デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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覆す過去

ー士道sideー

 

「ああ・・・・何だってなってやるさ。皆をーーーー折紙を救えるなら!」

 

≪うふふ、そう来なくてはなりませんわ≫

 

≪・・・・・・・・≫

 

士道の奮起を感じ取り、狂三が愉快そうに笑い、ドラゴンは黙った。

 

「それで・・・・その方法って言うのは何なんだ?」

 

≪ええ。ーーーー考えて見れば、当然に過ぎる事柄ですわ。でも確かに、失意に沈み焦燥に駆られた状態の士道さんでは、思い付く事ができなかった方法かも知れませんわ。ドラゴンさんも、過去の改変に協力する気は無いようでしたし≫

 

「ぐ・・・・」

 

≪ふん≫

 

言われて、士道は頬に汗を垂らし、ドラゴンはそっぽを向いた気がした。

 

「と、兎に角・・・・時間が無いんだろう? 早く動こう」

 

≪ええ、ええ、そうですわね。Time is Money、ですわ。士道さんが折紙さんを止められなかった最も大きな理由。それは、『何が起こるのか知らなかった』、これに尽きますわ≫

 

「ああ・・・・確かに、そうかも知れない」

 

苦々しい顔を作り頷く。

息つく間もなく繰り広げられた顛末。事前に知っていれば、手段はあった筈だ。

と、狂三は何処か物憂げにフウと息を吐いてくる。

 

≪正直あまり気は進まないのですけれど・・・・手がない訳ではありませんわ≫

 

「え・・・・? ど、どうするんだ?」

 

≪単純な理屈ですわよ。ーーーー“もう1度、やり直せば良いのですわ”≫

 

「・・・・は?」

 

≪ほぉ・・・・≫

 

狂三が言った言葉に、士道は素っ頓狂な声を発した。

 

 

 

 

「ここか・・・・」

 

ウィザード・ハリケーンスタイルになった士道は、火災現場近くに聳えたビルの屋上に到着し、変身を解除した。

 

「ここで良いのか?」

 

≪ええ、多分間違いないと思いますけど。ドラゴンさん、どうですの?≫

 

狂三の気配ならば、ドラゴンが感知する事ができる筈である。狂三が聴くと、ドラゴンは少し黙りそしてーーーー。

 

≪〈ナイトメア〉の陰険かつ陰湿な気配ならーーーー後ろにいるぞ≫

 

「なっ!」

 

ドラゴンの言葉と同時に、士道は背筋に冷たいものを感じて、その場から動けなくなった。

 

「(ーーーー背後に、誰かがいる!?)」

 

士道は本能的に感じ取り、ゴクリと息を呑み、変身できるように身構える。

すると、それに応じるように、後方から士道の来訪を面白がるような声が響いた。

 

「ーーーーあら、あら」

 

聞き覚えのある、声色が。

 

士道は、己の背後に立った絶対的な捕食者を刺激しないよう、両手を上げながらゆっくりと後方に振り返るとソコにはーーーー。

 

「これこれは。こんな所にお客様だなんて、珍しいですわね。しかも、何やら変わった力もお持ちで」

 

そう言って妖しい笑みを浮かべるのは、時崎狂三だった。しかしそれは、士道の知る狂三と少しだけ違う。

 

「(これが・・・・“5年前の狂三”・・・・!)」

 

そう。狂三が伝えた未来の士道の言葉。それはーーーー“5年前の時崎狂三と接触し、【12の弾<ユッド・ベート>】を撃って貰う事”だ。

元の時代で使うにしても、【12の弾<ユッド・ベート>】は相当量の霊力を消費する。ドラゴンが乗り気で無い限り、ドラゴンの力は使わせて貰えないし、狂三曰くーーーー。

 

【≪後にわたくしが『いただく』分が無くなってしまうのは困りますわ≫】

 

と言う事だ。5年前に送られた時も、ちゃっかり士道に封印された霊力を使っていたようだ。

現代にいる狂三に【12の弾<ユッド・ベート>】を撃って貰えない。ならばどうするかと喚きそうになる士道をドラゴンが尻尾ド突きで黙らせ、この時代に『5年前の狂三』がいる事を現代の狂三に教えられ、今に至るのだ。

もしかして、狂三も5年前に士道に会ったのかと士道が聞くと、狂三は南甲町近くを訪れていた時、突如起こった火災の様子を見に来ていたのだーーーー精霊が関わっていると思って。

それを聞いてドラゴンはーーーー。

 

【≪もしもその時、〈イフリート〉の時の事を知られていれば、その場で喰われていたかもな?≫】

 

確かに、もし琴里の力を封印していなければ、2人は狂三に発見され、力の糧にされていたかも知れないと考え、士道は汗を滲ませた。

 

【≪いやですわドラゴンさん。わたくしだってソコまで節操がない訳ではありませんわよ≫】

 

【≪ある程度は無いと言う事か?≫】

 

【≪きひひひ、どうでしょう?≫】

 

と、不穏な火花を散らす2人を落ち着かせ、士道は【12の弾<ユッド・ベート>】の効果時間が迫っているのもあり、狂三の言葉を頼りにここまで来たのだ。

 

「・・・・・・・・」

 

≪落ち着け≫

 

士道は、早鐘のように心臓が鳴るのをどうにか深呼吸で落ち着かせてから、ジッと5年前の狂三を見つめる。士道の記憶と寸分変わらぬ姿・・・・否。

正確には、変わらないのは年格好だけで、その装いは幾分か違いがある。レースとフリルで飾られたモノトーンのブラウスにスカート。髪は括っておらず、その代わり薔薇の飾りが付いたカチューシャを着けていた。しかし、最も特徴的だったのはその顔だろう。時計の文字盤を覆い隠すように、左目に医療用の眼帯を装着していたのだ。

 

「≪・・・・・・・・・・・・≫」

 

その装いに、士道とドラゴンは微かに眉根を寄せた。そして、頭の中の狂三にしか聞こえないくらいの声で問いかける。

 

「・・・・狂三? 何で眼帯なんてしてるんだ?」

 

≪気にしないでくださいまし≫

 

「もしかして、怪我でもしてたのか?」

 

≪気にしないでくださいまし≫

 

「でも・・・・」

 

≪気・に・し・な・い・で・く・だ・さ・い・ま・し≫

 

≪・・・・・・・・・・・・(ははぁん)≫

 

狂三に強い口調で言われ、士道はムウと黙り込むが、ドラゴンは何かを察したようにニンマリと笑みを浮かべた気がした。

 

≪(・・・・・・・・ドラゴンさんにだけは知られたくありませんでしたわ・・・・!)≫

 

狂三が、ドラゴンに知られてしまった自分の“黒い歴史”に内心、親指の爪を噛んでいた。

すると、5年前の狂三がおどけるような仕草で、可愛らしく小首を傾げて見せた。

 

「あらあらあら、何をブツブツと仰っていますの? こんな場所で何かご用でして?」

 

気安い口調で狂三が言ってくる。とは言え、ソコには油断らしきものは微塵も見受けられなかった。表情こそ笑みを浮かべるているものの、その右目は、静かに、だが正確に、士道の容貌や挙動を観察している。

しかし、士道には時間が無かった。意を決して口を開く。

 

「狂三! 頼みがある!」

 

「・・・・あら?」

 

士道が名前を呼ぶと、狂三は不思議そうに眉を歪めた。

 

「わたくしの名をご存じだなんて・・・・あなた、一体何者ですの?」

 

言いながら、狂三が右手を掲げる。すると、足元に広がった影から、古式の短銃、〈刻々帝<ザフキエル>〉の銃が飛び出してきて、狂三の手に綺麗に収まり、そのまま流れる動作で銃口を士道に向けてくる。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 敵対する意思はーーーー」

 

慌てて手を振る士道が言いかけた瞬間、足元の床に銃弾が炸裂した。

 

「うわっ!」

 

「わたくしの許可なく動かないで下さいまし。ーーーーいくつか質問をしますわ。正直に答えなかった場合は、命の許可はしかねますわよ」

 

質問に答えなければ、心臓を撃ち抜かれそうだった。手を上げながら口を開く。

 

「お、俺は五河士道を今から5年後の世界から来た! 狂三・・・・お前の力、【12の弾<ユッド・ベート>】の力を借りて!」

 

「・・・・、今、何と申されまして?」

 

士道が言うと、途端に狂三はその表情を変えた。【12の弾<ユッド・ベート>】の事を喋るように言ったのはドラゴンだ。狂三しか知らない天使の能力を伝えれば、耳を傾けるかも知れないと考えたからだ。

 

「【12の弾<ユッド・ベート>】の事を何故知っているのですか? 答えようによっては、火遊びでは済みませんわよ」

 

「だから、俺は未来から来たんだ・・・・! 頼む、話を聞いてくれ!」

 

「・・・・・・・・」

 

狂三(5年前)が、士道の真意を測るように目を細めた。すると、その様子に呆れるように、狂三(現代)の声が頭に響く。

 

≪あらあら・・・・昔のわたくしは随分慎重ですのね。ーーーーあまり時間をかけたくありませんわ。士道さん、どうにかして、あのわたくしに触れてください≫

 

≪今度は【9の弾<テツト>】の事を言えば、ヤツの事だ。察しがつくだろう≫

 

「了解」

 

「・・・・何か仰いまして?」

 

士道に銃口をむけた狂三が、怪訝そうに眉根を寄せる。

士道は、もう1発くらい弾を撃たれるくらいの覚悟で、狂三(5年前)に向けて手を伸ばした。

 

「頼む。銃を向けたままでいい。俺の手を握ってくれないか」

 

「得体の知れない相手にそんな事を言われて素直に従うほど、わたくし、純情な乙女ではありませんわよ?」

 

「【9の弾<テツト>】と繋がっている『狂三』がーーーー話をしたいって言ってるんだ」

 

「・・・・っ!」

 

『異なる時間軸にいる人間と、意識を繋ぐ事のできる弾』ーーーー【9の弾<テツト>】。

狂三曰く、士道に使うまで使った事がない弾である。当然、狂三以外が知り得ない弾の名前と能力を知っている事に、狂三(5年前)は、ピクリと眉の端を上げた。

 

「ふうん・・・・そうですの」

 

狂三(5年前)が油断なく士道を睨め付けながら歩みを進め、士道の手に触れてくる。

すると、

 

「・・・・!」

 

と、まるで微弱な電流でも流されたたかのように、狂三(5年前)の身体です小さく震えた。

 

≪お久しぶり・・・・と言う事になりますかしら? わたくし≫

 

「・・・・成る程。これは確かにわたくしの声・・・・ですわね。ーーーー一体5年後の世界で、何が起こりましたの?」

 

どうやら狂三(5年前)にも、狂三(現代)の声が聞こえているらしい。これならば、士道の説得よりも効果的だろう。

狂三(現代)が、状況を簡潔に説明した。自分達が歴史の改変に失敗した事。そしてーーーーもう1度やり直す為に、この時代の狂三の力を借りたい事を。

 

「・・・・【12の弾<ユッド・ベート>】をこの方に撃てと、そう仰りますの? わたくし」

 

≪ええ。その通りですわ。お願いできますかしら、わたくし≫

 

狂三(5年前)は暫しの間沈黙を作りーーーーその後、小さなため息を吐いた。

 

「・・・・良いでしょう。微力ながら、お力添えをさせていただきますわ」

 

「! ほ、本当か!?」

 

「ええ。ーーーーただし、必要な霊力は、あなたから徴収させていただきますけれど」

 

狂三(5年前)は士道から手を離し、トン、トン、とステップを踏むように後方に下がり、踵同士を打ち鳴らすと同時に、左手を高く掲げた。

 

「さあ、さあ、おいでなさい〈刻々帝<ザフキエル>〉。あなたの出番ですわ」

 

狂三(5年前)の呼び声に応えるように、影の中から、巨大な時計の文字盤ーーーー士道とドラゴンをこの時代に送り込んだ、時を操る狂三の天使〈刻々帝<ザフキエル>〉が姿を現した。

そしてそれと同時に、狂三(5年前)の足元に蟠っていた影が膨張するようにその面積を増したかと思うと、士道の足元に絡み付くようにその手を伸ばしてきた。

次の瞬間、凄まじい倦怠感が士道の全身を襲う。

 

「う、ぐ・・・・」

 

その感覚は覚えている。この時代に送られる直前、狂三(現代)に捕まった時と同じ感覚だ。

 

「〈刻々帝<ザフキエル>〉ーーーー【12の弾<ユッド・ベート>】」

 

狂三(5年前)が手にした銃を直上に掲げると、〈刻々帝<ザフキエル>〉の『ⅩⅡ』の文字盤から濃密な影が滲み出て、その銃口に収まった。

 

「さあ。では、いきますわよ」

 

「っ・・・・」

 

狂三(5年前)がゆっくりとした動作で銃口を向けてくる。【12の弾<ユッド・ベート>】に痛みが伴わない事は知っているが、士道は反射的に身を強ばらせた。

その様子を見てか、狂三(5年前)はニッと唇の端を上げた。

 

「士道さん・・・・と仰いましたわね。ーーーー検討を祈りますわ」

 

「・・・・ああ、ありがとうよ。ーーーーそれと、狂三」

 

「? 何ですの?」

 

「その眼帯、俺は似合ってると思うぞ」

 

≪・・・・ッ≫

 

≪プッ・・・・≫

 

「あら?」

 

その言葉に、狂三(現代)か息を詰まらせ、ドラゴンは少し吹き出し、目の前の狂三(5年前)が頬を染める。

 

「ーーーーお褒めにあずかり光栄ですわ。では、また5年後に、お会いしましょう」

 

最後にそう言うと、狂三(5年前)は凄まじい霊力によってカタカタと震える銃を制し、引き金を引いた。

銃口から士道の胸に向けて、一直線に漆黒の軌跡が引かれる。

【12の弾<ユッド・ベート>】が着弾した瞬間、士道は自分の身体が、弾の回転に巻き込まれるような螺旋状になっていくのを感じた。

そして弾の勢いのまま、宇津に飲み込まれるようにーーーー士道の視界は、真っ暗になった。

 

 

 

 

≪ーーーー道さん、士道さん≫

 

≪コイツにはコレが1番効く≫

 

ーーーーバシィィィィィンッ!!

 

「おごぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

ドラゴンの尻尾ド突きで目を覚ました士道は、その場でゴロゴロと転がり、痛みに悶えながら目を見開いた。

 

「も、もう少し丁寧に起こせ!」

 

≪さっさと起きん貴様が悪い≫

 

≪士道さん。毎朝こんな風に起こされますの?≫

 

なんてやり取りしながら、士道は周りを見渡すと、先ほどと同じビルの屋上ーーーー否、日は高く、狂三(5年前)の姿もなく、そこから見える南甲町に、火の手が上がっている様子はなかった。

 

「せ、成功ーーーーしたのか」

 

≪そのようですわね≫

 

士道の独白に狂三が応えてくる。

そう。正確な時刻は分からないが、士道は再び時を越え、舞い戻ってきたのだ。

天宮大火災が起こる前の世界に。

琴里が精霊になる前の世界に。

ーーーー折紙が、両親を殺してしまう前の世界に。

 

≪感慨に耽っている時間はありませんわよ、士道さん≫

 

≪何でこんな面倒な手段を取ってきたのか、忘れるな≫

 

「ああ・・・・分かってるーーーー世界を、変えに行こう」

 

その場に立ち上がり、眼下に広がる南甲町の景色を一望して呟くと。

 

[ドライバーオン プリーズ シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャバドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身!」

 

[ハリケーン プリーズ フー! フー! フーフー、フーフー!]

 

『ウィザードライバー』を起動させ、ハリケーンスタイルに変身すると、南甲町上空の雲の上を飛んでいく。

 

「でも、火災が起こる前に戻ってくるのには成功したけどーーーー具体的にはこれから何をすれば良いんだ?」

 

≪折角格好良く出発しましたのに、いきなり台無しにしてしまいますのね≫

 

≪コイツの薄っぺらい辞書に『計画性』なんて言葉は存在しない。その場でその場で行き当たりばったりな行動しかできないド低級生命体だからな≫

 

呆れたような、からかうような狂三の声と、予想通りの言葉に小馬鹿にするドラゴンの声に渋面を作るウィザード<士道>。

 

「ぐ・・・・し、仕方ねえだろ!・・・・て言うか、ドラゴンはともかく、狂三、さっきから口調が冷たくないか?」

 

≪そんな事はありませんわ≫

 

拗ねるように、狂三が言ってくる。

 

「(・・・・何か気に障る事を言ったかな?)」

 

≪おい〈ナイトメア〉。あの眼帯≫

 

≪とにかく≫

 

狂三が、ドラゴンの言葉を止めさせるように声を上げる。

 

≪ただ無策で暴れるだけでは、また同じ事の繰り返しですわ。ーーーー今のわたくし達と先ほどのわたくし達で違う点は、これから何が起きるかを知っている。と言う一点のみ。それを踏まえた上で状況を整理してみましょう≫

 

「あ、ああ・・・・」

 

≪まず第1に、わたくし達が成さねばならない事は何ですの? 士道さん?≫

 

≪答えてみろ≫

 

先生のような調子で問うてくる狂三と、保護者のように

佇むドラゴンに、ウィザード<士道>は空を飛びながら考えを巡らせた。

 

「そりゃあーーーー折紙に、両親を殺させない事だろ」

 

≪その具体的な方法はなんだ?≫

 

「・・・・どうにかして折紙を止める・・・・とか?」

 

≪確かにそれが1番分かりやすい方法ですけれど、“士道さんが本気で折紙さんと戦う覚悟がない”以上、現実的ではありませんわね≫

 

「ぐ・・・・!」

 

ウィザード<士道>は渋面を作りながら、呻くような声を発する。

『オールドラゴンスタイル』のウィザード<士道>ならば、折紙と対等に渡り合えるだろうが、相手は精霊〈ファントム〉を両親の仇と信じきっている折紙だ。純粋なる復讐鬼となった相手に、手加減して戦える筈はない上に、ウィザード<士道>の声が届くか怪しい。

無論、可能性はゼロではない。折紙がウィザード<士道>に気づいて話を聞いてくれる事だって、考えられない事ではない。

しかし、狂三が最初に撃った【12の弾<ユッド・ベート>】の効果時間が訪れるのはそう遠くない筈だ。恐らく、やり直せるのはこれが最後だろう。そんな希望的観測に全てを賭けてしまうのは危険すぎる。

 

「なら・・・・折紙の両親を安全な場所に逃がすーーーーとか」

 

≪成る程、それは折紙さん本人を相手にするより可能性があるかも知れませんわね≫

 

「だ、だろ? じゃあーーーー」

 

≪だが、見知らぬ小僧が家を訪ねて、ここは危険だから逃げろと言った処で、耳を貸してくれると思うのか?≫

 

「そ、ソコは事情を説明してーーーー」

 

≪とことん阿呆だなお前は≫

 

≪自分から未来から来た、あなた達は未来の娘に殺されそうになっているから自分の話を信じてついてきて欲しいーーーーと言うのですか?≫

 

「う・・・・」

 

あまりに胡散臭い台詞に、士道は汗を滲ませた。

 

≪面倒だから『バインド』で拘束して、『スリープ』で眠らせ、『スモール』で小さくして連れ出すと言う手もあるが?≫

 

「い、いやそれは・・・・」

 

魔法を使った誘拐を計画するドラゴンに、士道は渋面を作った。

 

≪まぁそれもアリですわね。ですが、それで折紙さんの両親を避難させる事ができたとしても、それで本当に全てが丸く収まるかどうかは分かりませんわ≫

 

「え・・・・? ど、どういう事だよ」

 

≪もしも世界が、元の歴史を辿ろうとするのならーーーー折紙さんの光線が、避難した先に放たれる可能性もあるのではありませんか?≫

 

「・・・・っ」

 

≪ふむ≫

 

士道は言葉を詰まらせる。士道が狂三(5年前)によって過去に戻った時点で、既にこの世界は士道達の知る世界とは微妙に異なってしまった。全てが士道達の記憶通りに進むと考えるのは危険だ。

・・・・だが、どうも腑に落ちないのか、士道は半眼になって狂三に声を投げる。

 

「狂三。お前、歴史の修正力について否定してなかったっけ?」

 

≪あら、否定等した覚えはありませんわよ? 実証されたいるのか、と言う疑問を呈しただけですわ≫

 

「・・・・・・・・」

 

何だか煙に巻かれた感があるが、そんな問答をしている場合ではない。

 

「じゃあ、どうすれば良いって言うんだよ」

 

≪そうですわね・・・・ドラゴンさんは、何か案がありますか?≫

 

≪・・・・・・・・かなり面倒だが、1つだけある。要は、無表情娘に、両親を殺させなければ良いのだろう≫

 

「・・・・あ、ああ」

 

≪では、こんなのはどうだーーーー≫

 

それからドラゴンの言う案に、士道は渋面を作り、狂三はフゥ、と小さく息を吐いた。

 

「た、確かにその方法なら、折紙が反転しないで済むと思うけど・・・・」

 

≪かなり危険ですわね≫

 

≪まぁこれはあくまで『プランB』と言う事にしておくとして、他に案があるか?≫

 

「・・・・・・・・ぁ」

 

と、ソコで士道の頭の中に浮かんだ案を、声にした。

 

「なあ、ドラゴン。狂三」

 

≪ん?≫

 

≪何ですの?≫

 

「ーーーーもう1つの案だけど、折紙が現れた時、その場に『敵』がいなければ・・・・良いんだよな?」

 

≪・・・・・・・・成る程、そう言う手もあるな≫

 

ドラゴンは士道の意を即座に理解して頷いた。

 




次回、遂に士道が、『始原の精霊』と相対する。
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