デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー琴里sideー
「・・・・・・・・」
夕刻、司令官モードの琴里が、自宅リビングのソファを逆向きに座りながら、キッチンで夕食の準備をする士道の後ろ姿を、ジトーっとした目で見ていた。
どうも今朝から士道の様子がおかしい気がする。
朝っぱらからドタバタしていたのに、帰ってきたら今度はまるでお通夜みたいな表情になっていたのだ。何があったらこんなテンションの急転直下が起こったのだろうか。
「・・・・ふん」
『ピィ・・・・』
肩に乗せたガルーダが心配そうな声を漏らし、琴里は鼻を鳴らして咥えていたチュッパチャプスの棒をピコピコ動かしながら体制を元に戻した。
何だが、気分が悪い。
ーーーー琴里の知らない所で、士道の心をソコまで揺り動かす出来事が起こっていた事が、何となく気に入らないのである。
唯一の情報源であるドラゴンに聞いてもーーーー。
【≪・・・・自分にとって都合の良い事しか考えて来なかった愚か者が、現実を知って消沈しているだけだ。あまり気にかけると、あの愚物が構ってちゃんに成り果てるぞ。放っておけ≫】
と、要は無視しておけ、と言うのであった。
それで納得する琴里ではないので、不機嫌そうに足を組み替えると、同じように士道の方に目をやっていた四糸乃が、心配そうに声を発する。
「士道さん・・・・どうしたんでしょう」
『ねー。何だか元気ないよねー』
『ブルルルル』
よしのんと肩に乗せたユニコーンが同意すると、四糸乃の隣に座っていた七罪が、つまらなそうな顔をしながら(本人曰く、別につまらない訳ではないらしいが)、顎に手を置き声を発する。
「・・・・あのアンニュイな感じ。ーーーー女ね」
『キュキュ?』
「なーーーーッ!?」
「えっ・・・・?」
七罪に言葉に、七罪の肩に乗ったクラーケンが頭を傾げ、琴里と四糸乃は目を見開いた。
「ちょ、ちょっと、どういう事よ」
「女の人・・・・ですか?」
が、2人が問うと、途端に自信を無くした七罪が顔を背けた。
「・・・・あ、いや、違うかもしんないし、あんま気にしないで・・・・」
「いやソコで弱気になるんじゃないわよ。言いなさいって」
七罪の顔を両手で掴み、こちらに向けてやると、七罪は不安そうに目を泳がせながらもコクリと頷いた。
「・・・・男子高校生が悩んでるって言ったら、そりゃ大体女が原因でしょ」
「それって、士道が誰かに振られたって事・・・・?」
「ソコまで言わないけど・・・・ドラゴンが私達にも教えないって事は、それくらいのしょうもない理由だったりするんじゃない? 男子高校生の行動のベクトルは基本女の子にどう意識されるかに向いてるもんじゃない。・・・・女子の間で自分が変な噂が流れたとか、隣の女子に冷たくされたとか、そう言うのでも簡単に沈んじゃうものよ」
「そ、そう言うモノ何ですか・・・・」
四糸乃が神妙な顔で言う。
既に女子処か男子達の間でも、プレイボーイクソヤロウとか、女の敵ランキング不動の1位と噂されているので今更感があるし、隣の女子は十香なので冷たくされる事は先ず無いのだが。
が、七罪は大きく頷き続ける。
「ええ。他にも、一緒に班組もうぜ! って言ったらマジのトーンで『えぇ・・・・』って言われたりだとか、落ちた消しゴム拾ってあげたら『あ・・・・それ、もういらないからあげる・・・・』って言われたりだとか・・・・」
「な、七罪さん・・・・?」
「部活動の勧誘がマキシマムドライブする中、入部届を持って行ったら『あっ、でもうち、朝練とかマジ辛いけど大丈夫? いやホント、そんな無理してまでやるもんじゃないよ?』とか言われたり、体育の授業でドッジボールをやったら、私がボールを投げるときマジトーンで『きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!』とか悲鳴を上げて逃げていったりああもうド畜生!」
「お、落ち着きなさい!」
後半が七罪の恨み節がリミットブレイクしそうになっていた。・・・・何と言うか、妙に悪い方の学校生活に詳しい精霊である。
「・・・・と、兎に角。学校で何かあったのは間違いないと思う訳よ・・・・」
クールダウンした七罪が、少し息を荒くしながら言ってくる。それ自体は琴里も同意だ。何処と無く寂しげな士道の背中を横目で見ながら小さく首肯する。
「まあ、ドラゴンの言うとおり、あの位ならほっといても大丈夫だとは思うけど」
「でも、士道さんに元気がないのは・・・・辛いです。何とかできないでしょうか・・・・?」
心優しい四糸乃に言われ、琴里はポリポリと頬をかいた。
「そりゃあ、私だって何とかしたいとは思うけど、元気づけるって言っても・・・・」
と、琴里が息を吐くと、七罪が渋い顔のまま言う。
「・・・・男子高校生に悲哀を与えるのが女なら、それを癒すのもまた、女でしょ」
その言葉に、琴里はハッと肩を揺らした。
「女って・・・・ええ、そう言う・・・・あれ?」
「・・・・・・・・っ//////」
『きゃー! 七罪ちゃんのエッチー!』
『『『ーーーー!!』』』
四糸乃&よしのんも、その意味に気づいたのか、四糸乃が頬を赤くし、よしのんが両手で顔を覆い、プラモンスターズが声にならない声をあげて跳ねる。
琴里は眉根を寄せると、コメカミ辺りをトントンと指で叩きながら、チュッパチャプスの棒をピンと立てた。
「ちょっと待ってよ。何で私が士道の為にそんなーーーー」
「わ、私・・・・やります。それで士道さんが元気になるなら・・・・」
「四糸乃!?」
四糸乃の意外な言葉に、琴里は裏返った声を発した。
「ん・・・・分かったわ。じゃあ私に任せて。四糸乃なら士道も1発で、開眼! よ。じゃあさっそく・・・・」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」
七罪の言葉を遮るように、琴里がバッと手を広げた。
「・・・・な、何?」
突然の声に驚いたのか、七罪がビクッと身をすくませる。
「やらないとは言ってないでしょ、やらないとは・・・・」
「そ、そう・・・・じゃあ、琴里もね」
「・・・・ふん、仕方ないわね。ーーーーで、一体何をするつもり?」
琴里が腕組みをしながら問うと、七罪は提案するように指1本を立てた。
「・・・・さっきの想像のせいで、今なら私、ちょっとだけ霊力使えそうなのよね」
「へ?」
琴里は、素っ頓狂な声をあげて目を丸くした。
七罪は精霊達の中でもメンタル最弱なので、些細な出来事でもすぐに霊力が逆流するのである。
「ちょっと待った。もしかしてまた私達を子供にして、『僕だけの動物園』するつもりじゃないでしょうね。駄目よアレは。士道保父さんスタイル、ドラゴン親馬鹿スタイルに入っちゃって、逆に負担増えるわよ」
琴里が注意するように言うが、七罪はフルフルと首を横に振った。
「今回は・・・・逆」
「え?」
「逆・・・・ですか?」
琴里と四糸乃は、不思議そうに顔を見合わせた。
ー士道sideー
≪おい、指を切りたいのか?≫
「・・・・っ、あぶね」
考え事をしながらキャベツの千切りをしていたので、危うく指を切りそうになっていた。
「あー・・・・駄目だな、気を付けないと」
≪まぁったく、いつまでもウジウジしおって、全身から『俺、気落ちしてますよぉ、誰か慰めてくださいよぉオーラ』出しまくりおって≫
ドラゴンの毒舌にも反論する気が起きず、軽く頭を振る。思いの外、折紙の事が気にかかっているらしい。
「よし・・・・ドラゴン1発(バシィィィィィンン!!) おごぉぉぉぉぉ! は、早いだろう・・・・!」
≪少しは気合いが入ったか?≫
気合いを入れ直そうとドラゴンの尻尾ド突きをかまして貰おうと言いかけたが、それよりも早く、ド突き(威力やや強め)が脳天におみまいされた。
「痛ぅ~・・・・まぁ、気合いが入ったって言えば入ったけど・・・・」
まだ痛む頭を擦りながら、士道は深呼吸をし、包丁を握り直す。
すると、その時。
「ーーーーし、士道、手伝うわ」
何だか微かに震えた琴里の声が、背後から聞こえた。
「ん? ああ、ありがとう。じゃあそっちのーーーー」
≪ーーーーは??≫
士道はそう言いながら振り返りーーーーそのままドラゴンと共に、フリーズベントした。手から包丁が溢れ落ち、床に突き刺さる。
しかし、それも仕方ない事であった。ソコにいたのは琴里と四糸乃の2人だったのだがーーーー2人とも、幼い菅谷ではなく、士道と同い年の年齢に成長していたのだ。
背は伸び、大人の扉に手をかけた少女特有の美しさを纏っている。因みに、バストサイズは四糸乃は順当に育っているのに対し、琴里はあまり変わっていなかった。
だが、士道とドラゴンが驚いたのはそれだけではない。2人の装いだ。
2人とも、水着の上にフリルの付いたエプロンと、頭にヘッドドレスと言う、季節外れの常夏のメイドさんスタイルだった。しかもどうやら2人も恥ずかしいようで、落ち着かない様子で頬を赤らめ、肩をすぼませていた。
「ふ、2人とも、なんて格好してるんだ!? て言うかその身体ーーーー」
士道が焦った調子で言うと、2人は一瞬視線を交じらせた後、ぎこちない動きで士道の左右の腕に寄り添うようにしてきた。
「い、いいじゃないそんな事」
「そう・・・・ですよ。それより、私達にもお手伝いさせて・・・・下さい」
「て、手伝いって・・・・」
2人の言葉に、士道は汗を滲ませた。四糸乃を見ると、見事に実った胸があった。琴里はまだマシだが。
「・・・・士道? もしかしてスッゴく失礼な事考えてない?」
「・・・・!」
琴里がギロリと睨み付けてきて、士道は慌てて首をブンブンと横に振った。今朝の耶倶矢もそうだったが、胸の小さい女性は勘が鋭いのかと思った。
そんな事を口にすれば、今日の夕飯は士道の活け作りにされてしまうが。
ドラゴンにどうなっているのか聞きたくても、まだフリーズベントから抜けていないようだ。
が、士道はこの現象に心当たりがあった。
「七罪! お前の仕業か!?」
士道が叫ぶと、ソファの陰から覗いていた緑色の頭頂部が、ビクッと震えるのが分かった。
ガルーダ達にも早く出なさいと催促されていたようで、観念したのかゆっくりと七罪が顔を出した。変身能力を持つ七罪だ。
そして七罪もまた、琴里と四糸乃のように、高校生くらいの年齢に成長していた。が・・・・七罪の装いは、普通のメイド服で、2人のような刺激的なスタイルではなかった。
「ーーーーって、ちょっと待てコラァ!」
そんな七罪の姿を認めて、琴里が叫びをあげる。
「七罪! 何で自分だけ水着じゃないのよ! 全員これで行くって言うから承諾したんじゃない!」
琴里の言葉に、七罪は気まずげに目を逸らした。
「・・・・いや、だってほら・・・・よく考えたらそんな恥ずかしいカッコ出来ないって言うか、何だか馬鹿丸出しって言うか・・・・」
「馬鹿丸出しな格好私達にさせてたんかいっ!」
「こ、琴里さん・・・・落ち着いて・・・・」
四糸乃が宥めようとするも、琴里の気は収まらないようで、無い袖を捲る仕草をして、七罪に飛びかかっていく。
「この、同じ格好にしてやるっ!」
「う、うわぁっ!」
七罪が裏返った悲鳴を上げ、ソファの陰から慌てて逃げる。しかし琴里も諦めない。2人はリビングをグルグル走り回り始めた。
「待ちなさいっ! その服ひん剥いてやる・・・・っ!」
「いやぁぁぁ! おーかーさーれーるー!」
「誰がするかそんな事ッ!?」
涙目で言う七罪に、琴里が叫びをあげる。
「お、おい、2人とも≪小僧≫(ビクゥッ!!)」
と、ソコで、固まっていたドラゴンが、凄まじい怒気を滲ませた声を発し、士道は背骨が飛び出んばかりに驚く。
≪我を出せ≫
「い、いや、でも・・・・」
≪さっさと出せ・・・・!≫
「は、はい・・・・」
[ドラゴライズ プリーズ]
その迫力に圧された士道が思念体のドラゴン(サイズは士道の頭くらい)を召喚すると、家がその怒気によって地震が起きたかのように揺れ、外では猫が鳴き声をあげて逃げ出し、電線に止まっていたカラス達が大声で悲鳴をあげて飛び去っていく、追いかけっこをしていた琴里と七罪が固まり、2人を止めようとした四糸乃も固まった。
『〈イフリート〉』
「うっ!」
『〈ハーミット〉』
「は、はい・・・・」
「〈ウィッチ〉」
「は、はひ!」
≪並べ≫
ドラゴンがそう言うと、三人は即座に横一列に並んだ。
≪正座≫
「「「え?」」」
≪せ・い・ざ≫
「「「は、はい・・・・」」」
「・・・・・・・・」
それから三人は正座して、ドラゴンからお説教を受けたのであった。
◇
『ここまでにしておいてやる。もう少しTPOを弁えた服装をしろ。分かったか、この『三原色トリオ』』
「『三原色トリオ』って・・・・(確かに琴里<赤>、七罪<緑>、四糸乃<青>だけど)」
「ひ、酷い目にあったわ・・・・」
「あ、足が・・・・」
「あ、ああぁ、お、おぉぉぉぉぉ・・・・!」
そして30分後。ドラゴンのお説教が終わり、足が痺れた三人を見ながら、士道は1度ため息を吐いた後、小さく苦笑してから三人に向かって口を開く。
「ーーーー皆、気を遣わせちまって悪かったな。俺を元気付けようとしてくれたんだろう?」
士道が言うと、3人は気まずそうな調子のままコクリと頷いた。
その様子を見て、士道は頬をポリポリと掻いた。琴里達にも容易に知れるくらい落ち込んでしまっていたらしい。
『その通りだ。貴様が【僕、落ち込んでますよぉ】と、いじけた態度を取りまくっているからこんな珍妙な事態になるのだ。猛省しろ半人前以下の3分の1人前めが』
ドラゴンが尻尾の先端で士道の額をツンツンと突きまくる。常日頃から精霊の精神状態を乱さないようにしろとドラゴンや琴里に言われているのに、これでは正反対だ。士道は気を引き締めようと思い、ドラゴンに向けて口を開く。
「ドラゴン。もう1度、(ババシっ!!)だから早ぇよぉっ!」
「凄っ! 一瞬で士道の両頬を同時にド突いたわ・・・・!」
「ど、ドラゴンさんの尻尾が2つに別れたように見えました・・・・!」
『あまりの超スピードによしのん達の目が錯覚したのっ!?』
「さらにパワーアップしていると言うの・・・・!?」
ドラゴンの成長に奇妙な驚きを見せるのであった。
「さ、3人とも、もう大丈夫だぜ・・・・」
頬を擦りながら士道が言うと、3人が少しだけ頬を緩めた。
と、ハッとなった琴里が目を見開いてから、強がるように腕組みする。
「ふ、ふん・・・・それで良いのよ。別に何かあったか何て詮索するつもりは無いけど、いつまでもそんなに調子じゃ精霊達が不安がっちゃうでしょ」
「ああ、悪かったって」
強がる琴里が何だか可愛らしく思えて、士道は肩をすくめながら苦笑した。
が、琴里としては士道に侮られるのは好ましくないようで、口をへの字に結び、続ける。
「いつまでも気を抜いていられちゃ困るのよ。またいつ精霊が現れるか分からないんだから。未知の精霊は勿論、狂三だっているし、“それこそあの〈デビル〉だって”ーーーー」
「え?」
『(ピクッ)』
琴里の発した識別名に、士道とドラゴンは思わず眉をひそめた。
『(〈デビル〉・・・・? これまで識別名称は精霊の見た目から付けられていたが。・・・・〈デビル〉、つまり『悪魔』の姿をした精霊ーーーーまさか)』
「ちょ、ちょっと待て琴里。〈デビル〉・・・・? 何だよその精霊」
聞き直す士道と違い、ドラゴンは思考し、ある憶測が浮かんだ。
琴里が怪訝そうに眉根を寄せる。
「何言ってるのよ士道。あの『精霊狩りの〈デビル〉』よ? 〈ナイトメア〉時崎狂三に並ぶ最重要警戒対象じゃない。忘れた何て言わせないわよ」
「狂三と・・・・なら(バシィィン!)ぶばぉっ!?」
額に汗が滲みそうになる士道に、尻尾ド突き(威力強)がおみまいされ、頭を抑えて蹲る。
ドラゴンが士道に構わず琴里に話しかける。
『すまんな〈イフリート〉よ。この愚か者。毎度のようにヘマをして我がお仕置きをしていたせいか、少し記憶が曖昧になりかけているのだ。もう1度この脳細胞が死滅しかけているの頭に〈デビル〉の事を説明してやってくれ』
「お、おぉお前なぁ・・・・!」
上手くドラゴンが〈デビル〉について情報を聞き出そうとしていた。
この世界が士道達の知っている世界とは微妙に違う流を辿っている事は、今日嫌と言うほど思い知った。ならば、2人が知らない精霊が既に現れている可能性もあり得た。
それもーーーー最悪の精霊・狂三とならんで警戒されるような精霊が出現している事が、にわかに信じられなかった。
「毎度のようにド突いていたら、脳細胞がいくらあっても足りなさそうだけど、仕方ないわね。良く聞きなさいよ」
「あ、ああ、すまん」
とは言え、情報が聞けるのはありがたい。琴里が咥えていたチュッパチャプスの棒をピンと立てた。
「〈デビル〉。顕現は確認されているけど、1度も接触に成功した事のない、正体不明の精霊よ。そしてーーーー」
琴里は一拍置いてから続ける。
「ーーーー恐らくではあるけど、『反転体』よ」
「な・・・・!?」
『・・・・』
士道は目を見開いたが、ドラゴンは少し目を細めた。
「『反転体』・・・・? どういう事だ? 反転した精霊が、普通に出現しているって言うのか?」
「だから、詳しい事は分かっていないのよ」
琴里が苛立たしげに言う。きっとそれは、こちらの世界の士道(&ドラゴン)であれば当に知っている筈の情報だから。
何故反転した精霊が出現しているのかーーーー疑問は尽きなかったが、気を取り直して質問を続ける。
「・・・・さっき言ってた『精霊狩り』って言うのは?」
「その通りの意味よ。ーーーー〈デビル〉は単独では出現しないの。必ず、他の精霊が出現した際に現れては・・・・その精霊に攻撃を仕掛けるのよ。七罪なんて、あなたや十香達が助けに入らなかったらヤバかったんだから」
「・・・・!」
言って、琴里が七罪をチラリと見ると、その時の事を思い出したのか、七罪の肩が微かに震えていた。
「ちょ、ちょっと待て。精霊を? それって・・・・」
「ええ。まるで魔獣『ファントム』か、ASTやDEMね。ーーーー最初は私達もそれらの組織の関与を疑ったわ。もしかしたら、精霊を飼い慣らして精霊を狩らせようとしてるんじゃないか・・・・って。でも見る限り、〈デビル〉と彼等の間に協力関係はないみたい。実際、彼等も〈デビル〉の攻撃を仕掛けているわ」
「じゃあ・・・・何で〈デビル〉は精霊を・・・・?」
「さあね。何か理由があるんでしょうけど、そればっかりは本人に聞いてみない事には分からないわ。すぐ何処かへ姿を眩ませちゃうものだから、〈ラタトスク〉もまだ、1度も接触できてないのよ」
大仰に肩をすくめる琴里。
「なぁ、ドラゴン・・・・俺、何か、〈デビル〉に違和感を感じるんだけど・・・・?」
『・・・・〈イフリート〉。その〈デビル〉の画像か映像はあるのか?』
「ある事にはあるけど・・・・見てもあんまり意味ないと思うわよ」
『百聞は一見に如かずだ。とりあえず見せてくれ』
ドラゴンの言葉に、琴里が「うーん」と頭をかくと、プラモンスターズに指示を出すと、プラモンスターズはリビングを出て、琴里の部屋からB5サイズの端末を持ってくる。
琴里は端末を受け取り、プラモンスターズに礼を言って頭を撫でると、テーブルの上に端末を置き、映像を再生させた。
「これよ。見て」
ソコに写し出されたのは、滅茶苦茶に破壊された街と、辺りに爆音と煙が上がり、今まさに戦闘が行われていた。
ーーーーその、中に。
『ソレ』は、いた。
闇を纏ったかのような人物のシルエットであった。確かに、「あまり意味がない」と言えた。辛うじて人の形を判別する事ができるものの、その顔は闇に覆われ、見とる事ができない。だが、その人型の周囲に浮遊した幾つもの羽のような部品は、そのシルエットを〈デビル〉と称するに十分な説得力があった。
ソレを見て。
「・・・・あーーーー」
『(やはり、か・・・・)』
士道は小さな声を、ドラゴンは憶測が確信へとなった。
その異様な精霊の風貌を目の当たりにしたからではない。
ーーーーその精霊に、見覚えがあったのだ。
確かに、顔や表情を見とる事はできない。
だが、士道とドラゴンは知っていた。その精霊の姿を、目にしていた事があった。
「うそ・・・・だろ・・・・」
カタカタと、歯の根が鳴る。全身が、小刻みに震えていく。
何故なら、それはーーーー。
「・・・・折、紙・・・・」
ソレは精霊化し、反転した折紙の姿そのものだった。