デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー十香sideー
ーーーーウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー
けたたましいサイレン、空間震警報が発令された。
これで士道の捜索を打ち切りにされ、美九は渋い顔をし、八舞姉妹は新しい精霊が現れたのかと興味を抱くが、珍しく美九が年長者らしく2人を諫め、シェルターに避難しようとする。
しかし、十香は士道が折紙にペロペロガブガブムシャムシャされているのではと思い、その場から動けずにいると、
「ーーーー避難する必要はない」
「ぬ・・・・?」
背後から聞こえた静かな声に、十香は怪訝そうに振り返ると目を丸くした。
何故なら、今朝転校を知らされた鳶一折紙だったのだ。
「鳶一折紙・・・・? 貴様、何故こんな所に」
「ほう? 己から姿を現すとはな。我が魔眼の前には、逃げ隠れなど無駄と悟ったか?」
「驚嘆。マスター折紙。転校とは本当ですか?」
「あー、折紙さーん。だーりんは一緒じゃないんですかぁ?」
「・・・・・・・・」
皆が口々に言うが折紙は答えず、ただ静かにーーーー凍るような冷たい視線で全員を睨み付けてくる。
その視線に眉根を寄せながら、十香は再度口を開く。
「・・・・それで、避難の必要が無いとはどういう事だ?」
「空間震は、起きない。これは警報は、私が要請して鳴らして貰ったもの。実際は精霊も、ASTも現れない」
「何だと・・・・? 一体何の為にそんな事をーーーー」
十香が問うと、折紙はスウッと深呼吸をし、ポケットからドックタグのような物を取りだし、額に軽く当てた。
「ーーーーあなた達を、この場で、倒すため」
瞬間、折紙の身体が淡く発光し、その身にASTの装備ではないCR-ユニットーーーーエレン・メイザースが使っていたDEMインダストリーのそれと良く似ていた。
「な・・・・っ!?」
突然の折紙の行動に、驚愕するが、折紙は構う事なく長大の魔力砲を片手で構え、凄まじい魔力の本領を放った。
「くーーーー」
十香と八舞姉妹は首にかけている『サンダルフォンリング』と『ラファエルリング』を指に嵌め発動させると、限定霊装された状態で上空に飛んで回避する。その際、十香が咄嗟に美九の身体を担ぎ上げ、美九も無事である。
アスファルトの地面やコンクリート製の塀は、魔力砲によって折紙の位置から一直線に引いて吹き飛ばされていた。
「い、いきなり何をする! 危ないではないか!」
「私はあなた達をーーーー精霊を、倒す」
「・・・・っ」
十香は息を呑む。折紙の冷徹なその声に、純粋な敵意と殺意に彩られた視線に、十香は半年以上前に見た、士道と出会う前に戦っていた折紙のソレと同じの物だった。
だが、常に学校で顔を合わせていた為に気づかなかったが、折紙は変化していた。無論、士道の存在が大きかっただろうがーーーー静かに、しかし確実に、自分達に向ける憎悪が、最初とは別のものになっていた。
だが、今は。
「何故だーーーー何故、戻ってしまったのだ、鳶一折紙!」
「・・・・・・・・」
十香の叫びに構わず、折紙は砲門を十香と美九に向け、再度引き金を引こうとする。
「く・・・・ッ!」
十香は〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を出そうとするが、ソレよりも一瞬早く、折紙の指が動いた。
だがその瞬間、十香に向けられていた砲口が上方へと向けられる。
理由は単純、八舞姉妹が早く〈颶風騎士<ラファエル>〉で空から折紙に襲いかかったからだ。折紙は魔力砲を放つが、2人は空中で身を捻り、紙一重で回避する。
「くく、良く気づいたな!」
「感心。流石です、マスター折紙」
二人はクルリと宙返りをしてから十香と美九を守るように折紙の前に降り立ち、格好いいポーズを取って天使を向ける。
「さて、一応弁明を聞いてやろうではないか、折紙。冗談にしては度が過ぎているのではないか?」
「詰問。答えてくださいマスター折紙。あなたとは戦いたくありません」
「答える必要は、ない」
折紙は魔力砲を可変させ、その先端から魔力の刃を現出させると、随意領域<テリトリー>を使って己の身体を弾き、八舞姉妹に向かって突撃する。
が、機動力は精霊最高の八舞姉妹はその一撃を回避し、折紙と斬り結ぶ。
随意領域<テリトリー>を広げて動きを阻害されふ八舞姉妹は、次第に押される。
「くーーーー美九! 2人を助けるぞ!」
「は、はいっ!」
美九も首にかけていた『ガブリエルリング』を外して指に嵌め、力を込めると限定霊装を纏い、天使〈破軍歌姫<ガブリエル>〉を顕現させ、光の鍵盤を引き鳴らして流麗な曲を奏で始める。
「〈破軍歌姫<ガブリエル>〉ーーーー【輪舞曲<ロンド>】!」
「・・・・・・・・!」
折紙が微かに眉をひそめる。周囲に幾つもの銀色の筒が出現すると美九の天使から発された『音』が鳴り響き、折紙の身体を縛った。
折紙を殺さず、取り敢えず攻撃して大人しくさせようと考えた十香は、八舞姉妹に視線を交わすと2人もその意図に気づいて頷き、折紙に飛びかかる。
「はぁぁぁぁぁッ!」
3方向からの同時攻撃を繰り出す。
だが。
「ーーーーはぁッ!」
「・・・・!?」
折紙が気合いを発すると、銀色の筒を吹き飛ばし、十香達の身体が、見えない手に掴まれているような錯覚を感じた。
「な・・・・!」
十香はこれに覚えがある。エレン・メイザースに囚われていた時に感じたものだ。
しかし、折紙にエレン程の力が無いのか、ほんの3秒でソレが解けた。
「ーーーーーーーーッ!」
が、その僅か3秒で折紙は逆転した。
「ぐ・・・・!」
「くはッ!」
「痛恨。うぐっ」
レイザーブレイドに魔力を込め一閃させる。咄嗟に剣や槍やペンデュラムでガードしたが、衝撃は殺しきれず、3人は3方向に吹き飛ばされた。
「けほ・・・・っ、けほ・・・・っ」
「み、皆さん! 大丈夫ですかぁ!?」
背後から美九の声が響くが、折紙の鋭い視線が、それに答える余裕を消していた。
一瞬を気を抜けば、殺られる。
「(鳶一折紙は、本気で私達を殺そうとしている。気絶させようとか、殺さないようにとか、甘い考えだ)」
折紙は自分達を殺せる力を持った。必滅の意志とそれを成す力を得た、最強最悪の敵となった。
殺さなければーーーー殺される。
半年以上前に捨て去った戦場の常識。あの冷たい感覚が、十香の心に突き刺さる。
「・・・・・・・・っ」
十香はゴクリと喉を鳴らした。それを自覚してなお、折紙を殺す意志を持てないからだ。
ーーーー半年の間に変わったのは、折紙だけではない。十香も今、漸く気づいた。共に時間を過ごす内、折紙への嫌悪と敵意が、最初のソレとは別種のものに変化してしまっていた事に。
「ーーーー何をしている、十香!」
「・・・・!?」
不意に響いた耶倶矢の声に、ハッと肩を震わせるとーーーー考えを巡らせていた十香の眼前に、折紙が肉薄していた。
「ふーーーーッ」
「く、あ・・・・ッ!」
容赦ない一撃が十香を襲う。絶対の鎧である筈の霊装が切り裂かれ、辺りに鮮血が散った。
ー琴里sideー
その頃、天宮市上空15000メートルに浮遊する〈フラクシナス〉では、琴里が失踪した士道の行方の捜索をしていたが、不意に空間震警報が鳴り響き、周囲に霊波反応を観測してみたが反応はなく、眉をひそめていたが、令音が以前、DEM社が同じような手口をした事を伝えると、この警報は『人払い』が目的なのではないかも思い、詳しく状況を調べさせようと指示を出す途中で、艦橋にけたたましいアラームが鳴り、何事かと思うと、自分の家の前で鳶一折紙が十香達と交戦していた。十香達が劣勢であると知り、〈フラクシナス〉を急行させようとしたが、今度は船体が外部から攻撃を受け、その動きを止められる。
そしてメインモニタに巨大な、〈フラクシナス〉と同サイズで流線型の船体に白金の装甲の随所に金細工のような飾りが施された、美しい空中艦の姿が映し出された。
それを見て琴里は思った。
「(あれはDEMの・・・・!) ち、こんな時に!」
毒づくが、むしろこんな時だからこそ、とも思った。おそらくこの艦は自分達の足止めだろうと考えると、目の前の艦から通信が入った。
繋げてモニタのウィンドウが展開されると、
《ーーーー通信に応じていただき感謝します》
「・・・・ッ、エレン・メイザース・・・・!?」
『な・・・・!』
艦橋下のクルー達が、一斉に息を詰まらせた。
そこにいる少女こそ、人の身で精霊に比肩し、〈仮面ライダー〉となった士道や琴里達と何度も激戦を繰り広げ、琴里達を追い詰めた。最重要警戒対象の、『人類最強』と謳われる魔術師<ウィザード>だったからだ。
《仮面越しではない状態で話すのは初めてですね〈イフリート〉ーーーーいや、五河琴里》
「・・・・ええ。私みたいな精霊で中学生が司令官をしていて驚いたかしら?」
《まさか。個人の能力や容姿に年齢は関係ありません。今までの我々の作戦行動を阻害してきたあなたの手腕に敬意を表しこそすれ、苦言を呈そうなどとは思いません》
冗談なしで返してくるエレンに、思惑が掴めず、琴里は軽く目を細めた。
「それはどうも。ーーーーそれで、一体何のご用かしら? お茶のお誘いなら後にしてくれる? 悪徳企業の不良社員が、ウチの子達にちょっかい出してくれちゃってるみたいで今忙しいのよ」
皮肉を込めて言うが、エレンは無表情のまま淡々と答える。
《用件は2つです。ーーーー1つ。今から3時間を差し上げますので、命が惜しい方は今すぐその艦から脱出してください》
「何ですって・・・・?」
その言葉に、琴里は視線をさらに鋭くし、フンと鼻を鳴らした。
「まさか、この〈フラクシナス〉を墜とすつもりとでも言うの?」
《結果的にそうなってしまう可能性は否定できません。しかし、〈フラクシナス〉・・・・なるほど、世界樹とは洒落が利いています。ーーーー名付けたのはエリオットですね?》
〈ラタトスク〉創始者にして〈ラタトスク〉意思決定機関・円卓会議議長、エリオット・ボールドウィン・ウットマンの名前を出し、琴里は小さく目を見開くが、エレンを睨み付ける。
「あなた、少し〈フラクシナス〉を舐め過ぎなんじゃあないの?」
《お言葉ですが、何度も私に辛酸を舐めさせられたソチラこそ、過小評価しているのでは? 私の力とーーーーこの〈ゲーティア〉の性能を》
「・・・・・・・・」
確かに、〈仮面ライダー〉としては、何度も敗北した相手で、士道の最強形態『オールドラゴンスタイル』と対等に渡り合える相手だ。
だがこのアスガルド・エレクトロニクスの技術の粋を結集した〈フラクシナス〉に、己の艦が勝っていると。
「ふん・・・・なら何で態々クルーの数を減らそうとするのかしら? このままだと勝ち目がないから、どうにか舌戦でこちらの戦力を削ぎたいって聞こえるのだけど?」
《それは、もう1つの用件です関わってきます》
全く揺さぶらなく平然と言うエレンに、苛立たしげに舌打ちした琴里が言葉を続ける。
「・・・・ふうん? で、もう1つの用件って言うのは?」
エレンは細く息を吐き、深く首肯した。
《ええ。この戦闘を逃げ延びた方に、エリオットへの伝言を頼みたいのです》
「伝言?」
《はい》
静かに頷いたエレンは初めてーーーー感情をのせた声を発する。
《ーーーーエリオット。エリオット。この裏切り者め。私達の誓いに背を向けた背約者め。覚悟しておけ。どこへ隠れようと、必ず私が見つけ出し、その首を落としてやる》
「・・・・!?」
今までと違った苛烈な語調に、琴里を息を詰まらせた。
エレンはコホンと咳払いをしてから、済まし顔に戻すと、3分間の猶予を与え、クルーに脱出するように伝えると、琴里はクルー全員の意志を真顔で聞くと、
『司令についていきます!』
と伝えた。まあ神無月はまた空気を読まない変態発言して琴里に足を踏まれ、恍惚としていたが。
「ーーーーと、言うわけよ」
《そうですか、残念です。ーーーー五河琴里、貴女はもう少し冷静に状況を判断できる方だと思ったのですが。血が繋がっていないとはいえ、やはり五河士道の妹ですね》
「最高の賛辞よ」
言うほど残念がっていないエレンに、琴里はフンと鼻を鳴らしながら言って、手元のコンソールを操作して通信を強制終了させると、クルー達に指示を飛ばしたーーーー。
ー士道sideー
そしてその数十分前。
廃墟で椅子に縛られた士道が、必死に逃げようとしたり、折紙の名を呼んだりしていたが、虚しく響くだけだった。
「くそっ! こんな事してる場合じゃないのに! おいドラゴン! お前も何とか知恵を出してくれよ! このままじゃ折紙がっ!」
士道は、先ほど折紙がペットボトルから出して足元に広がった水たまりが水鏡のようになり、自分の姿をドラゴンへと変わっていた。
ドラゴンは素っ気ない口調で声を発する。
≪・・・・何故あの娘の行動を止めねばならんのだ?≫
「え?」
ドラゴンの言葉に、士道は訝しそうな声をあげた。
≪何故貴様が、あの娘の復讐の邪魔をするのだ? 何の権利があってそれをするのだ?≫
「そんなの! 折紙に十香達を傷つけて欲しくないから!」
≪それは貴様の都合だろう。あの娘にとっては関係ない事だ。あの娘があれほどの知識や戦闘技能を付ける為に、どれだけの努力をしてきたと思う?≫
「え・・・・?」
さらに首を傾げる士道に、ドラゴンは淡々と言葉を紡ぐ。
≪あの娘は貴様のような、“偶然ゲートであり”、“運良く我を押さえつけて力を手にいれ”、その場の流れで行き当たりばったりで戦ってきたヤツとは違う。並々ならぬ努力を積み重ねてきたのだ≫
「そ、それはーーーー」
折紙が努力してきた事を漠然としか考えられない士道に、ドラゴンは吐き捨てるように言う。
≪ーーーー5年。口にすれば短い言葉だが、実際に生きてみれば長い時間だ。あの娘がその5年を貴様ごときと違ってどう過ごしてきたか、少し考えれば分かる事だ≫
「え・・・・?」
≪分かるか? あの娘が両親を奪った精霊に復讐を誓っていた時ーーーー貴様は当時の大火災の事や義妹が精霊になってしまった事などすっかり忘れて、鼻水をブラブラ垂らしながらアホ面さらして生きて来たのだろう?≫
「うぐぅ・・・・!」
ドラゴンの言葉に口ごもる士道。さらにドラゴンは続ける。
≪あの娘が復讐の為に知識や体力を付けるために自己研鑽をしている間ーーーー貴様は薄暗くした自室で、ノートに『ぼくのかんがえたさいきょうキャラクター』なんて物を書いて、ニヤニヤ気持ち悪く笑っていたのではないか?≫
「っっ!! うわあああああああああああああああああ!!」
過去の黒歴史を暴露されて、士道が椅子に縛られたまま頭を振り回す。
≪あの娘が自衛隊に入り過酷な訓練をしている間ーーーー貴様は『奥義! 瞬閃轟爆破!』、なんて妄想の必殺技の練習でもしていたのだろう!≫
「のぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
さらに悶える士道。
≪あの娘が頭にCR-ユニットを使用する為の改造を受けている時ーーーー貴様は鏡の前でワックスを塗ったくった髪型をした自分を見て、【俺、カッコいい!】ってナルシストやっていたのではないか!?≫
「いやあああああああああああああああああ!!」
さらに叫ぶ士道。
≪あの娘がCR-ユニットを使いこなせるように訓練を積み重ねている間ーーーー貴様はギターを演奏をしながら自作の曲を作り、【俺の友達はギター<コイツ>だけさ】などと自己陶酔に浸っていたのだろう!≫
「やめてやめてやめてやめてやめてやめてぇ!!」
泣きそうになる士道。
≪あの娘が仇の精霊を倒すために戦略や戦術を練っている間ーーーー貴様は、【俺、こんな恥ずかしい事やってたんだなぁ・・・・!】と、漸く自分の過去の醜態を恥だと認識して、ベッドの上で身悶えていたのだろうなぁ!?≫
「分かった! 分かったから、もうやめてくれよぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
遂に泣き出してしまった士道であった。
≪・・・・分かるか? 貴様が日々を無為に無駄に恥に恥の上塗りをし続けてきた5年間。あの娘は精霊を殺すと言う不退転の意志を持って、血が滲む処か血を吐く思いで研鑽を続けていたのだ。それを貴様ごときが、そんな考えは間違っているだの、歪な考えだと否定すると言うのか? 本当に貴様は傲慢だな? 我から言わせれば貴様も十分歪な物だ≫
「はぁ、はぁ、な、何、だと・・・・?」
肩で息をする士道に、ドラゴンは言葉を続ける。
≪何で顔も名も知らない人間を守る為に、魔獣ファントムと戦い、世界の厄災と言われる精霊達の為に自らの命を常に危険に晒し、さらに言えば軍需会社DEMインダストリーとそこに所属する(元)世界最強の魔術師<ウィザード>と命懸けの戦いを繰り広げる? マトモな人間から見れば、貴様の在り方も十分歪で狂っているとしか言いようがない≫
「そ、そんなの、人間として当たり前だろう!」
≪どうかな? 自分の命は簡単に扱うが、他人の命は大切にする。何の見返りも無しに行えるその考え方も、十分に歪だ≫
因みに琴里も、士道のこれをイカれていると思っており、八舞姉妹も頭がおかしいとすら思っている。
≪まぁ今それは置いておこう。ーーーーソレよりも、あの娘がASTを除隊処分になったのは、誰のせいだと思っている?≫
「え・・・・?」
≪あの娘が〈イフリート〉を殺す為の起こした行動の責任は、一応不問とされた。だが、それから先の命令違反等は、誰の為に行ってきたのだろうなあ?≫
「っ・・・・!」
ドラゴンの言葉に、士道は息を詰まらせる。折紙が命令違反を繰り返してきたのはーーーー士道を助ける為だ。
≪あの娘は貴様ごときの為に、力を失う事になっても尽くしてきたと言うのに、貴様はあの娘に何をしてきた? 何もして来なかったではないか? あの娘に精霊達と戦って欲しくないなら、ASTを辞めて貰うように説得すればよかった。が、貴様は何もしなかった。このまま精霊達といつまでも一緒にいて、なあなあで済ませようとすら考えていたのではないか?≫
「うぐ・・・・っ!」
ドラゴンの言葉に士道はさらに息を詰まらせる。確かに、このまま十香達と折紙が一緒にいられる事を、それを漫然と、『当たり前の日常』として捉えていた。
≪貴様は何もして来なかった。あの娘に対して何一つ、な。あの娘は貴様なんかの為に危険を顧みずに行動し、そのせいで除隊され、DEMに身を寄せ、今のこの状況に陥ったのだ。そうなった原因の大部分の責任者は、そんな事を欠片も考えず、ただただこのまま当たり前にある『日常』が続くとでも思っていたのだろう。こんな日常がいつまでも続いていく、と盲信して、中途半端に付き合って、中途半端に優しくして、中途半端なお友達関係してきただけだろう≫
「っっ!!」
≪あの娘は、貴様ごときが思いつく限りの苦悩も、懊脳も、全部経験し、精霊達を殺す事で貴様との関係にも亀裂が生じる事もとっくに覚悟し、決意し、それでもこの道を選択した。その選択を、貴様ごときが止めるのか? やめさせるのか? 散々自分の都合にあの娘を巻き込んでおいて、いざと言う時は邪魔をする。ーーーー最低だな≫
「っっ!!」
士道は顔を歪ませる。確かにそうだ。今まで折紙が危険を顧みずに自分の力になってくれたのに、自分は折紙の決意を邪魔しようとしている。
確かに身勝手だ。傲慢だ。最低と謗られても当然だ。
≪貴様にとってあの娘は何なのだ? 『恋人』か? 大切な『日常の1部』か? あの娘の5年間の日々を、『恋人』でもなければ、『ただの友人』止まりの貴様が否定すると言うのか?≫
「・・・・・・・・それでも」
ドラゴンの言う事は間違っていないのかも知れない。自分の『当たり前の日常』が壊れるのが嫌だから、折紙を止めたいだけなのかも知れない。ただの我が儘なのかも知れない。
でもーーーー。
「それでも、俺はイヤだ! イヤだイヤだァッ!! 折紙が十香達を傷つけるのも! 折紙が戻って来なくなるのも! 俺は絶対イヤだぁっ!!」
≪では、どうする? あの娘を叩きのめしてでも止めるか? あの娘の覚悟と決意を踏みにじってでも止める覚悟が、貴様ごときにあるのか?≫
「ああやってやる! 折紙に恨まれたって構わない! 俺は折紙を止めるっ! 止めてやるっ!!」
≪・・・・・・・・その言葉。言ったからには実行して見せろ≫
ドラゴンがそう言ってすぐ、不意に錆び付いていた蝶番を軋ませながら扉が開き、扉を開けた人物を見た瞬間、士道の表情は再度緊張感に支配された。
「お、折紙・・・・!?」
そう。先刻ここを出ていった鳶一折紙その人だった。
思えば、折紙の除隊処分って士道が関係してましたよね?