デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回、最後であの○%♯‡§◇△†┛╋!


二次元しか愛せない精霊

ードラゴンsideー

 

『ほぅ、二次元しか愛せない精霊、か。まぁある意味では現代的な精霊だな。・・・・それで、どうにかして小僧への好感度を上げようとあれやこれやとやったら、逆に好感度を下げてしまったと?』

 

「うっ・・・・!」

 

「むぐっ・・・・!」

 

『うぅっ・・・・・・・・』

 

〈ラタトスク〉の地下施設の会議室。円卓の上に座るドラゴンの言葉に、椅子に座った士道と琴里はバツが悪そうに渋面を作り、〈フラクシナス〉のクルー達は申し訳無さそうに項垂れる(令音は解析に回り、神無月は見下されたこの状況に興奮している)。

あの後、【二次元にしか恋したことない】と言った二亜の好感度を上げようとして、二亜が漫画家になるきっかけになった漫画の男性キャラになって口説こうとした。最初は好感触だったが、そのキャラがやらない行動を取り、【自分の大好きなキャラを汚すなぁ!】と言わんばかりにキレた二亜により、デートが終わってしまった。ついでに、士道の頬に大きな紅葉まで作った。

 

『いきなり小僧に全く知らないキャラクターをやれだなんて、何を無謀な事を考えておるのだ琴里? 貴様も知らない漫画のキャラを演じろと言われて、すぐにそれができるのか?』

 

「うぐぅっ・・・・!」

 

ドラゴンの正論に、さらに渋面になる琴里。

 

『そして今度は小僧似のキャラクターのゲームで好意を抱いて貰おうとしたら、〈囁告篇帙<ラジエル>〉で知られ、更には自立カメラでプライバシーを覗いていた事もバレて、自分を騙して乙女心を弄ばれたと思われ完全にご破算。あれでもあの娘も年長者だ。許してあげようとした感情があったかも知れんが、これで完全に怒らせてしまったなぁ?ーーーー任せろと言ったのは誰だ、琴里?』

 

「ぬぐぅっ・・・・!」

 

『言っただろうが、さっさと封印しようと強引なやり方を強行すれば、状況をややこしくさせかねない、と。小僧と同じで人の忠告は右耳から左耳なのかお前も?』

 

「う、うぐぬぅぅぅぅ・・・・っ!」

 

完全な正論の口撃に、琴里はグゥの音がでないほどに渋面に顔を歪め、白旗をあげるしかなかった。

 

『・・・・まぁ、もう起こってしまった事をこれ以上言ってもどうにもできん。皆と知恵を出し合うしかあるまい』

 

と、ドラゴンは円卓に座った十香達を見て、ため息混じりにそう言うと、折紙が小さく挙手して口を開く。

 

「話を聞いてみると、二次元・・・・つまり今回の精霊は、漫画等のキャラクターにしか恋した事がないと言う事?」

 

「おそらく・・・・ね」

 

流石は頭脳派の折紙である。琴里としては、新たな精霊の攻略にあまり彼女達を関わらせたくないのが本音だが。

 

【『そう言う台詞は、攻略が上手く行っているヤツが言うモノだ』】

 

と、ドラゴンに一蹴され(かなり悔しい)、十香達をアドバイザーとして呼んだのだ。

 

「あー、なるほどー。私の知り合いのアイドルにもいますよ、そう言う子」

 

長い紫紺の髪をクルクル絡ませながら、仕事が終わって間もない駆けつけてくれた美九が続ける。

 

「【私の初恋の人はジーク様ですー】、って公言してるんです。あ、『ジーク様』って言うのはアニメのキャラクター何ですけど。要はキャラ付けの1つですよぉ。ファン層が被る趣味を持つ事で親近感を覚えて貰って、ファンに嫉妬を覚えさせない対象を作ってるんです。まあその子彼氏さんがいるんですけどー」

 

言って、美九がアハハと笑う。

 

「・・・・二亜もそのアイドルと同じ口なら良いんだけど・・・・どうやら数値を見るに、嘘を吐いているとも思えないのよ」

 

「あらー」

 

琴里が苦い顔をし、美九が目を丸くした。

するとその横で、耶倶矢がムウと唸る。

 

「ふん、本条蒼二が女だったとはな・・・・我が目を謀るとは中々やりよる」

 

「あ、耶倶矢も知ってたのか?」

 

士道が問うと、耶倶矢はコクリと頷く。

 

「当然だ。颶風の御子は大衆の娯楽にも通じておるわ」

 

「密告。耶倶矢は主に少年漫画を好んで読むのですが、バトル漫画やスポーツ漫画の間に、ちょっとエッチな漫画を挟んで買っているのです」

 

「ちょっと夕弦!」

 

『思春期の中学生かお前は?』

 

夕弦がヒソヒソと話をするように口元に手を添えて言うと、耶倶矢が顔を真っ赤にしながら叫びをあげ、ドラゴンが呆れたような声を漏らす。

 

「適用な事言わないでくれる!? て言うかあれだし! 夕弦の読んでる少女漫画の方がヤバめの描写多いじゃん!」

 

「疑問。ヤバめとはどうヤバめなのでしょうか。具体的事例をあげて説明してください」

 

「そ、それは・・・・男と女がベッドで・・・・」

 

「復唱。良く聞こえません。もう1度お願いします」

 

「う、うぐ・・・・むぅ・・・・////////」

 

耶倶矢がさらに頬を赤くして悔しそうな顔を作る。

 

『はぁ・・・・』

 

ーーーーペシッ、ペシッ、

 

「あだっ!」

 

「痛覚。あう」

 

ドラゴンが尻尾ド突き(威力弱)で八舞姉妹の頭を叩いた。

 

『イチャつくのは〈シスター〉を攻略してからにしてくれ』

 

「ふ、ふん。分かっとるわ」

 

「反省。すみません」

 

皆がムウと考え込んで暫くすると、四糸乃がオズオズと手をあげる。

 

「あの・・・・良いですか?」

 

『勿論だ。はい、四糸乃くん』

 

ドラゴンが頷くと、四糸乃は口を開く。

 

「その・・・・やっぱり、もっと時間をかけて二亜さん、と仲良くなっていった方が、良いと思います。キチンと向き合えば、士道さんの良さを分かって貰えると思います」

 

「四糸乃・・・・」

 

「・・・・やっぱ四糸乃は女神だわ・・・・」

 

『うむ。四糸乃は慈愛と博愛精神の権化だな』

 

士道と七罪とドラゴンがそう言うと、四糸乃は恥ずかしそうに頬を染めた。

が、琴里はムウと唸りながら顎に手を当てる。

 

「確かに・・・・その方法が1番真っ当ね。如何に2次元にしか恋した事が無いって言っても、誠実なアプローチを続けていけば心を開いてくれる可能性はゼロじゃないわ」

 

『ま、美九が心を開いたのも、ソレだったからな』

 

ドラゴンがチラッと美九を一瞥すると、美九は投げキッスをし、ドラゴンはやれやれと肩を落とすも、その投げキッスを食べるように首と口を動かし、美九はキャー! と、嬉しそうな声をあげた。

 

「ーーーーじゃあ、長期戦にシフトしていくのか?」

 

苦笑した士道が問うと、琴里は難しげな顔を作る。

 

「最悪そうするしかないけれど・・・・あくまでそれは最後の手段よ。問題は時間。こっちがじっくり攻略している間に、ワイズマン達ファントムにDEMが二亜の居場所を嗅ぎ付けないって保証はない限り、あまり悠長な事をしていられないわ」

 

「す、すみません・・・・」

 

琴里の言葉に、四糸乃は申し訳無さそうに肩をすぼめる。

 

『気にするな四糸乃。時間が問題とは言え、強引に攻略しようとしてこんな状況になってしまったのだからな』

 

ドラゴンがジトッと半眼で琴里を見ると、琴里はまたバツの悪そうな顔になる。

 

「そうね。四糸乃が謝る必要はないわ。私も本当はその方法を取りたいもの。・・・・ちゃんと見てもらえば、士道が漫画やアニメのキャラ何かに負けないって事を、分かって貰えると思うし」

 

琴里が少し視線を逸らしながら、チュッパチャプスの棒をピコピコ動かし、そう言われて少しむず痒くなったのか、士道は頬を染めながら頭をかくが、即座にデレデレしてる場合か、と言わんばかりのドラゴンのツッコミを受けた。

そして、先ほどから腕組みをしながら首を傾げていた十香が、士道の方に視線を向けた。

 

「なあシドー。二亜はなぜ2次元のキャラクターにしか恋をした事がないのだ?」

 

「え? うーん・・・・それは・・・・」

 

『(・・・・恐らくだが、あの天使がその原因に大きく関わっているのかも知れんな)』

 

十香の発した素朴な疑問に、士道は答えられなかったが、ドラゴンは推測を立てていた。

 

『(全知の天使〈囁告篇帙<ラジエル>〉。人物を特定すれば、その者のプロフィールが全て分かると言う事、つまり、“その人物の内面も知る事ができる”。使い手にとっては最高の武器にも、最悪の武器にもなる諸刃の剣となる。もしかすると、“美九と同じようになってしまったのかも知れんな”)』

 

ドラゴンが考えていると、琴里が人間だった頃の二亜の足跡から、調べようとしているが、それはそれとして、こちらでも方針を決めようとしていると、七罪が、士道を漫画本にしようと言い出した。

 

「2次元へのアプローチがおかしく(バシッ!)うぎゃんっ!!」

 

『いや、ナイスアイディアかもしれん。流石だ七罪』

 

「うえ?」

 

ドラゴンが尻尾ド突きで士道を黙らせそう言うと、七罪は冗談を称賛されて間の抜けた顔になる。

そして、ドラゴンの意図が分かった折紙も口を開く。

 

「『士道』と言うキャラクターが変身する〈仮面ライダーウィザード〉が登場する漫画を制作する、と言う事?」

 

『な・・・・っ!?』

 

その提案にドラゴンを除いた全員が(十香は1拍遅れて)声をあげた。

 

「成る程。士道を主人公として〈仮面ライダーウィザード〉が活躍する漫画・・・・か。確かにそれなら、2次元のキャラクターって言えるわね。幸い二亜は特撮もイケる口だって言ってたし」

 

「お、おいおい、ちょっと待ってくれよ。仮にそれができたとしても、漫画の中の俺って言うのは実際の俺と完全に一緒って訳じゃないだろう?」

 

琴里が口元に手を当てながら真剣な顔を、士道は渋面な顔になる。

が、それに反論するように、八舞姉妹が発言する。

 

「ふん、ならば、現象と乖離が起きぬように、事実のみを描けばよいではないか。ーーーー幸い、士道の周りには漫画のネタになるような事が山ほど起きているからな」

 

「首肯。士道そのものを描写するのであれば、二亜を騙す事にもなりません」

 

「い、いや、でも、そもそも二亜だって好みって言うもんがあるだろ? 重要なのは二亜がそれを読んで、本当にキャラクターを好きになってくれるか・・・・」

 

「だ・・・・大丈夫、です・・・・」

 

ぐちゃぐちゃ言う士道に、四糸乃がいつになく強い調子で、勇気を持って言葉を返す。

 

「士道さんは、私達を助けてくれました・・・・士道さんが今までしてきた事は真っ直ぐに伝えれば・・・・きっと二亜さんも士道さんを好きになってくれます」

 

「う、うーん」

 

四糸乃にソコまで言われると、照れと困惑で口ごもる。

それを皮切りに、他の皆が次々と案をだし合い、最終的に多数決で、〈仮面ライダーウィザード〉の漫画を描くのが決定した。

と、ソコで、会議室の円卓に設えられているコンソールから、ピピピピピピ・・・・と言う音が鳴り響いた。

 

「へ・・・・? 何の音だ、琴里」

 

「外部回線からの通信よ。見覚えのない番号だけど」

 

『誰なのか分かるがな』

 

「えっ? 誰だよ」

 

『・・・・〈シスター〉だ』

 

『なっ!』

 

一同がドラゴンの言葉に驚き、琴里が通話ボタンを押すと、会議室のスピーカーから、二亜の声が聞こえた。

 

《ーーーーや。企んでるねー、少年》

 

『っ!』

 

「に、二亜・・・・!?」

 

一同が驚くが、相手は全知の天使を持っている。暗号やらセキュリティなんて何の意味もないのだ。

 

「全部お見通し・・・・って訳か」

 

《まあねー。基本的にネタバレ嫌いだから、〈囁告篇帙<ラジエル>〉を使ってこういうやり方はしたくないけど、またあたしの好きなキャラや乙女心を玩具にされちゃたまんないからねぇ》

 

口調は砕けているが、明らかに怒っていた。

ドラゴンが無言でジト目になりながら、琴里や〈フラクシナス〉クルーに、『状況をややこしくさせおって、この役立たず共めが!』と言う視線を向けてきて、琴里は苦い顔を作り、クルー達は面目ないと項垂れた。

 

《・・・・ま、どうやら方針変更したみたいだから良いんだけど、その作戦、前提としておーっきな穴がないかなぁ? 何であたしがすんなり読むと思ってるの?》

 

「な・・・・」

 

確かにその通りだ。あんなに怒らせた二亜が無条件で読んでくれるなんて虫の良い話だ。

 

《だってそうっしょ? あたし超忙しいし、読める本の数も限られてるんだよ? 実際、今日買ってきた本もまだ1冊も読めてないし。DEMに監禁されてた間に出てたお気に入りシリーズはまだいーっぱいあるし。そんな不純な動機で描かれた素人の漫画なんて読んでる暇ないの! ま・・・・さっきまでなら読んでたかもしれないけど、今のあたしの怒りはクライマックスになって、阿修羅すら凌駕しているからね。読んでやるもーんか!》

 

「そ、そんな・・・・!」

 

「ーーーー待ちなさい」

 

泣きそうになる四糸乃だが、琴里が声をあげた。

 

《うぅん・・・・? ああ、君が琴里ちゃん? 君のお陰であたしの心は酷く傷ついたんだけど? ドラゴンくんのアドバイスを無視して強行手段を取ったお間抜けな司令官ちゃん》

 

どうやら〈囁告篇帙<ラジエル>〉で、琴里か士道の情報から、ドラゴンのアドバイスを知ったようだ。

 

「その事に関しては、確かに私が性急過ぎたわ。ごめんなさい。ーーーーでも、それはそれとして、私達の作る漫画は、〈仮面ライダーウィザード〉の活躍は、〈囁告篇帙<ラジエル>〉の能力で文面では知っているけど、実際に見た訳ではないわよね?」

 

《ーーーーまぁね》

 

「だったら、私達が作る漫画で、それを見せてあげる。それなら、読む価値があると思わない?」

 

《・・・・まぁ確かに、特撮も大好きなあたしとしては、興味が無い?と聞かれたら嘘になるけど。あたしが読みたいと思えるような漫画、作れる?》

 

「ええ作って見せるわ。しかも、絶対的な基準を用いてね」

 

《絶対的な基準・・・・?》

 

二亜の問いに琴里は至極真剣な調子で応える。

 

「ええ。ーーーー売り上げよ」

 

『な・・・・!?』

 

『(まぁそれしかあるまいな)』

 

その言葉に、二亜だけでなく、会議室に集まった大半の面々が、一斉に琴里に視線を注いだ。

 

《ふうん・・・・面白いね。あたしに、『本条蒼二』に本の売り上げで勝つって、本気で言ってんの?》

 

「ええ。もしこちらが勝ったなら、大人しく読んで貰うわよ」

 

《・・・・・・・・あっはっはっ! 良いよ。やってみ。本当に勝てるもんならね》

 

数秒の間黙った後、大きな笑い声を響かせ、二亜は通信を切った。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

暫しの間、会議室に沈黙が流れる。

 

「お、おい、琴里。お前何言ってんだ・・・・? 相手はプロの漫画家だぞ?」

 

「仕方ないじゃない。ああもハッキリと読まない宣言されちゃったんだから」

 

「って言ったって・・・・! もっと計画を立ててからでも・・・・」

 

『今まで計画通りにやろうとして攻略が成功できた試しが、ただの1つでもあったか?』

 

『うぐっ!』

 

ドラゴンの鋭いツッコミに、士道だけでなく琴里や〈フラクシナス〉クルーの大半が黙る。

十香の時ーーーー折紙の狙撃で暴走。

四糸乃の時ーーーーよしのんが行方不明になる。

狂三の時ーーーー本体ではなく分身体。

琴里の時ーーーー折紙が暴走。

耶倶矢・夕弦の時ーーーー盛大な姉妹喧嘩。

美九の時ーーーー女装して近づくが結局バレてご破算。

七罪の時ーーーーお化粧等をするが逃走される。

折紙の時ーーーー『改変前の記憶』を思い出して暴走。

正直、今まで計画をしてきて、上手く行った試しがない。出たとこ勝負と言っても良いくらいの杜撰な攻略であった。

 

「ーーーーまぁ、安心しなさい。何も考えが無い訳じゃないわ」

 

気を取り直そうと琴里はそう言って、咥えていたチュッパチャプスの棒をピンと立てた。

 

 

 

 

 

 

 

ー二亜sideー

 

「・・・・ふん」

 

自室のベッドで横になりながら、二亜は小さく息を吐いた。今日買ってきた漫画やライトノベルを読む気になれず、さりとて漫画のアイディアを練っておらず、ただのボウっと天井に視線を泳がせていた。

無気力状態の理由は分かりきっている。ーーーー先ほど覗いてしまった〈囁告篇帙<ラジエル>〉の情報と、直接通話をした士道と、その妹の琴里達だ。

何と彼らは、士道を、〈仮面ライダーウィザード〉を主人公にした漫画を描き、それを二亜に読ませる事で士道本人にも好感度を持たせようとしているらしい。

 

「・・・・あたしも舐められたもんよねぇ」

 

二亜は不機嫌そうに呟いた。

確かに二亜は漫画やアニメが大好きだ。2次元にしか恋した事がないと言う言葉にも嘘はない。特撮も大好物だと言う言葉も本心だ。

〈囁告篇帙<ラジエル>〉で文面でしか知らない〈仮面ライダーウィザード〉の活躍を、漫画の形で見られるのは、正直嬉しい限りだ。お気に入りのライトノベルが漫画で読めるような嬉しさやワクワク感があると言ってと良いほどである。

だがそれでもーーーー実在の人間をモデルにした漫画を描いた処で、二亜の心が揺れる筈がないのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二亜は無言で、左手で空を撫でると、〈囁告篇帙<ラジエル>〉が姿を現した。

 

「(最高で最悪な、あたしの天使・・・・)」

 

二亜は、この世界に初めて現界した時、持ち前のコミュ能力と〈囁告篇帙<ラジエル>〉のお陰で人間社会に溶け込めた。だがある日、ふと好奇心が生まれた。

ーーーー“自分は一体、どのようにして生まれたのか”、と言う。

その好奇心を抑えられず、二亜は〈囁告篇帙<ラジエル>〉で知ってしまった。自分が“今の自分”になった理由を。

そして、“それ以前”の自分を。

そして“思い出して”しまったの二亜は、その瞬間、胃の内容物を全て吐き出した。

それから二亜は不信感に囚われ、全知の天使の力で知ってしまった。

ーーーー人間の醜い内面を。そして二亜は、1人になった。

どんなに優しい顔をしていても、どんなに愛を囁いていても、その裏には残酷な本性が、黒い感情が潜んでいる。それを知って、二亜は人間に愛想を尽かしてしまったのだ。

だからなのか、二亜は2次元の住人達にしか心を許せなくなってしまった。そしていつしか、二亜はその世界にのめり込み、自分でその世界を創造する職業に就いたのだ。

二亜が2次元のキャラクターにしか恋した事が無い、と言うのは、実は正確ではない。

二亜は、現実の人間に心を開く事ができないのだ。

 

「だから・・・・無駄なんだって」

 

二亜は〈囁告篇帙<ラジエル>〉に触れる。後は頭の中で念じながらその表紙を開けば、欲する情報が全て手に入る。

例えばそうーーーー士道が二亜に対して、どんな言葉を吐いているのかが。

 

「・・・・っ」

 

小さく息を詰まらせ、二亜はその好奇心に抗う。ーーーーその先に待っているのは、二亜の望まぬ結果であるから。

幾度も経験してきた筈だ。だと言うのに、好奇心と言うものは、いつになっても二亜の心を妖しく揺さぶる。

 

「・・・・駄目だ、駄目だ」

 

自分に言い聞かせるように言って、二亜は手元を引っ込め、軽い自己嫌悪に息を吐く。

 

ーーーーヴーーーー! ヴーーーー! ヴーーーー!・・・・。

 

とソコで、枕元に置いてある二亜のスマホが、着信を伝えるバイブレーションを響かせる。

 

「・・・・あぁたくもうっ! 何なのさ!?ーーーーぴっ!?」

 

考え事をしている時や忙しい時、イラついている時に鳴るスマホほど不快なモノはないと言わんばかりにスマホを乱雑に手に取り、苛立たしげに液晶を見るとーーーー『出版社』からの電話であった。

二亜は先ほどまでの感情が、全て恐怖に変わったように顔面蒼白になり、珍妙な悲鳴を小さく上げると、

 

「はい! 本条でございますっ!!」

 

ベッドから飛び起きると、直立不動と言っても良いくらいの、それはもう見事な『気をつけ』の姿勢で電話に出た。そして電話の向こうにいるのはーーーー。

 

《ご無沙汰しております本条先生。●ータ▲書■のフ▼マです》

 

「(ーーーー助けてぇっ! ラジえもーんっっ!!)」

 

『人類最凶』の編集者だった。それが分かると二亜は心の中で天使〈囁告篇帙<ラジエル>〉に、小○館がトマホーク<ミサイル>でもぶちこんで来そうな渾名で助けを求めた。

 

《担当のサ☆ズが突然の出張になってしまいまして、これから原稿は私が取りに行きますが、進捗はどうなっているでしょうか?》

 

「は、はい! それは勿論出来上がっております! バッチリでございます!」

 

《そうですか、ではーーーー取りに行っても大丈夫ですね?」

 

と、背後から声が聞こえて振り向くと、部屋の空間の1部に『異空間の穴』を開けて、『人類最凶』の編集者が現れた。

 

「み"ょわ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」

 

恐怖で二亜は錯乱し、『トライアルメモリ』でも使ったかのように高速で動き、原稿を茶封筒に放り込むと、オリンピックに『土下座』と言う種目があればメダルを狙えそうな、それはもう見事なまでのスライディング土下座をしながら編集者に渡した。

 

「どどどどどどどどうぞ! おおおおおお納めくだささささささいませぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・はい。確かに。お疲れ様でした。ーーーーこれは、我が社からの執筆作業お疲れ様でした、と言う意味を込めてのプレゼントです」

 

編集者は中身をチェックし終えると、ニッコリと笑顔を見せて、『異空間の穴』の中からーーーータコのような軟体動物に、人間のような口と複数の目玉が付いた、RPGに出てくるモンスターのような、とてもじゃないが地球上の生命体と思えない、何とも形容しがたない怪生物を取り出して二亜に渡す。

 

「これは我が社でも評判の”パン"です。美味しいですよ。特に目玉と口吻がオススメの部位です」

 

「こ、これはどうも、ありがとう、ございますです、はい・・・・」

 

グネグネと動く“パン”と呼ばれるそれを見て、さらに顔を青くしていく二亜。

 

「(ーーーー助けて少年・・・・! 助けて〈仮面ライダーウィザード〉・・・・!!)」

 

何でノンフィクションの世界でこんな宇宙の邪神的な存在がいるのか、と泣きそうになる二亜はーーーー今だけは、今だけは本気で、心の底から士道に助けを求めた。




書いていて、やっぱり二亜はシリアスよりもギャグの方でこそ輝く事に気づきました。
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