デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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最後を飾るのはこの2人(3人?)!


攻略・士道5

ー琴里sideー

 

「・・・・・・・・はっ」

 

士道と美九から少し離れた位置で、一連の出来事を眺めていた精霊達が、一拍置いてハッと我に返る。

 

「何か・・・・凄かったわね」

 

「う、うむ・・・・」

 

「・・・・そう言えば美九って歌手なんだっけ。私てっきり、夜遅くまで起きている女の子を拐って生気を吸い取っていく、ファントム達みたいな妖怪的なモノだと思ってた」

 

「七罪さん・・・・」

 

七罪の言葉に四糸乃は苦笑するが、誰も否定しなかった。琴里が話題を変えるようにコホンと咳払いをした。

 

「まあともあれ、これで後2人ね。次はーーーー」

 

「ーーーー私が行く」

 

琴里が言い終わる前に、折紙がビッと手を挙げると、琴里は少し不安そうな顔を作る。

 

「折紙、か・・・・うん、別に異論は無いんだけど、くれぐれも気を付けて頂戴ね? 士道の言う『ドキッと』って、こう、女の子可愛らしい仕草と言動とかを示している訳であって、いきなり脱がせたり襲い掛かったりするのとは違うわよ?」

 

「分かっている」

 

「それと、あくまでもキスするのは今日の夜12時だからね? 士道に逃げられたりしたら困るから、無理に唇を奪おうとかしないでね?」

 

「大丈夫」

 

「だからって、キスじゃなきゃ大丈夫ーって、キス以上の事をしようとしたりも駄目よ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「何でソコで黙るの!?」

 

「軽い冗談」

 

「・・・・うーん」

 

肉食系女子の折紙はドレスの裾を翻しながら、難しげな顔をする琴里を放って、士道の方へと歩いていった。

 

「あらー?」

 

途中で、士道の元から名残惜しそうに去る美九とすれ違い、美九は折紙の方に視線を寄越すと、頑張って下さい、と言うようにウインクをして手をヒラヒラと振ってきた。

 

「・・・・・・・・」

 

すれ違う瞬間、まるでバトンを受けとるように、パン、と美九の手を叩く。

 

「きゃー!」

 

少し前の折紙ならあり得ない行動に、美九は嬉しそうに身を捩った。

折紙はそんな声を背に聞きながら歩みを進めると、悠然とソファに腰かけた士道の元に至った。

 

「ーーーー士道」

 

「ああ、折紙か。へえ、そう言う姿は初めて見るな」

 

声をかけると、タキシード姿の士道が笑いながら返した。

その姿を見た瞬間、折紙は半ば無意識の内に、右足のレッグホルダーに忍ばせておいたデジタルカメラ(電源ON状態)を取り出そうとする。折紙の技術であれば、一瞬の内に士道のタキシード姿をデータに残せるだろう。

だがしかし。

 

「・・・・っ?」

 

足に伸びていた右手が、不意に止められ、折紙は眉をひそめた。

琴里か、〈ラタトスク〉の機関員かと思ったがーーーー違う。折紙の右手を掴んで止めているのは、折紙自身の左手であった。

まるでそう、折紙の行動を阻害するように。

 

「これは・・・・?」

 

奇妙な現象に訝し気な顔を作るが、その原因をすぐに理解した。折紙の中に、別の思考が生まれ、折紙の行動を邪魔しているのだ。

何と言う事か、折紙の頭の中で、天使と悪魔が言い合いをしているような感覚だ。まるで士道の身体の中に住んでいた”魔獣”がいた時も、こんな感覚だったのだろうかと思った。折紙の顔をした天使が、パタパタと羽をはためかせながら折紙の前に現れるイメージが、脳内に展開される。

 

≪士道のタキシード姿は貴重。何としてでも写真に収めておくべき≫

 

するとそれに対して、折紙の顔をした髪の長い悪魔が現れる。

 

≪だ、駄目だよ。もしここで引かれちゃったら、皆の努力が水の泡だよ!≫

 

≪大丈夫。士道は優しい。それくらいで引いたりしない≫

 

≪そうかも知れないけど、そう言う事じゃなくて・・・・!≫

 

天使と悪魔の役割が真逆であった。2人の折紙は、頭の中で熾烈な争いを繰り広げる。

と、士道はそんな折紙の様子に気づいたのか、不思議そうに首を傾げてきた。

 

「折紙? 何してるんだ?」

 

「・・・・何でもない」

 

機を逃した。折紙の手から力が抜けると、小さく息を吐く。

が、左手の力が弱くなった処で再び右手がカメラに伸びそうになるが、左手が止めた。

流石に折紙も自分が相手では隙を衝けないようだ。

 

「折紙・・・・?」

 

「大丈夫。何も問題は無い」

 

そう返して、折紙は士道の隣に移動した。

 

「座っても?」

 

「ああ、勿論」

 

士道が自分の隣を促してくると、折紙は至極淑やかな所作でソコに腰かけた。

そして士道に視線を送りながら、グラスを持つような仕草をする。

 

「折角だから、乾杯をしない?」

 

「ああ、それもいいな」

 

折紙の提案に頷くと、士道は手を上げると、給仕(〈ラタトスク〉機関員)ご足早で歩いてきて、恭しく礼をしてきた。

「お待たせしました」

 

「乾杯がしたいんですけど、何か飲むものを頂けますか。ーーーー折紙、何かリクエストはあるか?」

 

「ドン・ペリニヨン」

 

《・・・・って、お酒じゃないのそれ!・・・・ったく、シャンメリーにしておいて》

 

「畏まりました」

 

表情を変えずに酒を注文する未成年・折紙のインカムに、琴里の怒声が響くと、やれやれだわ、と言った風に、シャンパンに似たノンアルコールの炭酸飲料に変えた。給仕係のインカムにも指示が届き、そう言って去っていった。

 

「・・・・士道」

 

「ん? 折紙も俺にお説教かい?」

 

折紙もあの“魔獣”に関して何か言ってくるのではないかと、士道は警戒するが、折紙はフルフルと首を横に振る。

 

「私はあの“魔獣”とは交流が無い。“アレ”に対して言う言葉は無い。寧ろ士道の身体の中に入っておはようからおやすみまで一緒にいた事が妬ましくて堪らない」

 

後半は良く聞き取れなかったが、どうやら折紙からの説教は無いようで、士道は小さく安堵した。

が、

 

「でも、士道が少し羨ましいとも思える」

 

「えっ?」

 

「『改変前の世界』での私は、“1人”だった」

 

「“1人”?」

 

「ASTにいた頃、本気で精霊を倒そうと考えていたのは、私だけだった。隊長や他の隊員達は、人命優先や被害を防ぐ事ばかり考えて、本気で倒そうと考えてはいないように見えた」

 

「折紙、それは・・・・」

 

「分かっている。何度も十香と刃を交えたり、こうして私自身が精霊となったから分かる。精霊の力は強大。如何に顕現装置<リアライザ>やCR-ユニットを駆使しても、エレン・メイザースや真那のような例外を除いて、人間が精霊を倒す事は不可能。でも、それでも私は、諦められなかった。それに、どんどん強くなっていく士道に、ファントムの存在もあり、ますます自分の力不足を感じ、焦りが生まれていった」

 

「・・・・・・・・」

 

いつもより感情を込めて饒舌に話す折紙に、士道は何も言えず、給仕係の機関員も空気を読んだのか、琴里の指示があったのか、近づかなかった。

 

「その焦りから私は、DEMからの誘いに手を伸ばしてしまい。結果、精霊となった」

 

「ああ。そうだな・・・・」

 

「仮定の話になるけど、ふと思う」

 

「?」

 

「もしも、私に士道のようなーーーー“自分の内面を、自分の弱さを打ち明けられる相手”がいたら、別の選択ができたのかも知れないと」

 

「っ・・・・!」

 

折紙の言葉に息を呑む士道。

 

「でも、そんなのはあくまでも仮定に過ぎないから、気にしなくて良い」

 

「あ、ああ・・・・」

 

折紙の話が終わると、銀のトレイにシャンメリーとワイングラスを載せた給仕係が戻ってきた。

 

「どうぞ」

 

給仕がテーブルにグラスを並べ、シャンメリーを注いでから言う。

 

「・・・・じゃあ、気分を戻して、折紙」

 

士道がグラスを取ろうと手を伸ばしたが、

 

「待って士道、あれは何?」

 

折紙はそれを中断させ、前方を左手で指差した。

 

「ん? どれだ?」

 

「あれ。もっと上」

 

折紙は士道の視線を誘導させながら、右手を懐に差し入れ、そこに忍ばせておいた小さな薬包紙を取り出すと、目にも留まらぬ速さで士道のグラスにその中身を注ぎ入れようとした。

がしかし、そうはさせまいと、頭の中で悪魔が薬包紙の端を摘まみ、折紙の動きを止めると、天使がその悪魔を退かそうする。

 

≪離して。これは好機。士道が“魔獣”がいなくなって生まれた心の穴を私が埋める。これさえ飲ませればこの場で大人とキスも可能≫

 

≪落ち着いてってば! 折角良い話をしたのに台無しだよ! 無理にキスしちゃ駄目だって琴里ちゃんに言われたでしょ!?≫

 

≪無論、覚えている。その言葉に背くつもりもない≫

 

≪ならーーーー≫

 

≪士道から求めてくるのならセーフの筈≫

 

≪何の薬なのこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?≫

 

悪魔の叫びと共に、左手の抵抗が強くなり、薬包紙が両側からの力で破れ、辺りに白い粉末を散らした。

 

「くーーーー」

 

「で、どうしたんだよ、折紙。特に何もないぞ」

 

「・・・・見間違いだった」

 

折紙が歯噛みしながら言うと、士道は不思議そうな顔をして折紙に向く。

 

「珍しい事もあるもんだな。・・・・まあ良いか。兎に角、乾杯しようぜ」

 

「・・・・・・・・」

 

折紙はコクリと頷くと、士道と共にグラスを手に取った。

 

「「乾杯」」

 

そしてグラス同士をキスさせ、綺麗な音を鳴らす。

折紙はシャンメリーを一口、コクンと飲み下し、心地良い刺激がシュワシュワと喉を通っていく。

 

「(士道と乾杯を交わして飲む。それだけで子供向けの飲み物が至極の甘露に思える・・・・しかし、予定が大幅に狂った。本当ならこれを飲んだ士道は数本で狼男に変身させ、私の身体で肉欲を満たす予定だった・・・・しかひ失敗してひまったものはひかたがにゃい。とにかくちゅぎの・・・・)・・・・・・・・」

 

折紙は、視界が揺れる奇妙な感覚に襲われ、士道にもたれ掛かった。

 

「ん、どうした、折紙」

 

「・・・・ちょっと・・・・酔った・・・・みひゃい・・・・」

 

「おいおい、シャンメリーでか?」

 

士道が苦笑した。確かに今折紙が飲んでいたのはノンアルコール飲料。酔う道理はない。何か変な物でも混入しない限りは。

 

「(・・・・・・・・にゃるほど、きゃんぱいのときり、ふりまいれしまっらくふりが、わらしのグラスにびろうにはいっらしまっら)(訳・成る程、乾杯の時に、振り撒いてしまった薬が、私のグラスに微量に入ってしむった)」

 

これはマズイ。非常にマズイ。士道をデレさせなければならないのにこんな状態ではーーーーと、折紙が内心焦っていると。

 

「・・・・五河くぅん・・・・」

 

ボヤけた意識の中、折紙は自分の口からそんな声が漏れるのを聞いた。

 

「ん? 何だよ折紙、急に」

 

「だいたい・・・・五河くんも五河くんよ・・・・なんでそんなカッコいいの? こんなの・・・・私でなくなって写真撮りたくなるし・・・・」

 

「折紙? 何言ってるんだ・・・・?」

 

怪訝そうな声で言う士道。しかし、折紙は止まらなかった。決壊したダムのように、言葉が次々と放たれる。

 

「・・・・五河くんの事を考えると、何だかフワフワってなって・・・・でもちょっとだけ苦しくてーーーー何て言うんだろう・・・・」

 

士道にしな垂れかかりながら折紙は続ける。

 

「五河くん・・・・、好き・・・・大好き。もうどうしたら良いのか分かんないくらい・・・・好き」

 

「・・・・折紙ーーーー」

 

士道が、神妙な声で折紙の名を呼んでくる。

 

《ーーーーパンパカパーン!》

 

ーーーーそれと同時に右耳のインカムからファンファーレが鳴り響くが、今の折紙には聞こえているか分からなかった。

 

 

 

 

ーDEMsideー

 

ネリル島から脱出したDEMの輸送機は、日本に到着し、目的地へと向かう途中、突然何かに追突されたように激しく振動した。

しかしそれはーーーー外部からではなく、内部からの衝撃だった。

 

「まさかーーーー!? う、嘘でしょう!? 『資材A』は完璧に休眠してる筈じゃあ・・・・」

 

「その筈だ。だがこれは・・・・」

 

パイロットは計器に示された数値を見た。異常な数値を見せている霊波が、2つ、1つはこの輸送機に、もう1つはーーーー日本のとある地点から。

まるでその2つが、共鳴し合うかのように反応した。

 

 

 

 

ー十香sideー

 

「・・・・よしっ!」

 

少し離れた場所から士道と折紙の様子を見ていた琴里(折紙が何かやらかそうとしたら強制的に止める為)が、ガッツポーズをとる。

 

「一時はどうなるかと思ったけど、怪我の功名ってやつね。普段のぶっ飛びアプローチとはまた違う、ストレートな好意の示し方が上手い具合にギャップを生んだところかしら」

 

すっかり解説役になり、腕を組んでウンウンと頷く。ちなみに折紙はすぐに意識を取り戻し、何事も無かったかのように士道に(過激な)アプローチをしようとし、機関員に命じて退却させられた。

 

「これで7人。でも油断はできないわ。一刻も早くーーーー」

 

と、ソコで琴里は言葉を止めた。

ーーーー隣で琴里と同じように士道の様子を窺っていた十香が、何とも複雑そうな表情をしていたのだ。

 

「十香? どうかした?」

 

「・・・・!」

 

琴里に声をかけられ、十香はビクッと肩を揺らした。

 

「む・・・・いや、何と言うのだろうか・・・・折紙がシドーに好きと言っているのを聞いたら、何だかこの辺りがギュウッとしてな・・・・」

 

言いながら、胸の辺りを押さえる。

 

「シドーを助けるのが最優先だと言うのは分かっている。こんな事を気にしている余裕などはない。だが・・・・」

 

十香は困惑したように髪をクシャクシャした。

 

「分かっているから・・・・分からないのだ。何故私は、このような気持ちになっているのだ? 今は一刻も早くシドーを助けねばならないのに、この雑念が頭から離れないのだ。“ドラゴン”がいてくれれば、この雑念が何なのか、教えてくれるのに・・・・」

 

「十香・・・・」

 

フウと息を吐いてから、十香の頭をポンポンと撫でた。

 

「・・・・ゴメンね。今は堪えて頂戴。でも、その気持ちは雑念なんかじゃないわ。至極真っ当でーーーー尊くて、大切なものよ」

 

「そうなのか?」

 

「ええ。そして多分だけど、多かれ少なかれ、私達は皆その気持ちを持っているわ。だからーーーー士道を助けたいって思うの」

 

「むう・・・・そう言うものか」

 

分かるような分からないような気がするが、十香はとりあえず頷く。

『ソレ』が士道を助けたいと言う気持ちに繋がっていると言う事だけは、不思議と腑に落ちたのだ。

そんなに十香の様子を見て安心したのか、琴里が十香の背中を叩いた。

 

「よし。さあ、最後は十香、あなたよ。準備はいい?」

 

「・・・・うむ! 任せておけ!」

 

十香は元気よく言うと、士道の座っているソファへと足早で歩き始めた。

 

「うぐっ!」

 

が、なれないドレスとヒールで足がもつれ、体制を整えられず、派手に転んでしまった。

 

「十香!? 大丈夫!?」

 

「む・・・・問題ないぞ!」

 

十香は手を振りながら答えると、強かに打ち付けてしまった顔をさすりながら立ち上がり、今度はもう少し落ち着いて歩み始めた。

しかし十香は、直接士道の元へは行かず、少し寄り道をした。

ホールの壁際に並んだ長いテーブル。そこに目にも楽しいご馳走の山が並んでいたのである。

 

「おお・・・・これは凄いな!」

 

勿論バイキング形式なので好きに取って食べて良いらしい。十香はキラキラと輝かせると、1番大きな皿を2つ用意し、その上に美味しそうな食べ物をこれでもかと言わんばかりに載せ始めた。

するとそこに、インカム越しの琴里の声が響いてくる。

 

《ちょっと十香、何してるの? ご飯も良いけど、今は士道を・・・・》

 

「うむ、分かっているぞ。大丈夫だ」

 

十香はそう答えると、山盛りの皿2枚を持って、士道の元へと歩いて行った。

そしてソファの前のテーブルに、ドン! と2つの山を築いた。

 

「おお十香ーーーーって、凄いな、こりゃ」

 

士道がそれを見て目を見開く。十香は胸を反らした。

 

「うむ! シドーは今日、朝から何も食べていないだろう? きっとお腹が空いていると思ったのだ。だからーーーー」

 

と、言いかけた処で、十香のお腹がきゅう・・・・と鳴った。

 

「む・・・・っ」

 

図らずも絶妙なタイミングで鳴いてしまった腹の虫に、思わず頬を赤くする。

それを聞いてか、士道が驚いたような顔を作った後ーーーー堪えきれないと言った様子で笑い始めた。

 

「ふ・・・・はは、あはははははっ」

 

「む、むう・・・・違うぞ。確かに私もお腹は減っていたが、それだけではなくてだな・・・・」

 

「ふ、ふふふ・・・・いや、分かっているよ。ありがとうな、十香」

 

士道は目に滲んだ涙を拭うような動作をしながらそう言ってきた。そして、ポン、と自分の席を示す。

 

「俺も、十香に負けないくらい腹ペコだ。食べようぜ。折角の料理だしな」

 

「・・・・うむ!」

 

大きく頷いた十香は、士道の隣に腰を落ち着けた。

 

「さて、じゃあいただきます」

 

「うむいただきーーーーあっ、ちょっと待つのだシドー!」

 

「ん? どうした十香」

 

いきなり声を上げた十香に、士道は首を傾げた。

十香はフォークを手に取ると、ローストビーフを刺し、士道の方に差し出した。

 

「ほらシドー、『あーん』だ」

 

「おいおい、サービス満点だな。ーーーーじゃあ、お言葉に甘えるか」

 

言って士道が口を大きく開け、十香が差し出したローストビーフをパクリと食べる。

 

「どうだ! 美味いか!?」

 

「ん・・・・ああ、美味い。料理自体もさる事ながら、十香が食べさせてくれた事で美味しさ倍増だ」

 

「む、そ、そうか? 何だか照れるではないか」

 

と、照れ笑いをしていた十香は、少し物悲しそうな顔で話しかける。

 

「・・・・シドー。私が、ご飯が美味しいと言う事は、シドーが教えてくれたのだ」

 

「ん?」

 

「この世界に出たばかりの私は、ASTに攻撃され、自分の存在を否定され続け、美味しいご飯も、楽しい事も、何も知らずに生きてきた。それを、シドーと“アヤツ”がーーーードラゴンが、私に教えてくれたのだ」

 

「・・・・っ」

 

士道は小さく息を詰まらせる。

 

「シドーとドラゴンは、私達皆の希望<キボー>になってくれたのだ。士道とドラゴン。お前達2人ならきっとどんな事があってもきっと何とかしてくれる。そんな想いすら抱かせてくれるのだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「あっ、すまない辛気臭い話をしてしまったな。だが、忘れないでくれシドー。私達がここまで笑う事ができるようになったのは、シドーとドラゴンのお陰なのだ。さて、続きを食べよう」

 

十香は話をかえて、もう1度フォークを料理に刺した。だがそこで、士道が十香を制止し、先ほどの十香と同じように、ローストビーフを差し出してきた。

 

「ちょっと待った。今度は俺の番だぞ。ほら、あーん」

 

「おお! ではいただくぞ。あーん・・・・」

 

十香はそう言うと、士道のフォークを待ち構えるように目を伏せ、大きく口を開けた。

ーーーーだが。

 

「む・・・・?」

 

十香は不審げに眉根を寄せた。数秒待っても十香の口に料理は運び込まれずーーーーその代わり、カラン、とテーブルに何かが落ちたような音が聞こえた。

 

《十香! 目を開けなさい!》

 

次いで、インカムから琴里の焦ったような声が聞こえた。

 

「む・・・・? っ!!?」

 

言われて瞼を開き、十香は息を詰まらせた。

 

「うぅっ、うぅぅぅ・・・・!」

 

目の前にいた士道が、いなくなった。否、胸元を押さえて十香の足元に蹲っていたのだ

 

「し、シドー! 大丈夫か! 一体どうしたのだ!?」

 

「ぐーーーーぁ、あ、あぁぁああああああああああっ!」

 

と、十香が慌てて士道に駆け寄った瞬間。士道が苦し気な声を上げたかと思うと、その身体が発光しーーーー凄まじい衝撃波が発せられた。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

士道達がいる〈ラタトスク〉施設周辺で、ビーストハイパー<真那>とヘルキューレ<エレン>が激闘を繰り広げていた。

そして、士道達がいるだろう施設から光の線が天に昇っていくのが見えた。

 

「・・・・・・・・エキサイティング!」

 

それを近くで崖で眺めていた不気味な男が、ニンマリと笑みを浮かべて身体を変貌させたーーーードラゴンを殺したファントム、『レギオンファントム』へと。




次回、琴里は引き金を引くのか?
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