デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー琴里sideー
〈フラクシナス〉に搭載された大型顕現装置<リアライザ>で出力された膨大な魔力の塊は、画面中央に表示されたターゲットに向かって飛んで行く。
完璧なタイミングで放たれ、クルーの中には、まだ撃破を確認していないのに、ガッツポーズを作っている者もいた。
だがーーーー。
≪まだ撃破していないのに、これだから貴様らはアマチュアなのだ・・・・≫
ドラゴンがそう皮肉ったその瞬間、
「な・・・・!?」
琴里は信じられないと言った顔を作りながら狼狽の声をあげる。
何故なら、真っ直ぐ人工衛星に向かっていた収束魔力砲が、ターゲットに触れようとした瞬間に僅かに歪み、人工衛星のほんの一部を貫いて空に消えたのだ。
人工衛星はバランスを崩すが、それでも落下する。
狼狽する琴里に、神無月が、随意領域<テリトリー>であると推察し、琴里は映像の中の人工衛星に不審な点があるのを発見した。
魔力砲に貫かれた人工衛星の一部の中から、見覚えのある物が顔を覗かせた。
「あれは・・・・〈バンダースナッチ〉・・・・!?」
そう。DEMの無人兵器の機械人形〈バンダースナッチ〉が、完全に人工衛星とドッキングしていたのだ。
「まさかーーーーそんな手が・・・・!」
それを見て、聡明な琴里はこの人工衛星落としの概要を一瞬の内に理解した。
恐らくDEM社は、カスタムタイプ〈バンダースナッチ〉を地上から射出し、廃棄予定の人工衛星とドッキングさせたのだ。
顕現装置<リアライザ>を搭載した機体であればそれを捉える事も可能だろう。
そして〈バンダースナッチ〉が取り付いていると言う事はーーーー人工衛星に、随意領域<テリトリー>を張る事が可能と言う事である。
「成る程・・・・大気圏を抜けてきた筈の人工衛星が少しも損傷してない理由はそれか・・・・!」
「・・・・上手くない状況だ。このサイズの人工衛星が質量を保って落下する衝撃と、DEMが保有する最高ランクの爆破術式、しかもそれらが〈バンダースナッチ〉の随意領域によって増幅されるとなると・・・・」
忌々しげに舌打ちする琴里に、コンソールを弄る令音がカッ、とキーを叩くと、画面に数値が表示された。
「・・・・詳しい数値は分からないから、おおよその値になるが・・・・恐らく、戦術核のそれを下回るだろう」
「・・・・・・・・ッ!!」
琴里が息を詰まらせる。事態は、想定を遥かに越えていた。こんな物が落ちれば、天宮市は丸ごと焦土へと化してしまう。
と、そんな中、神無月が〈バンダースナッチ〉程度の随意領域<テリトリー>で、〈ミストルティン〉を逸らせる事に疑問だと言った。琴里は兎に角もう一度〈ミストルティン〉で砲撃しようと指示を出そうとした瞬間ーーーー〈フラクシナス〉の艦体が激しく揺れた。
「一体何!?」
「ほ、砲撃です! 随意領域<テリトリー>、15%縮小!」
「砲撃ですって・・・・?」
「映像、出ます!」
モニタに空の映像が表示されると、いつの間に現れたのか〈フラクシナス〉よりも巨大な空中艦が、そこに浮遊していた。
それは、DEMの艦であった。
「く・・・・あれがこっちの砲撃を逸らしたって訳ね」
琴里が悔しげに歯噛みした。こちらが迎撃する事を読まれていたのだ。敵艦をどうにかせねば、人工衛星が落ちてしまう。
[ドライバーセット]
クルー達が戦慄に顔を染めるが、琴里はしごく落ち着いた調子で息を吐くと、『スピリッドライバー』を腰に巻いて、艦長席に深く腰かけ直した。
「神無月、ここは任せるわよ。ーーーー〈グングニル〉を使うわ」
その言葉に、全員がピクリと眉を動かした。
「・・・・大丈夫かい、琴里」
「ええ。メデューサとの戦いで少し消耗したから、少しドラゴンに回復中の魔力を分けて貰っているわ。それに、〈仮面ライダー〉になって使うから、私もフルパワーでやれる・・・・!」
令音の言葉に答えると、神無月を向く。
「外すんじゃないわよ、神無月」
「お任せください」
直立して答える神無月に満足げに頷くと、琴里はコンソールをの脇に付いている認証装置に手を置くと、座っていた艦長席が床に吸い込まれるように下方へとスライドし、数秒後、椅子に座ったら琴里は開けた場所に出る。
円の形の空間、壁面には外の様子がリアルタイムで投影され、まるで空を浮かんでいるかのような錯覚さえ覚える。
琴里は艦長席から飛び降り、円の中心に立つと、細く息を吐いて心を落ち着かせる。
「(大丈夫・・・・令音の分析では精霊化した状態とほぼ同威力が出せると言っていたわ)」
琴里は、『スピリッドライバー』を起動させる。
[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]
「変身!」
[イフリート プリーズ]
音声が響くと、琴里はバッ、と指輪を嵌めた右手を振り払った右側に、赤色の魔法陣が現れ、それが琴里の身体を通過すると、赤色のルビーが身体を包み、それが砕けると、〈仮面ライダーイフリート〉に変身した。
[カマエルブレイカー]
専用武器『カマエルブレイカー・バズーカモード』を召喚して構えると同時に、前方に大きなコネクタのような装置が下りてくる。
[マジイイネ! カマエル! ステキー!]
そしてイフリート<琴里>が必殺モードになったカマエルブレイカーの先端を触れさせると、小さな電子音が響き、カマエルブレイカーとコネクタがしっかりと接続された。
「行くわよ、神無月」
《はっ、いつでもどうぞ》
イフリート<琴里>が言うと、スピーカーから神無月の声が聞こえてくる。
それを確認してから、カマエルブレイカーに霊力と魔力の融合エネルギーを集める。
収束魔力砲〈ミストルティン〉が弾かれのであれば、今度はそれ以上の威力で、押し通せば良い。
精霊霊力砲〈グングニル〉。それは精霊の力を変換させ、増幅して必滅の一撃を放つ、〈フラクシナス〉最強の兵器である。
本来ならば、琴里が一時的に精霊の力を取り戻して使う、下手に使えば破壊衝動に飲まれ、〈フラクシナス〉の脅威になる、謂わば諸刃の剣のような兵器だったが、〈仮面ライダー〉に変身すれば、暴走する事がなく、霊力と魔力が融合した新たなエネルギーを使う事ができるのだ。
ーーーーイフリート<琴里>の身体の周囲に、エネルギーの余波が火花のように舞い散っていく。仮面越しにキッと視線を鋭くして叫んだ。
「今よ! 精霊霊魔力砲〈グングニル〉!」
《撃て<ファイア>!!》
スピーカーから神無月の声が響くと同時に、〈フラクシナス〉の中央に位置する巨大な砲門から、濃密なエネルギーで形作られた巨大な赤い光の柱が、〈フラクシナス〉と人工衛星を一直線に繋ぐように伸びていった。
砲撃が命中する瞬間、再び軌道を逸らそうと、人工衛星の周りに随意領域<テリトリー>を展開するが、〈グングニル〉の一撃は一瞬でソレを屠り去るとーーーー天宮市に落下していた人工衛星を、跡形も無く消滅させた。
爆破術式。無数な破片。予想されたそれらの被害の一切を、単純な超高出力の一撃を以て、完全に蒸発させたのである。
《ーーーー目標、消滅! 成功です!》
スピーカー越しにクルーの声が響く。イフリート<琴里>はカマエルブレイカーをコネクタから外すと、フゥ、と息を吐いた。認めるのはかなり癪だが、ドラゴンとの経路<パス>ができたのは幸いだったと言える。
そして、艦橋にいるクルーに話しかけようと声を発する。
「ご苦労様。でもまだ休んでいられないわよ。残った敵艦をーーーー」
ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー!・・・・。
が、イフリート<琴里>の声を遮るように、けたたましいエマージェンシーコールが鳴り響いた。
「・・・・っ、何事よ! 敵艦が何か仕掛けてきたの!?」
《い、いえ! 違います! こ、これはーーーー》
クルーが言うのと同時、空の風景を映していた壁面の一部に、レーダー画像が表示され、そこに映し出された反応を見てーーーーイフリート<琴里>は息を詰まらせる。
「な・・・・これはーーーー人工衛星が、もう一基・・・・!?」
そう。今しがた消滅させたそれと同一の反応が、再び〈フラクシナス〉の上空に出現していたのだ。
「まさかーーーー今のは“囮”だったって言うの・・・・!?」
DEMは恐らく、こちらに人工衛星を落とす手段がある事を見越した上で、最初から複数の人工衛星を用意したのだ。イフリート<琴里>は、してやられたとグッと奥歯を噛むと、声を発する。
「上等じゃない! ならもう一回!」
《・・・・いや、駄目だ、琴里。〈グングニル〉の連発は〈フラクシナス〉に負担が大きすぎる。先ほどの一撃で回路や配線の一部も不具合を起こしている》
令音が静かにそう言った瞬間、敵艦の攻撃が激しさを増したのか、先ほどよりも艦体が強く揺れた。
「く・・・・!」
状況は最悪である。今この時も二基目の人工衛星が地上目掛けて落下していると言うのに、〈グングニル〉を撃つ事はできないし、〈ミストルティン〉の出力では、あの艦の随意領域<テリトリー>を打ち破れない。否、それ以前に、人工衛星への砲撃を強要すれば、その前に〈フラクシナス〉が沈められてしまう。いっそイフリート<琴里>が直接叩きに行くか、と考えたが、イフリート<琴里>だけではあの人工衛星を破壊するのは困難だ。
「一体、どうすればーーーー」
≪小僧と同じで、お前ももう少し頭を使え〈イフリート〉≫
「っ、ドラゴン・・・・!」
惑っているイフリート<琴里>に、ドラゴンの念話が聞こえた。
≪〈フラクシナス〉は動けない。貴様1人ではどうにもできない。そんな時は・・・・彼女達に頼れ≫
ドラゴンがそう言うのと同時に、スピーカーから、艦橋に至る扉が開く音が聞こえ、
《む・・・・ど、どうしたのだ、これは?》
先ほど保護した十香達らしかった。騒然とした艦橋と、モニタに映る敵艦、そして落下を続ける二基目の人工衛星を見たのか、驚いたような声を響かせる。
《あ、あの・・・・これは、一体・・・・》
《うっはー。ドラゴン君に言われて来てみれば、なんかピンチな感じ?》
《くく・・・・情けなき事よ。この程度で慌てふためくとは》
《同調。もっと冷静になるべきです》
《あれ? あの画面のって、さっき言ってた人工衛星ですよね? 何か・・・・まだ落ちてる気がするんですけどぉ・・・・》
十香に続いて、四糸乃、よしのん、耶倶矢、夕弦、美九が艦橋に入ってきて、口々に言う。
「あ、あなたたち・・・・!」
イフリート<琴里>が驚きながら返すと、十香が不思議そうに返す。
《琴里? どこにいるのだ? シドーも姿が見えんし、ドラゴンにすぐにここに来るように言われたのだが、一体・・・・》
十香の問いに、思わず息を詰まらせるイフリート<琴里>。
そんな様子に何かを感じ取ったのか、十香が、少し表情を険しくした。
《ーーーー琴里、どうしたのだ。話してくれ。私達に手伝える事はないのか?》
「・・・・っ」
イフリート<琴里>は無言で奥歯を噛み締める。
「(ダメよ・・・・! 精霊達は“守るべき対象”、間違っても、危険な場所に送るべきではーーーー)」
≪変な所で小僧と同じ愚か者だな≫
「なっ?!」
ドラゴンの言葉に、イフリート<琴里>は眉根を動かす。
≪精霊達は、〈プリンセス〉達は“守るべき対象”だと? なんと言う驕りだ。傲慢とも言える考え方だな。精霊達が貴様らごときに“守られるだけの存在”だと、“保護すべきか弱い女の子”だとでも言いたいのか? 彼女達はお前の友であり、仲間ではないのか?≫
「っ!」
≪貴様の愚兄がこの状況を知れば、必ず無茶をする。それでも良いのか? 貴様にとって何が1番大事なのだ? 苦しい状況でこそ頼り合うのが、仲間なのではないのか?≫
「・・・・っ!」
ドラゴンの言葉に、イフリート<琴里>は息を詰まらせる。
人工衛星が未だ落下を続けていると知れば、士道は、あのお人好しの馬鹿兄は、周りの心配なんて欠片も考えずに、それに立ち向かってしまうだろう。ドラゴンも、自分や精霊達に危害が及ぶならば協力する可能性がある。
司令官としての琴里と、妹としての琴里。
2つの立場の間で意思がせめぎ合う中ーーーー琴里の唇は、半ば無意識のうちに開いていた。
「お願い・・・・みんな。あの馬鹿を・・・・私の、たった1人のおにーちゃんを・・・・たすけて・・・・っ!」
《『っ!・・・・』》
その言葉に、十香達が一瞬無言になるが、
《『[ドライバーセット シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]』》
《『変身っ!』》
《[プリンセス プリーズ]》
《[ハーミット プリーズ]》
《[ベルセルク・テンペスト プリーズ]》
《[ベルセルク・ストーム プリーズ]》
《[ディーヴァ プリーズ]》
『スピリッドライバー』をすぐに装着し、〈仮面ライダー〉へと変身した音が聞こえた。
《琴里、私達はどうすればいい?》
「っ・・・・ありがとう・・・・!」
イフリート<琴里>は、仲間達の行動に一瞬涙を堪えながらお礼を言った。
ー士道sideー
≪(やれやれ世話の焼ける・・・・さて) とっとと! 離脱しろ小僧!!≫
「い~や~だぁ~! まだ七罪が見つかっていないんだぁっ!!」
琴里からの通信が切れてから、ウィザード<士道>は琴里の避難勧告を無視して七罪を探そうとした。が、そうはさせんとドラゴンが身体を動かそうとした。ハリケーンドラゴンのウィザード<士道>は、自分の身体を中から操作して離脱しようとするドラゴンに、まるで駄々っ子のように抵抗しながら、七罪を探そうとしていた。
空中で壊れたブリキ人形みたいな動きをするウィザード<士道>は、少し滑稽であるが。
「俺には琴里の加護かあるんだ! 爆風や人工衛星の破片で重傷を負っても(バキッ!!)ふばっ!?」
そんなウィザード<士道>の横っ面をドラゴンが尻尾で思いっきり叩いた。
≪この愚図めが! 〈ハーミット〉のアンダーワールドでの戦いで〈イフリート〉が後で何と言ったか忘れたかっ!?≫
【・・・・ちゃんと、回復限界を計算してるから・・・・! 私の言うとおりに動いていれば、絶対に安全だから・・・・っ】
「・・・・っ」
ウィザード<士道>の脳裏に、泣いていた琴里の顔を思いだし、抵抗を止めた。
≪“ーーーー守ろうとする命の中に、ちゃんと自分を入れてちょうだい”、これも〈イフリート〉が言っていたな?≫
「ぅ・・・・」
≪守ろうとしている者が大丈夫ならば、自分は犠牲になってもいい。先ほども言ったがそんな綺麗事など、犠牲になった自分を思う者達の事を考えない、『独り善がりの自己満足』に過ぎんわ≫
「・・・・・・・・そうだな」
琴里の言葉が脳裏に蘇り、ドラゴンの言葉が心に突き刺さると、ウィザード<士道>は思い直した。
これだけ大声で飛び回ったのだ。七罪が監視していたら不穏な事態に気付いて逃げている事を願うしかない。
ウィザード<士道>は最寄りの地下シェルターを見つけると、辺りにむかって再び大声をあげた。
「ーーーー七罪! 俺は今からシェルターに避難する! もしシェルターの位置が分からなかったら俺に付いてきてくれ!」
返答は・・・・やはり、ない。
「いいな!?」
ウィザード<士道>は声が届いている事を願い、シェルターに向かって降下した。
警報発令からかなり時間が過ぎている為、もうメインの入口は閉じ込められている。が、逃げ遅れた人用の非常用の入口があるが、ウィザード<士道>は『ウォール』で入口に穴を開ける。
「七罪! ここだ! 姿を隠したままでもいい! 破片が降ってくる前にーーーー」
≪いや、手遅れだ≫
「えっ?」
ドラゴンの言葉にウィザード<士道>は顔をあげたその時、雲の切れ間から、小さい影が、遠くて小さく見えているだけだが、それは間違いなく、無傷の状態の人工衛星が、その姿を現した。
「おい、冗談だろ・・・・! 琴里達は!?」
≪落下しつつある人工衛星は二基だったらしくな。現在〈フラクシナス〉は、DEMが持ち出してきたらしい空中戦艦の迎撃に追われている≫
「なっ!」
ドラゴンの言葉にウィザード<士道>は息を詰まらせると、落下してくる黒い無骨な鉄の塊が、ゆっくりとーーーーしかし確実に、その大きさを増していく。
「・・・・くそッ!」
ウィザードが風を纏って上昇し、人工衛星に向かう。
このまま無傷の人工衛星が墜落すれば、衝撃と爆破術式によって、天宮市は焦土と化し、シェルターに避難した人達も死んでしまう。
輪島のおっちゃんに、殿町、亜衣、麻衣、美衣達などのクラスメート、担任のタマちゃん先生、はんぐり~の店長に店員さん、ご近所の皆さん、商店街の人々・・・・数え切れない命が、一瞬に消されてしまう。
「そんな事・・・・させるかよ・・・・ッ!」
[チョーイイネ! サンダー! サイコー!]
「俺の街にッ! 落ちてきてんじゃねぇぇぇぇぇッ!」
ーーーーピシャァアアアアアアアアアアアアンン!!!
ウィザード<士道>が『サンダーウィザードリング』をドライバーに翳すと、『ドラゴンウィング』を展開し、緑色の雷撃を人工衛星に叩き込んだ。
凄まじい電圧が人工衛星を襲い、激しい雷鳴が天宮市全域に響き渡る。
だが。
「な・・・・っ!」
ウィザード<士道>は仮面越しに目を見開いた。
全力の緑の轟雷を浴びたのに、人工衛星は未だに現在。辺りに轟音を撒き散らしながら、天宮市を殲滅せんと地上に迫ってきている。
「くそ・・・・っ! ドラゴン! 『オールドラゴン』だっ!」
≪・・・・いや、もう少し待ってみよう≫
「はっ!? 何言ってーーーー」
ーーーーその時。
ウィザード<士道>が、不意に辺り冷たい風が吹き、ハッと肩を震わせる。その感覚には覚えがあった。
「これはーーーー」
次いで空を仰いで息を呑んだ。
人工衛星が、地上から数百メートル程度の位置で、制止しているのである。
否ーーーー正確に言うと、上昇気流のように吹き上げる濃密な風圧と、氷で編まれた壁が、スラスターを噴かして地上に迫る人工衛星を、ギリギリの所で止めていた。
「やっはー! 士道くん! ドラゴン!」
背後から聞きなれた軽快な声に振り向くと、青いサファイアのアーマーにウサ耳のパーカーを着込み、左手に兎の形の手甲を付けた仮面ライダー、四糸乃が変身し、よしのんが戦う〈仮面ライダーハーミット〉がいた。
「四糸乃! よしのん!」
「くく、二人だけではない」
「不満。夕弦達の活躍も見てほしいです」
次いで上空から聞こえる2つの声に見やると、黄色のトパーズに、右側に伸びた三日月状の冠を付けた仮面と、黄色のストールを左側に垂らした耶倶矢が変身する〈仮面ライダーベルセルク・テンペスト〉が、
橙色のオレンジサファイアのアーマーに、仮面に左側に伸びた三日月状の冠と、耶具矢とは逆に装飾された鎧と橙色のストールを右側に垂らした夕弦が変身する〈仮面ライダーベルセルク・ストーム〉だった。
すんでのところで3人と一匹が、人工衛星の落花を食い止めてくれたようだ。
「シドー! ドラゴン!」
「だーりん! ハニー!」
「全く、避難しろって言ったのに」
次に響いたのは十香と美九と琴里の声がした。
3人とも、マスクに上部に王冠のようなティアラを付けた夜色のアメジストと、夜色のロングコートを纏った姫騎士のような姿をした十香の変身する〈仮面ライダープリンセス〉に、白いスーツに紫色のタンザナイトのアーマーに紫色のコートを羽織り、コートには五線譜と音符が付けられた、美九が変身する〈仮面ライダーディーヴァ〉に、赤色のルビーのマスクに角の装飾が施され、赤色の上着を羽織った、琴里が変身する〈仮面ライダーイフリート〉だった。
「十香、美九、琴里・・・・!」
ウィザード<士道>か驚いた声で言うと、プリンセス<十香>がコクリと頷いた。
「うむ、琴里にシドーが危ないと聞いて、急いで駆けつけたのだ」
「そうか・・・・琴里、〈フラクシナス〉は?」
「DEMの空中艦と戦っているわ。神無月に任せておけば大丈夫よ・・・・多分」
多分と言う言葉を無視して、十香達に向き直り、小さく頭を下げる。
「すまん・・・・、助かった」
「何を言う。私達を助けてくれたのはシドーとドラゴンではないか。これくらいでは返せぬ恩を、私達は既に受けている」
プリンセス<十香>が言うと、周りの皆もコクコク頷いた。
「皆・・・・」
≪感慨に耽っている場合ではないぞ。さぁ、やるぞ≫
「・・・・ああ! さぁ皆、ショータイムだっ!!」
『おー!!』
ウィザード<士道>が言うと、全員が元気よく手をあげた。