デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ーエレンsideー
エレンはメデューサに連れられて、社内の通路を歩いていた。
あの小憎たらしい、不倶戴天の宿敵の異常をウェスコットと怪しいワイズマン。ついでにうざったいグレムリンに報告する為だ。
「ーーーーアイク、私です」
「ああ、入ってくれ」
「失礼します」
短く言って扉を開け、メデューサと共に部屋に入ると、いつもの如く悠然と椅子に座るウェスコットとワイズマン。そしてその後ろで軽薄に笑うグレムリンがいた。
「済まないねエレン。ワイズマンが奇妙な霊波を感じたからメデューサくんに向かって貰ったんだ」
「いえ。ーーーー五河士道のあの様子に、何か心当たりが?」
「それはワイズマンに聞いた方が良いだろう」
ウェスコットがワイズマンに視線を向けると、ワイズマンはソッと手をあげ、指をパチンっ、と鳴らすと、士道の幻影が現れ、それが透き通り、輪郭だけの姿に見えると、夜色、青、赤、黄色、オレンジ、紫、緑、白のエネルギーが身体の中に充満している様子が映し出された。
「これは・・・・?」
「今現在、イツカシドウの身体に起こっている状態だよ。どうやら彼は空気を入れ過ぎた風船のように、今まで内包した精霊達8人分の霊力が充満し過ぎて、パンクしそうになっているようだ」
「何故今になって?」
エレンが問うと、ワイズマンが口を開いた。
『魔法使いの内部で、これまで霊力の調整をしていた者がいなくなったのが原因だろう』
その言葉に、エレンは1体、思い当たる存在がいた。ウィザードラゴンだ。
「あのファントム。士道くんって船か潜水艦が正常に動くように調整する機関士のような役目だったんだね」
「そしてその機関士がいなくなり、霊力が暴走した状態になった、と言う訳か。・・・・不様だな」
メデューサが吐き捨てるように言った。
「まあ確かにそうだが、それでも面白いサンプルだ。エレン。是非とも彼を捕獲して来てくれ」
『メデューサ。グレムリン。お前達もだ。ガルーダ達も向かわせる』
「ーーーーお任せください」
「ーーーー必ずや捕らえて見せます」
「・・・・・・・・了解(・・・・これで終わっちゃうのかな、士道くん?)」
エレンとメデューサが応じる中、グレムリンは内心、士道に少々失望したような声を上げていた。
「うん、頼むよ。それと別の案件がある、『資材A』を乗せた輸送機が発進直前に、〈ナイトメア〉に襲われたらしい」
「〈ナイトメア〉に・・・・?」
〈ラタトスク〉の庇護を受けず暗躍する、ファントムにとっても、DEMにとっても因縁浅からぬ相手である〈ナイトメア〉時崎狂三の名に、エレンは眉根を寄せた。
「一体なぜ・・・・〈ナイトメア〉は『資材A』の正体を知っていると言うのですか?」
「さぁてね、ワイズマン。君は“織っているね”。『資材A』の正体を」
『ああ。しかし、『アレ』は『ゲート』ではないからな。我々にとってはどうでもいい存在だ』
「ねぇねぇ、『資材A』って何? あの狂三ちゃんが絡んでくるんだから、相当のヤツでしょ?」
「ああそうだよMr.ソラ。何せーーーー“世界で2番目に出現した精霊”、だからね」
ー十香sideー
士道に逃げられた十香達は、〈ラタトスク〉の地下施設の一角にあるブリーフィングルームに集まり、楕円形のテーブルを囲うようにしながら、全員が難しい表情を浮かべていた。
「むう・・・・一体どうすれば良いのだ?」
テーブルに肘を突きながら十香が言うと、それに同意するように八舞姉妹が頷く。
「そもそも、あれは本当に士道か? 少し、いや、かなり言動も態度も違うようだったが」
「首肯。随分とジゴロになっていましたし、あそこまでドラゴンの事を悪し様に言うなんて」
そう。士道の様子は明らかに違っていた。妙に自信に溢れていたし、端から見れば飼い主とペットのような力関係にも見えるドラゴンの事を『相棒』と思っていた士道が(ドラゴンは下僕程度に思っていたが)、まるでドラゴンへの怨み辛みを吐き出すような言葉を吐いた。
さらにいつもの士道なら、おかしな条件等付けずに十香達の要請に応えてくれる筈だ。そして何よりも、いくら七罪の能力を得ても、完全な女の子に変身するとは思えなかった。
「・・・・多分だけど、ドラゴンが消えて、私達の力が使えるようになったから、今までドラゴンに抱いていたコンプレックスが、爆発したんじゃない?」
恐る恐ると手を小さく上げて、七罪がそう言った。十香が小さく首を傾げる
「コンプレックス、とは何だ?」
「応答。自分が人に劣っている事を気にする事です。劣等感とも言えます。具体的に言えば、耶倶矢がいつも夕弦の胸を見て悔しそうな顔で嫉妬するのと同じです」
「なっ! ざ、戯れ言を抜かすでない!」
「苦笑。毎晩夕弦に隠れてバストアップ体操をしているのを夕弦が知らないとでも?」
「何を余計な事を言っとんじゃい!? えっ、て言うか知ってたのっ!?」
十香の問いに答えた夕弦に耶倶矢が素の口調になって口を塞ごうと掌を繰り出すが、夕弦は余裕で捌いていた。
「・・・・じ、じゃぁ、士道さん、ドラゴンさんに、嫉妬していたんですか?」
『ありゃりゃ、全てを燃やし尽くすジェラシー?』
四糸乃とよしのんがそう聞くと、七罪は小さくだが声を発した。
「た、多分だけど、ね。・・・・私もさ、大人モードになると、自信たっぷりになるし、封印される前は自分の力に調子に乗って、天狗になっていたし、ね・・・・調子に乗ってすみませんでした。死んできます」
『死ぬな! 死ぬな!』
七罪が再び自虐モードになるのを全員で止める。
「あぁでも、七罪さんの言う事も分かりますねぇ。私もだーりんに出会う前は、自分が神様になったような気分で、か~な~り! 調子に乗っていましたしぃ」
美九の言葉に、琴里も納得した。確かに今の士道の様子は、大人モードの七罪や自分の力で好き放題していた頃の美九と似ているように見えた。
「・・・・つまり、今のシンは高熱と霊力の影響、そして恐怖心を埋める事ができる力を手に入れた高揚感で、自制心が少し外れ、ハイになっている状態にあるようだ」
『最高にハイって奴だ! って、神無月くんに似た声の悪のカリスマみたいな感じ?』
よしのんの言葉に、令音は首肯した。
「えっ、もしかしてだーりん、女の子になりたい願望とかあるんですかー?」
美九が目をキラメーイさせながら身を捩る。令音は頬をポリポリと掻いた。
「・・・・さてね。あれは琴里達から逃れる為の手段だったようにも思えるが」
「どちらにせよ、厄介な状態である事には変わりないわわ。く・・・・あの馬鹿兄め、飼い主<ドラゴン>がいなくなってリードが外れた馬鹿犬みたいに調子に乗りまくって・・・・! 自分がどれだけ危険な状態にあるか分かってないの・・・・!? あぁもう本っっっっ当に、日頃から士道をシバいているドラゴンの気持ちが、心の底から理解できるわ・・・・!!」
苛立たしげにチュッパチャプスを噛み砕いた琴里は、すぐに腰元のキャンディホルダーから2本目を取り出して口に放る。
「泣き言も消えてしまった人の事も言っても始まらない」
と、折紙がそう言うと、冷静な調子のまま言葉を続ける。
「士道は、自分をドキッとさせさえすれば、今日の夜12時にキスを受け入れると言っている。ならば、それを行うしかない。ーーーー時間の猶予は?」
「・・・・そうだな。数値を見るに、今日の12時にキスをする事ができるなら十分間に合うだろう。ただ問題はファントム達が襲いに来ないか、そしてーーーーそれまで全員がシンをデレさせられるか、だが」
令音の言葉に、全員が壁の時計を見やった。現在は午後6時。つまり後6時間しか猶予がない。
精霊達は8人、平均1人45分で士道を攻略しなければならない。しかし準備や士道と接触するまでの時間も計算すると、さらに少なくなる。
「・・・・っ(ゴクリ)」
十香が喉を鳴らす。事態を軽く見てはいないが、こうして残り時間を示されると、自分たち意思とは関係なく、心拍が激しくなっていく。
「兎に角、士道さんをドキッとさせないといけないん・・・・ですよね」
十香の隣に座っていた四糸乃が、少し緊張した面持ちで頷く。それに応じるように、七罪がムウと腕組みした。
「・・・・でも、一体どうやって?」
「それは・・・・」
『やぁん、四糸乃に何言わさせようとしているかなー? 七罪ちゃんのエッチー』
「なっ、わ、私は別にそんなつもりじゃ・・・・」
器用に手で顔を覆うよしのんに、七罪が慌てて返す。そんなやり取りを見て、四糸乃が苦笑する。
「・・・・それについては提案がある」
言って、令音が人差し指でを立て、トントン、と自分の右耳を指す。ーーーー皆が着けたインカムを示すように。
令音の意図を察した八舞姉妹が、同時にポンッと手を打った。
「成る程! 或美島で我らが用いた手だな!」
「納得。最適な手です」
「む? どういう事だ?」
「・・・・つまり、インカムを通じてこちらからサポートを入れようと言う事さ。〈フラクシナス〉は改修中だがAIは無事だし、ここから指示を出す事は可能だろう。デレさせる、とは言っても、シンは君達に対する好感度は元から非常に高い。要は、制限時間内にシンを1度でもドキッとさせれば資格は得られる筈だ」
首を傾げる十香に、令音が補足する。
「ふむ・・・・令音達が手伝ってくれると言う事か」
「・・・・ああ。同時にシンの心拍数や精神状態もモニタリングしておく。基準として、彼の興奮値が90を越えた場合は『ドキッとした』状態と定義しよう。その場合、インカムを通じてクリアの音を鳴らす」
「へー、そんな事できるんですか? それは心強いですねー」
美九が声を弾ませると、令音は小さく首肯して続ける。
「しかし・・・・皆に1つ、注意しておいて欲しい事がある。ファントムが攻めてきた時以外では、限定解除はなるべくしないでくれ。唯でさえ皆もシンと同様、〈仮面ライダー〉の力を失っているのだからね」
令音の言葉に、七罪が首を捻る。
「・・・・? 経路<パス>が狭まってるって事は、私達は士道から霊力を逆流させられないって事なんじゃないの?」
「・・・・基本的には、ね。だがそもそも君達の身体にも、ごく微量ではあるが、霊力が残っている。恐らくその気になれば、僅かな時間ではあるがそれを顕現する事は不可能ではない筈だ」
「えっ? じゃあーーーー」
言いかける美九に、令音が首を振る。
「・・・・だが、霊力の配給がない状態で無理に力を使えば、君達の身体にどんな影響が出るか分からないからね。できる限り霊力は使用しないでくれ」
『ーーーー!』
精霊達の顔に緊張の色が浮かぶ。しかし、十香はブンブンと首を振った。
「いや、しかしそれでシドーを守れるならば」
「・・・・万一君が倒れたら、士道を助ける事も不可能になってしまうよ?」
「む、むう・・・・分かった。ファントムが攻めてきた以外は、霊力はできるだけ使わないようにするぞ」
言われて、十香は口ごもった。確かにそれでは本末転倒だと理解を示した。
「そうですねー。まあ、皆さんのかわゆさがあれば霊力なんて使わなくてもだーりんはイチコロですよー」
「(確かに。いくらカッコつけていても、根は小心者<ヘタレ>で童貞坊やの士道だから、あまり構え過ぎ無くても良くないかも知れないわね・・・・)」
美九が能天気に笑い、琴里が苦笑した。
「・・・・後の問題はやはり、時間だ。できる限り1箇所で攻略したいところだが」
令音が言うと、折紙が顎に手を当てながら感慨を巡らせるように俯きーーーー数秒の後、顔を上げた。
「1つ、考えがある」
「・・・・聞こうか」
令音が、静かにそう返した。
ー士道サイドー
「・・・・ん?」
士道が魔獣ファントムを探し歩いていた。
今の自分ならメデューサもグレムリンも、あわよくばワイズマンも倒せると確信をしているからだ。
しかし不意に、上着のポケットに入っていたスマホが震え始める。画面を見ると、琴里からのメールだった。
「ふうん・・・・?」
メールに記された地図と住所を見て、士道は面白がるように唇の端を上げ、その意図が分かった。
士道のリクエストに応える準備ができたのだろう。
「さて、一体何をしかけてくるつもりかね・・・・っと」
士道はそう言うと、スマホをポケットにしまい、トン、と地面を蹴った。
たったそれだけで、士道の身体が重力の軛から解放されたように宙に浮く。周囲を歩いていた人々が、そんな士道を見て、驚愕に目を見開いていた。
精霊の力を一般人に晒すのは望ましくないが、今の士道にとってそんな事どうでも良かった。この力を自在に振るう度、熱に浮かされた頭が高揚に満たされる。恐怖に捕らわれた心が解放感に満たされる。麻薬と言うのはこういう感覚なのかもと、士道は思った。
「ん?」
ふと、士道は腰に何かがぶら下がっているような感覚がして、それに手を当てると、ウィザードリングを付けたチェーンリングであった。
「あぁ、こんなの着けたままだったな」
士道はチェーンリングを取り外すと、今度はウィザードライバーのバックルを取り外し少し見つめる。
1年以上前の『儀式<サバト>の日』から始まり、今日までの〈仮面ライダーウィザード〉としての戦い。
自分には常にあの忌々しい『魔竜』がいた。これらは言わば、あの魔竜との『腐れ縁』とも言える『絆の証』でもあった。
「・・・・でも、もういらないな」
だが、士道は鼻で笑うと、ゴミをポイ捨てするように、バックルとチェーンリングを放り捨て、ドライバーとチェーンリングはーーーー眼下の天宮の街中へと落ちていった。
「ーーーーふふふふふ、あっははははははははははははははははは!! もう俺は何でもできる! 何にでもなれる! 皆を守れる本当の『希望』になれるんだ! 『絶望の化身』なんて必要ない! 俺が! 俺こそが! 皆の『最後の希望』だっ!!」
宙を舞いながら、まるで新しい玩具を手に入れてはしゃいでいる幼稚な子供のように、士道は精霊の力を楽しみながら、目的の場所へと向かった。
「ここか・・・・」
到着した士道の視線の先には、街から離れた物寂しい森の中にドーム球場を四角にした建物が建っていた。見るからに怪しいが、士道はそれを恐れるような機微は残ったおらず、期待と高揚を覚えながら、建物の方に歩いていきーーーーその扉を開けた。
すると、その瞬間。
「シドー!」
「士道・・・・さん!」
「だーりーん!」
「・・・・!」
士道は思わず目を丸くした。
視界にカッと目映い光が溢れたかと思うと、まるで南国のビーチのような光景が広がりーーーー色とりどりの水着に身を包んだ精霊達が、士道を出迎えたのである。
ー令音sideー
同時刻。地下施設に作られた臨時司令室で、〈フラクシナス〉のクルー達が勢揃いしていた。
「ーーーー目標、ドーム内に入りました!」
言って、箕輪が手元のコンソールを操作すると、壁面に設えられた巨大モニタに、士道の姿がアップで映し出され、その両サイドに精神状態や好感度等を示す数値が表示された。〈フラクシナス〉程の設備は無いが、これでも十分精霊達をサポートできる筈である。
モニタの映像を眺めながら神無月が、高らかに声をあげる。
「宜しい。では、攻略を開始します。イレギュラーではありますが、これは非常に重要度の高いミッションです。総員、気を引き締めて下さい」
『はっ!』
と、クルー達が答えるが、大半は内心、
『(アンタが1番不安なんだよ・・・・!)』
と、副司令である神無月<変態>を半眼で見ていた。
すると、そんなクルー達の心情に合わさるように、モニタの端に白いセパレート水着を着た琴里が、鋭い視線で自律カメラを睨み、スピーカーから意図的にトーンを落とした声が響かせる。
《・・・・神無月。分かっているとは思うけど、ふざけた選択はしないでよ? 私の攻略の時に随分色々やらかそうとしていたのを聞いてるわよ?》
そんな刺々しい雰囲気にまるで気づかない神無月<汚物>は、飼い主を前にした犬のように軽やかに敬礼した。
「もっちろんです! お任せくださいっ! 不肖神無月恭平、必ずや士道くんを落として見せます!」
《その言い方もなんか引っかかるわね・・・・まあいいわ。兎に角、士道はここで止めるわよ》
『はっ!』
内心、ドラゴンが精霊攻略に自分達をあてにしない気持ちが少し分かった気分になった琴里の言葉に、クルー達は再び答える。
と、その後、中津川が唸るような声を上げた。
「しかし、流石ですな司令。この『ドキッ! 精霊だらけの水着大会』作戦ならば、士道くんに間を置かずアプローチができる上、皆の水着姿でドキドキポイントもバッチリです」
そう、屋内プールの中にいる精霊達は皆、可愛らしい、或いはセクシーな水着を着ていた。年頃の少年ならば、それを見ただけで昇天してしまいそうな夢の光景だ。
「そうですね。冬に水着と言うミスマッチさも相まってインパクトも十分。これなら士道くんもイチコロですよ」
川越が同意するように首肯する。しかしモニタの琴里は、頬に汗を垂らすようにして肩を竦めた。
《いえ、この作戦の発案者は私じゃなくてーーーー》
《ーーーー不服を申し立てる》
と、琴里の言葉を遮るようにして、静かな声と共に、モニタにウィンドウが開き、黒の水着を纏った折紙の姿が映し出される。
《私が提案したのはこの程度の作戦ではない。今からでも遅くない。方針の転換を》
《あなたねえ・・・・ヌーディストビーチなんて無理に決まってるでしょ!?》
『ブッ!』
琴里の発言に、令音と神無月<排泄物>以外のクルー達が思わず咳き込んだ。
「・・・・さ、最初はそんな案だったんですか・・・・」
「何と言うか・・・・流石鳶一折紙・・・・」
椎崎と幹本が額に汗を滲ませながら言う。『改変前の世界』の記憶が無くても、ここ1ヶ月で、クルー達は鳶一折紙がどういう人間か理解したようだ。
だが折紙は、ケロッとした様子で言葉を続ける。
《何故?》
《な、何故って・・・・》
《その方が確実に士道の意表を突ける。今は士道とキスをし、経路<パス>を広げる事が最優先の筈》
《それは・・・・そうかも知れないけど・・・・》
折紙には女としての羞恥心が欠落しているようである。琴里がゴニョゴニョと口ごもると、令音が助け府を出した。
「・・・・落ち着きたまえ、折紙。あくまでジャッジを下すのはシンだ。度を越えた露出は、シンを驚かせてしまうかも知れない」
《成る程。つまり徐々に脱いでいった方がいいと》
「・・・・いや、そう言う訳でもないのだか」
令音はポリポリと頬を掻くと、気を取り直すようにコホンと咳払いをし、モニタに目を向けた。
モニタの中の士道は既に、七罪の能力で水着に一瞬で着替え、皆の元へと歩み寄った。最初こそ驚いたが、もう今は興奮しているような数値も見られない。いつもの士道であれば、皆の水着姿であっという間に顔を真っ赤にして慌てふためき、速効でドキッ! となってしまうのに。
やはりキスする為には、能動的な攻略が必要のようだ。
「・・・・兎に角、攻略に移ろう。先ずは誰から行くかね?」
と、令音が言った瞬間、スピーカーから新たな声が2つ聞こえてきた。
《くく、兵とは戦場に魁ける者。ここは、我らが行かせて貰おうか》
《自負。夕弦と耶倶矢にお任せです》
新たなウィンドウに、柄は左右逆だが同じデザインの水着を着た八舞姉妹が映し出された。
「フム。八舞姉妹か。皆、異存はないかい?」
《ええ、勿論。お手並み拝見と行こうかしら》
《構わない。露払いは任せた》
《・・・・別に、好きにしたら》
と、仲間達も了承し、八舞姉妹はモデルのようなウォーキングで士道に近づく。
《かか、士道よ、よくぞ恐れずに参ったな!》
《首肯。どうやら、余程夕弦達の魅力に骨抜きにされたいようです》
すると、その声に答えるように士道が2人の方を向いた。
《おう、耶倶矢に夕弦か。はは、2人の水着姿を見るのは天央祭以来か? やっぱりスタイルが良いと水着が映えるんだな。よく似合ってるよ、2人共。凄くーーーー綺麗だ》
屈託の無い笑顔でそんなストレートで予想外な褒め言葉を言われ、自信満々の八舞姉妹が、ボンッと顔を赤くした。
『君らがデレてどうするっ!?』
八舞姉妹の好感度が上昇して、クルーの大半がツッコミを入れると、3つの選択肢が表示された。
①【左右から士道を挟んで、必殺当ててんのよ攻撃】
②【ソフトクリーム越しにバニラフレーバーキス】
③【士道をバナナボートにして2人で騎乗、プール遊覧の旅】
クルー達が、①か②のどちらかにするか議論すると、ただ1人、③に投票した神無月<廃棄物>が騒ぎ出す。
「ええっ!? 良いじゃないですか③! 素敵ですよ! ドキッとしますよ! 首に縄とかかけてくれるとなお良い! きっと士道くんも分かってくれる筈です。聞こえますかお二方。③でーーーー『いい加減にしろこの〈フラクシナス〉の汚点ッッ!!!』(ドゴォォォォンッ!)げぶらぐぽぉぉぉっ!!」
勝手に八舞姉妹に指示を出そうとする副司令に、令音を除いたクルー達が同時に飛び蹴りを叩き込み床に倒す。
「マジで本気でアンタって変態は大概にしてくださいよっ!」
「アンタの趣味嗜好を士道くんや精霊の皆に押し付けないで下さいっ!」
「自分の性癖は人類全体の共通だと思ってんですかっ!?」
「この攻略がどれだけ重要なのか分かってんですかっ!?」
「ホントに日本の警察は何でこんなのを野放しにしてるんですかっ!?」
倒れた神無月<汚物>に、すかさずクルー達によるスタンピングの嵐が降り注ぐ。
「ちょっげふっ! 何をぎゃん! するのぐぁっ! ですかぶべっ! 皆さんぼへっ! クーデターごべばっ!?」
「司令から言われてるんですよ!」
「副司令が暴走してバカやらかしそうになったら!」
「暴力的に止めろと言われましてね!」
「ついでに私達が日頃から溜めている副司令への鬱憤も!」
「一緒に晴らさせていただきますっ!」
「なるほどあうっ! 流石司令うぅん! 私のツボをはふん! 心得ていらっしゃるぅうん! ではもっと強く踏んで下さいぃぃん! 左足! 踏みが足りないよ何やってんの『ホントに大概にせい! この〈フラクシナス〉の生きる排泄物ッ!!!』(グシャァァァァッ!!)んほぉぉぉぉぉっっ!」
クルー達が渾身の力を込めて踏みつけられた神無月<排泄物>が、頬を紅潮させながらハァハァと息を荒くする。クルー達が椅子に縛り上げようと縄を持ち出して縛っていると、幹本が令音に顔を向ける。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・では後は村雨解析官、お願いします!」
「・・・・ああ」
令音は首肯すると、インカムに繋げるマイクに口を近づけた。
『(本当に・・・・何で村雨解析官じゃなくて! こんなのが副司令なんだっ!!!)』
クルー達が心の底から、〈ラタトスク〉の人事に疑問を抱いた。
ー琴里sideー
司令室でのやり取りが聞こえている琴里はこう思ったーーーー。
「(本当に・・・・ドラゴンが私達をあてにしない気持ちが良っっっく分かった!)」
神無月<排泄物>には、これが終わったら暫くの間はマッチョな男達と過ごさせてやろうと琴里は決断した。
仮面ライダーウィザードである証を捨てた士道。さぁこれからどうなる事やら?