デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回で精霊達が、〈仮面ライダーウィザード〉のビギンズを知る。


漫画執筆と言う名の修羅場

ー狂三sideー

 

ーーーー本条二亜の住むマンションの屋上に、ジワリ、と影が滲み出ると、狂三はこの中から、クルクルと踊るような格好で出現した。軽く伸びをするように身を反らしてから、ゆっくりと空を見上げる。

するとそれに合わせるように、地面に広がった影の中から聞き覚えのある声が幾つも響いてきた。

 

「ーーーーさて、さて」

 

「困った事になりましたわね」

 

「一体如何致しますの?」

 

その言葉と同時、マンションの屋上の至る所に影が生まれ、その中から狂三の分身体が現れた。

何故か何人かの狂三が白目を剥いて倒れていたが、それを視界に入れないようにして、本体の狂三はフウと息を吐きながらそれに返した。

 

「ええーーーー」

 

確かに狂三は、長らく探し求めていた第2の精霊〈シスター〉と出会い、全知の精霊〈囁告篇帙<ラジエル>〉の力で『始原の精霊〈ファントム〉』の情報を手に入れた。

しかしその結果、狂三は1つの重大な結論に達してしまった。物憂げに細く息を吐き、肩を竦める。

 

「例え霊力を集め、士道さんとドラゴンさんの力を手に入れても、【12の弾丸<ユッド・ベート>】で30年前に行ったとしてもーーーーわたくしでは『始原の精霊』には、絶対に勝てませんわ」

 

『・・・・・・・・』

 

狂三が言うと、『狂三達』が一斉に黙り、神妙な面持ちになって狂三の方を見てくる。

 

「ーーーーあら?」

 

狂三はそれを一瞥し、クスクスと笑った。

 

「何と言う顔をしていますの、わたくし達。ーーーーわたくしがそれ位で諦めると思いまして? それ位で、“今まで積み上げてきた万の命”を無駄にすると思いまして?」

 

狂三が言うと、トン、トン、とステップを踏むように屋上を渡り、軽やかに地面を蹴ってフェンスの角に立ち、眼下に広がる街を睥睨しながら、歌うように続ける。

 

「確かに、『始原の精霊』の力は強大ですわ。ーーーーでも、それが何だと言いますの? わたくしの〈刻々帝<ザフキエル>〉は時を操る最強の天使ですわ。時間と言う概念の前には、如何な力も意味を成しませんのよ」

 

狂三はチラッと背後の分身体達を一瞥した。

二亜に会って得た情報の中で最も大きな意味を持っていたのは、『始原の精霊』の能力ではなくーーーーその出現理由と原因だったのだ。

 

「至極簡単な話ですわ。『始原の精霊』は、30年前までこの世界に存在しなかった。ならば彼の精霊がこの世界に出現する前の時代に飛び、その原因を排除すれば良いだけの話ですわ」

 

言って狂三は右手を銃の形にすると、虚空をバン、と撃つような仕草をした。その言葉に、分身体達が色めき立つ。

 

「ーーーーまあ、彼の憎き精霊をこの手で仕留められない事に心残りがないと言えば嘘にはなりますけれど、この際それは良しとしておきますわ」

 

そう。狂三にとって重要なのはーーーーこの世界に『精霊』と言う存在が生まれた事実を消し去る事なのだ。

かつて士道がしたように、歴史をあるべき形に戻す事なのだ。

狂三は決意を新たにするように目を伏せーーーー固く拳を握った。

 

「にしても・・・・」

 

そして数瞬の後。フウ、と嘆息する。

先ほど二亜から聞いた、『始原の精霊』の出現理由。それを頭の中で反芻しながら、呆れたような口調で独り言を呟く。

 

「『アイザック・レイ・ぺラム・ウェスコット』。『エレン・ミラ・メイザース』。それにーーーー『エリオット・ボールドウィン・ウッドマン』」

 

そのーーーー3人の大罪人の名を。

 

「今更言っても栓ない事ですけれど・・・・今度顔を合わせたなら、殺してしまいそうですわね」

 

吐き捨てるように言う狂三がフェンスから飛び下りようとした瞬間、ガシッと、幾つかの手が自分の霊装を掴んでいる手があり、視線を向けると、死屍累々に倒れていた分身体達がゾンビのように這い上がっていた。

 

「待って下さいまし、わたくし・・・・」

 

「あら、あら、わたくし達、漸くお目覚めに?」

 

頬に汗を垂らして頬をヒクヒクさせる狂三に、分身体達は凄絶な笑みを浮かべて、狂三をフェンスから屋上に引きずり下ろした。「ひっ」と、小さな悲鳴をあげる狂三。

 

「ええ・・・・あんな『地球外生命体のような物』を食べさせられて・・・・」

 

「『真理の扉』的なモノが見えましたわ・・・・!」

 

分身体達が言う『地球外生命体のような物』とは、二亜が出版社から貰ったーーーー“パン”と呼称された怪生物の事である。

二亜が『始原の精霊』の出現理由を聞いた後、「この“パン”ってのを食べるの手伝って!」と、必死に泣きついてきたので、狂三は分身体達に自分の代わりに食べさせたのだ。

結果、二亜と分身体達は“パン”をなん等分かに切り分けて小声で、

 

【薄目で見ればタコ・・・・! 薄目で見ればタコ・・・・! 薄目で見ればタコ・・・・!】

 

と、自分に暗示をかけるように言い聞かせながら、二亜は美味しい部位と言われた目玉を、分身体達の何人かも目玉を口に入れた。

その瞬間、全員が白目を剥いて倒れたのだ。狂三は部屋から失礼する際、倒れた二亜が、

 

【あ、あたしは今ーーーーコ、小宇宙<コスモ>を感じて、いる・・・・!】

 

と言い残してガクッと気絶し、分身体達に至っては先ほどまで、

 

【『だ、大宇宙、マクロコスモス・・・・!?』】

 

と、意味不明な単語を言っていた。

 

「折角ですから、わたくしも・・・・!」

 

「食べてみて下さいまし・・・・!」

 

「美味しい部位の口吻を・・・・!」

 

「取っておいてありますから・・・・!」

 

「ひぃっ!?」

 

狂三は息を詰まらせ、必死に逃げようとするが、デンジャラスゾンビと言わんばかりの分身体達は、物凄い力と連携で逃がさなかった。食べなかった分身体達は、巻き込まれたくないのか、狂三の影に逃げる。

 

「ではわたくし、召し上がれ・・・・!」

 

「や、やめ、止めてくださいまし! 口吻だなんて、わたくしキスは、せめて士はぐぅっ!?」

 

狂三は弱冠涙目になるが、構わず口吻をネジ入れられた瞬間ーーーー宇宙の味、としか言えない謎の味と、意識が銀河の彼方に飛んでいく感覚に襲われ、

 

ーーーーバタッ!

 

力なくその場で自分を捕らえていた分身体達が手を離し、重力に従って倒れた。

 

「あぁ・・・・刻が、見えます、わ・・・・」

 

それだけ言って、狂三は小1時間ほど気を失い、目覚めたら気絶していた時の記憶が消えており、思い出そうとすると謎の恐怖を感じるようになっていた。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

その頃、士道達は『ドラゴンの頭に吹き出しが出てる黄色のリング』、新たなリングである『メモリーウィザードリング』を使った。

どうやらこのリングは、嵌めた相手の記憶をまるでテレビで見るように頭に流す事ができる魔法のようだ。

以前狂三が美九の調査に使った『撃ち抜いた対象が有する過去の記憶を狂三に伝えてくれる弾』、【十の弾<ユッド>】と似た能力だ。それをドラゴンが調整して、精霊達にも見せるようにしている。

そして今、精霊達が見ているのはーーーー。

 

「な、何なのだ、これは・・・・!?」

 

「い、いやぁ・・・・!」

 

『う、うわぁ・・・・!』

 

「あわ、あわわわわわわ!?」

 

「驚愕。こ、こんな事が・・・・!」

 

「う、うぇぇ・・・・!」

 

「(ガクガクブルブルガクガクブルブル・・・・)」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「こ、これが、1年前に士道が、ドラゴンを、〈仮面ライダーウィザード〉の力を手にした光景ーーーー『儀式<サバト>』っ!?」

 

【ーーーーウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!】

 

【ーーーーキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!】

 

【ーーーーイヤだぁ! イヤだぁああああああああああああああああああああああああッッ!!!】

 

【助けてくれえええええええええええええええええええええええええええええッッ!!!】

 

【なんだよ・・・・何なんだよコレェっ!?】

 

そう、今精霊達が見ている過去の情景こそ、士道が体験した、『魔獣ファントム』が大量に生まれた日、『儀式<サバト>の日』だったのだ。

『何者』かに海岸に連れてこられた、士道の他3桁近くの人間達、戸惑う彼らの遥か上空で金環日食が起こり、その場にいた大勢の人達に『ファントムの亀裂』が生まれていくソコはまさに、阿鼻叫喚の地獄が広がっていった。

 

【なんだぁっ! 俺の、俺の身体がああああああああああああああああああッッ!!??】

 

【イヤ! イヤアアアアアアっ!! ナニかが! 私の身体をををををををををををっ!!】

 

一人、また一人、老若男女関係無く、その身体に“ファントムの皹”が走り、皹が広がりきるとその人の肉体の内側からその人の身体を砕いて、『魔獣ファントム』が出現した。

 

『っっ!!?』

 

【っっ!!?】

 

中には吐きそうになる精霊達、そしてその場にいた記憶の士道もまた、自分の身体にファントムの皹が走っているのを見た。

 

【ぐぁっ!】

 

突然、身体に激しい苦痛が走り、記憶の士道はうずくまる。おそらく、自分の中からドラゴンが身体を引き裂いて生まれようとしているのだろう。

十香達も経験した。自分の身体が、意識が、命が、別の存在に喰われていくような、刻々と死に近づいていっているような、あの感覚だ。

 

【(俺は、コレで終わるのか・・・・!? 俺は、“絶望”に負けてしまうのか・・・・!?)】

 

自分の内から沸き上がってくる暗い所に深く沈んで行く士道の内心が聞こえる。

士道が、日食の太陽を睨み、その手を伸ばす。

 

【俺は・・・・俺はぁ! 絶望なんかに、負けるかああああああああああああッッ!!!!!】

 

そして士道の身体の皹が紫色から金色に変わり、少年の身体を包み込んだーーーーーーーー。

 

【≪ほぉ、この我を抑え込むか? 中々面白いな・・・・≫】

 

士道の身体の中から産まれた“ソレ”、『ウィザードラゴン』の声が響くのと同時に、十香達の見ている景色が、精霊マンションの作業部屋に戻った。

 

『ぷはっ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・』

 

精霊達は息を吐くのを忘れる程の鮮烈な光景が終わると、肺の中に空気を入れ、呼吸を整えた。

 

「み、皆、大丈夫か!?」

 

『やはり刺激が強すぎたな・・・・』

 

漫画を描く為に、士道が〈仮面ライダーウィザード〉になった経緯を知りたいと言う話になり、『メモリー』の魔法で記憶を見せた士道とドラゴンが、精霊達の背中を擦っていく。

数分後、漸く落ち着いた精霊達の中から、琴里が代表して声を発する。

 

「し、士道、あれが、1年前に起こった、『儀式<サバト>』なの?」

 

「・・・・あぁ。あれによって、俺は〈仮面ライダーウィザード〉になる事ができたんだ」

 

「も、もし私達が絶望に負けてしまっていたら、あんな風になってしまっていたのか・・・・?」

 

『・・・・まぁ、そうなっていただろうな』

 

何人かの精霊達に至っては、まだ身体がブルブル震えている。相当堪えたんだろう。

 

「記憶を見るリングか、俺の忘れている記憶を見る事ができるか?」

 

『・・・・いや、脳、記憶の司令塔とも呼ばれる『海馬の領域』に無理に干渉すると、脳にダメージがいく可能性が大きい。唯でさえ半ば壊れているような脳ミソがさらに壊れたら始末に終えん』

 

「どういう意味だよそれはっ!?」

 

ギャーギャー騒ぐ士道をド突きで黙らせるドラゴン。あの光景を見た後だと、ああしてじゃれ合うような喧嘩をする2人を見ると、妙に安堵する精霊達。その中で、折紙が口を開く。

 

「士道の記憶の中に、フェニックスやヴァンパイア、それにレギオンと言った皆も交戦した事があるファントム達の姿が確認できた」

 

「と言う事は、メデューサとグレムリンも、あの『儀式<サバト>の日』に生まれたのかも知れないわね」

 

『「・・・・・・・・・・・・」』

 

琴里の言葉の一部に、士道とドラゴンは何とも言えない顔となる。

が、すぐにドラゴンが話を戻そうと声を発する。

 

『まぁ、漫画の構成をよりスマートにするために記憶を見せたが、思った以上に強烈だったようだな』

 

「・・・・ええ、かなり、ね。この事件の翌日に、士道は白い魔法使いに遭遇し、警察に保護されてうちに帰った後で、輪島のおじさんにこの事を説明して、ウィザードライバーやリングを貰ったのね」

 

『うむ。そしていざ戦闘となれば、この平和ボケの役立たずめは、グールにですら苦戦しおってな。見かねた我がアンダーワールドで訓練をさせたと言う訳だ』

 

「ホント、地獄だったよ・・・・」

 

何を思い出したのか、士道は顔面蒼白になりながらブルブルと震えた。おそらくその訓練で、今の2人の力関係が形成されたのを全員が察した。

 

『戦いで何度も負傷して、その度に〈灼爛殲鬼<カマエル>〉に再生されてな。それが無かったらこのボンクラはとっくに2桁は死んでいる上に、手足の何本かがとっくに失われていただろうよ』

 

「確かにな。助かったよ琴里・・・・」

 

「ま、まぁ、良かったわね・・・・」

 

まさか自分の天使の力を知ったのに、そんな事情があったとはと、琴里は何とも言えない顔で苦笑した。

時間を見ると、『メモリー』を使い始めてまだ5分も経っていないが、かなり濃厚な5分間だったと感じる。

とか思っている内に、ドラゴンが七罪のモフモフヘアの上に乗る。

 

『さて、〈アクマイザー〉については、我が七罪の直接映像を見せて、七罪がそれの作画をし、小僧達はサポートをするぞ』

 

「うわっ! 何か頭の中に映像が流れてきた!?」

 

七罪が混乱するが、それは一旦置いてから、作業が始まった。

 

 

 

 

 

 

かくして、士道達の修羅場が始まった。

士道と精霊達は、作画チームと特別チームに分かれ作業を開始した。

作画チームは、ドラゴンが七罪に〈アクマイザー〉との戦いの記憶を七罪の頭にまるで映像を繰り返し再生するように流し込み、七罪がそれを元に漫画の設計図であるネーム、及び下書き、そして表紙に線画制作に入る。

七罪への負担を減らしたかったが、こればかりは七罪がやらねば話と演出に齟齬が出てしまうので、任せざるを得なかった。

その間に士道と折紙と八舞姉妹は、映像で漫画制作の手順を簡単に学び、作画作業の手伝いをする為に、ケント紙にペンで線を引く練習をした。

それら全てが終わり、時刻は30日の午前2時。

本来ならば皆一眠りし、早朝から作画作業に入る予定だったのだが、ドラゴンを頭にのせた七罪が作業の続行を進言し、順番に仮眠を取って作業能率を可能な限り落とさず夜明かしをする事になった。

七罪が描いた下書きに、まず定規とペンで枠線を引き、台詞の入る吹き出しをなぞる。そうしてから、本番開始だ。鉛筆で描かれたキャラクター達に、皆でペン入れをしていく。

のだが。

 

「・・・・うわっ、枠線はみ出した!」

 

「く・・・・漆黒の涙が純白の聖地にっ!?」

 

「動揺。定規の下にインクが滲んでしまいました」

 

「・・・・問題ない。これくらいは修正可能」

 

多少イラストを描いた経験があるが、士道達は純然たる素人だ。最初から美しい原稿が仕上がる筈はない。

しかし、集中力と適応力とは恐ろしいもので、穴が開くほど下書きを見つめ、慎重にペンを運んでいく内、どうにか下書きの上に線を乗せられるようになっていた。

・・・・まあ、八舞姉妹は途中で焦れて、細かい所の作業はインクを付けるタイプのペンを諦め、極細のミリペンに移行したが。

そしてペン入れが終了したページは、丹念に消しゴムがかけられ、スキャナーでデータ化された後、中津川率いるアシスタントチームに送られる。

数に物を言わせた突貫作業ではあるが、そうでもしなければたった2日程度で漫画1冊を仕上げる事などできる筈がない。

しかし、だからと言って士道達の腕が上がる訳でもない。七罪の下書きにペン入れをする作業は、予想以上に皆の神経を磨り減らしていった。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

広い部屋にペンの走る音だけが響く。一応作業用のBGMのCDをかけているが、あまり効果は無いようだ。

とーーーー作業を始めてからどれくらいか過ぎた頃。

 

「ハイ、皆。作業は進んでる?」

 

不意に部屋の扉が開いたかと思うと、両手に差し出しの袋を提げた琴里とプラモンスターズがやって来た。

 

「・・・・ああ、琴里。何とかな」

 

「・・・・何か、数時間見ない間に老けたわね」

 

頬に汗を垂らしながら琴里が言うと、テーブルに袋を置くと、プラモンスターズが栄養ドリンクを取りだし、蓋を開けてストローを挿すと、作業している士道達の口に差し出し、士道達は反射的に飲んだ。それを見てから琴里が声を上げる。

 

「おにぎりくらいだけど、お腹が空いてきたら休憩して食べてちょうだい」

 

『うむ、助かる』

 

「かか・・・・供物か。良き心掛けであるぞ琴里」

 

「感謝。ありがとうございます、琴里」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『助かる』

 

ドラゴンと八舞姉妹が礼を述べ、折紙は無言で手を軽く振り、七罪は「・・・・うー」と言う返事をした。

と、琴里は皆の返事を確認してから、士道の机に歩いてきた。

 

「・・・・士道、ちょっといい?」

 

「ん? どうしたんだ?」

 

「二亜の事で、ちょっと」

 

「・・・・! 何かあったのか?」

 

士道が問うと、琴里はコクリと頷いた後、再び皆に聞こえるように声を上げた。

 

「ゴメン、皆。少しの間士道を借りていくわ。戻った来たら倍のスピードで仕事させるから」

 

「おい!?」

 

『そんな事しなくても良い。小僧。『アバター』を使え』

 

「あっそうか」

 

[アバター プリーズ]

 

士道が『アバターウィザードリング』を使うと、士道の分身体が現れ、作業をした。

 

「・・・・思ったんだけど、他の皆も『アバター』を使えば効率的なんじゃないの?」

 

『『アバター』は小僧にしか反応できん。それにそんなズルをすれば〈囁告篇帙<ラジエル>〉でバレた時に、また〈シスター〉が機嫌を損ねるかも知れんだろう』

 

ドラゴンの言葉に琴里は一応納得し、士道の袖を掴んでそのまま歩いていった。

 

「っとと・・・・」

 

士道は、犬がリードを引かれるような格好で琴里に引っ張られるように部屋を出ていった。ドラゴンは本体が聞いているから、自分は七罪と作業を続ける、と言って残った。

インフィニティーに到達した影響か、8人分の霊力を貯えた影響か、ドラゴンの思念体は、士道からいくら離れていても問題なくなっていた。

そしてマンションの外に出ると、眩しい太陽の光が、士道の目を眩ませる。

 

「うく・・・・もうこんなに明るくなってたのか。ヤバイな、あと何時間だ?」

 

「原稿も大事だけど、とりあえず乗ってちょうだい」

 

琴里が、マンションの前に止められていた車を指さす。

士道は指示に従って琴里と共に後部座席に乗ると、車はすぐに発進し、道を走っていった。

窓の外の景色が流れていくのを視界の端に捉えながら、士道は口を開く。

 

「で・・・・一体、二亜の何が分かったんだ?」

 

「ああーーーー実は、二亜の漫画仲間だって人にコンタクトが取れたの」

 

「ほ、本当か!? なら、その人に話を聞けばーーーー」

 

「ええ。二亜の過去が何か分かるかも知れないわ」

 

琴里が、チラっと士道の方を見ながら言ってくると、士道はゴクリと喉を鳴らした。

そしてそれからおよそ20分程移動した後、士道達を乗せた車が、とある喫茶店の前で停車する。

 

「ーーーーここよ。降りて。先に令音が入って応対してるわ」

 

「あ、ああ」

 

士道は微かな緊張を感じながら車を降りると、店の中に入っていく。

そして店内を見回すとーーーー小さく手をあげて士道を呼ぶ令音の姿を発見する。

 

「どうも、令音さん」

 

「悪いわね。お待たせしたわ」

 

「・・・・ああ、来たね、シン、琴里」

 

徹夜状態の士道にも負けない目の隈と眠たげな調子で言うと、向かいの席に座った、二亜の漫画仲間の女性漫画家を紹介した。

 

「・・・・紹介しよう。こちらが漫画家の『高城弘貴』先生だ」

 

「あ、どうもーーーー」

 

この女性から、二亜の事を聞けると思い、士道は会釈した。




精霊達に儀式<サバト>の日は強烈だったでしょうね。
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