デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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壊してしまった真実

ー士道sideー

 

「お、折紙、お前ーーーーえ・・・・?」

 

≪何・・・・?≫

 

ウィザード<士道>は顔をあげると、言葉を止め、ドラゴンも呆然と声を発した。

今まさに狂三を撃ち殺した折紙が、力無くその場で膝を突いたかと思うと、周囲に浮遊していた無数の『羽』が

粒子状となって空気に消えていった。

そしてそれに次いで、折紙の身を飾っていた漆黒の霊装が解けていき、来禅高校の制服姿に戻った。

まるでーーーー狂三を殺した事により、目的を達したと云わんばかりに。

 

≪ぬ?≫

 

そしてその際ーーーー何か魔力の気配があったのをドラゴンは感じた。

 

「これは・・・・」

 

≪反転した人格が、小娘の中に戻っていったのだろう≫

 

変身を解除した士道とドラゴンが話していると、程なくして折紙がゆっくりと顔をあげる。

そしてーーーー。

 

「・・・・あれ、五河くん? 何してるんですか、こんなところで」

 

士道の姿を認めると、今し方狂三を撃ち抜いたとは思えない、あまりにも毒気の無い表情と声音、あっけらかんとした様子でそう言ってきた。

 

「(・・・・なあドラゴン。折紙は演技をしているって事は無いか?)」

 

≪これが演技ならば、稀代の名女優か、天才詐欺師だろうな≫

 

士道が呆然と折紙を見ていると、折紙は何故自分は屋上にいるのかと、不思議そうに首を傾げた。

 

「もしかして、また・・・・」

 

折紙が小さな声でそう言って、パンパン、と膝を叩きながらその場に立ち上がる。

 

「また? な、何がだ・・・・?」

 

「え? あ・・・・聞こえてました?」

 

士道の言葉に、折紙はバツが悪そうに頭をかく。

 

「少し前から、たまに意識が途絶える事があるんです。多分貧血か何かだと思うんですけど・・・・」

 

「意識が・・・・(ドラゴン、やっぱり・・・・)」

 

≪ふむ。〈ハーミット〉と似たような状態だな。・・・・1つの身体に2つの人格、と言った処か≫

 

士道はは眉根を寄せながらゴクリと息を呑んだ。

 

「あっ」

 

折紙はそんな士道の様子を不思議そうに見てから、何かを思い出したように声をあげた。

 

「あの、そう言えば授業中に渡した紙、読んでくれましたか?」

 

「へ・・・・? あ、ああ・・・・読んだ、けど」

 

「ーーーーえっと、そう言う事・・・・ですから」

 

士道が答えると、折紙はクルリと背を向けて言い、足早に屋上を去っていった。

士道はその背中を呼び止められなかった。時間にすれば5分にも満たない出来事。しかし、士道の回り込み世界を一変させてしまった。

 

「狂三・・・・」

 

「ーーーーハイハイ、お呼びですの?」

 

≪これがこの女の厄介な所だな≫

 

士道が狂三の名を呟くと、士道のすぐ横の影が蟠り、その中から先ほど折紙に殺された筈の狂三が顔を出した。

 

「やっぱり『分身体』だったか・・・・」

 

「あら、慣れとは恐ろしいですわねぇ」

 

≪小僧が〈デビル〉の攻撃を防いでいる内に入れ替わっていたのだろう≫

 

士道は頭をクシャクシャとかく。

 

「・・・・その分身体を使い捨てるようなやり方、俺は好きじゃねぇ。分身体って言ったって、生きてるんだろう?」

 

「うふふ、士道さんはお優しいですわね。でも心配は無用ですわ。【8の弾<ヘット>】(過去の時間軸の自分を『分身体』として召喚)を使えば、まさに今殺された『わたくし』を再現する事も可能でしてよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

≪平行線になる話をしている場合か?≫

 

自分と狂三の命に対する考え方があまりに違う、士道は細く息を吐いた。

狂三は話題を変えるように、折紙の消えた先に視線をやる。

 

「今の折紙さん、どう思われまして?」

 

「どう・・・・って言われてもな」

 

正直、分からない事だらけだった。

 

「まあ、1つ確かなのは、【10の弾<ユッド>】を使っての情報収集が困難になった・・・・と言う事でしょうか」

 

「それは・・・・そうだな」

 

≪今の〈デビル〉がどんな状態なのか分からんが、あの様子では接近も困難だな≫

 

ドラゴンの言葉を聞いて、士道は苦々しげに声を発する。

 

「何で・・・・こんな事に。俺はーーーー俺のした事は、間違ってたのか?」

 

「そうは思いませんわ。あの時折紙さんのご両親を救えていなかったのなら、この世界の天宮市も反転した折紙さんによって容赦なく蹂躙されていた筈ですわ。ーーーーそう考えるのならば、今この状況も『最悪』ではない・・・・そうは思いません事?」

 

「そ、それはそうかもしれないけど・・・・」

 

フウと息を吐いて狂三に言われ口ごもる。確かに元の世界が地獄絵図となってしまったのなら、今この世界はまだ平和と言える。

しかし、やはり士道は納得できなかった。あの後折紙に何が起こったのか、それが気になって堪らなかった。

そんな士道の表情を見て、狂三がクスクスと笑う。

 

「まあ、士道さんならばそう考えると思いましたわ。ーーーー確かにわたくしも、1つの出来事を変えた際、どのように世界が書き換えられたのかには興味がありますけれど」

 

「! ならーーーー」

 

士道は言いかけるが、狂三が人差し指を立て、士道の唇を塞ぐようにしてきた。

 

「でェ、もォ・・・・わたくしもそこまでお人好しではありませんの。ここから先は“別料金”になったしまいますわよ?」

 

言って、にィ、と唇を歪めてくる。その凄絶な笑みに、士道は思わず息を呑んだ。

 

「ふふーーーー」

 

そんな士道の様子に、狂三は肩をすくめると、再びその場でクルリと回転して見せた。

 

「では、わたくしはこれで。ーーーーまたお会いしましょう、士道さん。ドラゴンさん」

 

そう言い残し、狂三は影の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・何してんだ、おっちゃん?」

 

狂三と別れた士道は、『面影堂』にやって来た。

輪島のおっちゃんから、新しいリングが出来たから取りに来てほしいと言われたからだ。そして店に入ると、『割れたカップ』をテーブルの上に置いて、難しい顔で唸っている輪島のおっちゃんを見てそう言った。

 

「う~む・・・・ん、おぉ士道」

 

そして士道が来た事に今気づいたのか、輪島のおっちゃんは士道に目を向ける。

士道は輪島の座るソファの向かい側の椅子に座ると、話を始める。

 

「一体どうしたんだよ。これって確かーーーーおばさんのお気に入りのカップ、だったよな?」

 

「ああ、実は、俺のカップを取り出そうとしたら、運悪くぶつけてしまってな、そのまま床に落としちまってこうなった・・・・」

 

「それで、割れちゃったのか。でも、接着剤を使えばまだまだ使えそうだけど?」

 

取っ手が折れてしまっただけで、接着剤でくっ付けてしまえば済みそうな物だが、輪島のおっちゃんはまたも難しい顔を浮かべる。

 

「うぅむ。そうだけどな。割ってしまった事を、妻にちゃんと伝えるべきか、少し悩んでしまっててな」

 

「えっ?」

 

「だってそうだろう? 接着剤でくっ付けた所で、“俺がこのカップを壊してしまった『事実』は変えられないんだ”。故意ではなくても『妻のお気に入りのカップを割ってしまった』、これは変えようのない『事実』だ。これを隠した所で、罪悪感やら後悔が付いて回るだけだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「壊してしまった事をちゃんと伝えないと、きっと後ろめたさに付きまとわれる。なら、伝えた方が良いかもな」

 

≪『お気に入りのカップを割ってしまった『真実』』、か。まるで、『仕方ないとは言え過去を変え、世界を変えてしまった『真実』を隠している我々のようだな≫

 

「っ!?」

 

輪島のおっちゃんの言葉を聞いていた士道は、ドラゴンの言葉にピクッと肩を揺らした。自分達も仕方ない状況とは言え、『過去を変えて世界を改変してしまった』。

だが結局、折紙の両親は死に、折紙はASTに入り、折紙は精霊化し、折紙は反転してしまっていた。

なのにこの状況を琴里に伝えず、隠し通そうと考えている。

 

「そ、それじゃぁさ。同じ物を買ってくるって言うのはどうかな?」

 

「・・・・それでも、“妻との思い出があるカップじゃない”。新しく買ってきた物は、“見た目が同じなだけの別物”だ」

 

「っ!」

 

おっちゃんの言葉に、士道は小さく息を詰まらせる。

 

「・・・・うん。やっぱり妻にちゃんと伝えて謝ろう。隠し事をしたって、ややこしくなりそうだしな」

 

「・・・・おっちゃん」

 

「ん? あぁ悪いな! 新しいリングだな! 少し待っていてくれ!」

 

輪島のおっちゃんが少し作業部屋に赴いてから、3つのリングを持ってきた。

『ドラゴンの目が燃えているリング』。

『ドラゴンが鏡を持っているリング』。

『ドラゴンの身体に大きな『?』マークが付いたリング』だ。

 

「これが、新しいリング・・・・」

 

「士道」

 

「ん?」

 

「お前も、何か隠している事があるなら、素直に伝えた方が良いぞ。これは俺の経験から来る事だが、女の子に隠し事は通じないからな。特に士道のような分かりーーーーいや、嘘をつけないヤツの嘘はすぐにバレるぞ」

 

「うぐ・・・・!」

 

一瞬分かりやすいヤツと言われそうな気がしたが、とりあえず聞き流し、士道は息を詰まらせる。

 

「・・・・分かったよ。言ってみるよ、おっちゃん」

 

「おお」

 

リングを手に持ち、士道は店を出ようとすると、ふとおっちゃんに振り返り、

 

「おっちゃん・・・・もしかして・・・・」

 

「ん? どうした?」

 

「いや、何でもない!」

 

もしかしたら、輪島のおっちゃんは記憶を取り戻したのでは? と、思ったが、気のせいと考え、士道は今度こそ店を後にした。

 

≪・・・・・・・・・・・・≫

 

ただ、ドラゴンだけは、訝しそうにおっちゃんを見据えていたが。

 

 

 

ー輪島sideー

 

「・・・・さて」

 

輪島のおっちゃんは、士道が店を出ていき、今日はゴーレムもいないが、念のため周囲に誰もいない事を確認すると、店に置かれている電話を使い、『ある人』に連絡を取っていた。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「ーーーーそれで」

 

士道が帰宅すると、司令官モードの琴里が、口にチュッパチャプスの棒をピンと立てていた。

 

「どういう事か、説明してくれるんでしょうね、士道」

 

言って、ギロリと睨み付けた。

理由は分かりきっている。ーーーー折紙の件だ。

五河家のリビングには、士道と琴里の他に、小型端末を手元にスタンバイさせた令音しかいない。

 

「れ、令音さんまで」

 

「・・・・ん。まあ、書記代わりとでも思ってくれ。もし不都合があるようなら席を外すが」

 

「や、そんな事は無いですけど・・・・」

 

言いながら頬をかく士道。

 

「(ドラゴン。十香達は?)」

 

≪マンションで待機している。あ、いかん。〈ディーヴァ〉が〈ウィッチ〉に襲い掛かっている。こっちはやっておくから、そっちはさっさと説明でもしておけーーーーこら〈ディーヴァ〉! 嫌がっている相手にスリスリやクンカクンカもダメだが、ペロペロはもっとやめなさい!≫

 

そう言ってドラゴンは精霊達の相手をしている。士道は事情聴取を受ける気分で、どう説明すれば良いか悩んだ。

確かに事情は後で説明すると言ったが、いざ説明するとなれば、どう伝えるべきか悩んでしまう。

すると、士道のそんな思考を察したのか、琴里が不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「・・・・ふん。何よ、この期に及んで話せないって言うの? それとも、私が士道の話を理解できるかどうか不安? 見くびってくれるじゃない。ドラゴンは私達の事は、ほぼ頼りにならない組織と思っているようだけど。士道から見ても、私はそんな頼りにない司令官かしら?」

 

「いや、そんなつもりは」

 

士道が首を振ると、琴里は少し拗ねたように唇を突きだし、小さな声を溢した。

 

「・・・・もうちょっと頼ってくれたっていいじゃない・・・・おにーちゃん」

 

「・・・・・・・・!」

 

琴里に言われて、士道はハッと目を見開いた。

 

≪・・・・貴様。可愛い娘に唆されて妙な壺とか買うなよ≫

 

「(誰が買うか!)」

 

ボソッと呟いたドラゴンの言葉に反抗すると、頭をクシャクシャとかいてから、ハアとため息を吐く。

 

「・・・・そうだな。悪かったよ、琴里」

 

自戒するように言って、小さく頭を下げた。

目の前にいる琴里は、自分よりもずっと頭が良く、ずっと強い女の子である。懸念していた自分が恥ずかしい。これではドラゴンの言う、「身の程知らず」である。

 

「変な話と思うかも知れないが、今から俺が話すのは全部本当の事だ。ーーーー聞いてくれるか?」

 

士道が言うと、琴里は一瞬、パァッと表情を明るくした。が、すぐにピクリと眉を揺らし、司令官モードの顔に戻って首肯してくる。

 

「ーーーーええ、勿論よ」

 

士道はそんな琴里の様子に苦笑してから、話を始めた。

ーーーー時間にすれば15分位だろうか、士道は2人に全てを打ち明けた。

 

「・・・・と、こんな所だ」

 

「・・・・・・・・」

 

話を終えると、琴里はフウムと唸った後、小さく頷いた。

 

「ーーーー世界の書き換え・・・・、成る程ね。昨日から士道の様子がおかしかった理由が漸く分かったわ」

 

言って、顎に手を当てる。

 

「まあ、取り敢えず信じておいてあげる。士道が私にそんな嘘を吐く理由も思い当たらないし、ドラゴンがそんな荒唐無稽な作り話をする訳無いしね。それにーーーー」

 

「・・・・ん」

 

琴里の目配せに、令音が小さく言うと、手元の端末を操作して、画面を士道と琴里に見せた。

その画面を見て、士道は息を詰まらせた。

そこに表示されていたのは、つい先程の、反転した折紙と士道と狂三の姿だった。

 

「これはーーーー」

 

「ええ。今日の夕方、自立カメラが捉えた映像よ。・・・・鳶一折紙の情報を探る為に幾つか飛ばしてたんだけど、まさかこんな決定的瞬間が拝めるとは思わなかったわ」

 

難しげな顔をしながら、琴里はフウムと唸る。

 

「鳶一折紙が〈デビル〉である事は間違いない。でも、本人にその自覚はない。・・・・実際、彼女のパラメーターも令音に確認してもらったけど、嘘を吐いている様子はないわ」

 

「じゃあ、やっぱり・・・・」

 

「ええ。鳶一折紙は、自分が精霊になっている事に気づいていない可能性があるわ」

 

「ドラゴンは・・・・反転した十香のように、別の人格が一時的目覚めて、折紙の身体を操っているって考えているけどよ?」

 

「確かに、その可能性も十分あるけれど・・・・一体どうしてそんな事になったのかも分からないわ」

 

すると、端末を操作していた令音が小さく息を吐きながら顎を撫でた。

 

「・・・・少し、良いだろうか」

 

「ん、どうしたの、令音」

 

「・・・・ん。これはあくまで仮説と言うか、推論に過ぎないのだが、シンの話を聞いて疑問に思った点があってね」

 

「疑問・・・・? 何ですか?」

 

士道の言葉に令音は頷きながら続ける。

 

「・・・・ああ、シン達は世界改変を成功させた。そして、元の世界の事は皆覚えていない・・・・だったね?」

 

「はい。元の世界の事を知ってるのは、俺とドラゴンと狂三だけでした」

 

「・・・・それだよ」

 

「え?」

 

士道が首を傾げると、令音は指を1本立てて見せた。

 

「・・・・君達にだけ、何故元の世界の記憶があるのだろうかと思ってね。狂三は己の能力による物だからかも知れないが、シン達に関してはその理由が分からない」

 

「うーん・・・・」

 

言われてみればそうだ。士道とドラゴンは世界を改変させた張本人だから・・・・と何となく納得していたのだが。確かに、今ここにいる自分達は、『新しい構築された世界を生きてきた筈の士道とドラゴン』である。その記憶を持たず、元の世界の事を覚えている明確な理由は分かっていなかった。

 

「・・・・恐らく、元の世界の記憶を有するには、何らかの“条件”があるんだ」

 

「“条件”・・・・一体、どんな」

 

「・・・・詳しくは分からない。狂三を例外としてしまうなら、サンプルケースが少なすぎるからね。だが例えばその条件が、『狂三によって【12の弾<ユッド・ベート>】を撃たれた』と、『霊力を有している』・・・・と言ったモノだとしたら、どうかな」

 

「? それは・・・・」

 

「あっ、そうか、もし複数の条件が必要だとしたら・・・・鳶一折紙は精霊〈ファントム〉によって霊力を与えられた瞬間、元の世界であった事を思い出してしまう可能性がある。それまでこの世界の記憶を持っていたにも拘わらず・・・・!」

 

「あ・・・・!」

 

困惑していた士道は、目を丸くした琴里の説明で、漸く理解した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください令音さん。って事は・・・・あの反転した折紙は、『元の世界の記憶を取り戻してしまった折紙』だって言うんですか・・・・!?」

 

士道の問いに、令音は静かに目を伏せた。

 

「・・・・言っただろう。これはあくまで仮説だ。可能性の話に過ぎない。だが・・・・そう考えると、筋が通るのも事実だ」

 

「・・・・ドラゴンも、反転した折紙は、十香の時のように別の人格が現れた者だと言っていたけど」

 

「・・・・詳しい事は狂三にでも聞かないと分からないが、最初から元の世界の記憶を保持していたシンとドラゴンとは異なり、折紙はこの世界の記憶を持っていたんだ。ソコに元の世界の記憶と言う情報が強制的に流し込まれたとしたら一体どうなるか・・・・少なくとも、記憶の宿主によい影響は与えるとは思えない。自己を防衛する為に、この世界の記憶を持つ折紙と、元の世界の記憶を持つ折紙が分離されたとは考えられないだろうか。・・・・元の世界の折紙を呼び起こすスイッチとして考えられるのはーーーー」

 

「ーーーー精霊の存在・・・・って訳ね」

 

「・・・・恐らくね」

 

琴里がチュッパチャプスの棒をピンと立てながら言うと、令音は肯定した。

 

「・・・・教室にいた十香に反応しなかった処を見ると、霊力に反応しているのかもしれない。だとしたら・・・・彼女の前で限定霊装を顕現させるのは非常に危険だね」

 

「(確かに、折紙が精霊化したのは、狂三の姿を見た時だったし、狂三(分身体)を殺した後は、すぐに元の折紙に戻っていた・・・・)で、でも・・・・もし仮にそれが本当だとしたら、一体どうすればーーーー」

 

「何言ってるの」

 

震えた声で言いかける士道に、琴里がピシャリと遮る。

 

「確かに相手は狂三と並ぶ最凶最悪の反転精霊〈デビル〉よ。でも、裏を返せば強大な霊力を有していながら

特殊な条件を満たさない限り精霊化しないと言う事にもなる」

 

「それは・・・・」

 

言いかけて、士道は拳をグッと握った。

 

「(琴里の言う通りだ。逃げていても、折紙は救えない・・・・!)」

 

「ーーーーイレギュラーなケースではあるけれど、鳶一折紙が〈デビル〉と分かった以上、〈ラタトスク〉がやる事は1つよ」

 

琴里が士道に視線を送る。

そう、やる事は1つーーーー『デートして、デレさせる』。

士道の反応を見て、満足気に頷いてから、咥えていたチュッパチャプスの棒を指で挟み、ビッと士道に向けた。

 

「・・・・と、言う訳で、そうと決まれば早速明日から働くわよ。士道、どうにか折紙とコンタクトを取って、デートに誘ってーーーー」

 

「デートの約束、もうしてたわ・・・・。今週の土曜日なら空いてるって・・・・」

 

「・・・・はぁ!?」

 

士道の答えがよっぽど意外だったのだろう、何しろ、あの!ヘタレチェリーボーイの士道が! だ。琴里は凄まじい大声を発した。

 

「ど、どういう事よ。観測結果が出る前に口説いたって訳? あの士道が?」

 

「い、いや・・・・別に口説いたって訳じゃ・・・・」

 

「・・・・じゃあなんでデートの話になるのよ」

 

「それは、その・・・・」

 

返答に困っている士道を、琴里はジトーっとした視線で見据える。

 

「ふぅん・・・・元の世界で士道と鳶一折紙がどういう関係だったのか、ちょーっと聞く必要がありそうね」

 

「な、何を・・・・」

 

琴里が、背後に、『炎の冥府の神』と『蛇の冥界の神』、そして『竜の冥府の神』の幻影を出現させ、士道は顔を青くした。

 

 

 

ー折紙sideー

 

ちなみに折紙の方も、自室のベッドの上で、自分の乙女チック過ぎる行動にゴロンゴロンとのたうち回り、士道に対する得体の知れないが、全然不快ではない不思議な感覚に戸惑っていた。

そして士道からメールが送られ返信しようとするがその際、士道のメールを1文1文に丁寧な返事を付ける。声をかけてくれて嬉しかった事、次の土曜が待ちきれない事、士道の事を考えると不思議な気分になってしまう事等を、詩的表現満載で書き綴る。が。

 

「・・・・・・・・・・・・乙女かっ!//////」

 

途中で恥ずかしくなってしまい、折紙は頬を染めながら本文を削除し、結局返信できたのは、日付を跨いだ後だった。

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