デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
「な、何すんだよ!? 白い魔法使い!!」
白い魔法使いの『タイム』の魔法で、肉体の状態を2時間前に戻され、(一応)正気に戻った士道に、白い魔法使いが殴り付けられ(しかも指輪付き)、頬をさすり、血を口から垂らしながら、士道は白い魔法使いを睨む。
『・・・・・・・・』
『ワイズマン』
『待て。余興を少し楽しもう』
突然の事に琴里達も唖然となり、ワイズマンの制止でメデューサ達も動かない。
『・・・・・・・・・・・・』
白い魔法使いは何も言わず、懐からある物を取りだし、士道の足元に置いた。
ーーーー士道が捨てた、ウィザードライバーとウィザードリングとチェーンである。
「こ、これは・・・・」
『五河士道。お前にはーーーー失望した』
「っ!」
白い魔法使いは冷淡に、士道に対して失望の念が込められた言葉を発した。
『力を失い恐怖に捕らわれ、それを埋めるように別の力に溺れ、今まで共に戦ってきた道具達への敬意もあっさり捨て去り、その新しく手に入れた力ですら制御できずにこの体たらく。これを無様と言わずして何と呼ぶ?』
「なっ!」
『しかもその力は元々彼女達、精霊達の力だ。それをあたかも自分の力のように振り回すなど、今のお前は〈仮面ライダー〉でもなければ〈魔法使い〉ですらない。他人の王冠や宝石を身に纏い、自分が王様になった気になり有頂天になっているーーーー『盗人』でしかない!』
「なん、だとぉっ!!」
士道は怒りに任せて〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を召喚すると、白い魔法使いに向かって斬りかかる。
「し、シドー!」
『っ!?』
『・・・・・・・・』
十香と琴里達が士道の凶行に驚き、ファントム達は成り行きを現物する。
「たぁっ! はぁっ! うぁっ! りゃぁっ!!」
『・・・・・・・・・・・・』
士道は剣の天使を遮二無二に振り回すが、白い魔法使いは滑らかに回避し、足を士道の足に引っ掛け、士道の身体は盛大にすっ転ぶ。
「うわぁぁぁっ!!」
『まるで力を使いこなせていない。チャンバラごっこをしているだけの幼い子供だな』
「黙れっ!!」
士道は見下されていると感じたのか、白い魔法使いに再び斬りかかるが、簡単にあしらわれていた。まるで癇癪を起こして暴れる子供と、余裕綽々にあしらう大人のようである。
『こんなので今まで良く戦ってこられた物だ。常に貴様の側にいた『竜』のおかげだな』
「っ! 黙れ黙れ黙れ! 黙れよっ!! 〈絶滅天使<メタトロン>〉!!」
士道は〈絶滅天使<メタトロン>〉を召喚すると、光線を発射するが。
[リフレクター ナウ!]
魔法陣が壁、いや鏡のように反射し、さらに幾つもの小さな魔法陣を生み出し光線を反射させ、逆に士道に跳ね返した。
「ぐぁあああああっ!!」
『防御の魔法も、使い方によってはこんな事もできる』
「クソッ! 〈破軍歌姫<ガブリエル>〉! 『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!』」
今度は美九の能力で、大声を発して音の壁を作って白い魔法使いに向けて放つ。
『・・・・・・・・くだらん』
白い魔法使いがそう吐き捨て、専用武器・『ハーメルケイン』を取り出し、フルートでも吹き鳴らすように音を奏でると、音の壁が形成され、士道の放った壁を押し戻し、逆に士道に叩きつけた。
「そ、そんなーーーーぐぁああああああああああああああっ!!!!」
士道は地面に転がりながら倒れる。
「シドー!」
「な、何で・・・・! 精霊の力が、天使が、こんな簡単に・・・・!?」
あまりにも呆気なく破れていく天使達。士道の頭が混乱しそうになる。
『当然だ』
が、白い魔法使いは呆れたような声を発する。
『これが本来の持ち主である精霊達が使えば、私は簡単に倒されている。だが五河士道。お前はその力ーーーー天使の力を半分も引き出せていない』
「っ・・・・!」
白い魔法使いの言葉に、士道は絶句する。
『その力は夜刀神十香達の力。お前はそれを借りているに過ぎん、彼女達ならば100%処か、120%以上の力を引き出せるが、お前では20~30%が精々だ。何故なら、“それはお前自身の力ではないからだ”』
「・・・・・・・・!!」
士道は悔しそうに下唇を噛みながら、白い魔法使いを憎らしそうに睨み付ける。が、白い魔法使いはそんな視線など意に返さず言葉を続ける。
「精霊達の力をそんな情けなく使って、良く自分1人で戦えるなど、『最後の希望』になるだのとほざけるな? 今のお前は、玩具を手に入れてヒーローごっこをしているだけだ」
「煩い!!」
「あの『竜』がいなくなった事で、貴様は大切な物を失った、それはーーーー」
「煩い煩い煩い煩い煩い! うるさーーーーいっ!! 〈颶風騎士<ラファエル>〉! 〈氷結傀儡<ザドキエル>〉! 〈贋造魔女<ハニエル>〉!!」
起き上がった士道が叫ぶと、両手に大型の槍とペンデュラムが、隣に巨大な氷雪の兎と〈贋造魔女<ハニエル>〉が変身したもう1匹が現れた。
「食らえーーーー!!」
士道は両手の風の天使を振るうと竜巻が起こり、氷の天使達がその動きに合わせて口を開くと、氷雪の吹雪が放たれ、竜巻と合わさり氷雪の竜巻が白い魔法使いに襲いくる。
「はははははははは! どうだ!! もう俺は1人で戦える! 俺1人で皆を守れるんだ! 俺が! 皆の! 『最後の希望』だッ!!」
高笑いをあげる士道だが、白い魔法使いはウィザードリングから、『フレイムウィザードリング』を拾い、指に嵌めてドライバーに読み込ませた。
[ボルケーノ ナウ!]
すると、とてつもない熱量の炎が発生し、氷雪の竜巻を打ち消した。
「なっ!?」
「分かっただろう。基本スタイルである『フレイム』でも防げる程度の力しか、お前は引き出せていないのだ」
「~~~~~~~~!! うぁああああああああああああああああああっっ!!!」
悔しさと怒りと焦燥に顔を歪め、ヤケクソになった士道が、片手に〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を、もう片方の手に〈灼爛殲鬼<カマエル>〉を持って、再び白い魔法使いに斬りかかる。
「っ! っ! っ! っ! っ!」
闇雲に振り回す士道。無論そんな攻撃など、白い魔法使いには掠りもせず。
「・・・・っ」
「(バキッ)ごはっ!?」
逆にハーメルケインの柄で殴られ、またも無様に地面に這いつくばる。
「ぐっ! うぅぅぅ・・・・」
「コレで少しは理解したか貴様にはあの『竜』が「もういないんだよ・・・・!」ん」
白い魔法使いの言葉を遮り、士道が苦しそうに声を発する。
「何なんだよ・・・・! アンタも、夕弦と耶倶矢も、七罪も、四糸乃とよしのんも、琴里も、美九も、十香も、折紙まで・・・・! もうアイツはーーーードラゴンはいないんだよ・・・・! 死んじまったんだよぉ・・・・! なのに・・・・!!」
【進言。『彼』がいなくなった士道は、きっと不完全な士道です】
【アンタがいて、“アイツ”がいるからアンタ達はーーーー〈仮面ライダーウィザード〉なんでしょう!?】
【誰よりも士道さんの傍にいてくれて、誰よりも士道さんの力になってくれたのは、“あの人”なんだと思います・・・・だ、だから、【必要ない】なんて、悲しい事を言わないで、下さい・・・・!】
【今まで一緒に戦ってきた『相棒』をあんな風に言うだなんて、私のおにーちゃんは、そんな情けない薄情者な人じゃないでしょう?】
【私、だーりんと“ハニー”、お2人が一緒にいる姿が、1番大好きだって事を・・・・】
【私に士道のようなーーーー“自分の内面を、自分の弱さを打ち明けられる相手”がいたら、別の選択ができたのかも知れないと】
【シドーとドラゴンは、私達皆の希望<キボー>になってくれたのだ。士道とドラゴン。お前達2人ならきっとどんな事があってもきっと何とかしてくれる。そんな想いすら抱かせてくれるのだ】
精霊達に言われた言葉が、脳裏に強く反響する。しかし士道は絞り出すように声をあげる。
「何で皆! ドラゴンがソコにいるみたいに、生きているみたいな事を言うんだよぉ! ドラゴンは死んだんだ! もういないんだ! だから! 俺が皆を守る! その為の力を、俺は手に入れたんだっ!!」
そう。士道が1番、ドラゴンを失った事が堪えていたのだ。だが、現実は無情に、そして残酷な事実しか残してくれない。もうドラゴンはいない。その事実が、士道の心に大きな喪失感を生み出し、それを埋めようと、霊力を使って、ドラゴンは必要ないと叫んでいたのだ。
「・・・・・・・・」
白い魔法使いが、士道に向けて声を発そうとしたその時ーーーー。
『くだらん茶番劇は終わったな・・・・やれ』
「っ!」
[ディフェンド ナウ!]
ワイズマンがそう言うと、白い魔法使いに向かってメデューサの蛇達が襲いかかってくるが、魔法陣の障壁で弾く。
『(スッ・・・・パチンっ)』
そして、ワイズマンが指を鳴らすと、メデューサ、グレムリン、セイレーン、ベルセルクが、鎖を引き千切られた。
「くっ、やはり時間稼ぎにしかならなかったか」
『どんな茶番が見られるのかと思ったら、惨めな泣き言だったな』
ワイズマンはフン、と鼻で笑い、メデューサが士道に専用武器である杖・〈アロガント〉を構える。
『“ソレ”がまた暴走すれば、我らとしても面倒なのでな。始末させてもらう』
「っ!」
士道は立ち上がると、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉と〈灼爛殲鬼<カマエル>〉を構えようとする。
がーーーー白い魔法使いが士道を守るように、ファントム達に立ち塞がる。
「退け。お前は今、肉体の時間が暴走前に戻っているだけだ。時間が経てばまた暴走する。その前に夜刀神十香達に再び経路<パス>を繋げてこい」
「・・・・・・・・イヤだ」
それはつまり、手に入れた力を失う事だ。ドラゴンがいなくなり、自分が戦える力を失いたくないからだ。
「天使の力を引き出しきれないにしても、俺にはまだーーーー『奥義』があるんだ!」
両手の天使を地面に突き刺すと、地面を踏みしめるように足を開き、両手を揃えて腰だめに構え、霊力を集束し初める。
「(そうだ! 俺には『奥義 瞬閃轟爆破』があるんだ! これさえあれば、俺はヤツらとーーーー)」
「それで渡り合えるなどと思っているのかな?」
「っ!?」
「っ」
『っ!!?』
突如、士道の背後から聞きなれない声が響いてきて、振り向くと、無造作に髪を伸ばし、令音をも上回りそうな、病的なまでに青白い顔色に深い隈を目に着けた不気味な風貌の青年が、真っ白いコートを纏って、士道の背後に立っていた。
「お、お前誰だ!?」
「っ! シドー! ソイツはファントムだっ!!」
「っ」
ファントムの気配が分かる十香の言葉に、士道は後退すると、集束していた霊力をその青年に向けようとした。
が、その前に、メデューサが冷酷な声をあげる。
『貴様、何のようだ?ーーーー『レギオン』・・・・!』
『っっっ!!!??』
メデューサが言ったそのファントムの名を聞いて、士道が、十香達が、目を見開いてその青年を見る。すると、青年は笑いを堪えるように身体を震わせると、その身体を変貌させた。
表青と白い骨のような鱗で覆われた表皮。鳥のような、蜥蜴のような姿。黄色い1つ目。間違いなく、ドラゴンを殺したファントム、『レギオンファントム』であった。
「お、お前は・・・・!」
士道が警戒するように睨むーーーーが、レギオンはゆっくりと歩むと、士道を横切った。
「なっ!? お、おい待て! 何処に行く!?」
『・・・・・・・・・・・・』
士道が叫ぶが、レギオンはまるで聞いていないように、十香達の元へと向かっていく。
無視されていると思った士道は怒り混じりに、レギオンの前に移動する。
「待て! 十香達には指一本触れさせねえ! 俺の『奥義』で、お前を倒してやる!!」
勇ましく吠える士道。だがーーーー。
『邪魔だ。お前はまるでエキサイティングじゃない』
士道に顔どころか、目線すら向けず、レギオンは十香達へと向かう。
「っ!・・・・舐めるなぁ!!」
完全に自分は眼中に無いと言われた士道は、怒気を込めてレギオンの前に再び移動すると、『奥義』を繰り出す。
「ーーーー『奥義! 瞬閃轟爆破』ぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
両手をレギオンへと突き出した瞬間、手のひらから、凄まじく濃密な霊力波が放たれた。
ーーーードォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!
霊力波がレギオンを呑み込んだ。
「おおっ!」
「忠告。耶倶矢。フラグは言わないで下さいね」
「わ、分かっとるわっ!」
何て八舞姉妹が会話しているが、士道は勝利を確信し、笑みを浮かべる。
「ほらな! ドラゴンがいなくても俺がーーーー『それで終わりだな?』・・・・え?」
霊力波の中から聞こえた声と影から、士道は目を見開いた。霊力の奔流に呑まれた筈のレギオンが、“無傷で立っていたのだ”。
「な、何で・・・・? さっき俺はーーーーガルーダ達を倒して『誰が倒されたって?』っ!?」
戸惑う士道に追い討ちをかけるように声がした方へと顔を向けると、メデューサ達の近くに、先ほど『奥義』で倒した筈のガルーダ、ユニコーン、クラーケン、ゴーレムが、これまた無傷で現れたのだ。
「ちっ、『タイム』が切れたか・・・・!」
白い魔法使いの口振りから、どうやらDEMの足止めをビーストハイパー<真那>が、ファントムの足止めを白い魔法使いがしていたようだ。
「そ、そんな、さっき確かに、〈ハンタースナッチ〉達と一緒に、俺の『奥義』で・・・・!?」
混乱しそうになる士道に、ガルーダ達の嘲りの声をあげる。
『ふふふ、私達ファントムの魔力は、精霊の霊力を反発させるって事を忘れてたの?』
『くくく、馬~鹿。何が『奥義』なんだか。『奥義(笑)』にしたら?』
『ひひひ、間抜け過ぎて笑いを堪えるのが大変だったわ』
『『魔法使い』じゃなくなったけど、『道化』としてなら優秀・・・・プッ』
「っ・・・・!!?」
嘲笑われていると感じた士道は愕然となるが、レギオンはそんな士道に見向きもしないで、十香達へと歩を進めようとする。
「っ、ま、待て!」
士道が声を張り上げるが、レギオンはまるで相手にしておらず、無防備に背中を見せていた。
「・・・・お、『奥義! 瞬閃轟爆破』ぁぁぁッ!」
士道が『奥義(笑)』をレギオンの背中に放つが、レギオンはまるで意に返していなかった。
「『瞬閃轟爆破』! 『瞬閃轟爆破』! 『瞬閃轟爆破』! 『瞬閃轟爆破』! 『瞬閃轟爆破』ァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
悪足掻きのように『奥義(笑)』を放ち続ける。
がーーーー。
『鬱陶しい』
ーーーーバキッ!
「あがっ!?」
こちらを振り抜かず、士道の頬に裏拳で殴り付けると、士道は地面を何度もバウンドして転がる。
『シドー(さん/だーりん)!!』
十香達が悲痛の声をあげるが、士道は四つん這いになって、自分の両手を見る。
「な、何で・・・・? 俺は、皆を守れる力を、手に入れた筈なのに・・・・! 何でだよぉ・・・・!!」
悔しそうに蹲ってしまった。
『見れば見るほど見苦しい。まさに生き恥を晒しているな。・・・・やれ』
ワイズマンがそう言うと、メデューサ達は士道へ向かって歩を進める。が、白い魔法使いがハーメルケインを構えて立ち塞がる。
『あれれ? 白い魔法使い。君士道くんを見限ったんじゃないのぉ?』
「失望はしたが。まだ見限ってはおらんよ」
白い魔法使いは、メデューサ達と交戦を初めた。
ー十香sideー
十香達は必死にもがいて拘束から抜けようとするが、それよりも早く、レギオンが眼前にやって来た。
「き、貴様・・・・!」
「何故私達を、狙うの? 私達はもう『ゲート』ではない筈・・・・」
『そんな事はどうでも良いのだよ』
十香が睨み、折紙が冷徹な視線で問いかけると、レギオンはそう答えると、自分の武器である、両端に鋭利な刃を持つ双刃の特殊な薙刀か双刃刀の武器・『ハルメギド』を取り出すと、十香の眼前に突き立てる。
『私は刺激的、ワクワクすると言う意味のエキサイティングな状況が大好きでね。愛する人の為に健気に頑張る精霊の乙女達の奮闘がとてもエキサイティングで面白かった。しかし、楽しい時間はあっという間に終わってしまうものだ。だから、私が終わらせる』
「士道が、狙いじゃないの・・・・?」
琴里の言葉に、レギオンは呆れた声を発する。
『あんなまるでエキサイティングじゃない屑には興味無い』
レギオンは、ハルメギドを十香に突き刺そうと、腕をあげた。
「や、やめろ! やめてくれぇ! 十香ーーーー!!」
士道の悲痛な叫びが響くとーーーー。
ーーーードォン!ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
『ぐぉぉぉぉぉっ!!』
突如、レギオンの身体に火花が幾つも飛び散り、後退した。
「何が・・・・?」
ーーーーパシュッ!パシュッ!パシュッ!パシュッ!パシュッ!パシュッ!・・・・。
『うっ!?』
十香達を拘束していた機関員達が小さく悲鳴をあげると、力なくその場に倒れ、寝息を立てていた。
十香達が機関員を退かして立ち上がる。
「何が起こったの?」
「・・・・首筋に針のような物が刺さってる」
琴里の言葉に機関員達の身体を調べていた折紙がそう告げる。そして、
「ーーーー野生の象ですら5時間は寝てしまう麻酔を使いましたからね。暫く寝てもらいます」
暗がりから現れたのは、背は高く、凛々しい目元に瞳は金色、褐色は肌に艶やかな黒髪は猫っ毛で襟足が長い、ダークブラックのスーツが恐ろしい程に似合う、真那が精悍な狼ならば、こちらは孤高の黒い狼を思わせる青年だった。その手にはニードルガンとショットガンを持ち、スーツにはショットシェルホルダーを巻き付けているのが異様だったが。
「あ、あなたは!?」
何者なのか分からない青年の登場に、戸惑う琴里に、青年は手帳を見せた。警察手帳を。
「初めまして〈ラタトスク〉機関 実動部隊〈フラクシナス〉司令官、五河琴里司令。〈国家安全局0課〉所属、仁藤攻平と言います」
「〈国安0課〉っ!?」
「私の事は〈仮面ライダービースト〉。真那さんのパートナーだと思ってください」
「真那の!?」
色々情報が多過ぎて戸惑う琴里だが、仁藤はニードルガンを懐にしまい、ショットガンにショットシェルを装填すると、レギオンに銃口を向けた。
「皆さん。時間稼ぎくらいはします。急いで士道くんの処置をお願いします!」
仁藤がショットガンを持ってレギオンと対峙した。
「こ・・・・琴里、さん、どうします、か?」
「~~~~! 何で〈国安〉が真那と一緒にいるのか分からないけど、彼と白い魔法使いが時間を稼いでくれる内に、私達は士道をどうにかするわよ!」
『おー!』
琴里の声に応えて、十香達が手をあげた。
そして、十香達が士道に向かい、途中、折紙がウィザードライバーとリングを拾った。
そして士道は、顔を俯かせ、蚊の鳴くような声を発していた。
「士道!」
「・・・・何でだよ・・・・俺は、1人で・・・・戦えるようになったのに・・・・皆を守れるようになったのに・・・・何で・・・・何で・・・・」
折角手に入れた霊力はファントム達にまるで通用せず、それどころかまるで相手にされていない。そうまさに路傍の石っころのようにあしらわれ、士道の心は粉々に砕けてしまっていた。
「士道・・・・っ!」
ーーーーバキッ!
「うっ!」
『十香(さん)!?』
「・・・・」
ーーーーバシッ!
『折紙(さん)!?』
十香が士道の頬を殴り、折紙が次に士道のもう片方の頬にビンタを叩きつけた。
2人の突然の行動に、琴里達が面食らった。
「しっかりしろシドー!」
「士道。今のあなたは、本来のあなたじゃない」
「・・・・・・・・・・・・」
十香と折紙の言葉を聞いても、士道は顔を俯かせたままだった。そして十香は士道に諭すように声を発する。
「シドー。先ほど、白い魔法使いが言っていた、シドーがなくした“大切な物”が何なのか、私は何となくだが分かった気がするぞ」
「ぇ・・・・?」
「シドーの絶望<ゼツボー>から生まれたファントムがドラゴンならば、シドーはドラゴンを失って、希望<キボー>を失ったのではないか?」
「・・・・俺が、希望を失った・・・・?」
十香の言葉に、士道は少し顔をあげ、折紙が士道の前にウィザードライバーとリングを置いてから続く。
「絶望と希望は表裏一体。どちらかを切り離す事なんてできない。絶望があるから人は希望の尊さを知り、希望があるからこそ絶望に屈しない。あなたはあなたの絶望であるドラゴンを失った。それは同時に、あなた自身の希望を失った事を意味している」
「・・・・ドラゴンが・・・・」
ーーーードォォォォン!
「ぬぁっ!」
『白い魔法使い!?』
白い魔法使いが近くまで吹き飛んできて、精霊達が驚くと、メデューサ、グレムリン、セイレーン、ベルセルク、ガルーダ、ユニコーン、クラーケン、ゴーレムの計8体のファントム達が迫ってきていた。
「ぬぅ、琴里。我々も戦えるか?」
「令音にも言われただろうけど、使えたとしても3分たらずよ」
「かかか! 3分もあれば十分よ!」
「肯定。それで彼らを撃退します!」
「わ、私も、頑張ります・・・・!」
『よしのんの本気も見せてやるぜぇ!』
「わ、私も・・・・やる」
「あぁん! 皆さんカッコいいですぅ! 私もやりますよぉ!」
「くれぐれも無理はしないでね」
「多少の無理を承知でやらなければ、奴等に勝てない」
「うむ! 行くぞ!」
全員が力を込めると、霊装を纏い、ファントム達と戦う。
それを見て、士道は自分自身への情けなさに惨めな気持ちでいっぱいになっていた。
「・・・・何でだよ・・・・俺は、俺1人じゃ・・・・皆を守れないのかよぉ・・・・!」
士道はウィザードライバーを両手に持つと、泣きそうな顔と声で呟く。
ーーーードゴォォォォォォォンン!!
『うわぁっ!!』
十香達が苦戦していると、加速したグレムリンが士道の眼前にやって来た。
『ここまで、だね。士道くん。僕も君には期待していたのにーーーー残念、だよ』
グレムリンの刃が士道に振り下ろされるーーーー。
「どうすれば良いんだよぉ・・・・! 分からねぇよぉ・・・・! ドラゴン・・・・何でいてくれねぇんだよぉ・・・・! 助けてよ・・・・助けてくれよぉ・・・・・・・・ドラゴーーーーン・・・・!!」
士道の涙がウィザードライバーに滴り落ちると、左手に涙が1滴落ちたその瞬間、涙がリングの形になりそしてーーーー。
ーーーーキュァァァァァァァァァァァァァァ!!
『うっ!? うわぁああああああああああ!!』
『っ!』
目映い光が士道を包み込み、グレムリンを吹き飛ばした。
周りで交戦していた皆が、ソコに目を向けた。
「・・・・・・・・これっ、て・・・・!」
士道の左手には、いつの間にか、クリアカラーで王冠のような物を付けたウィザードの顔のリングが握られていた。
「!!」
士道は思い立ち、ウィザードライバーを腰に巻いて、リングチェーンから『ドライバーオンリング』を取り外し、右手に嵌めて翳した。
[ドライバーオン プリーズ]
ドラゴンが死んでから、1度も起動しなかったドライバーから音声が鳴り響いたその瞬間、士道の意識はアンダーワールドへと移動した。
「ここはーーーーアンダーワールド!?(バシン!) がはっ!?・・・・こ、この痛みは・・・・!?」
士道が振り向いた先にいる“ヤツ”を見て、士道は涙を浮かべる。
『まぁったく、貴様と言うド愚物は、本当に我がいなければどうしようもないな』
「ドラゴンっ!!!」
何と、全身を光る輝かせたウィザードラゴンがソコにいた。
次回でいよいよ。纏うは無限! 最後の希望!!