デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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士道が、完全に調子に乗ります。


暴走・士道

ー士道sideー

 

高熱で混濁した意識の士道は、ゆっくりとした足取りで街を歩いていた。

自分の身体がドロドロに溶けて、人の形を保っているかどうか曖昧な感覚。実際、正常な平衡感覚を保って歩いている事自体が奇跡である。だと言うのに、何故か先ほどよりも歩調はしっかりしており、旗から見れば、体調不良とは思えないだろう。

そして、士道の混濁した意識は、“2つの事を実行しようとしていた”。

 

「・・・・俺の、やるべき事・・・・」

 

士道がすべき事、幾度となく繰り返してきた世界を救う為の行為。

『女の子に会ったなら、士道はそれをデレさせなければならない』。

『士道が最も嫌う絶望の化身『魔獣 ファントム』をこの世から抹消して、皆の希望になる』。

この2つの思考が、士道を動かしていた。

実際、亜衣麻衣美衣トリオとタマちゃん先生と出くわしーーーー“彼女達を口説いてデレさせようとした”。

亜衣麻衣美衣トリオは途中で逃げたが、タマちゃん先生は有頂天となって何処かに走り去っていった。しかも、口説いている時にーーーー“四糸乃の能力”と“美九の能力”を自由に扱う事ができたのだ。

そしてまた、メデューサやグレムリンの幻影が見えた時、士道に恐怖心をまるで感じなかった。

 

「出たな・・・・ファントム!」

 

士道が指先を突き立てると、ソコからレーザーのような攻撃が放たれ、幻影を撃ち抜き、街路樹と電柱を貫通した。“初めて教室で十香と出会った時にされた攻撃”と同じだ。

それを街路樹と電柱が倒れ、道行く人々が騒然となるのを確認すると、士道は自分の手を見つめ、そしてーーーー。

 

「・・・・・・・・はは、はははは、あっはははははははははははははははははっっ!!」

 

声高く笑ったのであった。

 

 

 

 

 

ーエレンsideー

 

「・・・・・・・・・・・・は・・・・はっくちょい!」

 

目を鋭くして、不機嫌そうな顔になりながら天宮市の街中を歩いていたエレンは、鼻がムズムズして甲高いくしゃみをした。

 

「うく・・・・」

 

口元を押さえながら、その珍妙な生理現象を誰にも聞かれていない事を確かめるように辺りを見回した。

幸い、エレンの方を向いている通行人はいないようだ。ホウと息を吐き、再び歩みを始める。

 

「まったく忌々しい・・・・!」

 

その悪態はこの日本の寒さに対してか、勝手な行動をして、五河士道から〈仮面ライダー〉の力を消し去った『魔獣』達への悪態なのかは、当のエレンにしか分からなかった。

『人類最強の魔術師<ウィザード>』である、いや、“であった”エレンにとって、五河士道、〈仮面ライダーウィザード〉は、その称号に敗北と言う泥を塗った相手だ。

最初の〈プリンセス〉が反転体となった時に屈辱的な敗北をし、〈ウィッチ〉の時は本社にいる愚か者共の横槍で中断された。エレンはまだ五河士道と決着を着けていない。

にも関わらず、ファントム達は五河士道から〈仮面ライダー〉の力を消し去った。行き場のない怒りを静める為に少し外に出ていたのだ。

エレンが煮え立つ腹をこの寒さで少しは冷めないかと思って少し視線を落として歩いていると、不意にドンと言う軽い衝撃が身体を襲った。どうやら、よそ見をしていた為、前方からやって来た通行人にぶつかったらしい。

 

「失礼。不注意でーーーー」

 

エレンは視線を前方に戻して声を発しようとした、が。

 

「・・・・ッ、五河士道・・・・!」

 

その人物の名を呟くと、視線を鋭くした。

今まさに自分の怒りの根源となった少年が現れたのだ。

しかし、妙にボウッとした様子で、服装もコート1枚羽織っただけの姿だ。

 

「ん・・・・お前は」

 

士道がエレンを認識すると、まるでスリープ状態からアクティブ状態に移行したかのようにエレンをジッと見つめてきてそして、

 

「エレンーーーーずっと会いたかった」

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

ソコから何を血迷ったのか、士道はエレンを口説き始めたのだ。

最初はエレンは〈仮面ライダー〉になれなくなって自暴自棄にでなったのかと思った次の瞬間、士道に向かって無数の蛇が襲い掛かった。

 

「おっと」

 

士道は指先からレーザーを静かに放つと、蛇達は弾き飛ばされる。既に冬眠に入っている蛇が現れるなどあり得ないと思ったが、それをできる存在はただ1人。

 

「メデューサ・・・・!」

 

「・・・・ふん、精霊のような霊力を感知して来てみれば、貴様か」

 

人間態ミサとなったメデューサだった。

 

「メデューサ、こんな所でお前にも会えるだなんて、本当に嬉しいよ。お前がファントムじゃなかったら、愛を囁いてあげたいな」

 

「・・・・・・・・頭でも打ちましたか?」

 

エレンが士道の様子を半眼で怪訝そうに見てそう言うと、メデューサは氷のように冷めた眼差しを更に冷たくして士道を見据える。

 

「ふん。〈仮面ライダー〉になれなくて自棄を起こしたか、自分の中に貯えた霊力に振り回されたか、まぁどうでも良い」

 

『キシャァァァァッ!!』

 

メデューサはエレンに近づくと、パチンっと指を鳴らすと、空からインプが襲来した。道行く人々がパニックになる。

がーーーー。

 

「【皆、気にしないでくれ】」

 

士道がそう言うと、人々は何事も無かったように再び歩きだした。

 

「これは・・・・!」

 

「・・・・退くぞ」

 

メデューサは呆然とするエレンを連れて、転移の魔法陣を展開して、その場から去っていった。

 

「ふふっ、2人共照れ屋さんだな」

 

そう呟く士道に、インプ達が迫る。が、士道はそれを見て冷酷に呟く。

 

「失せろよーーーー『絶望』」

 

そう冷淡に呟くと、手のひらから冷気が吹き出した。

 

 

 

 

ー十香sideー

 

「シドー!!」

 

十香と他の精霊達が士道を捜索してから既に1時間が経過した。最初は〈ラタトスク〉の地下施設を皆で探し回っていたのだが、すぐに士道が外部に逃げ出した形跡が発見され、十香達も地上に出て周辺の捜索に移っていた。

そして令音から、3丁目の大通りでインプが現れたと聞き、もしかしたら士道がソコにいるのではと思い向かうと、開けた通りに出た。

 

「3丁目の大通りって言ったらこの辺りの筈だけど・・・・」

 

「だーりんはどこにいるんでしょうかー」

 

「・・・・! み、皆さん、あれ・・・・!」

 

キョロキョロと辺りを見回す皆に、四糸乃が不意に声を上げ、通りの奥の方を指差した。

精霊達が一斉にそちらに視線を注ぐと、息を詰まらせた。何故なら、その一体だけ気の早い雪が降り、一面を白い世界に染めていた。

嫌、それだけではない。雪に交じって虚空からキラキラと氷の粒が舞い降り、氷に包まれたインプ達が広い街路の脇に左右に1列に並べられ、更にそのインプ達の前に、美しい氷の燭台が幾つも形作っていた。

そしてそれに次いで、通りの奥の方からその燭台に、ボッ、ボッ、と規則的に炎が灯っていき、幻想的な花道を描き出す。

 

「こ、これは・・・・」

 

その不思議な光景に驚愕する十香。そしてその道の真ん中を闊歩するように、1人の少年が悠然と歩いてきた。

 

「し、シドー・・・・?」

 

そう、士道だった。のだが、先ほどまでのふらついた足取りではなく、顔色も悪いように見えない。

困惑する十香。するとそれに合わせるように、周囲にいた通行人達がパチパチと拍手を始め、わぁっと歓声を上げた。ーーーーまるで、士道を出迎えるかのように。

 

「ぐ、小癪な。なんだその登場。ちょっと格好良いではないか」

 

「指摘。耶倶矢、そう言う問題ではない気がします」

 

悔しげに歯噛みする耶倶矢と夕弦が突っ込む。が、そんな暢気な会話の中、琴里が戦慄するように手を震わせていた。

 

「これは・・・・まさか、四糸乃の力に、私の力ーーーーそれに、周りの人達を美九の力で従わせているって言うの?」

 

今士道に起こっている事は十香には分からないが、琴里の反応から、ただならぬ事態である事は分かる。十香は士道の前に躍り出ると、喉を震わせて大声を張り上げた。

 

「シドー!」

 

「ーーーーん?」

 

すると、士道は、十香達の存在に気づいたかのように顔を向け、ゆっくりと歩み寄ってきた。

 

「ああ、十香か。それに皆も。どうしたんだ、そんなに慌てて」

 

いつものように優しげな調子だが、何故かそれに違和感を感じる十香。

琴里が十香に続いて、焦燥に満ちた声を発する。

 

「どうしたもこうしたもないわよ! そんな状態で病室から抜け出すなんて、何を考えているの!?」

 

「ああ・・・・悪かったよ。心配かけちまったな。でも、もう大丈夫だ。身体の方は全然問題なし。それ処か、前よりも、そうーーーー〈仮面ライダー〉なんかでいた時よりも力がみなぎってるくらいだ」

 

言って、士道は指をパチンっと鳴らしたその時、氷付けにされていたインプが粉々に砕け、小さな氷の結晶が飛び散り、キラキラと幻想的な世界を作っていた。

 

「士道、あなた・・・・」

 

「はは、凄いだろ。こんな事もできるようになったんだ。これでもう俺はーーーー“あんな忌々しい魔獣ごときなんて必要ない位の力を得たんだ”。」

 

『っ!』

 

士道の言った言葉に、十香達は目を見開いた。今士道は、ウィザードラゴンの事を、忌々しい魔獣』と言ったのだ。

 

「シドー・・・・何を言っているのだ?」

 

十香が聞き返すように問うが、士道は優しげな調子と口調で応える。

 

「十香。俺はずっとさ、ドラゴンの事が目障りで、煙たくって仕方なかったんだよ」

 

「え・・・・?」

 

十香が全員の気持ちを代弁するかのように声を発する。士道はそれに構わず、徐々に感情を昂らせながらドラゴンに今まで抱いていた不平不満を吐き出すように声を張り上げる。

 

「アイツはいつもいつも! 俺のやる事なす事を『綺麗事』だ、『独り善がり』だ、『自己満足』だと言って否定して! いつも俺より周りの事を見てるように語って! いつも俺よりずっと前を進んでいて! いつも俺を下に見て! いつも俺を見下して! いつも俺を嘲笑っていやがった!! 俺が大っっっ嫌いな『絶望の化身』が! 俺をいつも馬鹿にしやがって! 本当に忌々しかった!! だが! そんな惨めな思いとも、これでおさらば!」

 

士道は叫ぶと手の平を天に掲げると、炎と氷が竜巻となって舞い上がり、周囲の人間達の何人かが士道の姿に変身し、更に士道は声を発した。

 

「【俺に従え!!】」

 

士道がそう言うと、変身しなかった街の人々が片膝をついて頭を垂れた。

 

「ははははははははははははっ! あっはははははははははははははははははははっっ!!」

 

「し、シドー・・・・」

 

「こ、これって私に四糸乃に美九だけでなく、耶倶矢や夕弦、七罪の力までっ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

「もうドラゴンなんて必要ない! 俺が、俺だけの力で! 皆の『希望』になるんだ!! ははははははははははははは!!」

 

高笑いをする士道に、十香達が愕然となるが、琴里と折紙は努めて冷静に状況を見る。

 

「ああもう全く! 『ドラゴン<飼い主>』がいなくなって私達の力を自由に使えるのを良い事に、調子に乗りまくって!!」

 

琴里は叫ぶと、バッと手を広げた。

 

「耶倶矢! 夕弦! 士道を押さえて! こうなったら強硬手段よ!」

 

「くく、我を使うとはいい度胸だな、琴里よ。だがこの局面だ疾き八舞を選ぶ慧眼は褒めておこう!」

 

「拘束。少しお調子に乗り過ぎです士道。お覚悟を」

 

琴里の指示と同時、八舞姉妹が地面を蹴り、それぞれが士道の両手を押さえようとする。

が、

 

「おっと」

 

周囲にいた士道の姿になった人々が八舞姉妹を遮る。

 

「にょわっ!?」

 

「邪魔。これでは通れません」

 

「はははは! 2人共、俺を捕まえてごらん」

 

八舞姉妹が士道達をかき分けながら本物の士道を探していた。そして七罪がおずおずと琴里に話しかける。

 

「捕まえるのは良いけどさ。その後はどうするの?」

 

「ーーーー今、士道と私達の間の経路<パス>が狭窄していて、とても危険な状態なの。このままでは取り返しの付かない事になるわ。だから処置をするの」

 

「処置、ですか・・・・?」

 

『具体的には?』

 

「私達全員と、情熱的なチューをするんですよー」

 

四糸乃とよしのんの問いに、美九が腰をくねらせて言う。

すると、士道達の中にいるであろう本物の士道がフフッと笑みを浮かべたような声を発してきた。

 

「そうか。でもそれって、琴里が俺とキスする為に言った嘘って事はないか?」

 

『あー』

 

と、耶倶矢、夕弦、美九、七罪、折紙の5人が、何やら納得を示すように頷く。

 

「って、『あー』って何よあなた達!?」

 

琴里が叫ぶと、士道が愉快そうに笑っている声を発してきた。

 

「冗談だよ。俺の可愛い妹が、私利私欲の為にそんな嘘を吐く筈がないじゃないか」

 

「・・・・っ、あなたねぇ・・・・!//////」

 

顔を赤くしながら眉根を寄せる琴里は、ドラゴンが日頃から士道に尻尾ド突きをする気持ちが果てしなく分かった。ストッパー役がいないと、この調子に乗ったバカ兄は際限なく図に乗るからだ。

そんな琴里の心情を意に返さず、士道は声を発する。

 

「でも、折角手に入れた力を簡単に手離したくないなぁ。何より、皆とのキスを流れ作業的にやってしまったんじゃ勿体無いな。どうせなら、素敵な思い出したいじゃないか」

 

士道らしくない言葉に、十香は頬に汗を垂らす。それに構わず続ける。

 

「こういうのはどうだ? 今日の12時丁度、俺が皆にキスをするって言うのは?」

 

「12時・・・・?」

 

「ーーーー魔法が解けるのは12時って相場が決まってるだろう?」

 

「・・・・・・・・」

 

歯の浮くような恥ずかしい台詞を何の躊躇いもなく言ってくる士道に、琴里が汗を垂らす。しかし士道は気にする素振りを見せず、人差し指をピン、と立てて言葉を続ける。

 

 

「ただし、1つ条件があるーーーー俺は今まで、霊力を封印する為に、皆をデレさせてきた。ーーーーなら、皆も、俺の事をデレさせてくれよ」

 

 

士道の言葉に、精霊達は目を丸くした。

 

「な・・・・」

 

「む・・・・?」

 

「デレさせる・・・・ですか?」

 

「ああ。まあ、正確に言うなら、もう既に俺は皆の事が好きな訳だから、『デレさせる』って表現は適当じゃないのかも知れないけどーーーー」

 

士道は苦笑したような声を発し、後を続ける。

 

「どんなやり方でも構わない。俺をドキッとさせてくれよ。俺が、皆にキスをしたくて堪らなくなる位さ」

 

そう言って、人波から姿を現した士道は、右手の人差し指と親指を立てた銃の形にして、『バン!』と十香達の心を撃ち抜くような仕草をした。

精霊達はしばし呆然としたがーーーー琴里は、今なら本っっっ当に士道をしばきまくるドラゴンの気持ちを理解しつつ、怒気を込めた声を発する。

 

「ふっざけんじゃないわよっ! 姿を現したのは運の尽きよ! 耶倶矢! 夕弦!」

 

琴里が叫ぶと、士道の波から抜け出た八舞姉妹が士道を捕まえる。

 

「おいおい、これって〈ラタトスク〉のやりがいに半さないか?」

 

「うっさい! 『飼い主』がいなくなって調子に乗った馬鹿兄にはこれで十分よ! それにーーーー」

 

琴里が士道に向かってノシノシと歩みながら、自棄気味に叫ぶ。

 

「士道、私の事好きでしょ!? だったら問題無し!」

 

「ははは・・・・なるほど。そりゃそうだ。愛してるぞ琴里」

 

「・・・・っ//////」

 

一瞬キョトンとなりながも、頬を緩めて言った士道のカウンターに、琴里は顔を真っ赤に染めた。

 

「自分から言い出しといて照れてるし・・・・」

 

「赤面。何だかこっちが恥ずかしいです」

 

「う、うるさいわね! 兎に角、先に済まさせて貰うわよ!」

 

苦笑する八舞姉妹にそう言って、士道の両頬に手を当てる。そして緊張した面持ちで、ゆっくりと唇を近づける琴里。

だが、

 

「ふうん・・・・」

 

士道は悪戯っぽく微笑むと、身体が淡く光る。

 

「なーーーー」

 

「ーーーーこれでも、続ける?」

 

光が収まった聞こえた声は、士道の物ではなく、女性の声だったーーーーそう、士織の声だったのだ。

そう、士道が女装した姿、士織がソコにいた。しかもそれは、変装ではなく、まるで本物のような。

 

「も、もしかして私の能力で・・・・?」

 

「正解。流石は七罪だな?」

 

「・・・・ッ! ま、まさか」

 

七罪と士道のやり取りから、琴里は顔を戦慄に染め、肩を震わせると、右手で士織の胸をムンズと鷲掴みにした。

 

「やんっ」

 

「ひ・・・・ッ!?」

 

士織が妙に色っぽい声をあげると、琴里は息を詰まらせて1歩後ずさる。

 

「こ、この感触は・・・・」

 

「うん。自前」

 

「ギャーッ!?」

 

全身を奮わせながら琴里が絶叫する。可笑しくて仕方ないと言った風に士織が笑う。

 

「ふふ、琴里がいけないんだぞ。無理矢理キスして俺の力を奪おうなんてするから」

 

「だ、だからって、あなたねぇ・・・・!」

 

「さ、どうする? このままキスする?」

 

「うっ・・・・」

 

不敵に微笑む士織に、“ソッチの趣味”は無い琴里が言い淀むが、すぐに拳を握って声を上げようとしたその瞬間。

 

「きゃーっ!」

 

琴里の背後から、甲高い嬌声が上がった。ーーーー振り向かなくても分かる。美九だ。

 

「えっ、えっ、もしかして本当に女の子モードなんですかぁ!? そんな事ってあっていいんですかぁ!? 良いです! 私このままで良いです! 今キスしますっ!」

 

「あはは・・・・そう言えば美九がいたな。こりゃ悪手だったかな?」

 

「いーえっ! 寧ろグッジョブです! トロぴかってるです! ではキバって、デリシャスマイル~に・・・・いただきまぁぁぁすっ!」

 

苦笑する士織に、美九はブンブンと首を横に振った後に叫び、某世界的大泥棒の三世みたいなダイブ(服は着用)で士織に飛び掛かる。

しかし、士織はフッと唇を歪めると、パチンと指を鳴らした瞬間、鏡のような物が現れ、辺りに目映い光を放つ。

 

「えーーーーっ!?」

 

「く・・・・!」

 

突然の発光に、十香は眼を覆った。すぐ近くに大きな物が落ちる音と共に、「士織さんはどこですかー!?」と叫ぶ声が聞こえたが、とりあえず無視する。

 

「な、何だ? 何が起こったのだ・・・・?」

 

数秒後、十香は目を数度しばたたかせてから辺りを見回した。そしてーーーーそこに広がっていた異様な光景に目を見開く。

 

「なっ!?」

 

何とーーーーソコにいる精霊全員が、士織の姿になっていたのだ。

 

「し、士織がいっぱい!?」

 

「驚愕。何ですか、これは」

 

「えっ、わ、私も・・・・!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! パァァァラダァァァイスッ!」

 

全員が狼狽する中、1人だけ、テンションフォルテッシモになっていた。

しかも、士道の姿にされていた人々まで、士織の姿となり、『声』で従わされ、集まってきたようだ。

 

「く・・・・の、退けっ!」

 

七罪の力とは言え、良く見比べれば本物を判別できる十香と折紙が前に出ようとするが、こんかおしくらまんじゅう状態では判別できない。このままでは士織を見失ってしまう。

 

「み、皆、大丈夫!?」

 

「は、はい・・・・何とか・・・・」

 

「返答。しかし、本物は一体何処にーーーー」

 

と、士織の姿になっただろう夕弦が言った瞬間。

辺りに風が巻き起こり、無数の士織の中から、1つの影が飛び出した。

 

「あれは・・・・!」

 

「シドー!」

 

その姿を見て、十香は叫んだ。

八舞姉妹の力で風を操って宙を舞うのは、本来の男の姿に戻った士道である。

 

「はは、悪いな、皆。俺はこの力を失いたくないんだ。でも、俺をドキッとさせてくれたなら、キスするってのは嘘じゃないぜ」

 

そして士道はニッと唇の端をあげた。

 

 

 

「さあ、俺を、デレさせてみなーーーーショータイムだ!」

 

 

 

そしてそう言い残しーーーー士道は、空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

と、そんな士道と十香達のやり取りを、街路にポツンと置かれたベンチに座る青年が見ていた。周囲の人々は皆士道に従わされているのに、その青年はまるで意に返していない態度だった。

真っ白なコートを身に纏い、無造作に髪を伸ばし、病的なまでに青白い顔色に深い隈を目に着けた不気味な風貌の青年が、空へと去っていく士道を一瞥して呟く。

 

「・・・・エキサイティング、じゃないな」

 

目を細めて、もう興味ないと言わんばかりに士道から視線を外すと、十香達精霊にその視線を向ける。

 

「こちらの方がーーーーエキサイティングだなぁ」




ドラゴンと言う飼い主がいなくなり、俺TUEEEになったと思い込んだ士道。どうなる次回!?
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