デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

111 / 278
『第九章』の始まりです!


七罪チェンジ
リトル精霊達+αとの日々


ー士道sideー

 

「・・・・おはよう」

 

朝。士道は大きな欠伸をしながら、リビングへと入る。

子供化してからと言うものの、精霊達を隣のマンションに帰す訳にもいかないので、士道の部屋に十香、四糸乃、美九が。琴里の部屋に琴里、耶倶矢、夕弦に別れて雑魚寝する事になったのだが・・・・夜中中ずっと四糸乃と美九にしがみつかれ、ついでに十香が胸の上に乗ったため、あまりよく眠れなかったのである。

が、唯一折紙だけが、「やることがある」と言って、凄く、物凄く名残惜しそうに自宅に戻っていった。心配なのでプラモンスター達にこっそり護衛として尾行させたが、問題無かったようだ。

しかし、その後なぜか、士道の下着や歯ブラシ等の幾つかの私物が見当たらなくなっているのだが・・・・一体いつ無くしてしまったのだろうか?

 

「おはよう、しどう」

 

「おはよーございまーす、だーりーん」

 

「お、おはよう・・・・ございます・・・・」

 

『うーん、良い朝だねー』

 

と、既にリビングにいた琴里と美九、四糸乃と『よしのん』が、士道の方に目を向けて挨拶を返した。

 

「おう、皆早起きだな」

 

そう言うと、3人と1匹は思い思いの表情を浮かべる。

 

「さいていげんのじこかんりよ」

 

「あの、いつも・・・・おきるじかんなので」

 

「はやねはやおきは、おはだのみかたなんですよー。アイドルとしてはとーぜんですー」

 

半眼で腕組みする琴里、照れるように肩をすぼませる四糸乃、美九は自分の頬を撫でながら得意げに言う。なるほど。この3人は子供化しても生活リズムは崩れていないらしい。

自分の部屋で幸せそうな十香の寝顔を思い出し、思わず笑ったしまった。姿がないと言う事は、八舞姉妹も琴里の部屋でまだ寝ているのだろう。妙に微笑ましい事だ。

まぁ、士道の部屋のパソコンを使って、徹夜で撮影した精霊達の姿の写真やムービーを編集しながら寝落ちしたドラゴンには呆れたが。

 

「ーーーーさて、ちょっと待ってな。すぐ朝飯にするから」

 

士道はそう言うと、エプロンを身に付け、手を洗ってから朝食の調理を開始し、ほどなくして、リビングには良い匂いが漂い始める。

 

「ほら、もう少しでできるからテーブル空けといてくれ」

 

「「「はーい」」」

 

声をかけると、四糸乃がテーブルの上にある物を片付け、琴里が台布巾でテーブルを拭き、美九が料理が盛り付けられた皿を運んでいく。別段珍しい光景でもないのだが、今の彼女達の幼い容姿の為か、妙に『おてつだい』感が出ていた。

 

「さ、じゃあ食べようか。いただきます」

 

「「「いただきまーす」」」

 

3人が士道に倣うように手を合わせ、ペコリと頭を下げる。

 

「! おいしい・・・・です」

 

「ん、まあまあね」

 

「ねぇねぇ、だーりん、だーりん」

 

と、四糸乃と琴里の感想に笑みを浮かべる士道の袖を、美九が引っ張る。

 

「ん、どうしたんだ、美九」

 

士道が聞くと、美九は両手を胸元に組み合わせながら目を伏せ、「あーん」と口を開けてきた。

 

「え?」

 

「んもぅっ、あーんですよ、あーん」

 

「あ、ああ・・・・」

 

プリプリと怒るような仕草をする美九が、再び口を広げると、士道はトーストを一口大に切ってから、美九の口に運んでやる。と、美九は両頬を押さえながら嬉しそうに声を弾ませた。

 

「うぅーん! おいしいですぅ。だーりんにたべさせてもらうとまたかくべつですぅ」

 

「はは・・・・まあ味は変わらないと思うけどな」

 

その様子を、琴里と四糸乃が愕然とした表示を作り、「むむぅ・・・・」と難しげに眉をひそめていた。

 

「2人とも・・・・?」

 

と、そこで。

 

『とうっ!』

 

「きゃ・・・・!?」

 

何を思ったか、『よしのん』が急に四糸乃の右手首に鋭いチョップを食らわせ、四糸乃が握っていたフォークを取り落とさせてしまった。

 

「お、おい、よしのん?」

 

「オーノー! ゴメンね士道くーん。よしのんのうっかりで四糸乃のフォークを落としちゃったよー。悪いんだけど、四糸乃にも食べさせてあげてくれないかなぁ?」

 

「は・・・・? それは構わないけど、それより新しいフォークを・・・・」

 

「食・べ・さ・せ・て・あ・げ・て・く・れ・な・い・か・なぁ?」

 

「お、おう・・・・」

 

よしのんが顔をズズイと寄せ、まるでドラゴンのような迫力で、凄むように言ってきて、士道は気圧されながら頷いた。

 

「あ、あの・・・・しどうさん・・・・ごめんなさい」

 

「いや、四糸乃のせいじゃないだろ。ほら、あーん」

 

「あ、あーん・・・・」

 

士道がトーストを刺したフォークを差し出すと、四糸乃は躊躇いがち、小さな口をいっぱいに広げ、そのままトーストを頬張ると、アムアムと咀嚼してから、少し恥ずかしそうに微笑んだ。

 

「ありがとう・・・・ございます。ほんとうに・・・・おいしいです」

 

「そっか。そりゃ何よりだ」

 

士道は微笑み。落としてしまった四糸乃のフォークを交換してから、再び自分の皿に向き直った。がーーーー。

 

「・・・・・・・・むぅぅ・・・・」

 

そこで琴里が、今にも泣いてしまいそうなくらい目を真っ赤にしているのを発見し、またも食事を中断した。

 

「・・・・ええと」

 

流石に鈍感で唐変木の士道でも分かった。子供化している為だろうか、いつもよりも感情の起伏が読み取りやすくなっている気がする。士道は先ほどと同じように、一口大に切ったトーストを、琴里の方に向けてやった。

 

「ほら琴里、あーん」

 

「・・・・! べ、べつにたのんでないわよ、そんなの。こどもあつかいしないでくれる!?」

 

「・・・・いや、子供だろ」

 

「うぐ・・・・! むー・・・・」

 

琴里は唸ってから、トーストを頬張り、飲み込んでから、唇を尖らせて目を逸らし、小さな声を発してくる。

 

「・・・・ありがと」

 

「あいよ、どういたしまして」

 

士道はそう言って、漸く食事に戻ろうとする。

が、その瞬間、不意にリビングの扉がカチャリと開きーーーー物凄く眠そうな顔をした十香と、士道のスマホを構えていたドラゴンが部屋に入っていた。

 

「・・・・むう、なにやら、いいにおいが・・・・ふぁぁぁぁ・・・・」

 

言って、大きな欠伸をする十香。

あまりに十香らしい目覚め方に、士道達は誰からともなく笑ってしまった。

 

『フッフッフッ。実に良い映像が撮れたなぁ』

 

顔を真っ赤にして、ドラゴンからスマホを取り上げようと追いかけっこを始めた琴里を除いて。

 

 

 

 

 

「ーーーーそういえば、きょうはどうするつもりなの?」

 

それから少しして、ドラゴンに逃げられた琴里が朝食を終えて、士道に向かって問うてくる。ちなみに十香は朝食を食べた後、満足そうにソファに寝転がり、ドラゴンが持ってきた毛布にくるまり、再び夢の世界に旅立ってしまっていた。

 

「ああ、今日は取り合えず、殿町達の事も気になるし、学校に行ってみようと思う。七罪の事や十香達を置いていくのも不安だから、昼前には早退してくるよ」

 

士道は頬を掻きながら、先日の事件に巻き込まれ、幸い子供化しなかった殿町と亜衣麻衣美衣トリオ、そしてタマちゃん先生の様子を確認しておきたかった。

 

「そ。わかったわ。とはいえ、なつみがどこにいるのかわからないじょうきょうよ。じゅうぶんちゅういしてちょうだい。それにーーーーファントムたちもそろそろうごきだしてくるかもしれないわ」

 

「ああ、わかってる。ーーーーそろそろ出るから、耶倶矢と夕弦が起きてきたら、朝ごはんを温めてやってくれ。火を使わせるのは怖いしな」

 

「だから、こどもあつかい・・・・」

 

琴里は、そこで言葉を止め、不満そうに口を歪めてからコクリと頷いた。

士道は、「いい子いい子」をするように琴里の頭を撫でた(勿論、四糸乃と美九にもせがまれた)後、プラモンスター達を召喚し、制服を着て、靴を履いて学校に行こうとする。

 

「ドラゴン、行こうぜ」

 

『分かっている。プラモンスター達、精霊達のフォローを任せる』

 

『ピイッ!』

 

『ヒヒィンッ!』

 

『キュワッ!』

 

『ゴゴゴ!』

 

「じゃあ、後は宜しくな。おっちゃんも後で来てくれるらしいし、一応インカムも着けていくから、何かあったら連絡してくれ」

 

「はいはい、わかってるわよ」

 

「いってらっしゃい・・・・です」

 

「だーりん、はにー、ちゅーは? いってきますのちゅーは?」

 

琴里に四糸乃が手を振り、美九がキスをせがむように唇を突き出してくるが、士道は苦笑いしながら手を振り、ドラゴンが美九の頭を撫でると、士道の中に戻り、士道は外に出た。

 

「んー・・・・ん?」

 

快晴な天気に、家の門を出て思わず大きく背伸びする士道だが、不意に左に右に目をやり・・・・首を傾げる。

 

「なぁ、ドラゴン・・・・。誰かに見られている気配があるんだけど」

 

≪・・・・・・・・≫

 

士道が尋ねると、既にドラゴンは周囲に気配が無いか探知モードになっていた。

七罪の件で神経質になっているのかも、と思いながら、士道は再度学校に向かった。

 

 

 

 

 

そして学校に着くと、殿町も亜衣麻衣美衣トリオも七罪に連れ去られていた記憶が無く、ここ数日行方不明になっていた事を不思議がり、それをネタに4人で大騒ぎになっていた。

 

「そう言えば、タマちゃん先生も同じような体験をしたって言ってたのよー」

 

「えっ、本当? これはもう偶然じゃないわね」

 

「マジ引くわー。これで5人目・・・・何かの陰謀臭いを感じるわー・・・・!」

 

「まさか私達、謎の秘密結社に拉致られたの!?」

 

「改造手術を受けた私達には人間を越えた力が!?」

 

「しかも人数は5人・・・・これはヒーロー戦隊を組む流れ! マジ引くわー!」

 

「「「とうっ!」」」

 

亜衣麻衣美衣トリオはヒートアップすると、示し合わせたかのように格好いいポーズを取った。

 

「ほら、キングも!」

 

「えっ? キング?」

 

「早く!」

 

「お、おう!?」

 

殿町も取り込まれ、3人の前で格好いいポーズを取らされそしてーーーー。

 

「牙の勇者! キョウリュウヒロト! ハァッ!」

 

「弾丸の勇者! キョウリュウアイ! セイッ!」

 

「斬擊の勇者! キョウリュウマイ! フッ!」

 

「角の勇者! キョウリュウミイ! マジ引くわー!」

 

「さらにここに! 独身ーーーーいや、鎧の勇者キョウリュウタマちゃんが加われば、聞いて驚け! な史上最強のブレイブチームが誕生するのよ!」

 

≪何だその史上最悪のアホチームは?≫

 

「さあ、力を合わせて、世に蔓延る悪の怪人を倒すのよ!」

 

「悪の怪人・・・・?」

 

「そう、私達の近くには既に、人間に擬態した怪人が潜み、悪事を働いているのよ!」

 

「具体的には、突然女の子の胸を揉みしだいたり、スカートを捲ってみたり、唇を奪おうとしたりするのよ!」

 

「マジ引くわー! 覚悟しろ『淫猥の戦騎イツカシドー』!」

 

「俺かよっ!?」

 

突然矛先を向けられ、肩をビクッと揺らす士道。

 

≪何だ貴様。遂にこのやかましいトリオにまでその毒手を伸ばしたのか? つくづく節操が無いな。知ってはいたが≫

 

「(あれは七罪の仕業だって、お前も知っているだろうがっ!!)」

 

何てドラゴンと久しぶりに脳内喧嘩をしていると、殿町も口を開き、先日の七罪の調査の為に殿町とデートをした事を話し、亜衣麻衣美衣トリオが「キャー! キャー!」と騒ぎ始めた。

 

「五河・・・・やっぱりアレは、そう言うアレだったのか・・・・?」

 

「いや、何殿町まで乗ってるんだよ! て言うかほら、そろそろホームルームだぞ」

 

士道が言うと、同時に、キーンコーンカーンコーン・・・・と、聞き慣れたチャイムが教室中に響き渡った。

 

「ほらほら、先生来るぞ」

 

「誤魔化すんじゃあない! 五河、お前は、本当に・・・・!」

 

殿町がチャイムに構わず、熱っぽく言ってくる。

だがーーーー。

 

「あ、もうホームルームかー」

 

「席戻んないとー」

 

「マジ引くわー。今日の1時間目ってなんだっけー」

 

亜衣麻衣美衣トリオはあっさりと去って行った。自覚はしているのか分からないが、見事なまでの梯子の外しっぷりである。

 

≪・・・・小僧。その猿に伝えとけ≫

 

「・・・・殿町」

 

「・・・・ん?」

 

「≪あのトリオのテンションにマトモに付き合っていたら、得体の知れない場所に放逐されるだけだぞ≫」

 

「・・・・そ、そうだな、じゃあ、また・・・・」

 

士道とドラゴンの言葉に、額に汗を垂らした殿町も、自分の席に戻った。

それからほどなくして、タマちゃん先生が教室に入ってくるのを見て、どうやら無事であり、安堵の息を吐こうとしーーーー眉をひそめた。

理由は単純。タマちゃん先生額に汗が滲み、目は泳ぎ、見るからに動揺しているように見えたからだ。

 

≪何だ?・・・・・・・・・・・・んんっ!?≫

 

士道が怪訝そうにタマちゃん先生の様子を見ていると、不意にタマちゃん先生が視線を寄越してきた。そして躊躇いがちに口を開いてくる。

 

「あのぉ・・・・五河くん」

 

「な、なんですか?」

 

士道が答えると、タマちゃん先生は困惑した顔を作る。

 

「あ、あのですね。五河くんにお客さんが来てるんですけど、その・・・・」

 

「俺に、客・・・・?」

 

士道は首を捻った。わざわざ学校に訪ねてくるような知り合いはいないし、〈ラタトスク〉の関係者ならば、通信を使うだろう。

 

「・・・・・・・・!!(まさか・・・・!)」

 

と、そこで士道の脳裏に、3つの可能性が過った。

即ち、メデューサ達『魔獣 ファントム』と『DEMインダストリー』、もしくは・・・・精霊・七罪。

 

「その客は、どこにいるんですか?」

 

「あ、はい、今は職員室の方に・・・・」

 

が、タマちゃん先生がそう言いかけた瞬間。

 

「シドー! ここにいるのか!?」

 

やたら元気の良い声か、教室の入口から聞こえた。

 

「な・・・・っ!?」

 

≪オゥ・・・・!≫

 

そちらに目をやりーーーー士道は声を詰まらせ、ドラゴンは目眩を感じてよろけた。

そこにいたのは、新たなファントムでも『DEMインダストリー』の刺客でもなければ、勿論、七罪でもない・・・・家で寝ている筈の、小さくなった十香だったのだ。

タマちゃん先生が、慌てて十香を止めようとする。

 

「ああっ、駄目ですよ! 職員室で待っててくださいって言ったじゃないですかぁ!」

 

「む? なぜだタマちゃんせんせいよ。わたしはきょうしつにいてはいけないのか?」

 

「えっとですね、ここはお兄さんやお姉さん達がお勉強するところなので・・・・」

 

「わたしもシドーといっしょにべんきょうをするぞ!」

 

「ええと、だからそれは、もう少し大きくなったらで・・・・」

 

タマちゃん先生が困り顔で十香を慰めていると、十香の後ろからさらに、小柄なシルエットが2つ現れた。

 

「くく、なにをしておるか」

 

「じゃま。あとがつかえています」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

同じく五河家で寝ている筈の、耶倶矢と夕弦、そして自宅に帰った折紙が、十香と共にゾロゾロと教室に入ってくる。

予想外の来訪者に、教室がにわかにざわめき始める。

反応は大きく3タイプに別れた。「何でこんな所に小学生が」と首を捻るタイプ。「やーん、可愛いー!」と黄色い声をあげるタイプ。そして「あれ? なんかこの子達、どこかで見たような気が・・・・」と眉をひそめるタイプ。と言った感じだ。

その瞬間。耳に着けているインカムから、琴里の声が聞こえた。

 

《ーーーーどう! しどう! きこえる? きんきゅうじたいよ! とおかたちがいえからいなくなってるわ!》

 

「・・・・ああ、こっちに来てるよ」

 

《え・・・・!?》

 

と、そこで十香が士道の方に向き、パァッと顔を輝かせたかと思うと、テテテ、と走って士道に飛び付いた。

 

「おおシドー! やはりここにいたか!」

 

そしてそれに次いで、耶倶矢と夕弦も士道の元に駆け寄った。

 

「おいしどう、われらがにねんさんくみのたんにんに、はなしをとおすがよい。われらがやまいといってもしんじぬのだ」

 

「ためいき。がいけんでしかものごとをはんだんできないおとなです」

 

言って、やれやれだぜと息を吐く。そうこうしている間にも、士道の周囲ではヒソヒソと何かが囁かれていた。

よく聞こえなかったが、「ロリコン」「犯罪」「ダメ、ゼッタイ」等と言う言葉だけは聞き取る事ができた。

明らかにろくでもない事が囁かれているが、今治そっちに構っている場合ではない。十香達に向き直り、声を発する。

 

「・・・・お前ら、なんでここに」

 

「む? おかしなことをきくな。きょうはがっこうではないか。いっしょにねていたのに、きづいたらシドーがいなくなっていたのでびっくりしたぞ!」

 

『・・・・ッ!?』

 

十香の言葉に、クラスの面々が驚愕の表情を作り、士道に視線を向けてくる。

 

「ちょっと五河くん、この子達は・・・・?」

 

「一体どーゆーご関係で・・・・?」

 

「マジ引くわー。て言うか一緒に寝てるの・・・・?」

 

亜衣麻衣美衣トリオが眉をひそめ、訝しそうに士道と十香の顔を交互に見てくる。どうにか言い訳をしようと慌ててドラゴンの脳内会議をしようとする。

しかし、士道が声を発するより早く、小さな影がツツツ・・・・と士道に寄ってくると、十香と同じようにガッシと士道に抱きついてきた。ーーーー折紙だ。

そしてーーーー。

 

 

「ーーーーパパ」

 

 

なんて言ったものだから、一瞬にしてクラス中が騒然となった。

 

「な・・・・ッ!?」

 

「パパ!? 今パパって言った!?」

 

「えっ、パパって!? ポリネシア神話の地母神!? ギリシアの数学者!? マジ引くわー!!」

 

「お、お嬢ちゃん、お名前は・・・・?」

 

麻衣と美衣が騒ぎ、亜衣が膝を折り、折紙と目線を合わせるようにして優しく問いかける・・・・目は泳ぎまくっていたが。すると折紙は礼儀正しくペコリとお辞儀してから、言葉を続けた。

 

「『五河千代紙』です。いつもちちがおせわになっています」

 

「うおいっ・・・・!?」

 

≪ここまでやるか・・・・≫

 

「ママの名前は鳶一折紙です。わたしはパパとママのあいのけっしょうです」

 

『・・・・・・・・ウェイッ!!!』

 

クラスに衝撃が走る。あちらこちらで、ザワザワヒソヒソと動揺の声が広がった。

 

「た、確かに言われてみれば鳶一さんに似てる・・・・!?」

 

「えっ、嘘、鳶一さん高校生で出産・・・・!?」

 

「いや、でも結婚は16歳からできるし、法律上は・・・・」

 

「男の方は18からじゃん! 五河くんアウトじゃん! マジ引くわー!」

 

「て言うかこっちの子は夜刀神さんに似てない? あっちの双子は隣のクラスの八舞さん達に!」

 

「え、まさか一夫多妻ってやつ!?」

 

「で、でもそれっておかしくない!? この子達、見た感じ8、9歳はいってるよね? 皆8歳とかで子供産んだの・・・・!? 五河くん8歳で女の子妊娠させたの・・・・!?」

 

「いや、でも出産の最年少記録は5歳7ヶ月だから、不可能では・・・・」

 

「ちょ、ちょっと待った! 誤解だ、誤解!」

 

≪コレにそんな甲斐なんて欠片も無いぞ≫

 

これ以上妙な噂を流されるのはゴメンである。士道は腹の底から大声をあげて、クライマックスに盛り上がる話題も止めた。

 

「この子達は・・・・その、あれだ! 親戚の子供を預かってるだけなんだよ! パパとか言うのはほら、アダ名みたいなもんでさ!」

 

『ええー・・・・?』

 

士道の弁明に、疑わしげな視線が寄越される。自分でも苦しい言い訳だと思うが、冷静に考えてみれば、高校生である士道にこんな歳の子供がいる筈がない事くらい分かったのだろう。腑に落ちない顔を作るクラスの面々だが、一応納得を示してきた。

 

「うーん・・・・成る程。五河の事だからそう言うのもあるのかと思っちまったぜ」

 

「ねー。ありそうだよねー」

 

「普段の行いが行いだものねー」

 

「でもこの子達と一緒に寝てたのは本当なんだろ。ロリコン疑惑は消えないぞ。マジ引くわー」

 

≪貴様は本当に、人望が無いのだな≫

 

「・・・・・・・・おい」

 

口々に呟かれる疑惑に半眼を作ると、クラスの面々は、アハハとわざとらしく笑う。

 

「ったく、好き勝手言いやがって・・・・ほら、皆。今日は俺も学校早退するつもりだったし、一緒に帰ろうな」

 

やれやれだぜとため息を吐いて、士道は十香達に向き直ってそう言った。

 

「ぬ? もうかえるのか?」

 

「ああ、もう目的は果たしたしな。ホームルームが終わったらすぐ行くから、ちょっと職員室で待っててくれないか?」

 

「むう・・・・わかった。シドーがそういうならまっているぞ」

 

十香がそう言って、素直に頷く。

 

「悪いな。じゃあ少しの間ーーーー」

 

≪っ! 小僧! 〈ウィッチ〉の気配だ!≫

 

「え・・・・?」

 

士道が十香の肩に手を置いた瞬間、ドラゴンの声にピクッと反応するとーーーー下方から響いた十香の声と、周囲に満ちたクラスメートがざわめいた。

 

「な・・・・っ!」

 

「? どうした、十香ーーーー」

 

士道が言葉を止めた。

何故ならば・・・・十香の纏っていた衣服の縫製が、士道が触れた場所から、ハラリと解けてしまっていたのだから。




ホント、七罪ってエグい事やりますね・・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。