言う気概がないのか? 折角輪島<指輪を作る中年>が『ヒント』を出してくれたのだ。一生に1度で良いから、少しはそのゾウリムシにも劣る知能を回転させて見てはどうだ?』

 

「ヒ、ヒント・・・・?!」

 

士道は、おっちゃんが消える前に自分達に見せた写真と資料を見た。しかし、それは“指名に失敗した子”であった。

確かに“彼女”に不審だと思った、彼女について、怪しいと思えるような“事態”が起こった。だが、それを踏まえて“彼女”を指名したが、それでもハズレてしまったのだ。また“彼女”を指名しても、失敗する可能性が大きい。そんな博打にもならない勝負には乗れないーーーー。

そんな士道の心中などお見通しと言わんばかりに、ドラゴンは呆れたようなため息を吐いた。

 

『・・・・とことん貴様は度しがたい愚か者だな。中年の言っていた言葉を思い返してみろ。そうすれば、このゲームのルールに隠された『穴』を見つけられるぞ』

 

「えっ・・・・? おっちゃんの言っていた事・・・・」

 

【・・・・士道、少し見方を変えるんだ。正面から見るだけが情報じゃない。その情報の中身を、少し角度を変えて見れば、以外な『答え』が出てくるかも知れないぞ】

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

おっちゃんの言葉を思い返して、士道は“彼女”の写真をマジマジと見つめる。

とその時ーーーー。

 

「ーーーーーーーー」

 

士道は、頭に一瞬の閃きが走ったのを感じた。

折紙が提示した可能性。七罪は、“人間以外のモノに変身できる”。

そして、あの時『彼等』が自分に何を伝えようとしていたのか。

今まで何処か感じていた靄のような“違和感”。

それら全ての歯車が、カチッ、と音を立ててかみ合わさり、『答え』へと導き出された。

 

「まさ、か・・・・」

 

「「士道・・・・?」」

 

「だ、だーりん?」

 

士道が半ば呆然と声を発すると、琴里と耶俱矢と美九が、怪訝そうな顔を向ける。

しかし、士道はそれに答える余裕もなく、これまでの情報を繋ぎ合わせていく。

ーーーー思えば、このゲームは最初からおかしかった。最初に与えられたたった数行の文言。日を追う毎に追加される要素。

日毎に増していくそれらから、士道と琴里、令音は、七罪が制定したルールを推測していった。ゲームの実像を捉えようと躍起になっていた。

しかし、それらこそが、七罪の目的だったとしたら。

 

【・・・・・・・・もしかしたら俺達は、“難しく考え過ぎていたんじゃないか”?】

 

おっちゃんの言うとおり、自分達は、“難しく考え過ぎていた”。いや、その思考の沼に嵌まったとも言える状態こそ、七罪の思惑だったのかもしれない。

 

「『この中に、私がいる。誰が私か、当てられる?』・・・・」

 

幾度も口にしたルールを呟き、士道は“彼女”の写真を手に取った。

 

「・・・・七罪。1つ確認したい事がある」

 

《っ! ふうん? 何かしら? 命乞いなら聞かないわよ》

 

士道が七罪に視線を向けて問うと、七罪は若干緊張した調子で返してくる。が、それが虚勢であると、士道は何となく見抜けた。

 

「ーーーーお前の送ってきた写真は13枚。でも、容疑者の数は・・・・“本当に13人か?”」

 

《ふふ、さあて、どうかしらねえ》

 

士道が言うと、七罪はさして慌てた様子もなく返す。

しかし、それで十分だったーーーー士道が確信を得るには。

七罪は既に1度答えた。ーーーー先刻の琴里の質問に。

が、士道の質問には答えを返さず、はぐらかした。

つまりそれは、士道の憶測を裏付けたと言う事だ。

士道は数日前に、“彼女”と交わした会話を思い返す。

 

「あ・・・・」

 

すると、その時は特に気にしなかった細かな事柄が、頭の中に蘇る。

間違いーーーーない。

士道は唾液で喉を濡らすと、ゆっくりと顔を上げた。

 

「ーーーー分かったよ、ドラゴン、皆」

 

『はぁ』

 

「「「・・・・!?」」」

 

士道が静かに言うと、ドラゴンは、漸く気づいたか、とため息も漏らし、琴里達は息を詰まらせーーーー七罪は、ピクリと眉の端を動かした。

 

「わ、分かったって・・・・ヤツが、七罪が誰に化けてるのが、か!?」

 

「ほ、本当ですか、だーりん」

 

「ああ。おっちゃんの言うとおり俺達は・・・・考え過ぎていたんだ」

 

「・・・・一体、どういう事?」

 

琴里が訝しげに顔を作りながら訊ねると、士道はチラッとドラゴンに視線を向ける。ドラゴンはコクリと小さく頷くのを見て、1度深呼吸をしてから続ける。

 

「前提が間違っていたんだよ。七罪は自分をいち早く安全圏に移動させたんじゃない。そもそも最初から・・・・安全圏にいたんだ」

 

「・・・・どういう事?」

 

「今の七罪の返答で確信が持てた。七罪はーーーー“1度も容疑者が13人だなんて言ってなかったんだよ”」

 

「「え・・・・?」」

 

耶俱矢と美九は目を丸くして、並べられた写真を見る。

 

『そうではない〈テンペスト〉に〈ディーヴァ〉。枚数=<イコール>人数ではない。“1枚の写真に、複数の人物が写っていたのだ”』

 

「そう。もっと正しく言うなら、“13人と1体が存在していた”んだ・・・・!」

 

「・・・・・・・・!」

 

ドラゴンと士道の言葉に、琴里がハッとした顔となり、その写真を手にして見た。

 

「まさか、そんな事って・・・・でも、確かにそれならーーーー」

 

「だーりん! ハニー!」

 

「時間無いし!」

 

美九と耶俱矢がタイムリミットを伝える。

士道は大きく深呼吸し、ゆっくりと右手を上げーーーーピンと人差し指を立て、〈贋造魔女<ハニエル>〉の方に向けた。

そして、

 

「七罪はーーーーお前だ」

 

〈贋造魔女<ハニエル>〉に向かって、続ける。

 

 

「そうだろう、“よしのん”・・・・!」

 

 

言うと、天使に映った七罪が、真面目な顔となって士道を見つめ返す。

 

《・・・・よしのん、ね。四糸乃ちゃんの着けてるパペットの事かしら》

 

「ああ、そうだ。お前はこの数日間、よしのんに化けていたんだ」

 

《・・・・理由を聞かせてもらえるかしら?》

 

「ーーーーそれに気付けたのは、七罪が人以外にも化ける事ができるって可能性・・・・それに、ガルーダ達〈プラモンスター〉達が、日頃から遊び相手をしているのは、四糸乃だけじゃない、よしのんもそうだった。お前も、ガルーダ達がよしのんに“違和感”を感じていると察したから、アイツらをぬいぐるみにしたんだろ?」

 

《・・・・・・・・・・・・》

 

七罪が無表情のまま、無言で腕組みをする。士道は構わず続ける。

 

「そして、その可能性に気付けたら・・・・おかしな事を思い出したんだ」

 

「おかしな事?」

 

琴里が訊ねるが、士道は七罪から視線を逸らさないまま、小さく首肯する。

 

「ああ。調査1日目、四糸乃とよしのんが仮装をして俺の家に来た時ーーーー最初はドアの隙間から頭を出したよしのんに驚いて、持ってた携帯を投げちまった。でもよしのんは、その携帯を綺麗に避けた。まるで、携帯が飛んで来るのが見えたみたいに。ーーーー四糸乃の目は、確かにドアの向こうにあったのに」

 

「あ・・・・!」

 

琴里は目を見開いた。

そう。日頃普通に話していて忘れがちだが『よしのん』は、四糸乃が左手にパペットを着けている時だけ、パペットを介して現れる人格だ。その感覚器は、全て四糸乃に依存する筈なのに。

普通に考えればーーーー避けられる筈がない。

 

「それに・・・・もう1つ。俺が昔の事を確かめようと会話を振った時、よしのんは、折紙の家にいた時の事を話したんだ。確かに、四糸乃がよしのんを無くした時、俺はよしのんを折紙の部屋で見つけた。でもーーーー知る筈がないんだよ。四糸乃から離れたよしのんは、ただの人形なんだから」

 

そう。よしのんが知る筈がない。どこで自分が保護されたかなんて。

だが、七罪はそれを知っていた。士道に変身した時、記憶をトレースしたのか・・・・さもなくば、誰に変身しようかと品定めをしていた際に、折紙の日記でよしのんの事を知ったのかは分からないが、よしのんが知り得ない情報を、持っていた。

 

「お前は声を発してしまった。動きも声も、全て四糸乃に任せていれば良かったのに・・・・! 情報を補足して疑いを晴らそうとしたのか、余裕をかましてヒントを与えたつもりなのか知らないが、一言だけ、言葉を発してしまったんだ・・・・!」

 

『自分の能力に自信が有るが故に慢心し、余計な行動をしてしまった。それが貴様の失敗だな』

 

そして士道はーーーーもう1度、〈贋造魔女<ハニエル>〉に指を突きつける。

 

「さあ、どうなんだ、七罪! お前が化けていたのは、よしのんなのか!?」

 

「・・・・それはーーーー」

 

〈贋造魔女<ハニエル>〉に映った七罪が、頬に汗を垂らして言い淀む。

 

『返答は良いーーーーGAME ENDだ』

 

ドラゴンがそう言った瞬間ーーーー。

士道が指差した〈贋造魔女<ハニエル>〉が、蠢動した。

次いで、その震動が次第に激しくなって行くと共に、〈贋造魔女<ハニエル>〉の先端部の鏡に、細かなヒビが入り始めた。

そして、鏡が今までのような淡い光とは異なる、強烈な輝きを発した。

 

「くーーーー」

 

「な、何よ、これ・・・・!」

 

「ぬあっ!」

 

「きゃぁっ!」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

大型のサーチライトを幾つも纏めたような凄まじい光が、部屋中に満ち、士道達は思わず手で顔を覆った。




次回、第八章終了です!
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