デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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ネガティブ・七罪

ー士道sideー

 

「ーーーー七罪が目を覚ましたって!?」

 

「ああ、早かったわね、士道」

 

〈ラタトスク〉が市内に所有している地下施設の一角。部屋の中には〈フラクシナス〉のブリッジのような造りとなっており、様々な計器と巨大なモニターが設えられていた。

そしてその場所の扉を開けて、声をあげる士道に応えるように、部屋の中央に置かれていた椅子に座る琴里が、椅子をクルリと回転させ顔を向けてくる。

がーーーー。

 

「ん・・・・? 琴里、どうしたその顔」

 

≪くっ、くくっ、くくくく・・・・!≫

 

〈仮面ライダー〉に変身して本来の年齢に戻った琴里の顔には、まるで猫にでも引っ掛かれたような赤い線が、うっすらと見えた。何故かドラゴンが必死に笑いを堪えているのが妙に気になった。

 

「あー・・・・ドラゴンから聞いてないの?」

 

「えっ?」

 

琴里は頬をポリポリとかいてそう言うが、士道が首を傾げたのを見て、察したのか、小さく息を吐くと口を開く。

 

「・・・・ま、士道も気を付けなさい」

 

「いや、何をだよ? ・・・・まあいい、それより七罪はどこだ? 意識が戻ったんだろう?」

 

「ええ、ついさっきね。ーーーーこっちよ」

 

士道は琴里に促されるままに部屋を出て、先日七罪の正体を突き止める際に使用した施設と似たような造りの建物を歩いた。〈ラタトスク〉はあらゆる事態を想定して、このような施設を幾つか保有していると聞いた。

昨日ヘルキューレ<エレン>から命からがら七罪を回収した後、すぐにこの施設に移送し、処理と検査を行っていたのである。エレンに負わされた傷はお世辞にも軽い物とは言い難かったが、幸い命に別状はないと言う。

ちなみに十香と八舞姉妹はエレンに負けた事が悔しいのか、〈フラクシナス〉で自主訓練中。四糸乃&よしのんもつき合い、美九はお仕事で不参加。

 

「ーーーーエレンが動いたって事は、いずれ『ファントム』達も動き出すわ。本来であれば、〈フラクシナス〉に収容しておくのがベストなんだけど・・・・流石に未封印状態の精霊を置いておく訳にはいかないしね」

 

≪フルパワーの〈ウィッチ〉が内部で暴れてしまう事を考えれば、当然だな≫

 

「ここよ」

 

廊下を歩きながら琴里とドラゴンがそう言った。

と、不意に琴里が足を止め、目の前にある頑丈そうな扉のロックを慣れた動作で解除すると、

軽快な電子音が鳴り、扉がスライドしていった。

 

「さ、士道」

 

「ああ・・・・」

 

琴里に言われて中に入る。

扉の中は広い空間となっており、薄暗いエリアの中に様々な機械が並び、その中央に頑丈そうなガラスで仕切られた部屋が、以前〈フラクシナス〉で力が戻った琴里が入れられた隔離スペースのようになっていた。

そしてその部屋の中に置かれたベッドの上に、不機嫌そうに顔を歪めた少女が、1人でぬいぐるみを弄りながら座っていた。

士道は静かにその少女の名を呼ぶ。

 

「・・・・七罪」

 

寝癖だらけのライトグリーンの髪、不健康そうな生白い肌。背は低くく、手足は枝のように細い。

本来の姿となった七罪が、病衣を纏ってベッドに座っていた。

 

「ーーーー分かってるとは思うけど」

 

琴里が口に咥えたチュッパチャプスの棒をピコピコと動かしながら言ってくる。

 

「十分に注意してちょうだい。エレンから受けたダメージの影響で一時的に天使は使えなくなってるみたいだけど、相手は精霊。しかも現時点で士道への印象値は最悪よ。まあ、初めて会った時の美九ほどじゃあないけど」

 

≪あそこまでだったら手の打ちようもないな≫

 

「確かにな・・・・でも、俺が話さなきゃ意味がない」

 

「その通り。七罪が士道に対して心を開いてくれなければ、七罪の能力を封印する事は不可能よ。今ここで七罪をデレさせろだなんて言わないけれど、何か糸口を掴んでちょうだい。これだけの大チャンスなんだから」

 

「大チャンス?」

 

≪気づかんのか脳足りん。〈ウィッチ〉は負傷して力を出せん上に、見知らぬ所に軟禁状態。内心不安感を抱いている。それを貴様が解消してやれば、好感度が上がる可能性がある・・・・ま、警戒心の方が高くては上がらない可能性も十分あるがな≫

 

「そうね。でも、一応あなたは、身を挺して七罪を守ったヒーローなのよ。そう邪険にはされないでしょ」

 

「なら良いけどな。・・・・行ってくる」

 

軽く呼吸を整えて琴里に小さく言って、ガラスに仕切られた部屋の入口に手をかけ、ゆっくりと扉を開けて中に入る。

部屋は外から見ると透明に見えていた壁は、内側に見ると普通の白い壁に見え、部屋の中にはベッドの他に戸棚とテーブルが置かれている。ついでに様々な娯楽品が備えており、どうにか七罪を飽きさせないようにしようと言う〈ラタトスク〉の涙ぐましい努力が窺えた。

 

「・・・・・・・・ッ!」

 

と、士道が部屋に入った瞬間、ベッドの上にいた七罪がビクッと肩を揺らした。

 

「よ、よう・・・・七罪ぶっ!」

 

できるだけにこやかな顔で挨拶する士道だが、七罪はベッドに置かれていた枕やクッションやぬいぐるみを手当たり次第に投げつけられ、『HIT』の文字が浮かんだ。

 

「・・・・ッ! っ・・・・!」

 

「わっ! ちょっ! 危ないだろ七罪!」

 

≪はぁ・・・・≫

 

「こ・・・・ッ、み・・・・、・・・・な・・・・っ!」

 

「え?」

 

≪【こっち見んな】と言っているのだ≫

 

「え、いや、なんで・・・・へぶッ!?」

 

七罪の声が聞き取れなかったが、聞こえていたドラゴンが伝える。士道は眉をひそめて聞き返そうとするが、今度はプリティーでキュアキュアな魔法使いのマスコットの熊のぬいぐるみが飛んできて、顔面に『CRITICAL!』した。

 

「・・・・・・・・!」

 

が、そのぬいぐるみが最後の弾だったようで、もう投げつける物がなくなり、七罪はアワアワと慌ててから、ガバッと布団に潜り込み、数秒間モゾモゾと蠢いた後、目元だけを出して士道を睨むその様相は、さながらギリースーツを着て茂みに潜むスナイパーのようだった。

 

「な・・・・何の用・・・・ッ!」

 

敵意に満ちた視線で士道を睨みながら、七罪が言ってくる。

 

「いや、ちょっと、話をしようと・・・・」

 

「話なんてない・・・・! で、出てって!」

 

「そ、そんな事言うなって。傷の方は大丈夫か?」

 

「ぅ・・・・っ」

 

士道が言うと、七罪は気まずげに口ごもったが、数秒の無言の後、言葉を続けてくる。

 

「・・・・なんで・・・・助けたの。私の事」

 

「なんでって・・・・そりゃあ、お前がエレンにやられてたから・・・・」

 

「そう言う事じゃなくてっ!」

 

士道の言葉を遮るように、七罪は叫びをあげた。

 

「わ、私は・・・・、あんたに化けたり、あんたの仲間を消したり・・・・酷い事ばっかしたじゃない! なんで・・・・なんで助けるのよ! あんたも! あんたの仲間も・・・・」

 

言って、七罪がビッ! と指を突き付けてくる。士道は腕組みをすると、疲れたようにため息を吐いた。

 

「ああ・・・・あれにはマジで参ったよ。流石に肝が冷えた。もうやめてくれよ」

 

「だからぁ・・・・っ!」

 

七罪が焦れたように言ってくる。士道は一瞬考え込むと、ポンと手を打つ。

 

「あ、そうか。ちゃんと皆にも謝るんだぞ」

 

≪プッ!≫

 

「あぁっ、もう・・・・!」

 

ドラゴンが士道を小馬鹿にしたように(まあ実際に、救いようのない馬鹿だと心の底の底から思っているが)吹き出し、七罪はバッサバッサと布団の中で手を振る。辺りに埃が舞う。どうやら士道の返答がお気に召さないらしいが、士道としては、「なぜ助けた?」と言われても困ってしまうだけで、ポリポリと後頭部をかきながら返す。

 

「そう言われてもな・・・・あんな場面に出くわしたら、助けるしかないだろ」

 

「ふ・・・・っ、ふざけんなっ! そんな訳ないでしょうが! 言いなさいよ! 何が目的!? 一体どんな打算があれば、自分を困らせた犯人を助けるって言うのよ!」

 

≪(ま。少し考えれば何か魂胆があると考えるだろうな。だが、そんな考えができる程、計算高くはないなこのイカれた生物は)≫

 

そんな士道だから、精霊達の心を開かせてきたとも言える。

 

「・・・・いや、まあ、なんだ。確かに結構な被害は受けたけど・・・・精霊と話すときは、程度の差こそあれ似たようなもんだったからな。ほら、十香とか四糸乃とかいるだろ? もう知ってるかも知れないけど、アイツらもお前と同じ精霊なんだ。正直何度か死にかけたぜ?」

 

「し、死に・・・・?」

 

「ああ。十香には問答無用でビーム撃たれたり、四糸乃は街ごと氷漬けにされそうになったり」

 

「は・・・・はぁっ!?」

 

「行方不明だけど、ある精霊にはマジで喰われそうになったり、琴里には消し炭にされかけた事もあったな」

 

「え・・・・えっ?」

 

「あとは耶倶矢と夕弦には台風で襲われそうになったり・・・・ああ、最近で言うと、美九が街の人達全員を洗脳して一斉に襲われた時は流石にヤバかったな」

 

「・・・・・・・・」

 

≪信じられんが、全て事実だ≫

 

七罪は布団の隙間から、信じられないモノを見るような目を向けてきて、士道は苦笑いをした後に続ける。

 

「だから・・・・なんと言うか、被害を受けた人がいる以上、気にするなだなんて言えねえけどよ、十香達は皆、そう言うの反省して、乗り越えて、今ああして暮らしてるんだ。だったら、お前にそれができない道理は無いだろう?」

 

士道が言うと、七罪は暫しの間無言になり、荒く息を鳴らす。

 

「な、何よそれ・・・・格好いい事言ったつもり?」

 

「や、別にそんなつもりは・・・・」

 

ないと言い切れず、頬をかきながら再び七罪に話しかけた。

 

「それより、俺からも1つ、聞いて良いか?」

 

「・・・・・・・・・・・・何よ」

 

たっぷり間をおいて返してくるが、断れるよりマシと思いながら発した。

 

それはーーーー何故あんなに士道を陥れようとした事だ。

 

その問いに、七罪はギラリと、布団の隙間から視線を送り、

 

「そんなの・・・・あの時アンタが、私の秘密を見たからに決まってるじゃない・・・・!」

 

「秘密?」

 

「わッ、私の・・・・本当の姿に決まってるでしょ!」

 

≪やはりそれか・・・・≫

 

「は・・・・? ち、ちょっと待ってくれよ。何でその姿を見られたのが動機になるんだ!?」

 

涙目になった七罪が、ギリギリと奥歯を噛み締めながら続ける、

 

「何で・・・・ですって・・・・? ふッ、ふざけるのも大概にしてよッ! そんなのみれば分かるじゃない! こッ、こんなみすぼらしい姿を見られて・・・・平然としていられる訳ないでしょ!? それとも何? それを私の口から言わせるのが目的だった訳!?」

 

ヒステリックに叫びながらもベッドの上をボッフボッフと叩きながら、興奮しているのか目を血走らせた七罪が続ける。

 

「最初に私とアンタが会った時、結構良い雰囲気だったわよねえ? 私の事、綺麗って言ってくれたわよねえ? でもそれはなぜ? 私があの、お姉さんの姿だったからでしょ!? もし私が最初から今の姿だったら、アンタあんな反応した? しなかったわよねえ? 緊張なんかする訳ないわよねえ? 何なら、話しかけられてもスルーしてたかも知れないわよねえ!?」

 

「そ、そんな事・・・・」

 

「あぁぁりぃぃぃまぁぁぁすぅぅぅぅぅぅ! 現にーーーーこっち人達は、『私』が『私』のままじゃ、誰も相手にしてくれなかったんだから・・・・!」

 

「七罪・・・・?」

 

≪ふむ・・・・≫

 

七罪の言葉の調子が、ふっと悲しげに変わった気がし、士道は眉を寄せたが、ドラゴンは何かを察したらしい声を漏らす。

だが、七罪は再びキッと目を鋭くする。

 

「とにかく! 私は、私の本当の姿を知っている奴がこの世にいるのが許せないの・・・・!」

 

言って、再度布団を被り直し、芋虫よろしくになった。

その様子を見て、士道とドラゴンは脳内会議を始める。

 

「(・・・・ドラゴン、これって)」

 

≪〈イフリート〉の時もこんな感じで暴れてな。どうやら〈ウィッチ〉は、自分の容姿に劣等感を抱いており、それで天使の力を使って理想の自分に変身していたのだ≫

 

「・・・・でも、七罪ってそんなに悲観するほどか?」

 

確かに髪はボサボサ、お世辞にも健康的とは言い難い肌ツヤ、だが七罪がそこまで卑下する程にではない気がする。小綺麗にすれば、十分可愛いレベルだ。

しかし七罪は、士道の言葉に敵意剥き出しの視線を返す。

 

「そんな事言って・・・・! 騙されないんだから! 騙されないんだから!」

 

「いや、騙してなんてないって。ちょっと、よく顔を見せてくれよ」

 

「! んー! んんーっ!」

 

士道が七罪の被っている布団に手をかけると、七罪はバタバタと暴れて抵抗するが、傷に障り、すぐに大人しくなると、布団を剥ぎ取られた。

 

「・・・・・・・・っ!」

 

七罪が顔を真っ赤にしながらキュッと目を瞑り、身体を縮こませる。

大人の姿のような肉感的で官能的な魅力はないが、キチンと身嗜みを整えれば、素敵なレディに変身できる。

 

「ん、やっぱりだ。そう自分を悪く言うなよ。今のお前には、ちゃんとお前の魅力があるんだから」

 

「何を・・・・! 知った風な口を・・・・!」

 

七罪が憎々しげな顔を作るが、士道はジッと顔を見つめ、困ったように目を泳がせる。

そしてしばしの無言の後、小さく口を開く。

 

「・・・・・・・・本当? 私は・・・・このままでも良いの?」

 

「ああ。本当だ。だから、ちゃんとお前の姿で、お前の言葉で、皆に謝ろう。大丈夫。皆分かってくれる。そうしたらーーーー皆と、友達になれる筈さ」

 

「・・・・・・・・友、達・・・・」

 

「ああ」

 

士道が七罪に向かって手を伸ばし、七罪はどうしたら良いのか分からないといった様子で顔を俯かせていたが、やがて恐る恐るといった調子で、士道の手に、自分の手を伸ばしてきた。

2人の手が触れようとした瞬間。

 

≪さて。ここからだな≫

 

ドラゴンがそう呟いたその瞬間。

 

 

 

 

「ーーーーって、そんな事で騙されるかっ! ばかぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

七罪は手のひらをクルリと返すと、ビッ! と中指をモザイク付きで立て、大声でそう言った。

 

「へ・・・・?」

 

「友達ぃぃぃ? どうせそんな事言って、騙された私を物笑いの種にするのが目的なんでしょ!? 【うわっ、アイツあんな言葉真に受けて出てきちゃったよ、バッカでー!】 とか言って皆でゲラゲラ笑うんでしょ!? 『ドッキリ』とか書いたパネルが用意してあるんでしょ!? 分かってるんだから! 分かってるんだから!」

 

「い、いや・・・・七罪?」

 

七罪に気圧され1歩退くが、七罪はさらに『Fire! All Engines!!』していく。

 

「こんなブスが、キレイなお姉さんの皮被って調子に乗ってキモーイ! とか思ってるんでしょ!? うっせぇうっせぇうっせぇわ! ンな事言われなくても分かってんだよ! 自分が救いようのないゴミクズだって事くらい、この世で1番私が分かってンのよ! どうせ私なんて・・・・って、地獄の中でやさぐれてるのが分相応だって事くらい! でもしょうがないじゃない! 他にどうしろって言うのよ!」

 

「お、落ち着け、七罪!」

 

≪そうだ。貴様の目の前には、自分が皆を守るヒーローになる! だなんて、分不相応な事をほざく、生きているだけで恥を晒しているハウスダスト以下の、救いようもどうしようもないド底辺生命体がいるのだからな≫

 

「お前なぁ・・・・!」

 

ドラゴンと喧嘩になりそうになるが、それより先に七罪が爆発した。

 

「う・る・さぁぁぁぁぁぁぁいっ! アンタみたいな善人ぶった奴に限って、陰でコソコソコソコソ人の悪口言ったり、言葉の裏に針千本で千の偽り万の嘘で人を騙したり、SNSに罵詈雑言書き込んだりしてるに決まってるのよ! 今日こーんなブス見たんだけどマジ気分悪くなったわーとか写真付きで投稿するんでしょ! ああああああああああもう死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェェッ! 炎上させてやるぅぅ! 魚拓取って巨大掲示板に晒して退学に追い込んでやるぅぅぅぅッ!」

 

「随分現代社会に詳しいなお前!?」

 

≪しかもかなり具体的かつ現実的で、世の中の汚い部分をよく理解しているな。感心した≫

 

思わず突っ込む士道と感心するドラゴンだが、それどころではない。荒ぶる七罪をどうにか宥めようとした。

 

「と、兎に角落ち着こう。な!? ほら、大きく深呼吸して・・・・」

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

しかし、無駄無駄ラッシュだった。興奮した七罪は両手をブンブン振り回しーーーー爪を立てて、士道の顔をガリッと引っ掻いた。

 

「のわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

『随分男前になったな。引っ掻かれたのが眼球とかだったらもっと笑えたが』

 

「・・・・・・・・」

 

「だから気を付けろって言ったじゃない」

 

士道が七罪の部屋から出ると、思念体として出てきてニヤニヤと笑うドラゴンと、士道と同じように引っ掻き傷を作った琴里が肩をすくめながら言ってきた。

 

『流石は兄妹だな。同じ傷を作るとは・・・・クククッ』

 

「うるせぇ・・・・一応聞くけど、精神状態は?」

 

「多少の上下はあったものの、到底封印できるようなレベルじゃあないわね。さっきも言ったけど、美九程毛嫌いされていないのが、唯一の救いね」

 

「はぁ・・・・」

 

士道は未だに痛む引っ掻き傷を撫でながら、隔離室に目を向けると、外側からは透明で中の様子が見えた。

ベッドの上で七罪が「フシュルルル・・・・」と、肩を激しく上下させていた。

士道がいなくなり幾分か落ち着いたのか、呼吸を整えた七罪はソロソロとベッドから下りて、先ほど自分が投げ飛ばしたぬいぐるみや枕を拾い集め、ポンポンと埃とかを優しく叩いてやった。

 

≪また誰かが部屋に入ってきた時に迎撃する為の弾の補充とは言え、実に規範的な行動だ。根は真面目で常識的な性格なのかも知れんな≫

 

「そうか?」

 

「よっぽど自分の本当の姿に自信が無いみたいね。何とかしてそのコンプレックスを解消しないと、仮に封印ができたとしても、すぐに逆流を起こしてしまうわ」

 

『・・・・そうか? あの娘なら、精神が乱れても大丈夫な気がするが・・・・』

 

「兎に角、タイムリミットもあるし、のんびりしていられないわ」

 

「“タイムリミット”?」

 

『忘れたか愚図め。〈ウィッチ〉はヘルキューレから受けたダメージがあるから大人しくしているのだ。天使が使えるまで回復すれば、すぐに逃げるだろうが』

 

「あ・・・・そうか」

 

『〈イフリート〉。それで、猶予はどれくらいだ?』

 

ドラゴンが聞くと、琴里は指を2本立ててピースサインを出す。

 

「令音の見立てだと、長くて後2日って所らしいわね。その間に、七罪と打ち解けないと」

 

「2日か・・・・」

 

『先ずは、〈ウィッチ〉の劣等感をどうにか緩和しなくてはな』

 

「・・・・あ」

 

そこで、“とある事”を思い付いて、士道がポンと手を打つ。

 

「なあドラゴン、琴里。上手くいくかどうか分からないけど、こんなのはどうだ?」

 

『「??」』

 

2人が首を傾げると、士道は思い付いた案を簡潔に説明した。

 

「ふむ・・・・なるほど」

 

『足りない頭で少しは考えたようだな』

 

「足りない頭は余計だ!」

 

士道とドラゴンの喧嘩を止めて、琴里は咥えていたチュッパチャプスの棒をピンと立てた。

 

「良いわ。他に有効な手段もないし、試してみましょう。ドラゴンは“皆”に連絡を。後必要な物は〈ラタトスク〉で用意してあげる」

 

「ああ、頼む」

 

『喜んで協力するだろう。特に新しい精霊とお近づきになれる“〈ディーヴァ〉”は』

 

「ーーーー決行は明日。七罪の朝食が終わり次第急襲をかけるわ」

 

琴里の言葉に2人が頷くと、チュッパチャプスを指で挟み、ニッと唇の端をあげると、お決まりの台詞を言った。

 

「さあーーーー私達の戦争<デート>を始めましょう」

 

 




ある意味、七罪って現実的な性格していると思いました。
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