デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー二亜sideー
「では本条先生。私はこれから担当の作家さんの所に行って、原稿ができていなかったら唐揚げにする工場に連れて行くので、これで失礼します」
「は、はい、お疲れ様でございます・・・・(あの作家さん、また工場に連れていかれるだろうなぁ・・・・)」
恐怖にひきつる二亜をおいて、『人類最凶の編集者』は亜空間を使って二亜の部屋からいなくなった。
「し、死ぬかと思った・・・・!」
頭に編集者から貰った“パン”と呼ばれる怪生物が二亜の頭によじ登る。SAN値がかなり削られたが、二亜は自分がまだ生きている事を心から神に感謝した。
以前〈囁告篇帙<ラジエル>〉であの編集者の事を調べたら、『一応人間』だの、『編集者と呼ばれるナニか』だのと、全知の天使ですら知り尽くせない人間、と呼ぶのに大きく疑問を持つ相手なのだ。
「ーーーーあら、あら。九死に一生を得たとはまさにこの事ですわね?」
「ペポーーーー!?」
二亜以外に怪生物しかいない筈の部屋から、聞き覚えのない声が聞こえ、また『人類最凶の編集者』が現れたのかと思い、二亜はその場で珍妙な悲鳴を上げ、飛び上がって驚いた。周囲に積まれていた本の山が、雪崩を起こすように崩れる。
二亜が脅えた猫のように震えながら這いつくばって、周囲を警戒すると、壁の1部にインクが染み出すように影が広がりーーーーそこから、1人の少女が姿を現した。
何処か自分の霊装と似たような雰囲気と、絶世と言っても良い美貌をし、片眼が時計の文字盤ような模様をして、カチ、カチ、と秒針が進んでいる。およそ現実とは思えない、まるで夢ーーーーしかもとびきりの悪夢のような印象を与えるーーーーそんな相手だった。
編集者ではないと分かると、二亜は体勢を戻し、姿勢を低くしながら、油断なくその少女を睨み付ける。
「・・・・一体何者なのかな、キミ。ノックも無しに入ってくるなんて失礼じゃない?」
二亜が言うと、少女は口元に手を当てて、クスクスと妖しく笑った。
「うふふ、コレは失礼致しましたわ。ーーーーでも、そう構えないでくださいまし。わたくし、これでも貴女の味方のつもりですのよ。少なくとも、今は」
二亜は胡散臭そうに目を細めると、油断なく少女と対峙しながら、〈囁告篇帙<ラジエル>〉を開いて、少女の正体を知ると、小さく息を吐く。
「・・・・ふうん、成る程。私の乗せられた輸送機に護衛が付いていなかったのは、キミのお陰って訳かーーーー“時崎狂三”」
二亜は威嚇するかのように、アクセントを強めにして少女の名を呼んだ。
しかし少女ーーーー狂三は、二亜の予想に反して、ニィッと凄絶な笑みを浮かべる。
「ーーーー素晴らしいですわ。それが全知の天使、〈囁告篇帙<ラジエル>〉」
狂三の言葉に、二亜はピクリと頬を動かした。
「・・・・へえ。こっちの事は調査済みって感じ?」
「ええ。勿論、貴女程の調査能力がある訳ではありませんので、『数』に頼った乱暴な物ですけど」
言って、可笑しそうに笑う狂三。
〈囁告篇帙<ラジエル>〉で彼女の天使、時を操る〈刻々帝<ザフキエル>〉による分身体を使った情報収集と言った反則的な能力を既に知っている二亜は、内心悲鳴をあげた。
「(何だよ時を操る天使って! チートも良いところじゃん!? 奇妙な冒険シリーズのラスボス達辺りが使う能力じゃん!?ーーーーでも、あっちはまだ〈囁告篇帙<ラジエル>〉の能力を全て把握している訳じゃないから、アドバンテージはこっちにある。何とか隙をついて『編集者』に連絡すれば、あの血と異世界転生に飢えているサイコ軍団が攻めて来る筈!)」
ポケットにしまったスマホに手を伸ばそうとする二亜は、内心を悟られるないように、超然と振る舞いながら、フウと息を吐き、強ばっていた身体から少し力を抜いて見せた。
「それで、『最悪の精霊』サマが一体何のご用?」
「ふふっーーーー至極簡単なお願いを1つ、しに来ただけですわ」
二亜の問いに、狂三は口元を緩め、そしてゆっくりと腕を持ち上げると、〈囁告篇帙<ラジエル>〉を指してきた。
「その〈囁告篇帙<ラジエル>〉で、調べて欲しい事がありますの」
「・・・・調べて欲しい事、ねぇ。まあ助けて貰った恩もあるし、聞いてあげたい所だけど、程度による・・・・かな。あたしはキミと違って平和主義者なもんでね。あんまり危険度の高い情報を流すつもりはないよ」
余裕ぶって顎を撫でる二亜の言葉に、狂三はクスクスと笑う。
「ご安心下さいまし。これは極めて私的なお願いですわ。その情報によって戦争が起こったり、人々が不幸になるような事は無いとお約束致しますわ」
「・・・・ふうん?」
二亜は訝しげな視線を向け、それに応えるように、狂三はその花びらのような唇を動かす。
「だから、わたくしに教えて下さいまし。ーーーー30年前、この世界に現れたと言う『始原の精霊』。それが顕現した原因と理由。その正確な出現座標と時間、そしてその能力とーーーー“殺し方”を」
「・・・・え?」
狂三が発した言葉に、二亜は思わず眉をひそめた。
と、その前に。
「そういえばキミいつからこの部屋に?」
「士道さん達との話し合いの終わった時に来ましたわ」
「じゃあ何で話し掛けてこなかったの?」
「・・・・・・・・・・・・わたくしは、まだ死ぬ訳には参りませんから・・・・!」
「(『最悪の精霊』が死の恐怖を感じるって、あの人ホントになんなんっ!?)」
弱冠目が虚ろになって、僅かに震える狂三を見て、あの編集者はやはり銀河の魔神的なナニかなのかと、二亜も得たいの知れない恐怖を感じた。
ー士道sideー
「これは・・・・」
琴里に連れられ、士道達がやって来たのは、精霊マンションの1階の1室。20畳はあるだろうスペースに二亜の作業部屋を大きくし、机も画材も全て新品にした部屋があった。
『会議から1時間でこれか、肝心の精霊攻略では頼りにならんがこういう事、“だけは”! 〈ラタトスク〉は優秀だな、“コレだけは”!』
「貴方は毎度毎度、嫌味を混ぜなきゃ会話が始まらないの? え?」
ドラゴンの言葉にコメカミをピクピクさせる琴里。
だが、士道に続いて部屋に入った精霊達は、そんなやり取りを気にせず、部屋の内装と設備に感嘆としていた。皆の様子を見てから、琴里の方に視線をやった。
「・・・・こんな部屋まで作ったって事は・・・・マジなんだな」
「マジかマジで、マジだショータイムよ。ーーーーて言うか、他に方法なんてないでしょ」
「まあ、それはそうかも知れないけど・・・・(本当に出たとこ勝負だよなぁ・・・・)」
士道は頬を掻きながら言うと、琴里は腕組みしながらノシノシと部屋の中央まで歩いていき、クルリと身体を回転させて皆の方を向いて、歌劇でも演じるような調子で高らかに声をあげた。
「いい、皆。目標は今から2日後。12月31日のコミックコロシアム最終日、二亜がサークル参加するその日よ。ーーーーその日、私達は“二亜のスペースの隣に出展し、二亜と同じ部数の同人誌を、二亜よりも早く捌ききるわ”」
『おお・・・・!』
そう。それこそが、琴里の『考え』であった。士道の報告から、二亜が月末の同人誌そくばいかいに参加すると知り、ソコに焦点を合わせ、全力全開の必殺の1撃をぶつける作戦なのだ。
「とは言え、時間はないわ。背景や仕上げに関しては〈ラタトスク〉がサポートするけど、全てそれに任せてしまったら、『私達が作った本』とは言えなくなってしまう。ストーリーとメインキャラクターの作画くらいは私達が行わなければならないわ。印刷設備は押さえさせてあるけれど、最悪でも当日、31日の午前3時くらいまでに完成原稿がないと間に合わないわね」
「でも・・・・そんなに上手く行くのか? 相手はプロだぞ?」
『まだグダグダ言うのかこのアホ。商業で勝負では此方が敗けだ。しかし同人誌ではイベント会場の搬入の都合で冊数に限界がある。ソコを狙う』
「それに、同人誌ならページ数も少なくて済むしね」
「確かにな・・・・後は、仮にこっちが早く本を捌ききったとして、二亜が本当に負けを認めてくれるかどうかだけど・・・・」
「ソコは、向こうのプライドとこっちの話の運び方次第じゃないかしら。でも、ペナルティが『私達の作った本を読む』って言うだけなら、十分希望はあると思うけど」
「・・・・じゃあ、問題は」
士道が真剣な表情で問うと、琴里はソレに返すように頷いた。
「ええ。私達が如何に二亜の心を打つ同人誌なら作れるか、そしてーーーーどうやってそれを二亜よりも早く売るか、よ」
『・・・・処で小僧。同人誌に出すファントムは決めてあるのか? ヒーロー物だとすれば敵役は欠かせんだろう?』
「・・・・そうだなぁ、フェニックスにヴァンパイアと言った幹部達はどうかな?」
「待て士道よ。いきなり幹部クラスの強烈なキャラを作るのは下策ぞ」
「同意。あの戦闘狂の鳥と下衆な蝙蝠との激戦のストーリーをページ数の少ない同人誌で描くとなると、かなりの肉抜きをしないと纏まりません。それでは杜撰なストーリーになってしまいます」
八舞姉妹が編集者のような意見を出すが、確かにその通りだった。
「そうかぁ、なるべく印象がついて、ストーリーも纏まりやすい相手は・・・・」
『・・・・! “あの3人組の悪魔”はどうだ? 貴様が〈仮面ライダーウィザード〉になって半年くらい経った頃に交戦した、初めての強敵の3人だ』
「・・・・あぁっ! 『アクマイザー』の3人かっ!」
ドラゴンの言葉に、士道は思い出したように手をポンっと叩いた。
『『アクマイザー』??』
『少し待て』
が、他の皆は首を傾げ、それを見たドラゴンが作業部屋の机に置かれたケント紙と鉛筆で、奇妙な冒険シリーズに出てくる漫画家のような早さで描き始めた。
そして数分後、4枚の紙を置くと、悪魔のような姿をした3体の顔と全体像を書きだし、さらに最後に出した紙には、フェンシングサーベルを持ち、まるで三銃士のようにサーベルを合わせる3体の怪人達を書いた。
「コレが、『アクマイザー』?」
「『アクマイザー』って言うのは、この3体の悪魔戦士達で構成したチーム名みたいな物さ。名前は『ザタン』、『イール』、『ガーラ』だ」
頭の横にノコギリのような耳を着けたバイザーの怪人『ザタン』。
悪魔のような容貌をした『イール』。
悪魔というよりも、ダイダラボッチのような風貌の『ガーラ』である。
『なんでも、『アクマ族』と呼ばれる、人類によって深い地底世界に追放された一族の生き残りで、『悪魔戦士』と呼ばれる戦士で結成されたチームだ。一族を追放した人類への増悪を糧として、数千年の時を得て蘇り、地上で平和に暮らす人類への復讐を誓い、ファントム達と結託し、我らと激戦を繰り広げたのだ』
「なぬっ!? ちょっと待て士道! ドラゴン! 『アクマ族』とか『悪魔戦士』とか、なんだその面白そうな話は!? その戦いの記録を! 我らに説くと教えよ!」
「賛成。是非とも教えて下さい・・・・!」
『それは作業しながらな。ちなみにその時に助けたのが、隣のクラスの『岸和田』と言う小僧だ』
「ぬ? 『岸和田』? 確か亜衣が想いを寄せている者も『岸和田』だったような・・・・?」
十香が言った『岸和田』と言うのは、亜衣麻衣美衣トリオの山吹亜衣が絶賛片思い中の文科系眼鏡草食系男子である『岸和田』だった。その時に知り合いとなり、今でも時々士道と少し話をしたり、テスト前に範囲を教えて貰ったりと、交流が続いている。その士道が仲介役をやれば、山吹亜衣が岸和田に近づく最短コースになるのだが。
「てか、ドラゴンって絵も上手いのね。料理もできるし頭も良いしで、完璧超人かアンタは?」
『『喧嘩<クォーラル>◯ンバー』!』
「(バキッ!)新作アニメ制作決定っ!」
「いや、そっちの『完璧超人』じゃないから・・・・」
七罪の言葉にドラゴンは腕だけを大きくし、士道の首にラリアットを炸裂させ、士道は盛大に倒れ、七罪は頭に大きな汗を垂らした。
倒れる士道を尻目に、琴里が声をあげる。
「・・・・私達の知らない士道とドラゴンのストーリーね。まぁインパクトがあっても良いかも知れないわ。でも、それだとドラゴンが書く事になるけど」
『我はあくまでストーリー構成を担当しよう。作画は貴様らに任せる。コレならば、『小僧達が作った本』になるだろう』
ドラゴンがそう提案すると、琴里は頷いて、肩掛けにしたジャケットを翻すように歩き、部屋の奥にあるホワイトボードの前に至った。
「となると、問題は作画担当ね。一応聞くけど、この中で漫画やイラストを描いた事がある人は?」
そう言って、精霊達を見回すと、八舞姉妹は勿論、元人間の折紙と美九が手をあげ、ドラゴンがコッソリと七罪を指差した。
「まあ。そんな所ね。・・・・まあ、とは言えまず、皆の画力を見てみましょ。皆、好きな机に着いて、士道の絵を描いてみてちょうだい」
「おお! シドーを描くのだな。任せろ!」
「ふふん、良かろう。我が絶技、とくと見るがよい!」
「首肯。第39試合、『投稿イラスト対決』で、『珍しい双子からのイラスト』という煽りで一緒に雑誌に掲載され、引き分けになった夕弦達の実力を見せます。士道、いつまでもノックアウトされてないで、ちょっとソコに立って下さい」
「だーりーん、こっちに目線お願いします、目線ー!」
「いてててて、つーかお前ら、俺がドラゴンにノックアウトされたのはスルーですか? そうですか・・・・」
精霊達が適当な席に着き、ソコにあったケント紙に鉛筆を走らせ始める。自分がドラゴンにシバかれるのはもはや日常的茶飯事な光景と捉えられている状況に泣きそうなる士道だが、大人しくモデル役をやる。
『貴様も描けよ』
「あ、やっぱり・・・・」
もう何かしら諦めの境地に入った士道も、机に着いて絵を描き始めた。
ーーーーそして、それからおよそ30分後。皆の絵が完成した。
「さ、じゃあ順番に見ていきましょうか」
「おお! 見てくれ!」
「私も・・・・できました」
琴里の声に応えるように、十香と四糸乃が、完成した絵を皆に掲げて見せた。
可愛らしい事は可愛らしい・・・・のだが、どちらも小学生が描いたソレニしか見えなかった。
『2人共ーーーー◯っ!』
「・・・・うん、可愛いな」
「本当か!?」
「ええ。でも、今回の同人誌には使いづらいわね」
「す、すみません・・・・」
ドラゴンがいつの間にか作った◯のプラカードを出して絶賛する。
四糸乃が申し訳なさそうに肩をすぼませる。士道が苦笑しながらその頭を撫でた。
「さ、次ね。ちなみに私はこう」
「あー、じゃあ私も出しますー! はいっ!」
琴里と美九が、絵を提示する。
十香と四糸乃よりもレベルが上がったが、漫画と言うよりも女子中高生がノートの端に描く、可愛らしいキャラクターだった。ただ、美九の描いたイラストが士道ではなく、士織だったのは、ツッコむのが恐いので追求しなかった。
『・・・・◯、だが。同人誌に使うのは難しいな』
「・・・・あ、ああ。そうだな」
2人はそれ以上コメントせず、本命の八舞姉妹に目を向けると、ソコにはいつもより自信満々と言った調子の八舞姉妹が、絵を示してくる。
「くくく・・・・ならば次は我らであるな!」
「提示。ご覧下さい」
「おおっ!?」
『花丸! 採用!!』
それを見て、士道は思わず目を丸くし、ドラゴンは花丸のプラカードを出した。耶倶矢と夕弦の画力は、今までの4人とは比べ物にならないくらいのレベルである。
無論デッサンが甘い所はあったりするが、十分漫画として見られる絵である。
ちなみに耶倶矢は少年漫画風の熱血士道、夕弦は少女漫画風の耽美士道だ。
「凄いじゃないか、2人共」
「かかか! 当然よ!」
「首肯。我ら八舞にできない事はありません」
2人が自信満々に胸を反らして見せる。琴里もその絵を見て顎に手を当てた後、今度は士道と折紙に視線を向けた。
「今のところメイン作画候補は八舞姉妹ね。ーーーーさ、じゃあ次、見せてもらおうかしら」
「お、おう・・・・」
「了解」
琴里の声に応え、士道が自分の絵を琴里に、折紙はドラゴンに提示する。皆の視線が注がれる。
「ふむふむ、耶倶矢と夕弦程じゃないにしろ、士道の絵も悪くないわね」
『・・・・・・・・培った恥の歴史が少しは役に立ったな?』
「うるせぇっての!」
折紙の絵を見たドラゴンが一瞬フリーズしたが、すぐに戻って毒舌を言い、士道は反論した。
「それでドラゴン。折紙の方は?」
『◯なのだがーーーー見れば驚くぞ』
そう言って、折紙の紙を差し出したドラゴンを訝しそうに見た琴里は、
「・・・・ひゃっ!?/////」
顔を赤くして甲高い声をあげた。
なんだなんだ? と他の精霊達が覗くと紙には、やたらと写実的に上手い絵だが・・・・一糸纏わぬ姿の士道が、同じく全裸の折紙と濃厚な絡みを繰り広げていたのである。
「んな・・・・っ!」
「にょわっ!?」
『見るな四糸乃、七罪。教育に悪い』
「ぁ・・・・」
「ちょっと・・・・」
琴里に続くように精霊達が息を詰まらせ、ドラゴンが四糸乃と七罪の目を塞ぐ。ただ夕弦と美九のだけは、頬を緩ませ目を輝かせていた。
「な、何を描いてるのよ、折紙!/////」
「士道。ーーーーと1つになった私」
「何余計なモノ足してるの!?」
琴里は叫びを上げると、折紙の絵を返した。
『作画候補に挙げられる腕前だが、出展ブースは『創作・一般』だからな。今回はボツだ』
「・・・・・・・・ちっ」
『「舌打ちをするな(しない)、舌打ちを」』
はあと疲れたようなため息を吐く2人。そしてドラゴンは、紙を後ろに隠してコソコソ逃げようとする緑色のモフモフを捕まえる。
『コラ七罪、何処に行く?』
「あ、いや、私は・・・・」
正体は七罪だった。
『四糸乃。絵を取り上げなさい』
「は、はい・・・・」
「ちょっ・・・・!」
抵抗しそうになる七罪だが、相手が四糸乃では強く出られず、紙を手離した。
そして四糸乃が皆に七罪の絵を見せた。
「え・・・・これって」
「す、凄い・・・・です」
「なん・・・・だと?」
精霊達が、口々に驚愕の言葉を並べる。
七罪の絵は、プロの漫画家と遜色ないレベルだったのだ。
「凄いじゃないか七罪、こんな特技があったのか!?」
「・・・・いや、特技って言うか・・・・昔ちょっと興味持って・・・・漫画家の『真似』をした事があったから・・・・」
「あーーーー」
贋造の精霊だった七罪は、実在する人物に化ける時、親しい友人であってもそう簡単に見抜けない程に、その人間の行動をトレースしてみせる、観察と模倣の天才であるのを思い出し、士道は目を見開いた。
「ーーーー決まりね。ストーリー構成はドラゴン、メイン作画は七罪、サポートで士道、折紙、八舞姉妹に入って貰うわ」
「うむ、賛成だ!」
「凄いです・・・・七罪さん」
「異存はない」
「ふん、まあ良かろう。今回は譲ってやろうではないか」
「賛成。花は持たせてあげます」
「きゃー! 七罪さん、ちょっと後で私とだーりんとハニーの愛の物語とか描いたりしませんかー?」
「え・・・・えっ?」
皆の声に、七罪が目を白黒させる。
士道は、そんな七罪の手をガッシと握った。
「頼む、七罪。ーーーー二亜を助ける為に、力を貸してくれ」
「へーーーーっ!?」
真剣な眼差しで言う士道に、七罪は数瞬悩むと、
「・・・・・・・・あ、後で文句言うんじゃないわよ」
恥ずかしそうに、そう言った。
それを祝うように、皆が拍手すると、七罪はさらに顔を赤くして、近くにいるドラゴンを両手で掴み、顔を隠すようにした。
と、ソコで十香が、何かに気づいたように首を傾げた。
「そう言えば琴里、私達は何をすれば良いのだ?」
「そう言えばそうですねー。あっ! 作業に疲れた皆さんを念入りにマッサージするとか、子守歌を歌いながら添い寝してあげるとかですかー!?」
「ひっ」
美九が身を捩りながら、目をキラメーイと輝かせると、七罪は息を詰まらせ、ドラゴンを盾にしながら士道の影に隠れた。
「違うわよ。皆には、別にしてもらう事があるの。ーーーーある意味では、漫画制作以上に重要なミッションかもしれないわ」
琴里がやれやれだぜ、と言いたげに肩をすくめると、十香と四糸乃、美九は不思議そうに首を傾げた。
そして、ストーリーはドラゴンの記憶から、士道が〈仮面ライダーウィザード〉になった経緯から、『アクマイザー』達との激戦を描く長編(59ページ)を制作し、二亜に『士道』と言うキャラクターを好きになってもらう事で話を進めると、琴里は部屋の奥にあるホワイトボードの前に立った。
「まずはドラゴンの記憶から、皆でストーリーを見て、纏め、今日中にネームを作り、明日丸一日かけて作画を終わらせるわよ」
「・・・・改めて考えると無茶苦茶なスケジュールだな・・・・本当に終わるのか? (バシッ)イテッ!?」
『この腐った酢ダコ。終わるとか終わらないではなく、終わらせるのだ』
「そうよ。でも、ドラゴンの記憶を口頭で説明しても、私達が分かるかどうか・・・・」
『ソコは大丈夫だ。この間、輪島<中年>が新しいリングを作ってくれた』
ドラゴンがそう言うと、士道はリングチェーンから、『ドラゴンの頭に吹き出しが出てる黄色のリング』と『ドラゴンがシャキッとした姿の緑色のリング』を取り出した。
「そう言えば最近、おっちゃんが俺にだけ素っ気ない態度なんだけど、どうかしたのかな?」
「士道が何か怒らせる事でもしたんじゃないの?」
『・・・・最近出番が無いから拗ねているのではないか?』
等と話していると、琴里が水性マジックでホワイトボードに、『士道同人誌計画』の文字を記し、皆の顔を見ながら、高らかに宣言した。
「さあーーーー私達の原稿<デート>を始めましょう」
当時の仮面ライダーウィザードはフォーゼに会わず、基本の4フォームとドラゴンとの連携で、辛うじてアクマイザーに勝利した。
と言う設定です。