デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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己が忌むべき存在となってしまった折紙。運命が彼女を弄んでいく。


精霊・折紙!?

ーワイズマンsideー

 

『ワイズマン。あれって・・・・?』

 

『ほぉ、まさかここで新たな精霊が現れるとは・・・・』

 

グレムリンがグールの軍団を率いて、ビースト<真那>と仁藤と交戦しているのを少し離れた高台で高見の見物をしていたワイズマンとグレムリンは、メデューサと刃を交えている“新たな力を発現させたビースト<真那>”と、人間でありながらグール達と対等以上に渡り合っている仁藤を興味深そうに眺めていたが、天宮の方で“異様な存在の気配”と、“新たに現れた精霊の霊力”を感じていた。

 

『ふむ。新たな精霊が現れた。いや、生まれたと言った所か・・・・グレムリン』

 

『んもぅ、『ソラ』って呼んで欲しいなぁ』

 

『インプ達を率いて、その精霊を見定めて来るのだ。『ゲート』であれば捕獲しろ。新たに生まれた精霊を調べてみたい』

 

『・・・・良いよぉ』

 

グレムリンが軽めに返事をすると、ワイズマンを指をパチンっと鳴らし、ワイズマンとグレムリンの上方に幾つもの魔法陣が展開され、その中からインプ達が空を覆い尽くす程に現れた。

 

 

 

 

 

 

ー十香sideー

 

「精、霊・・・・」

 

十香の発した言葉に、折紙は復唱するように呟くと、物憂げに目を歪めて、自分の手を、身体を見下ろした。

 

「そう・・・・やはり、“そう”なの」

 

折紙は目を伏せ、己に言い聞かせるように言った。

 

「ならばーーーーそれでも構わない。私は、精霊を倒す為にこの力を振るおう。精霊を殺す精霊となろう。そして全ての精霊を討滅しーーーー最後の1人残った私<精霊>をも、消し去ろう」

 

カッと目を見開いて十香に剣のような視線を向けた折紙はそう言って両手を広げると、その動作に合わせるように、頭上の王冠がその先端を広げ、日輪の如く円環を作った。

 

「〈絶滅天使<メタトロン>ーーーー【日輪<シエルメッシュ>】〉」

 

折紙が静かに告げた瞬間、頭上に広がった円状の天使が回転を始め、周囲に光の粒を振り撒く。

 

「くーーーー」

 

十香を左手を広げ、自分の周りに霊力の障壁を張る。一瞬後、折紙の天使から放たれた夥しい量の光の粒が、一斉に辺りに降り注ぐ。

それはあまりに美しく、あまりに凄絶な破滅の雨。凄まじい威力の持った霊力の塊が、幾千幾万と降り注ぎ、絶え間なく地上を蹂躙した。

 

ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガンンン・・・・!!!

 

アスファルトの街路に乗り捨てられた車に建ち並んだ家々。

それら全てが、公平なる光の天使の破滅の雨によって、あっさりと、無慈悲に、理不尽にーーーー崩壊していく。

 

「ぐ・・・・」

 

霊力を編み込んだ障壁でどうにか防いでいたが、埒が明かないと思った十香は、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を握る右手に力を込めると、数発の攻撃を受けるのを覚悟で、障壁を内側から切り裂いた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

烈帛の気合いと共に振るわれた剣の天使から、その太刀筋をなぞるように剣擊が伸びていく。

 

「・・・・・・・・っ」

 

微かに肩を揺らした折紙は片手を下方に掲げると、光の粒を放っていた輪が分解すると、折紙の前に盾のように連なり、斬擊を防いだ。

防御に転じたので光の粒が途切れる。その機を逃さず、十香は地を蹴り、一直線に空を翔け、天使の脇をすり抜けて折紙に肉薄した。

 

「でやぁぁぁぁぁッ!」

 

手加減する余裕もなしに、十香は渾身の力を込めて両手に握った〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を折紙に斬り付けようとする。

が、折紙の姿が光となって掻き消え、数メートル後方の位置に出現した。

 

「な・・・・!」

 

「ーーーーっ」

 

十香だけでなく、折紙自身も予想外だったのか、狼狽と驚愕で顔を歪める。

折紙は自分の手を見つめると、吐き捨てるように呟く。

 

「ーーーー怪物」

 

もう自分は、人間ではなくなった。

残酷な現実を目の当たりにするが、折紙は眉をひそめて拳を握り、その手を上方に突き上げる。

 

「【天翼<マルアク>】!」

 

すると〈絶滅天使<メタトロン>〉が再び結集し、折紙の背で翼のような形を作り、羽ばたかせるように動くと、一瞬にして後方へと離脱した。

それと同時、翼状になった〈絶滅天使<メタトロン>〉の先端から幾条もの光線が迸り、十香に襲いかかる。

 

「この・・・・!」

 

十香は短く叫び、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を振るって迫る光の矢を斬擊で打ち払う。だが、数が多過ぎて捌き切れず、幾つかの光線が左肩と右足に突き刺さる。

 

「ぐ、あ・・・・ッ!」

 

霊装を砕く威力の激痛が襲う。

しかし折紙は手を緩めず、上方に掲げた手を真っ直ぐに振り下ろすと、背面に広がっていた翼が、上下左右に飛び散る。

 

「【光剣<カドウール>】ッ!!」

 

折紙が叫ぶと同時に、バラバラになった天使が、それぞれ独立した意志が備わっているかのような軌道で空を縦横無尽に駆け回り、あらゆる方向から光線を放ってくる。

 

「く・・・・!」

 

十香は触れればバラバラにされるだろう光の格子の檻から逃れようと、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を振るい、オールレンジ砲撃を打ち落としていく。

しかし、全ての砲撃を打ち落とせず、背に、腰に、手に。次々と必滅の意志を帯びた光線が直撃し、十香の霊装を砕いていく。

 

「ぐ・・・・う、ぁーーーー」

 

このままでは一方的にやられると、十香は苦悶の顔になりながらも、折紙に向かって全力で空を蹴る。

それを阻むように〈絶滅天使<メタトロン>〉が更に攻撃を激しくするが、十香は構わず折紙に猛進した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 

「ふッーーーー」

 

叫び、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を振るって折紙を斬り上げる。

しかし、折紙の身体は光となって消え、攻撃を避けた。一瞬後、先ほどと同じく少し離れた場所に、折紙の身体が再構築された。

がーーーーそれは予想の内である。

十香は天使から手を離すと、その勢いのまま空中で身体をひねりーーーー。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「ーーーーか、は・・・・ッ!?」

 

渾身の力を込めて、虚空に出現した折紙の顔面を素手で殴った。折紙は苦悶を吐き、顔を歪め、奥歯が欠けたのか、白い破片が飛ぶ。

精霊の全力のパンチ、人間ならば頭が砕けているだろう必殺の拳。

連続して光化はできないのか、知覚できない攻撃には対処できないのか、それでも1発浴びせられた。拳をグッと握り、フンと鼻から息を吐き、追撃しようとしたが折紙は朦朧とする頭を揺らし、再度〈絶滅天使<メタトロン>〉を翼状にして、高速でその場を離脱した。

 

「ちーーーー」

 

十香はそのまま地上に降り立つと、右手を横に上げた瞬間、放り捨てた〈鏖殺公<サンダルフォン>〉が綺麗にその手に収まる。

 

「・・・・・・・・」

 

十香は地上から、口から出た血を拭う折紙を見上げる。

あの程度ではさほどのダメージを与えられなかった。いや、傷の深さは十香の方が重傷だ。このままでは手数の少ない十香が不利だ。

ならばーーーー十香のできる事は1つ。

 

「〈鏖殺公<サンダルフォン>〉!」

 

十香が天使の名を叫ぶと、地面に踵を叩きつけた。

その名が示すのは、手にした剣だけではない。

呼び掛けに応じるように地面が隆起し、そこから十香の身の丈を優に越える巨大な玉座が姿を現した。

そして十香は、呼ぶーーーー。

 

「ーーーー【最後の剣<ハルヴァンヘレヴ>】・・・・ッ!」

 

十香の剣の天使〈鏖殺公<サンダルフォン>〉の真の姿にして、最強の剣を。

瞬間、玉座に幾つもの亀裂が入り、バラバラに砕け散ると、それらの破片が十香の持つ剣に絡み付いていきーーーー長大な刀身を形作った。

ただの剣では、折紙の奇妙な能力に避けられる。かといって先ほどの手にまたかかるほど折紙は馬鹿ではない。

ドラゴンや琴里、令音であれば、もっと効率的かつ的確な策を考えるだろうが、十香には無理だった。

十香にできる事は、この剣で、拳で感じ取った事実のみから基づいた、この上なく不器用なやり方だけである。

即ちーーーー折紙が光となって避けた先までを一気に屠り去る、究極最大の一撃。

 

「・・・・くーーーー」

 

折紙もソレを感じたのか、翼状にしていた〈絶滅天使<メタトロン>〉を最初の王冠型に戻すと、下方にいる十香にその先端を向けた。

霊装を砕く破壊の光を一点に束ねた、究極最大の一撃。

お互いに極大の一撃を放とうとしている事を察した十香は、折紙に向けて声を上げる。

 

「ーーーー折紙! もう1度だけ聞いておく! 私とお前はーーーー本当に分かり合えないのか!?」

 

「・・・・ッ、ふざけないで」

 

折紙が、顔を悲壮に歪めながら返してくる。十香には、何故かそれが、泣きじゃくる幼い子供のように見えて仕方なかった。

 

「私の意志は変わらない。私の使命は変わらない。精霊は全てーーーー私が否定する!」

 

折紙の言葉に、十香は大きく深呼吸した。

 

「・・・・そうか、ならば仕方ない」

 

ゆっくりと、最強の剣を振り上げる。その刀身に、漆黒の光が纏わり付く。

 

「ーーーー本気で灸を据えてやる。覚悟しろ、駄々っ子め!」

 

「戯れ言をーーーー吐かすなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

折紙が叫んで両手を前に掲げると、〈絶滅天使<メタトロン>〉の先端に、全てを真っ白に塗り潰す純白の光が収束し始める。

 

「〈鏖殺公<サンダルフォン>〉ーーーー【最後の剣<ハルヴァンヘレヴ>】!!」

 

「〈絶滅天使<メタトロン>〉ーーーー【砲冠<アーテイリフ>】!!」

 

2人の叫びが重なり合い、天の皓光と地の玄光ーーーー渾身の霊力を込めた必滅の一撃が、上下から放たれ、ぶつかろうとした。

だが、その瞬間ーーーー。

 

『ーーーー全力全開だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

「ーーーーやめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

2人の必滅の一撃がぶつかるその刹那、2人の耳に絶叫が響き渡り、互いの一撃の間に入った人物が現れ、2人の一撃を両手で抑えていた。

 

「シドー!」

 

「士道・・・・!?」

 

そう。そこに現れたのは、行方知れずになっていた士道が、〈仮面ライダーウィザード・オールドラゴンスタイル〉で2人の一撃を防いでいた。

 

ーーーーギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

ーーーーバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!!

 

『「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」』

 

ウィザード<士道>とドラゴンの叫びが重なり、持てる全魔力をドラゴンクロウに込めて、純白の皓光と漆黒の玄光を天高く弾き飛ばした。

 

「ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ!ぜぇ!・・・・!!」

 

『ふぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・!!』

 

ウィザード<士道>が肩で荒く息を吐き、ドラゴンが長い息を吐いて地面に降り立ち、片膝を突いた。

ウィザード<士道>は息を少し整えてから、立ち上がり、仮面を解除して、声を上げる。

 

「何なんだよ・・・・一体、何でこんな事になってるんだよ! 十香ーーーー折紙・・・・ッ!!」

 

「士道、何故、ここにーーーー」

 

士道が顔をしかめながら悲痛な声を発すると、折紙が呆然とした様子で呟き、顔を逸らした。

まるで、士道に自分の姿を見られるのを嫌がるように。

 

「お、折『っ! 小僧。グレムリンだ!』 えっ!?」

 

胸のドラゴンヘッドのドラゴンの声に、士道はハッとなって明後日の方向の空を見据えると、魔法陣に乗ったグレムリンが、空一面を覆い尽くす程のインプの大軍を率いて近づいてきた。

 

「く、くそ・・・・ぐぅっ!」

 

士道は迎撃しようとしたが、先ほどの2人の精霊の渾身にして最強の一撃を弾き飛ばす為に、魔力と体力を全て消費した為か、変身も強制解除されてしまい、今度は両膝を突いてしまった。

 

「シドー!」

 

「く・・・・」

 

十香が士道に駆け寄り、折紙は王冠型に形成された〈絶滅天使<メタトロン>〉を再び翼状に組み換え、そのまま凄まじいスピードで、グレムリンとインプ軍団に向かっていった。

 

「折紙! 折紙ぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーッ!!」

 

空に幾つもの小さな爆裂を発生させながら、インプ軍団を引き連れて空の彼方へと飛んでいってしまった折紙の背中に向けて、士道の叫びは、虚しく響くだけだった。

 

「折、紙・・・・・・・・・・・・(ふぅ)」

 

士道は人知れず、無意識に、ホッと、安堵のため息を吐いた。

折紙が十香達を殺していなくてーーーー。

十香達が誰も死んでいなくてーーーー。

そして何よりもーーーー“自分が折紙と戦わなくて”。

 

≪・・・・・・・・ふん≫

 

それに気づいていたのは、体内のドラゴン、ただ1人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

割愛するが、このすぐ後に、士道に追い付く為に『ハニエルブルーム』の飛行速度を上げようと、『ザドキエルファング』の吹雪のジェット噴射で駆けつけたハーミット<よしのん&四糸乃>とウィッチ<七罪>が、スピードと勢いをつけすぎて、士道と十香のいる地点のすぐ近くに不時着、いや、激突してきたのであった。

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

日が沈み始め、廃墟と化した夜の住宅街から飛び去り、追撃してくるインプ軍団を討ち、グレムリンを振り切って、数分後。

人の気配の無い高台に至ったところで、

 

「・・・・・・・・」

 

チラッと後方を見やるが、グレムリンもインプ軍団も追ってきてはいないようだ。折紙は無言のまま片手を小さく上げると、光の天使は翼状から分解すると、折紙は休憩も兼ねて、地面に降り立った。

戒めが解かれた〈絶滅天使<メタトロン>〉はそれぞれのパーツに分かれ、さらに光の粒子となって空気に溶けて消えるのを眺めてから、折紙は小さく眉をひそめた。

奇妙な感覚。ほんの数十分前までは存在すら知らなかった異常な存在<天使>を、まるで何年も前から使い、慣れ親しんだ武器と同じような感覚で自然に、身体の一部のように使いこなしている。

気味が悪い。あのノイズのような『何か』に差し出された宝石が体内に吸収されてから、本能的に天使の扱いが理解できるようになっていた。

それだけではない。先刻十香の攻撃を避けようとした瞬間、自分の身体が一瞬光となるのを感じた。

もはやーーーー自分は『人間』とは呼びようのない『モノ』に変化してしまっていたのだ。

 

「・・・・この、力は」

 

誰に聞く事の無いであろう言葉を呟くと、折紙は自分の纏った純白の衣に視線を落とした。

精霊が持つ、絶対にして最強の鎧、霊装。

 

「私がーーーー精霊・・・・」

 

言葉を溢すと、折紙は胃の奥からせり上がってくる嘔吐感を抑えるように奥歯を噛み締めた。

自分が最も嫌い、憎み、忌んでいた存在に、自分がなってしまったと言う途方もない嫌悪が襲ってくる。

十香との決着を目前にしながら、戦場から逃げ出してしまった理由もそれだ。あの場に士道が現れた瞬間、戦いで麻痺していた自分自身への嫌悪感が再びせり上がって来たのである。

 

「(ーーーー士道には、士道だけには、こんな姿を見せたくなかった・・・・!)」

 

何を置いても力を求めた折紙の、最後に残った甘さでありーーーー我が儘だった。

しかし、折紙はすぐに気持ちを切り換えて、ある事を考えた。そう、折紙を精霊にした、あのノイズのような『何か』の事である。

 

「まさか、あれが・・・・」

 

人間を精霊にする。その信じがたい能力に、かつて士道が折紙に語った謎の存在。ーーーー人間であった五河琴里を精霊〈イフリート〉に変えたと言う『何か』。

5年前のあの忌まわしい日。燃え盛る街の中にいたと言う『もう1人の精霊』。

あのノイズのような『何か』は、それと同じ能力を有していた。

 

「・・・・・・・・、あれが、精霊・〈ファントム〉・・・・?」

 

精霊〈ファントム〉。それは、士道が話してくれた正体不明の精霊の識別名称だった。

折紙の前に現れた『何か』が、5年前に士道達の前に現れた精霊・〈ファントム〉と同一なのかどうかは確証がない。人類が持っている精霊の情報が少な過ぎるのだ。

『人間を精霊にする力を持つ精霊』が、果たして精霊・〈ファントム〉1体だけなのか分からない。

だがーーーーもしあの『何か』が、5年前のあの日に現れた精霊だとしたならば、それは。

 

「アイツが・・・・お父さんと、お母さんを・・・・?」

 

ーーーーあの正体不明の精霊が、両親の仇である、と言う他無かった。

しかし、既に『何か』は姿を消してしまい、それを問い質す事はできない。どうにかしてあの『何か』を捜し出し、その目的と正体、そして・・・・5年前のあの日、どこにいたのかを確かめる事だった。

 

「う・・・・っ」

 

そこまで考えた所で、折紙は再び嘔吐感に襲われ、顔をしかめる。

精霊になってしまっただけでなく、両親の仇かもしれない存在に精霊にされてしまったと言う事実が、折紙の心に、穢らわしい汚泥となって纏わり付いてきた。

しかし、膝を突いてしまう訳にはいかず、何とか堪え、顔を前に向けた。

『何か』が何の思惑で折紙を精霊の力を与えたか、何が狙いか、何故折紙でなければならなかったのか、ただの気紛れで精霊を増やし回っているのか、分からない事だらけである。

だがーーーー1つだけ、確かな事があった。

今の折紙は精霊であり・・・・精霊を討滅する事ができる力を手にしている。

人類の叡智の結晶であるCR-ユニットを用いても到達できなかった領域に。

十全の力を取り戻した精霊・〈プリンセス〉夜刀神十香と互角以上に渡り合う事ができた。

精霊と対等に戦える〈仮面ライダービースト〉である崇宮真那のいる高みに来られた。

『世界最強の魔術師<ウィザード>』と互角以上に渡り合える〈仮面ライダーウィザード〉、士道とだって、肩を並べられる事ができる。

心の底から求めてやまなかった『力』を、最低最悪な形とは言え、折紙は手に入れたのである。

 

「今の・・・・私ならーーーー精霊を、倒す事ができる」

 

 

精霊・〈ファントム〉だけではない。〈プリンセス〉・夜刀神十香を。〈ハーミット〉・四糸乃を。〈イフリート〉・五河琴里を。〈ベルセルク〉・八舞耶倶矢と八舞夕弦を。〈ディーヴァ〉・誘宵美九を。〈ウィッチ〉・七罪を。それこそ、あの〈ナイトメア〉・時崎狂三ですらーーーー。

 

「・・・・・・・・、ぁーーーーーーーー」

 

と、そのまで考えた折紙が、ハッと目を見開いた。

ある閃きが、折紙の脳裏に走ったのだ。

それは、1つの可能性。自分が勝手に想像した絵空事に過ぎない。実現する確証などはない。むしろ、成功する確率は極めて低いだろう。普段の折紙ならばくだらない考えだと切って捨ててしまっていた。

だがーーーー噛み合ってしまった。折紙が手にした精霊の力と言う最後のピースが、その可能性に唯一欠けていた部分を埋めてしまった。

 

「もし・・・・そんな事が、可能だとしたら・・・・」

 

全身に鳥肌が立つ。先ほどのような嫌悪感とは違う。暗く深い洞窟をさ迷う遭難者が、岩間に差し込む一条の光を見つけたかのように、1つの希望を見いだしたかのように、興奮にも似た感覚だった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙はコクンと唾液を飲み下すと、足を一歩前に出し、再び翼型の〈絶滅天使<メタトロン>〉を召喚し、夜空に飛び立つ。

ーーーーとある人物を、捜す為に。

 

 




次回、折紙が向かった人物とは?
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