デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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第十一章終了です。そしてドラゴンが・・・・!


始まりと終わり

ー士道sideー

 

「・・・・、・・・・」

 

折紙を封印してから早3日経った11月14日。

高校の自分の席に座った士道は、教室の入口をチラチラと見ていた。

理由は単純。折紙が久しぶりに学校に来るのだ。

 

「・・・・・・・・」

 

士道は落ち着かない心をどうにか押さえる。

それは折紙が激しく損傷した〈フラクシナス〉ではなく、〈ラタトスク〉機関が所有する地下施設へと搬送され、あれから1度も話す事が無かったからだ(後ご自慢の〈フラクシナス〉を破壊されてしばらく琴里は不機嫌だった)。

 

「(あれから・・・・3日か・・・・)」

 

士道の脳裏に、3日前の光景が甦る。折紙を封印し、これで万事解決と誰もが信じて疑わなかった展開がーーーー地獄へと変わった事を。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

「ぐはっ!」

 

士道の背後から薙刀のような武器の刃が、士道の胸元を貫通し、ソコから血が滲み広がり、重力に従って地上へと滴り落ちる。

 

『フフフフ、ははははははははは・・・・!』

 

士道に刃を突き立てたファントムが、静かに、しかし不気味な笑みを浮かべながら士道の背後を蹴り、刃から無理矢理引き抜くと、さらに士道の負傷した場所から血が吹き出すが、〈灼爛殲鬼<カマエル>〉の炎が傷を癒す。

 

「兄様!!」

 

すかさずビーストH<真那>がミラージュマグナムを撃ちながらそのファントムを攻撃し、次いで仮面を展開したプリンセス<十香>、イフリート<琴里>、ベルセルク<八舞姉妹>がそのファントムに向かい、四糸乃と七罪、美九と折紙が士道を支えた。

 

「士道・・・・!」

 

「だ、大丈夫だ、こんな傷、すぐに治せる・・・・!」

 

自分を支える折紙達にそう言うと、謎のファントムと交戦するプリンセス<十香>達に目を向けた。

プリンセス<十香>の剣も、ベルセルク<八舞姉妹>の連携も、イフリート<琴里>の炎も、ビーストH<真那>の光弾も、まるで瞬間移動でもしているかのように消えては、現してを繰り返して回避する。

 

「貴様よくもシドーを!」

 

『感謝して欲しいね、魔法使いには“あの程度”の傷で済ませてやったのだから』

 

「何をっ!」

 

と、そこでプリンセス<十香>達の目の前に、黒い魔法陣が展開され、ソコから爆発が炸裂し、プリンセス<十香>達を吹き飛ばす。

 

「「「「「ああぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

 

「皆!」

 

ーーーーソコまでだ、『レギオン』・・・・。

 

「っ!!」

 

突如自分達のいる空のさらに上から響いた声に、一同が目を向けると、黒い魔法陣の上に立った、白いファントムが現れた。

 

『もうこれ以上の戦闘に意味はない。退け『レギオン』よ』

 

『・・・・煩いなぁ、私に命令するなよーーーー『ワイズマン』』

 

「『ワイズマン』・・・・だとっ!?」

 

漸く傷が癒えた士道が、目を見開いて上空のファントムを見た。あのファントムこそ、メデューサ達の頭目にして、1年前に儀式<サバト>を引き起こし、士道だけでなく多くの人間達を『魔獣 ファントム』にした元凶と思われる存在が現れたのだ。

 

「お前が、あのサバトを引き起こした、ワイズマン!」

 

『レギオンよ。私の命令に従わないのか?』

 

『クククク。だとしたら?』

 

士道の事を無視して、ワイズマンが問いかけると、レギオンが挑発的に笑い声をあげながら、ワイズマンと同じ高度に上昇すると、ワイズマンは両手の平に魔法陣を、レギオンは自分の武器である薙刀を構えた。

 

『また、牢獄に入れてやろう』

 

『やってみろーーーーできるならばな!』

 

ワイズマンが魔法陣から黒い火炎弾と黒い雷撃に放って攻撃するが、レギオンはそれらを回避して近づき、ワイズマンに薙刀を振るった。

 

『!』

 

『!』

 

ワイズマンが手の平の魔法陣で防御し、それを見てニヤッと笑ったような様子のレギオンと空中を高速で翔びながら激突し、その場から去っていった。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

「(ソロ~リ)」

 

士道達は、その様子を見ている事しかできなかった。コッソリとトンズラしたビーストH<真那>に気づかない程に。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

そして現在。

 

「シドー、折紙はまだ来ないのか?」

 

腕組みしながら士道と同じように教室の扉に目をやっていた十香が、不意に声を上げてくる。どうやら完全に『元の世界』の記憶を共有できたようだ。

 

「十香・・・・お前アイツの事、“折紙”って呼ぶようになったんだな」

 

「む・・・・べ、別に大した理由ではないぞ。何となくだ」

 

不倶戴天の宿敵への態度の変化に少し驚く士道。十香はハッと目を見開き、慌てたように返しながら、視線を逸らす。

と、今度は後方から声が聞こえた。

 

「ーーーーふむ。まだ折紙は来ておらなんだか」

 

「首肯。早く来すぎましたか」

 

見やると、隣のクラスの八舞姉妹が、無駄に格好いいポーズを取りながら立っていた。

 

「・・・・耶倶矢、夕弦。何してんだ?」

 

ポーズの事は無視して士道がそう言うと、耶倶矢はバッと手を前にかざし、指の隙間から王の力が宿る瞳を見せるようなポーズで視線を寄越す。

 

「くく、知れた事。漸くあの大うつけが検査を終えて帰ってくると聞いたのでな。『元の世界』での礼をしっかりとしてやろうと言う訳だ!」

 

言って、耶倶矢がククク、と邪悪な笑みを浮かべる。

『元の世界』で精霊化した折紙にこっぴどくやられた事を根に持っているようだ。

 

「(記憶が思い起こされるのも、良い事ばかりじゃないな)・・・・夕弦も、折紙にリベンジか?」

 

指をワキワキと動かしながら折紙を待ち構えている耶倶矢の様子に苦笑しながら、士道は夕弦に視線をやったが、夕弦は対照的フルフルと首を横に振った。

 

「否定。夕弦は別に気にしていません。それよりもマスター折紙が精霊について考えを改めてくれたのが嬉しいです」

 

「ちょ・・・・っ! 何かそれじゃ私の器が小さいみたいじゃん!?」

 

夕弦の言葉に、たまらずと言った調子で声を上げる耶倶矢。まぁ、2人とも折紙を出迎えたいのだろう。そんな小競り合いを見ながら、士道はフウと息を吐き、再び教室の入口に目をやった。

そろそろホームルームが始まると思ったその時、教室の扉が開き、長い髪を肩口まで切り揃えた、『元の世界』の折紙の姿に戻った折紙が入ってきた。

 

「お、折紙・・・・?」

 

士道も十香や八舞姉妹も、折紙の変身にポカンとしていたが、すぐに気を取り直すように声を上げる。

 

「ぬ・・・・来たか、折紙!」

 

「くく、良い度胸だ。その蛮勇だけは認めてやろう!」

 

十香と耶倶矢が、構えるように折紙を迎える。しかし、

 

「ーーーーおはよう、皆」

 

「返答。おはようございます、マスター折紙」

 

何て、毒気のない顔で折紙がそう言うと、2人は拍子抜けしてしまい口ごもった。夕弦だけはちゃんと返した。

 

「折紙、お前・・・・」

 

言いかけて、今発するべき言葉はそれじゃないと士道は思い直した。

士道は言う。いつもと変わらぬ調子で、変わらぬ声で。

 

「おはよう、折紙」

 

一時は、もう交わす事が無いとさえ思っていた、この言葉を。

士道の声にコクリと頷いた折紙は、そのままゆっくりと歩いてきた。

そして、椅子に座る士道の隣に立ち止まり、

 

「うん・・・・おはよう」

 

士道の目を見ながらもう1度、そう言った。

その顔を見て、士道は不思議な感慨に襲われた。折紙の表情が、雰囲気が、どことなく柔らかくなった気がする。

十香達もそれを感じたのか、どう反応したものかと、少し戸惑うような様子だが、すぐに慣れるだろう。

『元の世界』で何度も見た筈の光景に、士道は思わず涙が滲んだ。

 

「む・・・・? 大丈夫か、シドー」

 

と、士道の様子に気づいた十香が顔を覗き込んでくる。

 

「あ、いや・・・・何でもないよ」

 

誤魔化すように言って、手の甲で涙を拭ーーーーおうとしたその手を、折紙がハシッ、と掴んだ。

 

「ーーーー士道。涙を拭うのなら、これを」

 

「あ、ああ・・・・悪い」

 

と、折紙の方に手を伸ばそうとした次の瞬間、頭をグイと引っ張られ、士道の視界が真っ暗になった。

 

「・・・・!?」

 

微かな湿気が頬に触れ、次いで石鹸と汗が交じったような匂いがした。

一拍置いて士道は、自分の頭が折紙のスカートの中に引き込まれたのだと言う事を理解した。

 

「っ・・・・! っ・・・・!」

 

予想外の出来事に息を詰まらせ、逃れようとするが、折紙はその細腕から想像できないパワーで頭をホールドされ、もがけばもがくほど、顔面は押し付けられる。

 

「んー! んんんんんんんんんーっ!!」

 

「なっ、何をしているのだ貴様っ!」

 

十香が慌てた声をあげ、折紙のホールドを外す。士道は荒い息を吐いた。

 

「は、はぁ・・・・っ、はぁ・・・・っ」

 

「折紙! 貴様、何のつもりだ!」

 

「涙を拭ってあげただけ」

 

「ふざけるな! ど、どこで拭っているのだ!」

 

十香が叫ぶと、折紙は何の躊躇いもなくスカートを捲り上げた。

 

「な・・・・っ!」

 

思わず息を詰まらせた。折紙のスカートの中にあったのは、下着ではなくスクール水着だった。

 

「吸水性抜群」

 

「畏敬。流石ですマスター折紙。夕弦にはできない事を平然とやってのける。そこに痺れます。憧れます」

 

「いや夕弦! こんなの痺れても憧れてもダメだし!」

 

八舞姉妹が騒ぐのを取り敢えず無視して、士道が口を開く。

 

「・・・・いや、そうじゃなくてだな。何でそんな物を・・・・もう11月だし、プールの授業なんて無いだろ・・・・?」

 

「士道があの続きを要求してくると思って」

 

言って、折紙が鞄から犬耳カチューシャと尻尾、そして革製の首輪を取り出した。そのアブノーマルなグッズの数々に、クラスの面々がヒソヒソ話を始めた。

 

「え・・・・あれ、鳶一さん何やってるの? マジ引くわー」

 

「休んでる間に一体何が・・・・?」

 

「そう言えば、五河くんと鳶一さんが歩いてるの見たって友達が・・・・」

 

「マジかよ!? 転校初日にして『恋人にしたい女子ランキング』1位に駆け上がった有望株だぞ!?」

 

「でもほら五河くんだし」

 

「あー」

 

何て会話が辺りから聞こえる。その他にも、『監禁』『強要』『調教』等と物騒な単語が聞こえる。

とは言え、それも仕方ない。精霊達と違って、クラスメート達は『元の世界の記憶』がないのだ。休みに入る前の真面目な『この世界の折紙』の姿しか知らないのだから。

 

「あ、あのな、折紙。ここは人も多いし、あんまりそう言う事は言わない方が・・・・」

 

「気遣いは無用」

 

そう言った折紙は、そのままピト・・・・と士道に身を寄せてきた。

 

「んな・・・・っ!」

 

「きっ、貴様!」

 

士道が息を詰まらせ、十香が叫び、クラスメートが一斉に色めき、スマホのカメラを向け始める。

しかし、折紙は至極落ち着いた様子で唇を動かす。

 

「私と士道の仲は、早めに知らしめておいた方がいい。その方が、悪い虫が付かない

 

「し、シドーから離れんか折紙!」

 

折紙は十香に視線をやる。

 

「ーーーー私は確かに、精霊を絶対の殲滅対象としてみる事をやめた。しかし十香。あなたに士道は渡さない。あなたが士道に付きまとう限り、あなたが私の敵である事に変わりない」

 

「それはこちらの台詞だ! 良いから早くシドーから離れろっ!」

 

腕をブンブン振り回しながら絶叫を上げる十香。が、折紙は涼しい顔で士道に寄り添ったままだ。

 

「あ、あのー・・・・トジイチサン」

 

「何?」

 

周囲の視線を何となくだ無視しながら、士道は1つ確認しておかない事を聞いた。

 

「俺の記憶が確かなら・・・・お前あの時、俺への感情は『愛』でも『恋』でも無かったって言って無かったけ・・・・?」

 

「言った」

 

「ええと・・・・じゃあこれは、一体」

 

汗を滲ませる士道に、折紙はコクリと頷き『元の世界』の時よりエスカレートしている奇行を聞くと、折紙は真っ直ぐな瞳で士道を見上げる。

 

「今までの私が士道に抱いていたのは、『愛』ではなく、『依存心』だった」

 

「お、おう」

 

「『本当の愛』は、これから」

 

「・・・・・・・・」

 

その言葉に軽く目眩を覚える。まるで大魔王宣言をされたような気分だ。

と、騒動の終了を告げるように、ホームルームのチャイムが鳴る。

これ幸いと、折紙を引き剥がした士道は、皆に聞こえるように大声を発した。

 

「ほ、ほら! もうホームルームが始まるぞ!」

 

「む、むう・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「ふん・・・・仕方ない。また休み時間に参るぞ!」

 

「退却。では後ほど。マスター折紙、またお話しましょう」

 

取り敢えず十香と折紙は矛を収め、八舞姉妹も自分のクラスに戻っていき、クラスメート達も自分の席へとワラワラと戻っていった。

 

「はぁ・・・・」

 

大きなため息を吐きながら、雑踏に紛れるように、折紙に目をやった。

そう。折紙があまりに意外な現れ方をしたものだから、タイミングを逃してしまったのだ。

 

「・・・・折紙」

 

「何?」

 

「ええと・・・・なんだ、ーーーーあの時、俺の声を聞いてくれて、ありがとう。戻ってきてくれて嬉しいよ。何て言うか・・・・安心する。お前が、普通に教室にいるって事に。・・・・すぐに精霊と打ち解けろって言うのも難しいかも知れないけど、お前ならきっと上手くやれるから、だから・・・・ううんと」

 

上手く言葉が出ず、士道は頭をクシャクシャと掻いた。

 

「・・・・ああ、もう、いい。難しい事は後で話す。兎に角ーーーー」

 

顔を上げ、折紙の目を見つめる。

 

「ーーーーこれから宜しくな、折紙」

 

「ーーーーうん」

 

折紙は微笑みながら、士道の言葉に答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所でシドー、“ドラゴンはまた『休眠』に入ったのか”?」

 

「っ!」

 

十香の疑問に、士道は心臓がドクン! と、大きく跳ねたのを感じた。

 

「あ、あぁ、今回の戦いで、アイツ、スゲェ魔力を使っちまってさ。暫くまた『休眠状態』になったんだ・・・・」

 

目を僅かに泳がせ、心臓の動悸を必死に抑えながら、士道はそう答えた。

 

「そうか」

 

「・・・・」

 

十香と折紙は、士道の様子を少し訝しそうにしたが、すぐにタマちゃん先生へと向き直った。

そして士道は、“もう起動しなくなったウィザードライバーのバックル”に手を当てて、顔を俯かせた。

 

「(本当に、“死んじまったのか、ドラゴン”・・・・!)」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

それは、折紙を封印し、ワイズマンと遭遇した日の夜。折紙を〈ラタトスク〉に預け、皆は疲労から、自宅のベッドで泥のように眠り、士道も自宅のベッドで眠ってすぐの事、突然士道は、アンダーワールドへと連れてこられた。

 

「あ、あれ? ここは、アンダーワールド?」

 

『小僧・・・・』

 

「おいドラゴン。一体なんーーーー」

 

だよ、と文句を言おうとした士道の目の前にーーーー胴体に士道の身体半分くらいはある大きさの風穴が空いたドラゴンがいた。

 

「ド、ドラゴン! どうしたんだよ!?」

 

泡食った士道に、ドラゴンは今にも消えてしまいそうな、弱々しい声を発する。

 

『・・・・・・・・どうやら、あのファントム、レギオン、だったか・・・・やつの攻撃が、我を破壊しているようだ・・・・』

 

傷口にうっすらと、どす黒い魔力が込められ、徐々に傷口が大きくなっていく。

 

「そ、そんな・・・・! じ、じゃぁ琴里の炎で・・・・!」

 

『無駄だ。既に〈灼爛殲鬼<カマエル>〉の炎を使ったが・・・・レギオンの魔力が込められたこの傷は、再生の炎を弾き消す・・・・』

 

実際に〈灼爛殲鬼<カマエル>〉の炎を出して傷に当てようとすると、炎は魔力に触れた瞬間消し飛んだ。ファントムの魔力と精霊の霊力は反発し合う。ドラゴンが何なく精霊の力を使っていたから忘れてしまっていた。

 

「ど、どうすれば良いんだよドラゴンっ!?」

 

『・・・・小僧』

 

「何だっ!?」

 

慌てふためく士道に、ドラゴンは静かに語りかける。

 

『良いか。何があっても、どんな事があっても、【希望になる】とほざいたその『信念』を貫き通せ。例え誰かに否定されても、嘲笑われても、その信念を貫く意志さえあれば、それは真の誇りとなる・・・・』

 

「な、何だよ一体・・・・?」

 

『何が起こっても、決して自分を見失うな。決して1人で背負い込もうなど思い上がるな。貴様は1人ではないのだからな。後、〈ラタトスク〉をあまり信用するな、奴らの内部には、精霊の力を、掠め取ろうとする者が大勢いる・・・・』

 

「何だよドラゴン・・・・やめてくれよ!!」

 

まるで遺言でも言うかのようなドラゴンの様子に、士道は聞きたくないと言わんばかりに声を発する。

 

『・・・・あぁ、まだ精霊も残っているかも知れんし、まだファントムにDEM、〈ナイトメア〉の事があるのに・・・・我はここまでだったと言う訳か・・・・』

 

「ドラゴン!!」

 

『精霊の〈ファントム〉だが、おそらく奴は、我々のすぐ側にいると思う・・・・』

 

「〈ファントム〉がっ!?」

 

原始の精霊〈ファントム〉。それが自分達の近くにいると告げた。

 

『鳶一折紙を精霊化させるタイミングが、あまりにも良すぎたのでな・・・・もしかしたら、〈ファントム〉は我らの近くにいて、我々の行動を監視しているのかも知れん・・・・ごはっ!』

 

が、それ以上はドラゴンは喋れなかった。何故ならーーーー傷口から亀裂が広がり、遂にドラゴンの身体が、まるで硝子のように砕け始めたのだ。

 

「ドラゴンっ!!」

 

『小僧・・・・さらばだ!』

 

ドラゴンがそう言うと、士道はまるで後ろに引っ張られるかのように、アンダーワールドから退室させられた。

 

「ドラゴン! ドラゴーーーーン!!」

 

 

ードラゴンsideー

士道の姿が消えると、ドラゴンは1人、滅びゆく身体を一瞥すると、ドラゴンスタイルに到達してから見るようになった『夢』の意味に仮説を立て、虚空に向かって呟く。

 

『まだ、“あの記憶の全てを見た訳ではないが”、おおよその仮説は立ってきた・・・・『〈ファントム〉の正体』・・・・『小僧と崇宮真那の関係』・・・・『DEMとの因縁』・・・・『小僧のルーツの一端』・・・・『精霊達の真実』・・・・少しずつだが、見えてきたのだがな・・・・しかし、我はここまでだが、これだけは言えるーーーー『アレ』は、小僧は、お前の思い通りに動く存在ではないぞ・・・・『澪』・・・・』

 

そう呟いて、ドラゴンの首にも亀裂が生まれーーーーその身体が静かに砕け散り、アンダーワールドの中から消滅してしまった・・・・。

 

 

 

ー士道sideー

 

「ドラゴンっ!!」

 

そして、丁度朝になり、目が覚めた士道はリングを嵌めてドライバーに翳しても、ドライバーは動かなかった。

 

「嘘、だろ・・・・? ドラゴン・・・・」

 

士道は、自分の身体から、まるで半身を失ってしまったかのような奇妙な喪失感を感じ、それがドラゴンがもういないと言う事を、残酷に告げていたのであった。




第十一章が終わり、第十二章が始まる。

次回、デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚。

いつの間にか、側にいるのが当たり前にいる存在になったドラゴンが消え、無自覚に恐怖心を苛まれる士道は、ファントムやDEMの幻影に脅える。

「何だよ・・・・! 何なんだよっ!?」

しかし、ドラゴンがいなくなった事で、これまでドラゴンが半分負担し、制御していた霊力が暴走を起こす。
そして、士道は精霊達の力を使えるようになり、まるで精霊のようになる。

「もうドラゴンなんて必要ない! 俺が、俺だけの力で! 皆の『希望』になるんだ!!」

恐怖心と『心の穴』を埋めようと、力を行使し、完全に調子に乗る士道。
しかし、最悪の事態は刻一刻と迫り、『“もしもの事態”』を回避しようと奮戦する琴里達。

「ーーーーさあ、俺を、デレさせてみな」

そして、ワイズマン達ファントムも、動き出す。

『所詮貴様は、自分のファントムがいなければ無力な人間だ』

第十二章 『五河ディザスター』

少年は、『魔竜』と共にーーーー『無限』へと到達する。
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