デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

125 / 278
『第10章』開幕です。


鳶一エンジェル
転校・折紙?


ー士道sideー

 

寝起きの七罪によるサプライズはあったが、一応その日は『いつも通り』だった。

 

「シドー!」

 

学校に行こうと外に出ると、隣のマンションから十香が大きく手を振って近寄ってきた。

 

「おう、十香。おはよう」

 

「うむ、おはようだ!」

 

いつもの元気はつらつ、全力で生きている十香の満面の笑みは今日も活力に満ちている。

 

「今日も良い天気だな! ポカポカするぞ!」

 

「ああ、11月とは思えないな。ーーーーっと、そう言えば、耶俱矢と夕弦は? まさかまた寝坊か?」

 

以外と寝坊癖がある、と言うよりも、夜遅くまでゲームで勝負して寝坊する八舞姉妹を心配する士道だが、

 

「いや、2人は先に行ったぞ。何でも今日は、どっちが先に学校に着けるか競争をするそうだ」

 

「ああ、なるほど」

 

2度の飯より勝負が好きな2人は(本当なら3度の飯よりと言いたいようだが、3度も飯を抜くと勝負そのものができなくなるから)、何かにつけては良く張り合っている。

何とも2人『らしい』理由に、士道は思わず苦笑する。

 

「じゃあ今日は、バイクで行くか」

 

「うむ!」

 

2人が通いなれた通学路をマシンウィンガーで走っていく。いつもと同じ日常のワンシーン。

この数ヶ月で幾度も繰り返してきた毎日の一端。精霊と言う特異が存在する、常識の範疇を超えた異様な光景は、いつしか士道にとっては、『当たり前の日常』になっていった。

 

≪はっ、相変わらず日々を無為に過ごしているだけ、『当たり前にある日常』と勘違いしている豚のような思考だな≫

 

「(何だよいきなり・・・・)」

 

≪ふん≫

 

と、そんな気分を害するようなドラゴンの言い方にムッとなる士道だが、ほどなくして来禅高校に到着し、バイクを駐車場に置くと、教室に行き席についた。

ーーーーだが。

 

「・・・・・・・・」

 

無言で、左隣の誰も座っていない席にーーーー鳶一折紙の席に視線をやる。

そう。いつも通りの筈の『日常』から、1つ、欠けてしまったのである。

 

「折紙・・・・」

 

「む・・・・」

 

士道が小さく名を呼び、十香も視線をやった。

いつも事ある毎に喧嘩をしていた犬猿の仲の2人だったが、十香の折紙の席を見る目には、何やら複雑な感情が込められている気がした。士道も十香も、最後に折紙に会った時を思い起こす。

ーーーー今から数日前、七罪の霊力を封印した直前、DEMインダストリーが投下してきた爆弾を、DEMインダストリーのCR-ユニットを纏った折紙が空から現れ、一撃で破壊したのだ。

 

「あれは・・・・一体」

 

士道は自問するように呟き、額に手を当てて考えを巡らせていく。結局折紙は、士道達の元に下りてこないで、意味深な視線を残して去っていった。

次に会う時に詳しく事情を訊かねばと思っていた。

 

≪何が【あれは・・・・一体】、だ。来るべき時が来たと言うだけだ≫

 

「は? それどういうーーーー」

 

ドラゴンの言葉を聞き返そうとした士道だが、ホームルームのチャイムが鳴り、士道は校門に目を向けるが、折紙の姿は無かった。

 

「・・・・今日は、休みか」

 

≪ふん。我は少し忙しいから、話しかけるなよ≫

 

士道が落胆とーーーー僅かな安堵が混じった息を吐き、ドラゴンはそう言って黙ってしまった。

今日の帰りにでもお見舞いと言う体でマンションを訪ねるか、と考えていると、タマちゃん先生が教室に入り、規律、礼、着席。と、いつも通りの挨拶を済ませ、タマちゃん先生が出席簿を開く。

 

「・・・・はい、皆さんおはよぉございます。今日も張り切っていきましょう」

 

張り切って、と言う割には、暗い声でとションボリした様子のタマちゃん先生に、クラスメート達が目配せをし合う。

 

「え・・・・何、タマちゃんどうしたの?」

 

「何か元気なくない?」

 

「マジ引くわー。もしかしたらまたお見合いが駄目になっちゃったとか」

 

「あー・・・・」

 

亜衣麻衣美衣トリオと殿町がそう言うと、他のクラスメート達も納得したような声を発する。

タマちゃん先生はそれが聞こえているのかいないのか、ハアとため息を吐いた。

 

「出席の前に、皆さんに悲しいお知らせをしなくちゃいけません」

 

言って、タマちゃん先生が眉を八の字にする。その不穏な様子に、クラスの面々(十香を除く)は『やっぱり・・・・』と声を上げ、亜衣麻衣美衣トリオを中心に口々に噂を初め、タマちゃん先生はそれを諌めるようにわざとらしく咳払いをしてから言葉を続ける。

 

「実は・・・・鳶一さんが、急な都合で転校する事になってしまいまして・・・・」

 

「は・・・・!?」

 

タマちゃん先生の言葉に、士道は思わず立ち上がってしまい、十香も目を丸くした。

クラスの面々も驚いたが、士道のリアクションの大きさに視線が集まる。

士道はそれに構わず、タマちゃん先生に質問を投げる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください、折紙が!? 一体どういう事ですか!?」

 

「そ、そんな事言われましてもぉ・・・・私も詳しい事情は分からないんですよぉ。突然、鳶一さんから電話がかかってきて、【転校する、必要書類は後で送る】って・・・・」

 

「そんな・・・・」

 

士道は動揺を隠せず額に手を当てた。クラスメート達も、士道の慌てように、否、士道が折紙の事情が聞いていないのを驚いたのか、ヒソヒソと話を始めた。

 

「そ、それで・・・・一体どこの学校に転校するって言うんですか?」

 

学校名さえ分ければ、〈ラタトスク〉に調べてもらう事は十分可能だ。士道はすがるように言葉を発し、その必死な様子はタマちゃん先生にも伝わり、慌ただしく出席簿に挟んだプリントに目を這わせ、顔を上げてくるが、その顔には困惑の色に染まっていた。

 

「そ、それがですね・・・・い、イギリスの学校、とだけ・・・・」

 

「・・・・ッ」

 

その言葉を聞いて、士道はゴクリと唾液を飲み下した。

 

 

 

ードラゴンsideー

 

≪(やはりな・・・・ま、あの娘の事は良いとして・・・・)そろそろ落ち着きなさい〈ウィッチ〉・・・・≫

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

と、ドラゴンが士道の様子に片耳を立てていたが、すぐに念話で、マンションの自室のベッドの上で暴れる七罪を宥めていた。

 

「う、うぐぅぅぅ・・・・」

 

数分間暴れた後、疲れて動きを止め、グッタリと俯せになる七罪。体力が回復し、ノソノソと起き上がり、壁際に置かれた姿見に視線をやる。

今朝の絶世の美女から、みすぼらしいチンチクリンになった本当の自分。

 

「あー・・・・もう、なんで私はこうなのよ」

 

≪何だ? あれだけ精霊達+産業廃棄物小僧に『認められた』のに、また自分の容姿に不満があるのか?≫

 

「当然でしょう・・・・。もう少し背が高くてとか、胸があればとか、数えれば切りがないわよ」

 

七罪は精霊達の中で、一番慎ましいサイズである自分の胸を見て大きなため息を吐く。

ちなみに、七罪が来る前は琴里が一番慎ましいサイズであり、四糸乃の方が自分より1センチ大きい事を知った琴里は、その日〈フラクシナス〉でファンタに溺れたらしい。

 

≪だが、皆は『認めて』くれたのだ。少しは受け入れられるようになったのだろう?≫

 

「・・・・・・・・うん」

 

≪だから感謝も含めて、早起きして、皆を起こそうとして、手始めに小僧を起こそうと寝室に来たまでは良かったが、ネガティブ思考で緊張感が頂点に達し、大人モードにチェンジしていたのか?≫

 

「・・・・何でそこまで分かるのよ」

 

封印されてからここ数日。ドラゴンは何かと自分に話しかけてくる。最初は何か裏があるのかと思って警戒していたが、【霊力を頂いているお礼代わりだと思ってくれ】と、言っていた。

 

≪それで、今朝の騒動を終えて自室に戻って自己嫌悪に陥ったと?≫

 

「う、うぅ、うごぉぉぉぉ・・・・」

 

ドラゴンに言われ、再び呻く七罪。

 

「ホントに自分の心の弱さが嫌になるわ・・・・! もうヤワヤワのヨワヨワよ・・・・! これならまだ絹ごし豆腐の方がなんぼか頑丈よ・・・・!!」

 

≪仕方ないな。・・・・入っても良いぞ≫

 

「ん?」

 

ーーーーピーンポーン。

 

ドラゴンの言葉に訝しそうに顔をあげた七罪の耳に、部屋のチャイムが鳴った。ビクッ! 身体を強ばらせるが、すかさずが≪深呼吸。深呼吸≫と、押さえてもらい、なぜか足音を殺して玄関に向かい、マイクとスピーカーで来訪者に話しかける。

 

《あ、あの・・・・四糸乃です》

 

《よしのん&プラモンスターズもいるよー》

 

《ピィッ!》

 

《ヒヒィン!》

 

《キュキュっ》

 

《ゴゴゴ!》

 

「・・・・っ!?」

 

予想外の声に、七罪は眉根を寄せた。

が、四糸乃は自分と同じ精霊で、学校に通っていないので、この時間マンションにいるのは当然とも言える。

一体何の用なのか、七罪は首を捻るが。

 

≪ほら。お客様だぞ。すぐに髪を整えて、出迎えなさい≫

 

「っ・・・・す、少し待って!」

 

《え? は・・・・はい》

 

3分で髪を整えた七罪が出迎えると、自分と違って圧倒的に可愛い四糸乃の容姿に圧倒されそうになる。

2人ともコミュ力が高い方ではないので、暫く無言になり、よしのんとドラゴンが助け船を出して、取り敢えずリビングに案内し、紅茶を差し出した。何故かプラモンスターズはカメラを持っていたが。

 

「ど、どうぞ・・・・」

 

「すいません・・・・ありがとうございます」

 

四糸乃が小さく頭を下げ、紅茶を一口啜る。七罪も同じように、カップに口をつけた。

 

『お紅茶ありがとね七罪ちゃん♪』

 

「え、あぁ、うん・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

よしのんの言葉にそう返事するが、四糸乃も七罪も自分から喋り出す性格ではないので、また沈黙が流れる。

それを見ながら七罪が思考する。

 

「(何でこの子来たの? まさか、この子の無二の親友のよしのんに化けたり、お世話役のプラモンスター達をぬいぐるみに変化させた私に、仕返しに来たとかっ!? 士道達が学校なんて地獄に行っている間に・・・・!)」

 

≪安心しろ。〈ハーミット〉は精霊達の中でも、1番心優しい性格をしている。報復や仕返しや復讐なんかする性格ではない≫

 

「(わわわわ、分からないでしょ! もしかしたら、今回の事に心火も燃やして私をぶっ潰しに来たのかも! 大義の為の犠牲にされるかもっ!?)」

 

「あの、七罪さん・・・・?」

 

「ウェイっ!?」

 

ドラゴンに心の中でそう言っていると、不意に声をかけられ、七罪は変な悲鳴を上げてテーブルの下に潜り込む。

 

≪ほら逃げない≫

 

ーーーーペチッ。

 

「あたっ! (ゴン!) あだっ!」

 

尻尾ド突き(威力激弱)で頭を叩かれると、思わず顔を上げ、テーブルの下に潜り込んでいたので、頭を強かに打ち付けてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか、七罪さん・・・・!」

 

「あ・・・・だ、大丈夫・・・・」

 

≪はい。席に戻る≫

 

「分かってるわよ・・・・」

 

席に戻り、再び静かに深呼吸してから、四糸乃に問いを発する。

 

「そ・・・・っ、それで・・・・私に、何か用・・・・?」

 

「えっと・・・・」

 

言いづらそうに言葉を濁し、視線を逸らしそうになるが、プラモンスターズが『ガンバレ!』と言っているように小さく鳴き、四糸乃は気を取り直したように七罪の目を見据え、小さな唇を開く。

 

「その・・・・な、七罪さん、ここに住み始めたばかりで、この街の事・・・・あまり知らないと思うので・・・・もし良かったら・・・・何ですけど、街を案内・・・・しようかと思って」

 

「え・・・・?」

 

意外な言葉に目を丸くする七罪の反応をどう受け取ったのか、四糸乃は慌てた様子で手を振った。

 

「あ、あの・・・・私も、そんなに街に詳しい訳ではないので、あまりお役に立てないかも知れないんですけど・・・・簡単な案内くらいならできると思うんです。ガルちゃん達も、手伝ってくれますし、えっと、本当に、もしご迷惑じゃなかったら・・・・」

 

「・・・・う、あああ」

 

四糸乃があまりにも眩しすぎて、七罪は両手で顔を覆った。

一瞬とは言え、こんなに優しさに満ちた四糸乃が復讐に来たとか考えた自分の薄汚さが嫌になる。まだ自分が『ゲート』なら『ファントム』を生み出せそうだ。いやいっそ、やさぐれて地獄に落ちて、『兄貴塩』か『弟味噌』のカップラーメンでも啜っていたい気分だ。

 

「っ、あ、あの、すいません、そんなに嫌だとは思わなくて・・・・」

 

≪安心しなさい〈ハーミット〉。〈ウィッチ〉は嬉しすぎて堪らないのだ≫

 

「え?」

 

「・・・・すいません、何て言うか、生まれてきてすいません・・・・」

 

「な、七罪さん・・・・?」

 

≪ほら〈ウィッチ〉≫

 

「う、うん・・・・」

 

困惑する四糸乃。ドラゴンに背中をポンポンと優しく叩かれた気分の七罪がソロソロと目を開けて、漸く四糸乃の直視出来るようになる。

 

「・・・・あの、じゃあ・・・・よろしく」

 

「は、はいっ!」

 

七罪がそう答えると、四糸乃が天使のような笑顔を作って声を弾ませる。七罪はその眩しさにまた目を覆いそうになるが、ドラゴンが止めた。

 

「でも・・・・なんで、私なんかの為にそんな事までしてくれるの?」

 

頬をかきながら純粋な疑問と照れ隠しが半々となって問うと、四糸乃は小さく肩をすぼめてから答える。

 

「ちょっと・・・・嬉しかったんです。この時間はいつも、士道さんや十香さん達が学校なんて行ってしまっているので・・・・ガルちゃん達がいつも遊び相手をしてくれていました・・・・七罪がここにやって来たら、いっぱいお話できたら良いなあって・・・・思ってたんです。それに、その・・・・」

 

頬をカァッと赤くしてから、四糸乃は言葉を続ける。

 

「わ、私達・・・・友達、ですから・・・・/////」

 

≪写真撮影≫

 

言って、四糸乃が恥ずかしそうに目をキュッと瞑る。その様に、七罪も思わず赤面し、ドラゴンはプラモンスターズに短く指示を出すとガルーダ達が四糸と七罪の様子を激写した。

それに構わず七罪は。

 

「うわっ・・・・なにこの子、結婚してぇ・・・・/////」

 

≪(ペチン!) こら! まだ早い!≫

 

「・・・・ふぇっ!?」

 

『おぉやぁ?』

 

「・・・・!」

 

四糸乃のあまりの可愛さに、思わず無意識にこぼれた言葉で求婚してしまった七罪。尻尾で七罪の頭を叩くドラゴン。四糸乃はビクッと肩を揺らし、よしのんとプラモンスターズは顎を撫でたりジト目を向けたりする。七罪は慌てて首をブンブンと振った。

 

「な、何でもない! そ、それより、街を案内してくれるのよね!? じゃあ行きましょう早く行きましょう今すぐ行きましょう!」

 

「ええと・・・・は、はい」

 

言いながら両手をブンブン上下に振る七罪。その動きに合わせて両手を動かすよしのんとガルーダとゴーレム。

七罪は戸惑う四糸乃の背を押し、部屋から出ていった。

 

≪(さて。こっちはこれで良いが。問題は・・・・)≫

 

ドラゴンは七罪達の様子を見届けて、士道の方に目を向けた。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「折紙・・・・!」

 

士道は突然告げられた折紙の転校にいても立っても居られず、体調不良を装って早退した。十香は心配そうな顔をしていたが、折紙の真意が分からないので、学校に残ってもらった。

スマホで連絡しても通じず、『コネクト』でマシンウィンガーを持ち出し、折紙のマンションへと走った。

 

「くーーーー」

 

急いでいる時に限って、信号機はまるで邪魔するかのように赤になり、バイクを止める。士道は逸る気持ちを必死に抑えて、漸く折紙のマンションに辿り着いた。

 

「いてくれよ・・・・折紙」

 

士道は祈るような気持ちでエントランスに入ると、インターホンに折紙の部屋番号を入力したが。待てど暮らせど、返事はなく、2度、3度と繰り返したが、結果は変わらず。もう既に引き払ってしまったのか、まさか無視しているのか、士道は人目が無いのを確認すると、『フォール』の魔法でマンションに侵入した。

 

「すいません、今回だけなんで・・・・」

 

と、小さな声で詫びながら、士道は廊下を歩いていき、エレベーターで上階に上がり、折紙の部屋の前まで辿り着く。

 

「・・・・よし」

 

士道は小さく頷くと、部屋のインターホンを鳴らす。

が、やはり反応はなく、部屋の扉をノックして呼び掛けても返事はない。思いきってドアノブに手をかけ捻ると、鍵が開いており、扉が開いた。

 

「折紙!」

 

意を決してドアを一気に開いて見るとソコにはーーーーガランとした、部屋の光景だけだった。

 

「な・・・・!?」

 

士道は目を見開き、乱雑に靴を脱ぎ捨て、部屋の中に入っていった。調べてみても、家具はおろか、入念に張り巡らされていたトラップも残っていない。折紙がここにいたと言う痕跡が全て消され、最初から空き部屋だったかと錯覚してしまう。

 

「何なんだよ、これ・・・・?」

 

士道は頭に手を当て、力なくその場にヘタりこんだ。

ここまで来るまで、この最悪の予想していなかった訳ではない。しかし、いざ現実として突きつけられると、途方もない衝撃となって胸を締め付けられる。

 

「どこに・・・・行っちまったって言うんだよ、折紙・・・・」

 

だが、こうしていても忌みがない。士道は頭をガリガリとかくと立ち上がり、ASTがいる陸上自衛隊天宮駐屯地に向かおうとした。

門前払いが関の山だろうが、心当たりが他に無い。すがるような気持ちで歩を進め、マンションのエントランス出た瞬間ーーーー折紙がマンションの向かいの路地に立っていた。

 

「折紙!?」

 

士道は大声で名を呼ぶと、慌てて折紙の元に駆け寄る。そしてそのまま彼女の両肩を掴んだ。・・・・まるでそうしないと、折紙が何処かに消えてしまう気がしたから。

 

「一体どこに行ってたんだ!? いきなり転校ってどういう事だよ! 部屋もがらんどうでーーーー」

 

「・・・・・・・・」

 

まくし立てる士道だが、折紙が無言で人差し指を士道の唇に当てた。

そして、

 

「ーーーー2人で話がしたい。ついてきて」

 

静かな調子でそう言うと、折紙は士道の手をすり抜けるように踵を返し、路地裏へと歩いていった。

 

「あ、お、折紙!」

 

声をかけるが、折紙は足を止めず、振り返らず、スタスタとかくと、歩いていく。

 

「く・・・・(バシッ!)ってぇ~!」

 

士道は微かに眉根を寄せ、ドラゴンのド突き(威力弱め)で少し痛みを感じつつも、折紙の跡を追った。 元々折紙から話を聞く為に捜していたのだ。願ったりだ。

だが、折紙は路地裏の方に歩いていき、周りに人気が無くなっていく。

 

「なあ・・・・折紙、どこまで行くんだ?」

 

「もうすぐ」

 

士道に一瞥せずに言うと、黙々と歩を進め、士道も跡をついていく。

とーーーー幾度目かの角を折紙が曲がり、それを追って曲がった時。

 

「あれ・・・・? 折紙? どこへ・・・・、ーーーーッ!?」

 

一瞬前に角を曲がった折紙の姿が見当たらなくなり、目を丸くした瞬間ーーーー士道は息を詰まらせた。

不意に背後から何者かに組付かれかと思うと、鼻と口をハンカチのような物で覆われた。

 

「(これは・・・・!) う、ぁーーーー」

 

突然の事で大きく息を吸った瞬間、ツンとした刺激臭が鼻を突き、それと同時に、地面がグランと揺れ、視界が歪み、意識が朦朧とする。やがて士道は立っている事も困難になりーーーーその場に倒れ込んだ。

 

≪全く迂闊な奴め≫

 

ドラゴンは、倒れた士道を見下ろすーーーー折紙を見てそう呟いた。

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

「ーーーー士道の行方が分からなくなった?」

 

昼休み。中学生の教室で、〈フラクシナス〉からの連絡先を携帯で受けている琴里(司令官モードにチェンジ済み)が周りに聞こえないように不審な声を発する。

ーーーー鳶一折紙が急に転校した。

令音が十香から聞いた事をクルーが報告すると、琴里は眉をひそめた。あの折紙が士道に何も言わずに転校するとは考えられない。

が、先日DEMのCR-ユニットを纏っていた折紙を見たからだ。何か密約でもされたか、それとも洗脳されたか、士道もそう思ったのだろう。いても立っても居られず、折紙を探しに行ったに違いない。

 

「あの馬鹿・・・・私達に一言も言わないで・・・・」

 

目の前の事にすぐに突っ走って、周りの気持ちを考えようとしない。ドラゴン曰く、士道のサハラ砂漠の砂粒の数以上にある欠点の1つだ。

琴里は苛立たしげに舌打ちすると、十香達の様子を聞いた。

十香、八舞姉妹、美九は学校。四糸乃と七罪は街を遊びに行っており、面影堂を出て、はんぐり~に立ち寄っている。ちなみに七罪ははんぐり~の店長を見てステーン、と後ろに倒れた。

 

「(・・・・ドラゴン。聞こえる? 今どこにいるの?)」

 

ーーーーザザザザザザ・・・・。

 

琴里はドラゴンに呼び掛けるが、まるでノイズがかかったように更新できなかった。

取り敢えず、十香達に士道の事は伏せておき、すぐに士道を捜索するように命令して通信を切ると、友人達に体調不良(もちろん仮病)で早退し、〈フラクシナス〉に迎えに来て貰おうと屋上へと向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。