デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

164 / 278
今までと違う『好き』の気持ち

ーエレンsideー

 

それは、士道が〈仮面ライダーウィザード インフィニティスタイル〉になる数分前に遡る。

士道達から離れた空中で高速で戦う真那が変身した〈仮面ライダービーストハイパー〉と、エレンが変身する〈仮面ライダーヘルキューレ〉。

 

「はッ!」

 

「ーーーーっ!」

 

ヘルキューレ<エレン>は幾度目とも知れないビーストH<真那>の攻撃を専用盾・イージスで防ぐと、ダーインスレイヴを振って魔力刃を飛ばすと、ミラージュマグナムでの光弾で相殺するビーストH<真那>。

 

「そらっ!」

 

「無駄です」

 

ビーストH<真那>は再びフリンジスリンガーを伸ばして攻撃するがヘルキューレ<エレン>はイージスで防ごうとする。

 

「はっ! 残念!」

 

が、ビーストH<真那>はフリンジスリンガーを操作して叩きつけるのではなく、イージスに巻き付けた。

 

「なっ!?」

 

「うりぁああああああああああっ!!」

 

そして巻き付けたままビーストH<真那>はハンマー投げのように力の限り振り回すと、ヘルキューレ<エレン>を地面へと投げ飛ばす。

が、ヘルキューレ<エレン>も直ぐ様体勢を整え、地面に到達する前に随意領域<テリトリー>を展開して浮遊し、ビーストH<真那>のいる空中に戻った。

 

「・・・・成る程。派手な見た目とパワーアップは伊達ではありませんね。しかし、それで私を殺<と>れるとお思いですか?」

 

「ふん・・・・殺す殺すって、何処の世紀末世界の住人でやがりますか? それしか勝ち方知らねーんですか? いくら強くてもオツムは筋肉で構築されてやがるみてーですね」

 

「見え透いた挑発ですね。私がそんなものに乗るとでも?」

 

ヘルキューレ<エレン>が涼しい声で返してくる。なるべく時間を稼ぎたいビーストH<真那>は、さらに言葉を続ける。

 

「はっ、別にそんなの期待しちゃねーですよ。ただの感想です。DEMにいた頃から、何処か抜けたトコがあると思っていやがりましたから」

 

「戯れ言を。私に隙などある筈がーーーー」

 

「いや何回か何もない処でコケてるのを見た事ありますけどね。あと書類のファイルを2階から4階に運ぶ時、2回休憩を入れやがってましたよね」

 

「な!? 何故それをーーーー」

 

「まあ今だから言いますけど、ウチのビーストキマイラ達、あなたの事を【貧弱そうだから】って理由で契約しなかったですし。第2執行部の魔術師<ウィザード>達の間であなた、『執行部長』ならぬ『もやしっ子ー部長』とか呼ばれてましたからね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ヘルキューレ<エレン>は全身をプルプルと震わせる。おそらく仮面の中では額に血管を浮かばせているだろうなぁ、と思っていると、無言のままビーストH<真那>に肉薄し、〈ダーインスレイヴ〉を振り下ろしてくる。寸での処で回避するとからかうように笑ってみせた。

 

「はっはっはっ! あれー? 挑発は通じねーんじゃなかったですかねー?」

 

「黙りなさい! 何ですかその不愉快な渾名は・・・・!」

 

ヘルキューレ<エレン>が苛立たし気に叫んでくる。イギリスのDEM本社に彼女が戻ったら、真那の元同僚達は手酷い『特別訓練』を受ける羽目になりそうだ。

 

≪単純じゃのぉ。先ほどの渾名はこの場で考えた出任せじゃのに≫

 

≪イギリス人が大半の第2執行部で、日本語の駄洒落が通じる訳ねぇじゃん≫

 

≪エレンちゃんも少し考えれば分かるでしょうね≫

 

≪まぁああ言うプライドの高い奴ほど、自分の弱点を触れられたく無いだろうからね。怒りのあまり考えが至らないようだね≫

 

≪ウモ≫

 

ビーストキマイラ達が好き放題言ってくる。ちなみにエレンと契約しなかった理由は本当の事で、エレン以外のジェシカ達、第2執行部の魔術師<ウィザード>達は、【三下以下の雑魚に使われるなんて御免】という理由だった。

 

ーーーーギャォォォォォォォォォン!!

 

とその時、遠くーーーー士道達がいるだろう場所から、目映い光と、雄叫びのような声が響いた。

 

「な、何でやがりますか!?」

 

「っ! これはーーーー」

 

戦闘を中断して2人が見つめる先には、天に昇り、再び下に急降下してくるーーーー光り輝くドラゴンだった。

 

「あれはまさかーーーーウィザードラゴン!?」

 

「っ・・・・!」

 

「はっ!」

 

ビーストH<真那>が驚愕していると、ヘルキューレ<エレン>は身体をワナワナと震わせた。その様子を見て、ビーストH<真那>はそれが先ほどのような怒りの震えではなく、歓喜の震えであると直感した。

そしてヘルキューレ<エレン>は、その場に向かって文字通り飛んでいこうとするが、そうはさせまいとビーストH<真那>が立ち塞がる。

 

「ちょ~っと待ちやがりなさい! 何処に行くでやがりますか!?」

 

「退きなさい真那。先ほどの不愉快な話と無礼な態度は忘れてあげます。そんな些末な事よりも、私は確かめねばならない事ができました」

 

その声には、今さっきまでの苛立たし気な声色ではない。まるで興奮を押し殺しているかのような、そんな声だった。

 

「どうしたんでやがりますか? いつもの冷徹さが消えてやがりますよ? 意中の相手でも見たのでやがりますか?」

 

「“意中の相手”・・・・ある意味、確かにそうかもしれませんね。我が怨敵が、戻ってきたかも知れないと言うこの気持ち! 言葉では表しきれませんねっ!!」

 

ヘルキューレ<エレン>がそう叫ぶと、肩や腕や足のアーマーに付けられた宝石が光り、胴体には馬の顔の目が光り、仮面の側頭部には鳥の羽が光り伸びた。

 

「なっ!?」

 

「〈仮面ライダーヘルキューレ リミットオーバーモード〉。とでも呼びましょうか?」

 

「皆・・・・締めてかかるでやがりますよっ!!」

 

≪≪≪≪≪応(ええ)!!≫≫≫≫≫

 

ビーストH<真那>とヘルキューレ<エレン>が空中でぶつかった。

 

 

 

 

それから数分後。

 

「あぁっ!!」

 

ビーストH<真那>がヘルキューレ<エレン>の1撃で地面に落下したのを確認したヘルキューレ<エレン>は、空を加速してその場へと向かった。

心の動悸が収まらない、早く、早く行かねば! と、そんな風に逸る気持ちに従うままその場に着き、そして見つけたーーーー不倶戴天の宿敵の姿を。

 

「五河、士道ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっっっ!!!!」

 

「っ! エレンッ!?」

 

新たな姿となったウィザード<士道>に、ダーインスレイヴを振り下ろした。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

そして現在。ワイズマン達が離脱し、ヘルキューレ<エレン>と剣戟を繰り広げるウィザード<士道>。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

2人は加速して周囲を動きながら、剣をぶつけ合う。十香達には、その場だけ2つの光の線が無数に生まれているようにしか見えていない。

 

「す、スゴッ!」

 

「驚愕。まるで世界的に有名なバトル漫画の世界です」

 

「で、でもだーりんもハニーも強くなってるのに、どうしてエレンさんも互角に戦っているのですか?」

 

「・・・・互角じゃない」

 

変身できない琴里達が巻き添えにならないように守っているプリンセス<十香>とエンジェル<折紙>。そんな中、エンジェル<折紙>が声を発した。

 

「少しずつ、エレンが士道の動きに対応できなくなっている」

 

「うむ」

 

動体視力に優れるエンジェル<折紙>とプリンセス<十香>は、ヘルキューレ<エレン>の動きがウィザード<士道>に着いてこれず、ダメージを受けていってるのを確認した。

 

「とぉっ!!」

 

「なぁっ!!」

 

と、高速戦を終わらせるように、ウィザード<士道>がヘルキューレ<エレン>を蹴り飛ばして、地面に着地させる。

 

「・・・・ぐぅ・・・・!」

 

ヘルキューレ<エレン>が体勢が少し崩れると、光っていたアーマーの随所が点滅を始める。

 

「何だ?」

 

≪どうやらヤツのパワーアップを時間制限付きのようだな。タイムリミットが近づいているのだろう。チャンスだな。〈イフリート〉、貴様のリングを貸せ!≫

 

「・・・・・・・・」

 

琴里は何も言わず、『カマエルリング』を投げ渡すと、ウィザード<士道>はリングを嵌めてシャイニングカリバーに翳した。

 

[カマエェェル! ハイタッチ! インフェルノストライク! メラメラ! メラメラ! メラメラ! メラメラ! メラメラ!]

 

「ならばこちらも!」

 

[ダーインスレヴ デッドエンド]

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

ヘルキューレ<エレン>も〈ダーインスレヴ〉の柄にリングを押し込むと、刀身に魔法陣が幾つも展開され、刀身が大きく伸び、その刀身が球体の形に収束されると、振り下ろし、収束された極大の魔力刃が放たれた。

 

「っ! だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ウィザード<士道>の隣に、カマエルブレイカーを構えた仮面ライダーイフリートの幻影が現れると、ウィザード<士道>はアックスモードのアックスカリバーに紅蓮の炎を纏わせ、力強く振り下ろすとこれまた極大で大質量の炎が刃となって、地面を突き進みながら放たれた。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォォン!

 

炎の刃が、極大の魔力刃を2つに割りながら進む。

 

「くっ!」

 

不利と感じたヘルキューレ<エレン>はダーインスレイヴから手を離し、攻撃を吸収する魔法陣を展開するイージスを構え両足に力を込めて踏ん張る。

そしてーーーー極大の炎の刃がイージスとぶつかるが。

 

ーーーービキビキビキビキビキビキ!

 

「なっ! イージスが・・・・!?」

 

イージスが予想を大きく上回る魔力を吸収して、内部から炎を漏らしながら砕けていき、そしてーーーー。

 

ーーーーボバァンッ!!

 

「くぅっ! あああああああああああああああああああああああっっ!!」

 

イージスが砕け、ヘルキューレ<エレン>自身、炎に呑み込まれていった。

 

「っ」

 

ーーーードガァァァァァァァァァァン!!

 

そしてウィザード<士道>は、真後ろを振り向きながら、シャイニングカリバー・アックスを構え、リングを顔の前に持っていき、勝利の姿勢を取った。後ろでは炎の刃が地面に切り傷と小さな火種を作って。

 

「かはっ!」

 

「っ」

 

が、ウィザード<士道>が声を聞き振り向くと、身体も衣服がボロボロになりながらも、エレン・メイザースがその場にヨロヨロと立ち上がっていた。

 

「エレンっ!」

 

「ぬっ! まだ生きていたかっ!」

 

「この場で仕留める」

 

ウィザード<士道>の前にプリンセス<十香>とエンジェル<折紙>がやって来て、武器を構える。

が、エレンの後ろから転移魔法陣が展開され、魔法陣が動き、エレンを包み込んだ。

 

「転移魔法陣!?」

 

「おのれ!」

 

「逃がさない・・・・!」

 

プリンセス<十香>がサンダルフォンブレードの斬擊を、エンジェル<折紙>がメタトロンウィンガーの光線を放ったが、攻撃が当たる寸前に、エレンは転移し、その場から消え失せた。

 

「逃したかっ!」

 

「くっ・・・・!」

 

≪まぁ何はともあれ・・・・取り敢えず敵はいなくなったな・・・・≫

 

「ーーーーふぃ~・・・・」

 

悔しそうに歯噛みするプリンセス<十香>とエンジェル<折紙>。ドラゴンから戦闘が終わった事を告げられたウィザード<士道>は、肩で小さく息を吐くと、変身を解除し、2人も解除した。

 

[ドラゴライズ プリーズ]

 

士道が変身を解除してすぐにドラゴンを召喚すると、士道くらいの大きさになったドラゴンの思念体が現出した。

 

「・・・・ドラゴン」

 

『ふん・・・・』

 

「ハァァァァァァァァァニィィィィィィィィィっ!!!」

 

『ぐぇっ!』

 

と、ソコで物凄い土煙を上げながら美九がドラゴンの首に抱き付き、ドラゴンが一瞬苦しそうな声をあげた。

 

「わーん! ハニー! 生きてて良かったですよー!」

 

大泣きしながら美九はドラゴンにチュッチュッチュッ、とキスの嵐を降り注ぐ。

 

『あぁ分かった分かった。皆にも心配をかけたな』

 

「うむ! 戻ってきて何よりだぞドラゴン!!」

 

「グスッ、良かった、です・・・・! 本当に・・・・!」

 

『よしよし四糸乃。ほれ、よしのんの胸の中で泣きなよ』

 

「くっ、復活&パワーアップって、何そのヒーロー的な復活劇!」

 

「羨望。王道展開過ぎます」

 

「・・・・まぁ、良かった、わね、ズズッ・・・・」

 

「七罪も、ほらハンカチ」

 

「・・・・私は不満がある」

 

皆が喜んでいる中、折紙だけは不満そうな貌となっていた。

 

「ドラゴンが甦った事は喜ばしい。だけど、それは士道とのキスの件が無くなった事を意味する。私達の努力は一体・・・・」

 

「ちょ、ちょっと折紙! 何言ってるのよ!//////」

 

士道とキスできない事が不服のような折紙に、琴里は顔を赤くした。

 

「ーーーーふむ。ふん!」

 

ーーーービシッ!

 

「ゲフッ!? な、何、すんだ、よ・・・・」

 

ドラゴンが尻尾で士道の後頭部を殴ると、士道はその場に仰向けに倒れた。

 

 

 

 

ー十香sideー

 

「ぬわっ! シドー!」

 

「ドラゴン! あなた何やってーーーー」

 

『あぁ、しまったなぁ。我だけでは経路<パス>の調整が上手く行かないなぁ。これではまた暴走を起こすかも知れないなぁ』

 

『えっ!?』

 

『今すぐ精霊の皆でコヤツにキスをして、経路<パス>を元通りにしないといけないなぁ』

 

わざとらしい事を話すドラゴンに、十香以外は何を言いたいのか察したが、十香は慌てた。

 

「な、何っ!? ドラゴン! それではまたシドーがボーソーしてしまうのかっ!?」

 

『うむその通りだ〈プリンセス〉よ。急いでコイツの唇に、君達の熱いキッスをぶつけるのだ!』

 

「ち、ちょっと待ちなさいドラゴン! あなたねぇ、だったら何で士道を気絶させたのよ!」

 

『起きていたらグチャグチャ言い出して、始まらないからな』

 

「了解。ならば魁<サキガケ>は八舞にお任せです」

 

「へっ!? ち、ちょっと夕弦! 何言ってんの!? 何言っちゃってんのぉっ!?」

 

「行動。さ耶倶矢。士道の為です。ここは1つ、ブチュ~っとやっちゃいましょう」

 

「ちょ、やめ、こ、心の準備が、じゃなくて嫌だってばぁ!」

 

「溜息。おやおや、日頃の威勢はどうしました? 尻込みするとは情けない」

 

「な・・・・っ! そんなんしてないし! 寧ろ余裕綽々だし!」

 

耶倶矢が大仰な調子を忘れたように叫ぶと、夕弦が疑わしげ視線を向けた。

 

「懐疑。本当でしょうか。耶倶矢は士道の前では借りてきたついでに喉をコショコショ撫でられた猫のようになりますし」

 

「なってないし! 適当な事言わないでくれる!?」

 

「擬態。はにゃあ・・・・士道にそんなトコ撫でられたら、耶倶矢おかしくなっちゃうにゃあ・・・・」

 

「ちょっと待ってそれ私の真似!? そんな台詞1回も言った事ないんですけど!?」

 

『ホラホラ、遊んでないでさっさとやりなさい〈テンペスト〉&〈ストーム〉』

 

声を上げる耶倶矢と取り合わない夕弦に、ドラゴンが手をパンパンと叩いて士道の方を向かせる。

 

「あぅ・・・・//////// えぇい! ままよ!」

 

「気合。その意気です耶倶矢」

 

ほぼヤケクソになった耶倶矢とそれに続いた夕弦が、どちらかとなく士道に顔を近づけーーーーその唇に、チュッ、と口づけした。

 

ーーーーカシャカシャカシャカシャカシャカシャ!

 

「ん!?」

 

「困惑。何ですかこのシャッター音は?」

 

2人が顔を上げると、いつの間にかその場にいたガルーダ達プラモンスターズが、精霊達のスマホのカメラでキスシーンを収めていた。

 

「にょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! アンタらいつの間にっ!?」

 

「安堵。プラモンスターズも復活ですね」

 

顔を真っ赤にした耶倶矢がプラモンスターズを追い回し、夕弦が、いや他の精霊達も、プラモンスターズの復活を喜んでいた。

 

『ほれ、次は〈ハーミット〉と〈ウィッチ〉だ』

 

「は、はい・・・・」

 

「ウェイっ!?」

 

四糸乃は少し緊張し、七罪は壊れたブリキ人形みたいなカクカクとした挙動で、士道に近づき、口づけをした。

 

『いや~ドラゴンくんも思いきったねぇ~、あんなに可愛がっている四糸乃と七罪ちゃんにキスをさせるだなんて~』

 

『我とて・・・・断腸の思いなのだ・・・・!!』

 

よしのんがからかうように言うと、ドラゴンが苦しそうに声を発した。溺愛している四糸乃と七罪、そして十香にこんな事をさせるのは口惜しい。しかし、ここまで面倒をかけてしまったお詫びも兼ねているのだ。

 

『ふぅ・・・・よし、次は〈ディーヴァ〉と〈イフリート〉だ』

 

「はぁい! 了解しましたぁ! さ行きましょう琴里さん!」

 

「いや、あのね・・・・」

 

『さっさとやれ』

 

逃げようとする琴里の頭をドラゴンが尻尾で押さえつけた。そして、美九は嬉々として、士道に顔を近づけ、キスを交わした後、唇を離す瞬間、舌を出して士道の唇をペロリと舐めた。その淫靡な仕草に、他の精霊達は思わず赤面した。

 

「うふふ、だーりんとのキスに、直前の七罪さんとの間接キス・・・・あーん、何だか得した気分ですー」

 

「は・・・・ッ!? 間接って、別に私は・・・・はっ! って、えっ、あれ、じゃあもしかして、私は四糸乃と間接キスしたの・・・・?///////」

 

「えっ? あ、あの・・・・////」

 

美九の言葉に、七罪がボンッ、と顔を赤くした。そんな反応を見て、四糸乃まで恥ずかしくなってしまう。

 

『ほれ〈イフリート〉』

 

「いやだからねぇ!」

 

往生際が悪く逃れようとする琴里だが、ドラゴンがボソッと耳元で呟いた。

 

『ウッドマンと言う爺に伝えておけ、【馬鹿共の首輪と監視はしっかりしておけ】、とな』

 

「っ! ドラゴン、あなたまさか・・・・!?」

 

知っていたのか、と問おうとする琴里だが、ドラゴンは黙って、士道の元へと琴里を連れていった。

 

「・・・・おにーちゃん」

 

琴里はついさっきまで殺そうとした兄へと声を発する。

 

「いつか、ちゃんと贖罪するから・・・・大人のキスは、もう少し待つね」

 

そう言って、士道の唇に、優しく口づけをした。

 

『次、〈エンジェル〉ーーーー』

 

「(サッ! ズキュゥゥゥゥゥン!!)」

 

『速いなオイッ!?』

 

ドラゴンが声を発する前に、折紙はアクセルベントかクロックアップか重加速でもしたかのように加速して、士道の唇にキスを交わした。

 

「レロ・・・・」

 

『やめいっ!!』

 

さらに舌を絡ませようとする折紙の首根っこを、ドラゴンと琴里と耶倶矢が渾身の力で引き剥がした。

 

『これで満足だろう』

 

「まだしたかった。けど、ありがとうドラゴン」

 

『ふん』

 

多分始めてと言えるドラゴンと折紙の会話に、琴里達が苦笑する。

そして、十香の番が来た。ドラゴンが十香に目を向けると、十香は独白するように呟く。

 

「・・・・・・・・私は」

 

士道には大恩がある。それこそ、一生かかっても返しきれないくらいに。

そんな士道を助けない道理などあり得ない。

だけれど、十香が士道にキスをするのは、それだけではない。

きっと、十香の心の中にあるのが報恩や道理だけでは無かった。

 

「ーーーーああ、そうか」

 

少し迷って、十香は初めて理解できた気がした。

言葉の上では何度も耳にしていたものと、己が裡にある得たいの知れない感覚が、初めて合致したのだ。

 

 

 

きっとこれがーーーー『好き』。

 

 

 

仲間達に対する『好き』とは、少しだけ違う、『好き』。

十香は、士道が好きだから。愛しくて堪らないからーーーー助けたいと思うのだ。

 

「ーーーーシドー」

 

十香はその名を呼ぶと、両手を伸ばし士道の頭を持ち上げ、そのまま士道の顔に近づきーーーーキスをする。

まるで、眠れる王子様を目覚めさせるお姫様の口づけのように。

 

「ーーーーーーーー」

 

瞬間、十香の心が暖かくなっていくのを感じた。そして十香が唇を離すと、士道がゆっくりと目を開いた。

 

「・・・・ん? と、十香? 一体どうしたんだ・・・・?」

 

いつもの声。いつもの反応。

ーーーー十香の大好きな士道が、ソコにいた。

十香は安堵に唇を緩ませると、小さな声を発した。

 

「教えてやらん。ばーか・・・・ばーか」

 

十香はそうとだけ残すと、士道の身体を抱き締めたのであった。

 

 

 

 

ー白い魔法使いsideー

 

「・・・・・・・・」

 

「これで、めでたしめでたし、でやがりますね」

 

「おや真那さん。ご無事でしたか?」

 

そんな一同から離れた位置にいた白い魔法使いと仁藤に、ビーストH<真那>がヨロヨロと戻ってきた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

[テレポート ナウ]

 

が、白い魔法使いだけは、『テレポート』でその場から離れようとした。

 

「白い魔法使い」

 

「五河士道に伝えておけ。1度失った信頼は、簡単には戻らない。もしもまた力に溺れた時は、今度こそお前を見限るとな」

 

「ええ。伝えておきます。我々国安0課も、〈ラタトスク〉に接触する日が来たようですしね」

 

「うむ。ではまた」

 

そうとだけ言って、白い魔法使いはその場から転移して行った。




次回、第十二章が終わります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。