デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
駄目そうな大人と遭遇
ー士道sideー
ーーーー午前3時。
いつもなら全員寝静まっている筈の時間。精霊マンションの一室に、煌々と灯りが灯っていた。
「よし・・・・15ページ目・・・・上がったぞ!」
目の下に隈を作り、額に眠気防止の為の冷却シートを貼った士道は、頭をフラフラさせながら声を発し、ペン入れの終わった原稿を掲げて見せた。
するとそれに呼応するのように、周りの机からも声が聞こえてきた。
「・・・・、こちらも、16ページ目が完了した」
「か、かか・・・・遅い。遅すぎるぞ士道・・・・颶風の御子たる我は、既に次のページに突入しておるわ」
「回、収・・・・。夕弦の原稿と一緒にスキャンしてデータ化しますので、貸して下さい・・・・」
折紙、耶倶矢、夕弦が順に、いつものより覇気がなく、疲労の色が滲んだ声でそう言った
『おぉ~い、軽食を作ってきたぞ。少し休め』
と、ソコでドラゴン(思念体)がサンドイッチが乗った皿
を尻尾で器用に持ちながら、士道達に渡していく。
「お、おぉ、胃に力が・・・・!」
「美味。流石はドラゴン。料理も美味しいです」
「・・・・・・・・」
「あったたたた・・・・」
黙々と食べる精霊達。士道が椅子から立ち上がって身体を反らし、伸びをすると、パキパキパキパキ、と言うあまり若者から鳴らない音がする。
『最早漫画家の仕事場だな』
ドラゴンが栄養ドリンクを冷蔵庫から持ってきて、士道や他の精霊達に渡しながらそう言った。
そう、広い部屋の中に大きな作業机が幾つも並び、この上には、インクにペン、定規等の画材が置かれ、眠そうな士道と精霊達。まさに漫画家の仕事場だ。
『ほら、七罪。お前が1番頑張っているのだ。少し休みなさい』
ドラゴンが奥の机ーーーー恐らく今この部屋の中で、最も極限状態にいる少女にそう言った。
「・・・・・・・・・・・・」
鬼気迫る表情で原稿にペンを走らせる七罪に言うが、何ら反応を示さず、ただジッと紙面を見つめ、正確に線を引いていく。
「・・・・おーい、七罪ー」
「・・・・・・・・・・・・」
士道が声をかけるが、反応はない。ドラゴンが小さくため息を吐くと、栄養ドリンクの蓋を開け、細いストローをさして七罪の口元に持っていく。
「・・・・んく」
すると、七罪は微塵も視線を逸らさぬまま、唇でストローを啄むようにして栄養ドリンクを飲み、飲み終えるとストローから口を離す。するとドラゴンがサンドイッチを口に差し出すと、まるでシュレッダー機のようにモグモグと咀嚼しながら口の中へと入れていきながら作業する。
恐ろしい程に凄まじい集中力だ。苦笑する士道は、七罪はドラゴンに任せて、自分の机に戻り、下書きの施された原稿に向かう。
「さて・・・・次のページ、行きますか・・・・」
士道に合わせるように、折紙達も作業を再開した。
そう。士道達は今、1つの目的の為、一致団結して事に当たっていたのだ。
ーーーー『漫画を完成させる』、と言う目的の為に。
事の発端は数日前ーーーー。
* * *
真那と琴里の騒動を終え、雑居ビルから出た士道は、ビルから10分も離れていない距離にある商店街へと向かった。
程なくして、少し前までクリスマス一色だった街並みが、次に来る正月に向けての装いが変わった商店街に出た。
「何て言うか、毎年の事だけど・・・・商魂逞しいなぁ」
≪寧ろそうでなければ商売などできんだろうが≫
ボヤく士道だが、別に否定したい訳ではない。
「さてと、今日は何にするかな・・・・」
≪昨日はクリスマスで、豪勢にしてしまったからな。今日は手頃に和食、最近魚を食べてないから焼き魚か煮魚かムニエルはどうだ?≫
「ーーーーうん。そうだな」
ドラゴンの言葉に頷き、士道は買い物に向かった。
そして30分後、時刻は15時00分。ドラゴンも昼寝モードに入り。買い物を終えた士道は商店街を後にして、人目がない所に移動し、『スモール』で買い物袋を小さくして胸ポケットにしまい、『コネクト』でマシンウィンガーを出して帰路につこうと考えた。
がーーーー。
「・・・・ん?」
道の角を曲がった所で、士道は不意に足を止めた。何しろ士道の前方に、1人の少女がうつ伏せに倒れていたのだ。
「な・・・・っ!? だ、大丈夫ですかっ!?」
予想外の事態に、士道はビクッと肩を震わせ、慌てて駆け寄り、買い物袋を地面に置いてその少女を抱きおこーーーーすのを止めた。
もし交通事故か何かで頭を打っていたりしていたら、体制を変える事は命取りになると、バイクの免許を取る時に教習所で習ったからだ。
こういう時は落ち着いて、取り敢えず声をかけて意識があるのかを確認した後、救急車を呼んだ方が良いかも知れない。と、考えた士道が倒れた少女に声をかけようとした瞬間、不意に少女の指先がピクリと動いた。
そしてそれに続くようにフラフラと頼り無げにその頭が持ち上がる。それによって、地面に口付けしていた少女の容貌が見られるようになった。
年の頃は士道の1つか2つ上くらい。灰色のショートヘアーに吊り目がちの瞳に薄い唇。折紙のように線の細いスレンダーな体型。メンズスーツを着ておめかしをすれば男装の麗人と呼ばれる程に鼻筋の整った端正な顔をしてはいるが、深い疲労の色が見て取れた。ゲッソリとした頬に令音程ではないが分厚い隈。交通事故ではなく、疲労で倒れていたと見える気がした。
とは言え、意識があったのは僥倖だ。士道は少女の肩を支えるように抱くと、彼女が身を起こすのを手伝ってやった。
背中側を見ただけでは分からなかったが、どうやら部屋着の上にコートを纏っただけの格好をしていた。この寒空の下に足元は靴下も穿かずサンダルを引っかけただけである。近隣に住む住人か、偏執なポリシーの持ち主しかしない格好だ。
と、少女は目の焦点を合わさるように士道の顔を見ると、カッサカサの唇を震わせるように動かし、蚊の鳴くような声を発する。
「ーーーーなか、ーーーーた・・・・」
「え? な、何ですか? どうしたんですか?」
士道が聞き返すと、少女はもう1度、その言葉を繰り返した。
「・・・・お腹、空いた・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
思わず目を点にする士道の耳に、少女のお腹から、ぐー、きゅるるるるる・・・・と言う音が聞こえた。
◇
それから数分後。士道はお腹が空いて動けないと言い張る少女を仕方なく背負い、その案内に従って家まで送り届ける事にした。
「・・・・んー、悪いねー、少年・・・・」
背に背負った少女が覇気のない声を発してくる。
「いえ・・・・それより本当に大丈夫ですか? 病院とか行かなくて・・・・」
「あー、いーのいーの。別に病気って訳じゃないし。何より、何より、そんな所に行ったら時間取られちゃうでしょ? って言うか敬語とかいらないよー。そう言う固苦しいのは苦手でさー」
「はあ・・・・そうですか」
「あー、ほら直ってないし」
「そ、そう・・・・か」
ヒラヒラと手を振る少女の適当な調子に、頬に汗を垂らす士道。
線の細い見た目に反して豪胆と言うか、大雑把な少女だ。今時空腹で倒れるだなんて余程貧しい生活をしているのかと心配になる。
「あ、そのマンションでお願い」
と、そんな事を考えている士道に、少女が右手で指差した方を見るとソコには、辺りの建物の倍の高さがあろうかと言う高層マンションだった。
背中の少女とのイメージが結びつかないので、思わず目を見開く士道。
「え? ここか?」
「んー、そだよ。・・・・あ、もしかしてもうちょっとボロいアパートとかの方がそれっぽかった?」
「い、いや、別にそんな事は・・・・」
図星だったので口ごもる士道。背中の少女はカラカラと笑う。
「えっへっへっ、良いってば別にー。何て言うの? ほら、ギャップってヤツよ。そう言うのグッとこない? 男子的に」
「・・・・や、あの、ちょっと良く分からん」
嘘である。例えば清楚で大人しいあの四糸乃が大胆な水着を着ていたら確かにギャップにグッと来るが、今はこの背中の少女の性格の方が今一掴めないのである。
「ーーーーあ、少年、悪いんだけど部屋までお願いしちゃって良い? 何かねー、不思議な事に足が動かないんだよねー。やっぱ使わないと退化していくのかなー?」
「はあ、まあそれは良いけど・・・・本当に病院に行かなくて良いのか?」
お腹を空かせて倒れるなんて、“漫画のようなシチュエーション”を体現した少女を心配し、士道は少女を背負い直し、マンションの入口に歩いていった。
それからはーーーーツッコミの連続だった。
「あ、部屋は1801号室で、暗証番号はは1234ね」
「セキュリティ!? そんなの俺に教えちゃダメだろう!」
「えっ? 少年そう言うのに興味あるの? やだ、意外」
「一般論の話!」
「実は草食系に見えて肉食系?」
「人の話聞いてる!?」
「少年は女子の部屋に侵入したらまずどんな事するの?」
「聞いてないな!?」
などとマンションの入口で騒いでいたら、ロビーの中からマンションコンシェルジュの女性に睨まれ、力無い愛想笑いを浮かべて、少女の部屋番号と暗証番号を入力し、速やかにマンションに入っていき、エレベーターに乗り、部屋に到着すると、部屋の鍵を貸してくれと言えば、少女がお尻のポケットにあると言い、またもや騒がしい漫才を繰り広げるが、割愛する。
漸く鍵を渡され、部屋へと入り、寝室の場所を指示されて部屋に入ると、案の定か予想通りか、寝室は夥しい数の漫画に埋もれ、壁のほぼ全面が本棚と化しているのに、それでも収まりきらず部屋に堆く積まれていた。
さらに酷いのはベッドだ。大きなベッドの真ん中に人1人が横になれる程度のスペースしか無く、その周囲も何冊もの本が錯乱していた。
「うんとこしょっと」
少女は士道の背中から無駄に滑らかな動きでベッドのスペースに収まった。
「んー、やっぱり落ち着くわー」
「はあ・・・・」
漸く面倒な少女を背中から下ろし、一息吐いた士道は、部屋の奥に、“とある物”を発見した。
「これは・・・・」
初対面の少女の部屋をジロジロと覗き見るのは失礼だが、好奇心が勝り、そちらにある物をマジマジと見る。
それは大きな作業机であり、様々な画材が所狭しと並び、机の全面を照らせるようにこれまた大きな蛍光灯が設置されており、机の中央にはB4サイズの厚手の紙が1枚置かれていた。
コマ割りがされ、その上にキャラクターと背景、台詞の吹き出しが描かれ、ペン入れは全て終わっているが、下書きの鉛筆線が残ったままであった。
そうーーーー士道も直接見るのは初めてだったが、恐らく間違いない。そこにあるのは、描きかけの漫画原稿だった。
「え、もしかして、漫画描いてるのか?」
士道が問いかけると、ベッドに収まっていた少女は、億劫そうに片手を上げてきた。
「んー? そーだよー。一応プロ。・・・・作業に熱中していたらご飯食べるの忘れちゃってさー・・・・仕方なく近所のコンビニかスーパーでも行こうとおもって外に出たら、地球の重力に魂が引かれちゃってねー」
言って、上げていた腕をボスン、とベッドに落とす。士道は渋い顔を作りながら苦笑した。
「そ、そう言うもんか・・・・でも、プロだったらアシスタントとかいるんじゃ・・・・」
「んー、普通はそうなんだろうけど、あたしは1人で仕上げまでやっちゃう事が多いからなー。まあ1人ってのも気楽で良いよ。たまに死にかけるけど」
「それって致命的な欠点だと思うが・・・・」
頬をかきながら言った士道は、もう1度机の上の漫画原稿に視線を落とすと。
「・・・・んん?」
眉根を寄せて原稿に顔を近づける。
まだ仕上げがされていない為一瞬分からなかったが、その絵柄に見覚えがあった。
「・・・・ってこれ、もしかして『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>』!?」
そこにあったのは、つい先程中津川と話していた、本条蒼二作の漫画『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>』の原稿だったのだ。
「お? 良く知ってるね。もしかして読者さん? まいどー」
少女がもう1度手をヒラヒラと振るが、それよりも気になる事があり、士道は身体の向きを少女へと向けた。
「いやちょっと待ってくれ。それってつまり、君が『本条蒼二』・・・・?」
「んー、そだよー」
「お、男じゃないのか!?」
「あー、それ? ペンネームよ、ペンネーム。本名は『二亜』って言うの。『本条二亜』。宜しくねー」
言って少女ーーーー二亜がニッと笑う。が、士道はそれ以外に気になる事があった。
「いやいやいや・・・・おかしいぞ。『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>って俺が小学生の時からやってる漫画だし、本条蒼二のデビュー自体もっと前の筈だし・・・・」
どう見ても二亜の見た目は若作りに成功しても20代前半だ。これならば絵柄を完全にトレースした娘が2代目を襲名したって言えばまだ説得力がある。
しかし、二亜はそんな士道の想像を見透かしているようにフフンと肩を竦めて見せた。
「残念ながら、本条蒼二は最初から今まであたし1人だよ。因みにデビューは今から大体10年くらい前かなあ」
「じ、10年って・・・・」
あっけらかんとした様子で信じがたい事を口にする二亜に、士道は怪訝そうな表情を向けた。
「(ドラゴン・・・・! ドラゴン!! お前半分起きてるだろ! どういう事か分かるかコレ!?)」
≪ふぁ~ぁ、また変なのに関わりおって、この生きているだけで面倒事を引き寄せる『歩く厄寄せ』め≫
「(うるせぇな!)」
最早自分の頭では整理がつかないから、知恵袋のドラゴンに頼る士道。
「(んで、この人どう思うよ?)」
≪どう思うと言われてもなーーーーん、ちょっと待て、そのダメ人間前の女は・・・・≫
ぐー・・・・きゅるるるるるるるるる。
≪「は?」≫
ドラゴンの言葉を二亜のお腹から響く大きな悲鳴で遮った。
あっけらかんとしていた二亜がグッタリしながら弱々しく声を発してくる。
「し、少年・・・・」
「はいはい・・・・ちょっと台所借りるぞ」
≪・・・・・・・・・・・・・・・・≫
「うーい・・・・」
何だか拍子抜けてしまい、ドラゴンも呆れた様子だ。士道はため息と共に頭を掻いた。
「(もしかしてだけど、若狭を保つ為にライフエナジーとかを啜っているとか?)」
≪それはヴァンパイアの祖先だろうがドアホ≫
ーーーーペチン!
「あてっ」
などとアホな漫才をしつつもキッチンにを見ると、以外にも整頓、いや、ウッスラと埃が積もっていた。
「・・・・これって」
≪外食とコンビニ弁当とインスタント食品で飯を済ましているのだろう≫
軽い目眩がした士道は台拭きを使ってキッチンを綺麗にすると、冷蔵庫を開けた。
「・・・・さ、酒だけ・・・・」
≪アル中になるなこれは≫
ビールは勿論、日本酒の一升瓶まで入っていた。仕方なく玄関に置いた買い物袋から食材をだし、お手軽雑炊を作った。
雑炊を器に移して先程の部屋に戻っていった。
「ほら、できたぞ。熱いから気を付けてな」
「わお! この世の全ての食材に感謝を込めて、いっただっきまーす!」
雑炊をベッドの近くの台に置くと、二亜は飛び起きて、パン! と見事に手を打ち、雑炊を勢い良く頬張った。
「ほあっちゃあ!」
案の定、暑熱かったらしく、二亜が身体をビクッと震わせる。
「だから言ったのに・・・・」
「はふー、はふー」
教訓を得た二亜が、今度はスプーンに息を吹き掛けてから口に運び、雑炊を味わうように口を動かした後、ゴクンと喉を鳴らした。
「っあぁー・・・・」
二亜はまるで温泉に浸かったオッサンのように深く息を吐くと、感極まったように目に涙を浮かべながら、スプーンを動かした。
「うんまぁ・・・・なんちゅうもんを食わせてくれるんや・・・・なんちゅうもんを・・・・」
等と言いながら、残った雑炊を次々と平らげていき、5分も持たずに器の中の雑炊を空にしてしまった。
「ふぃー、ごっそさん。いやー、美味しかった。温かいご飯とか食べたの1週間ぶりくらいだわ」
「1週間・・・・」
≪ダメ人間確定だな≫
士道は苦笑しながら食器を纏め、キッチンに戻ろうと扉の方に足を向けた。
「じゃあ、これ洗ったら俺帰るから。これから倒れる前にちゃんとご飯食べてくれよ」
「あー、ちょっと待って頼みがあんのよ」
と、部屋を出ようとする士道の背に声をかけると、ビッと右手の親指で机の上ーーーー書きかけの原稿を指した。
「さっきも言った通り、あたしアシスタント雇ってなくてさ。簡単な作業だけで良いから、手伝ってくれない? お願い! お給料に色つけるからさぁ」
「・・・・へ?」
想定外のお願いに目が丸くする士道は、すぐに二亜の要求を理解する。
「い、いやいやいや。何言ってるんだよ。そんなの無理だって」
「えー、いーじゃーん このままじゃ次の原稿落としちゃいそうなのよ」
「プロの原稿なんて触った事ないし。もし汚しでもしたら責任取れないぞ」
「だいじょーぶだいじょーぶ。ゴムかけくらいだから。意外と体力使うのよ、あれ」
「そう言われても・・・・」
渋る士道に、二亜がベッドから流水のように滑らかな動きで、それはもう見事としか言いようがない土下座をして、士道に懇願した。
「お願いお願いお願い! マジ手が足らなくてさー! このままじゃ次の原稿が間に合わないのよ! そんなの事になったら武術を修めた編集者の人に殺されちゃう! 運良く殺されなくても、出来上がるまで棘のないアイアンメイデンの中に監禁されるか! 時間内に出来上がらなかったらコロッケにされる工場に亜空間を使って連れていかれちゃうのよっ!!」
「何処の暗黒出版社っ!!?」
≪それはもはや出版社ではなく悪の秘密結社ではないか?≫
本気で命の危険を感じているのか、ブルブルと震える二亜を見て、簡単な作業だけと条件付きで手伝った。
作業机がある大きな部屋。机には様々な文房具が纏められ、壁の全面は作画資料と思しき画集や写真集が収まっている本棚があった。雑然としながらも、ある種のストイックな雰囲気がある、まさに職人の仕事場と言う赴きがあった。
そこでゴムかけだけの筈がベタ塗りとかやらされた。断ろうとしたら、士道が中学生時代に『僕の考えた最強キャラクター』のイラストを作っていた事を見抜き、さらに名探偵ヨロシクな推理力で黒歴史を予想して口にすると、あっさり白旗をあげた。
≪・・・・・・・・・・・・≫
ドラゴンは二亜を訝しそうに睨んでいた気がするが、作業に集中する士道。
作業を終えると、二亜が士道へのありがた迷惑な応援とサービスとして、どこぞのロイヤルな艦船のメイドのような露出の高い扇情的なメイド服を着ていたが、士道は帰ろうとする。給料を渡そうとする二亜だが士道は断り、それでは自分の気がすまないと言う二亜が、今度の土曜日にアキバでデート、しかも費用はこっち持ちと言い出した。
荷物持ちだろう、と士道が指摘すると、オーバーリアクション気味に驚きのポーズをする。士道は断ろうとする。
「はあ・・・・悪いけど、他を当たってくれないか? 友達に頼んでみたらどうだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
≪む≫
士道の言葉に、二亜は一瞬、ふっと表情を曇らせたのをドラゴンは見逃さなかった。
が、すぐに先程までの調子に戻って、頭をかいてくる。
「いやー、はは。あたし友達いないからさー」
「いやでもな・・・・」
≪良いではないか。デートしてやれ≫
「(えっ? どうしたドラゴン? いつものお前なら、くだらんの一言で終わらせるのに?)」
「あっれぇ? 少年ーーーー“身体の中のドラゴンくんと会話してるの”?」
「っ!!?」
二亜が意味深な台詞を言った瞬間、士道はビクッと肩を揺らした。
「な、何の事・・・・」
惚けようとする士道に、二亜はニッと唇の端を上げるようにしながら、ドラゴンは士道の鈍感さに呆れながら声を発してくる。
「ーーーー精霊をデレさせるのが、君の仕事じゃなかったのかな、少年。いや・・・・“〈仮面ライダーウィザード〉の五河士道”くん?」
≪たわけ。まだ気づかんのか、その女は精霊だ≫
「なっ・・・・?」
2人の言葉に、士道は間の抜けた声を発した。
次回、ドラゴンが喉から手が出る程の天使が現れる。