デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
「な、なにをするのだシドーっ!」
衣服が解けてしまった十香が顔を真っ赤にし、露出した肩を隠すようにその場に踞る。
「ちょっと五河くん、どういうつもり!?」
「本性を現しやがったなロリコン野郎!」
「最低! マジ引くわー!」
「え・・・・? へ・・・・?」
士道にも、何が何だか分からない。
≪阿呆。〈ウィッチ〉の気配がするぞ≫
「っ! 七罪・・・・!?」
ドラゴンの言葉で、士道は窓の方へと足を向ける。
が、クラスの面々にはそれが犯罪者の逃走と映ったのか、亜衣麻衣美衣トリオがスクラムを組んで、士道の進路を阻んできた。
「ちょっと待てゴルァァァァァ!」
「乙女を辱しめておいてどこに行こうってのよ!」
「マジ引くわー! 現行犯よ! 逃がさないんだから!」
≪面倒だ。魔法で動けなくしろ。〈イフリート〉には我から伝えておく≫
「ああもう・・・・ッ!」
士道は頭をかきむしると、自分のブレザーを十香の肩にかけ、リングを取りだし嵌めて、バックルに読み込ませた。
≪〈プリンセス〉。〈テンペスト〉。〈ストーム〉。目を閉じろ。〈ストーム〉、折紙<無表情娘>にも目を閉じるように言え、〈ウィッチ〉がいるぞ。すぐにここから離れる≫
「「「・・・・!」」」
ドラゴンからの指示で十香と耶倶矢は目を閉じ、夕弦は折紙に伝えてから目を閉じ、折紙も目を閉じる。
[ライト プリーズ!]
「にゅあっ!」
「メダパニッ!?」
「マジ引くわー!」
「またバルスですかッ!?」
「目がー!!」
クラスの面々やタマちゃん先生が目を押さえて悶えている間に、十香、折紙、耶倶矢、夕弦の4人が士道と共に教室を出ていく。
「ちょっと待てコラ五河ァァァァァッ!」
「次来たとき覚えてろよぉぉぉぉぉぉ!」
「目ぇ潰したる! マジ引くわぁぁぁぁ!」
背に亜衣麻衣美衣トリオの怒号を聞きながら、士道は廊下を駆けていった。
◇
「・・・・大変な目に遭った」
『スモール』で十香達を手乗りサイズにまで縮め、胸ポケットに入れた後、マシンウィンガーで帰路につく。十香の服は『ドレスアップ』で元の服にした。
途中で折紙をマンションまで送り(サイズも戻した)、マシンウィンガーを走らせながら、大きなため息を吐いた。
「だいじょうぶか、シドー」
と、十香が士道の胸ポケットから心配そうに顔をあげてくる。八舞姉妹はバイクで感じる風の感触を楽しんでいた。士道はヘルメット越しだが、十香を安心させてやるように微笑を浮かべる。
≪しかし、〈イフリート〉に探索をさせてみたが、見事に逃げられたな。こんな愉快・・・・陰湿な嫌がらせが続けば、貴様は社会的に抹殺されるなぁ?≫
心底面白がっているドラゴンに腹を立てる。
が、それを無抜きにしても、精霊達に不便を強いているのは無視できない問題だ。士道は十香達をチラッと見ると、決意を新たにするように呟く。
「早く・・・・七罪を見つけないとな」
「くく、そうであるな。われをかようなすがたにしただいしょう、そのいのちをもってつぐなってもらうぞ」
「しゅこう。でんじゃらすぞんびです」
「いや、そんな物騒な事はしないけどさ・・・・」
士道は苦笑しながら、角を曲がり、五河家の前へと至った。
がーーーー。
「・・・・ん?」
バイクを止めた士道は首を捻った。記憶にある場所に、自分の家が立っている筈の場所に、“巨大な金の招き猫が建っていたのだ”。
「おお! 巨大で金ぴかな猫ではないか!」
≪正気に戻れ≫
ーーーーバシン!
「あでっ! こ、これって・・・・七罪、か・・・・?」
≪他に誰がこんな愉快な事をする?≫
十香が弾んだ声をあげ、ドラゴンを尻尾ド突き(威力弱め)で頭を叩かれ、士道は頬に汗を垂らしながら言うと、耳元のインカムに触れた。
「・・・・おい、琴里、琴里」
《なに? どうしたの。なつみのこんせきならまだーーーー》
「いや、そうじゃなくて。・・・・ちょっと窓から顔出してみてくれないか?」
《え?》
数秒後。招き猫の右目が開き、琴里が顔を出した。どうやらあそこが窓になっているようだ。
《なッ、なによこれ・・・・!? いえのかたちが・・・・!?》
どうやら気づいていなかったらしく、琴里が驚愕の声を上げる。変化させられているのは外観だけのようだ。
「・・・・ああ、多分、七罪の仕業だろう」
《ち・・・・やっかいなちからね。とにかく、なかはぶじだからもどってきてちょうだい》
「あ、ああ・・・・」
士道は頷くと、胸ポケットにいる十香達を連れて、マシンウィンガーをガレージに入れ、巨大招き猫にしか見えない自宅に入っていこうとした。
路上で世間話をしていた奥様方の奇異な視線に、苦笑いを浮かべ会釈しながら・・・・。
ーDEMインダストリーsideー
「・・・・くそッ!」
ここはDEMインダストリー英国本社の会議室では、先日の取締役会議でエレンによって腕を斬られた取締役達が、重苦しい空気を作っていた。
皆、エレンに斬られた腕は医療用の顕現装置<リアライザ>を使って、綺麗に繋がっており、既に腕として動かせるのだが、斬られた光景が消えず、未だにギプスを外せないでいた。
「皆さん、このままでいいのですか!? ここまでされて、黙っているのですか!?」
そんな中、先の会議の首謀者であるロジャー・マードックは忌々しげに叫び、同じように斬られた右腕を示した。がーーーー。
「・・・・そうは言ってもな」
同じ取締役のシンプソンが、マードックに目を向けるが、その視線には微かな怯えとーーーーマードックに対する非難が籠っていた。
しかしそれは、シンプソンだけではなく、会議室にいる面々が、口には出さないが、似たような感情を抱いている事は容易に想像できる。
事の発端はウェスコットを解任しようと画策してきたマードックだ。そのせいで自分達はこんな無様な姿を晒す事になったのだ。
シンプソンの表情は、諦めを滲ませてながら、首を振ってくる。
「今回の件で、改めて分かったろう。彼は怪物だ。我々とは違う。思考も、価値観も、それを実行する権能も・・・・何もかもが。一瞬でも夢を見た我々が愚かだったのだ」
マードックは左手を握り締めながら、シンプソンに視線を返す。
「・・・・だとしても、です。彼には、然るべき報いを受けていただくつもりです」
マードックの言葉を虚勢と受け取ったのか、取締役達が小さなため息を吐く。肩を竦めながらシンプソンが口を開く。
「報い・・・・ね。一体どうすると言うんだい?」
が、マードックは虚勢に強がりを言っているつもりは微塵も無かった。居並んだ取締役達を睥睨するように眺めてから、喉を震わせる。
「確か今ウェスコットMDは、日本にいるのでしたね。何でも精霊の出現頻度が極端に高く、〈仮面ライダー〉と〈アンノウン〉が交戦している場所があるとかで」
「それが、どうしたのかね?」
「心配ですね。ーーーー“万が一、彼が事故や、空間震に巻き込まれてでもしたら大変だ”」
『・・・・ッ!!』
意味深なアクセントを強めたマードックの言葉に、取締役達は息を呑んだ。
「マードック、まさか君は・・・・」
シンプソンが戦慄した様子で言ってくる。彼だけでなく、この場にいる全員が理解しただろう。
ーーーーマードックが、“ウェスコットの暗殺を仄めかしている事に”。
「・・・・・・・・・・・・」
暫しの間、会議室に沈黙が流れる。他の取締役達の反応を窺うように視線を泳がせ合っていた。
とは言え、彼らの思案が『人の命を奪う』事を躊躇してのモノでない事は容易に想像が付いた。そんな殊勝な人間らしい感情があるならば、DEM社取締役の席に座っている筈がない。自分の命と利益の為ならば、喜んで他人の命を差し出し、犠牲にするような腐りきった性根をしている連中だ。
そんな彼らを悩ませているのは至極単純、恐怖だった。ーーーー要は、暗殺が失敗した場合、ウェスコットの報復が恐ろしいのだ。
しかし。少し時が経つと、取締役の1人が声を上げる。
「・・・・そうだな。心配だ。とても、心配だ」
「・・・・ああ、確かに、その通りだ」
そのわざとらしい言葉に賛同するように、1人、また1人と、ウェスコットを気遣う言葉を述べていきーーーーやがて全員が、マードックに賛意を示した。
マードックは狙い通りと言わんばかりに、唇の端を上げた。
通常であれば、マードックの提案に乗ってこない取締役もいただろうが、先の取締役会で腕を斬り落とされたばかりと言う記憶に新しい経験が、彼らの思考を変化させた。
『(あのウェスコットと言う怪物に、これからも付き合って行かねばならないなんてゴメンだ!!)』
その恐怖が、ウェスコットに逆らう恐怖に勝ったのだ。
しかし、役員達の総意を得られても、問題が山積みである。
「・・・・だが、“そうする”として、方法はあるのかね」
シンプソンが難しげな顔を作り、そう質問してきたが、それも当然だ。DEM社がどうしても、“平和的解決”が見込めない問題を解消するために、希に“そう言った手段”を用いる。その実行は、第2執行部所属の魔術師<ウィザード>達なのだがーーーー。
「第2執行部の魔術師<ウィザード>達は、全員がウェスコットの信者<シンパ>だ。恐らくどんな餌をちらつかせたとしても、こちらに寝返る事はないだろうし、仮に協力を取り付けたとしても・・・・ウェスコットの隣には常に“彼女”がいる」
その単語に、取締役達はゴクリと息を呑んだ。
エレン・M・メイザース。ウェスコットの腹心にして懐刀であり、マードック達の腕を切り離した、世界最強の魔術師<ウィザード>である。〈仮面ライダー〉に敗北したが、その実力は規格外と言っても良い。生半可な暗殺者では、返り討ちに合うだけだ。
が、マードックもそれを忘れている筈もなく、唇を歪めた。
「ーーーー現在、衛生軌道上に、DEM製の人工衛星が幾つあるかご存じですか?」
「何・・・・?」
シンプソンの怪訝そうな顔を気に留めず、マードックは続ける。
「正解は、23基です。そしてその内8基が使命を終えて、処理を待っている状況ですーーーー廃棄処理予定の人工衛星〈DSA-Ⅳ〉を、天宮市に落とします」
『・・・・!』
取締役達は、一瞬顔を強ばらせるが、ほどなくしてシンプソンが首を振る。
人工衛星が地上は到達する前に大気圏で燃え尽きてしまうし、正確にウェスコットのいる場所に落とす事などできないと言ったのだ。
が、マードックがニッと笑って、計画を詳細に説明した。すると、見る見る内に、取締役達の顔色が変わっていき、マードックの計画が夢物語ではないと気づいたのだが、天宮市にも甚大な被害が出るのは確実だ。それを世界にどう説明するのかと聞くと、マードックは。
「当該時刻、天宮市に空中艦を1隻派遣し、向上随意領域<テリトリー>を展開、地上の観測装置から人工衛星の存在を隠蔽します。そしてその後、空間震警報を発令させ、周辺住民を避難させます。まあ無論、空間震を想定して作られたシェルターがどこまで耐えられるかは分かりませんが」
「な・・・・!」
「嗚呼、なんたる不幸でしょう。東京都天宮市は、30年振りの大型空間震に襲われてしまう。しかも、シェルターをも吹き飛ばす程の大災害です」
マードックは芝居がかった調子で続ける。
「その上不幸な事に、そこには弊社のMDがいた。嗚呼、なんと痛ましい。彼のような天才を失う事は、DEMにとって深刻な損失です。ですが、いつまでも嘆いてはいられません。我々は彼の遺志を継ぎ、DEM社の更なる発展に尽くそうではありませんか」
マードックが演説を締め括るように言うと、取締役達は一様に蒼白な顔を作り、マードックを見てきた。
だがーーーーそんな非人道的な手段に異を唱える者は、いつまで経っても現れなかった。
ー士道sideー
「・・・・・・・・おお」
11月1日。士道は疲れきっていた。
家の形が金色の巨大招き猫に変えられた日から、七罪からの執拗な嫌がらせは続いた。
『買い出しに行けば商店街のど真ん中でピチピチのレザージャケットとブリーフ1丁と変質者の格好に変えられたり、周囲を歩いていた通行人が小僧の周りだけ全裸の幼女に変化して通報されそうになったり、日に日に家の形は変えられ、スペシャルポリスの署にされたり、とぐろを巻いた金色の龍にされたり、地球防衛軍の基地にされたり、ソード○ブロゴ○のベースにされたり、現在は風俗店に変えられたりしているな』
「〈ラタトスク〉のサポートが無かったら、何回社会的に抹殺されていたか分からないな・・・・」
『それくらいしか役に立たん組織だからな』
「シドー、げんきがないぞ、だいじょうぶか?」
と、そこで十香が不安そうに士道の顔を覗き込んでくる。良く良く見ると、四糸乃に八舞姉妹や美九、そして柱の陰から琴里も、士道に視線を送ってきていた。
士道は皆に心配をかけまいと、ブンブンと首を振ってから息を吐いた。
「ああ、大丈夫だ。ごめんな、皆」
「うむ・・・・そうか! だいじょうぶならばよいのだ」
士道が言うと、十香が安心しきった様子で満面の笑みを浮かべてくる。士道は十香の頭をポンポンと撫でた。何だか娘ができた父親の気持ちになりそうだったが、そんな感情抱いたら怖~いドラゴンさんのお仕置きが待っているので、その気持ちを捨てた。
「(いかんいかん。1番辛いのは子供化させられた十香達なんだ、俺がへこたれていては面目が・・・・)」
『(はっ、貴様の面目なんて最初から立っていたと思うのか? 相変わらず思い上がりの強いな)』
「(お前は・・・・!)」
思念体のドラゴンとアイコンタクトで喧嘩する士道。
『(まあ安心しろ、我も令音<無表情女>達も、漸く〈ウィッチ〉の霊波の波長のパターンが読めてきた。この家を中心に網を張っていれば、すぐに捕捉できる。・・・・問題は、〈ウィッチ〉が嫌がらせに満足もしくは飽きて、何処かに姿を眩ませる事だな)』
とーーーードラゴンが呟いたまさにその時。
『むっ!』
「・・・・っ!」
ドラゴンが何かを感知したような声と、士道が窓の外で何かがキラリと輝くのを見て息を詰まらせたのが重なった。
ここ数日間、幾度となく見てきた光。ーーーー七罪の〈贋造魔女<ハニエル>〉の変身能力発動の印であった。
次の瞬間、士道の視界にある五河家の内装や、十香達の姿が、全て淡く発光し、その姿を変貌させていく。
そして、数秒後。
「な・・・・っ」
『なな・・・・っ!』
数秒前とはまったく様変わりしてしまった皆の姿を見て、士道とドラゴンの愕然と目を見開いた。
何しろ、目の前にいた小さな精霊達の衣服が、皆バニーガールのようなレオタードと網タイツになっていた。
良く良く見ると、それぞれ頭に付いている耳の形と、レオタードのお尻に付いている尻尾の形が違う。十香は犬。琴里は猫。四糸乃は兎。八舞姉妹は猿。美九は牛だった。
唯でさえ扇情的な格好だと言うのに、子供化している状態なので、なんかもう周囲に犯罪臭がもの凄かった。
しかも、それだけではない。
五河家のリビングが、七罪の天使によって変化させられ、十香達を、まるで動物園にあるような巨大な檻に囲まれていたのである。ついでに士道の服装と、マジシャンのような燕尾服に、手には革製の鞭が握られていた。無論、家の壁も取っ払われ、ご近所様にご開帳状態である。ご丁寧に檻の上には、『僕だけの動物園』などと言う看板が掲げられていた。言い訳できないくらいの変態だ。
「なっ、なんだこれは!」
『良いからさっさと『ドレスアップ』しろ!』
『あ、あぅぅ・・・・』
驚く士道にドラゴンが指示を出し、急いで『ドレスアップ』で元の私服に戻るが、十香達が自分の格好に気づき、顔を真っ赤にして蹲る。耶倶矢だけは「まて、なぜわれがサルなのだ!」と不満げに吠えていた。
ご近所の南方が、看板を見て、何やらヒソヒソ話を始めたり、110番通報したりしていたが、士道は見ない振りをして、ドラゴンに話しかけ、耳にインカムをつけると、令音の声が聞こえた。
「ドラゴン!」
『〈ウィッチ〉の反応は捉えた。1キロメートル離れた場所だ』
《市街地、建設中のビルだ》
「しどう」
ドラゴンの声が聞こえたのか、琴里が真剣な眼差しで士道を見て、コクリと頷いてくる。
リビングの扉から、ガルーダ達が『スピリッドライバー』を持ってきて、琴里達に渡す。
「ああ・・・・行こう、皆!」
士道はそれに返すように、大きく頷くが・・・・なんと言うか、端から見れば物凄くシュールな光景なのだが、士道はできるだけ気にしないようにした。
ー七罪sideー
「ふふーーーーはは・・・・あっははははははははははははっ!」
遠目で慌てふためく士道の姿を見て、大人です姿の七罪は腹を抱えて笑い転げた。
建設中のビルの上にある鉄骨を望遠鏡に変化させ、士道の様子を覗いて楽しんでいた。
「あー、可笑しい。いい気味よ。私にあんな恥をかかせておいて、のうのうと暮らそうだなんて許さないんだから」
言って、七罪は視線を鋭くし、誰にも知られたくない秘密を暴いた士道を睨んだ。
フンと鼻を鳴らし、手にしていた箒型の天使ーーーー〈贋造魔女<ハニエル>〉を逆さに構える。
「さあて・・・・次はなにをどう変身させてやろうかしら」
七罪は唇を歪めると、不敵な笑みを浮かべ、頭の中に、様々な嫌がらせのアイディアを浮かべる。
色々と考え、ものっすごく悪い顔を作っていた七罪は、不意に眉根を寄せ、バッと顔をあげた。
「・・・・! 何か、近づいてくる・・・・?」
何かの勘違いかと一瞬思ったがーーーー確かに、七罪の方に何者かが近づいている気配があった。
「まさか、士道くんに見つかったって言うの・・・・?」
チッと舌打ちする。〈仮面ライダー〉である士道ならば、七罪の知らない網を張っていたのが、もしくは、士道の背後にいる大きな組織が力を貸しているのは容易に想像できた。
「悪いけど、こんなところで捕まってあげないわよ」
七罪は〈贋造魔女<ハニエル>〉に跨がって、未だ姿の見えない追跡者に向けて、ベッ、と舌を出した。
「ふふふふっ、じゃーぁねーぇ」
そして七罪は凄まじい速度で空を駆けた。士道達の狼狽える姿を想像し、クスクスと笑った。
「ーーーーま、こんなところでいいかしらね。さて、次に士道くんをどうして・・・・っ!!」
ひとけの無い山の中腹に着地した七罪は、士道への嫌がらせの手段を少し変えようかと思案しようとしたその時、まるで心臓を直接捕まれたかのような重苦しいプレッシャーを感じて、後方に飛び退いた。
ーーーードォンッ!
次の瞬間、今七罪が立っていた場所に光が炸裂し、地面を深々と抉る。
間違いなく、七罪を狙った攻撃だった。
「な・・・・!?(ーーーー尾けられた? あの速度で!?)」
七罪は驚愕に顔を染めるが、すぐに不敵な表情を作る。
「・・・・何よ、士道くんのお仲間にしては、随分と過激なご挨拶ね」
そう言って鼻を鳴らしながら、砲撃の元ーーーー上方に目を向けると、そこに浮遊している人影が、冷徹な視線を七罪に向けながら、ゆっくりと地面に降り立った。
全身に白金の鎧を纏い、目が覚めるような淡い金髪と碧眼。人形のように整った顔立ちをし、その見た目は可憐な令嬢の儚げなのだが、その全身から、屈強な戦士の風格が出ていた。
「残念ですが、私は五河士道の仲間ではありません」
「ふぅん・・・・? そうなの。じゃあASTさんかしら? まあ、別にどっちでも良いけどね。私に何か用かしら?」
「知れた事です」
七罪が言うと、少女は、エレン・M・メイザースは、背に負った長大な剣を抜きながら返してきた。
「ーーーー〈ウィッチ〉。あなたを、狩らせていただきます」