デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回の話で、あの魔法使いが・・・・!


魔王降臨 金色の悪意

ー士道sideー

 

「に、二亜!!」

 

「あ、ああああ、あああああああああああああああああああああああああーーーーッ!!」

 

二亜の苦痛に満ちた絶叫と共に、その身体から汚泥の如き霊力の塊が溢れ出る。それに触れた地面は、ドロドロと溶解していく。

 

『っ、あれは!ーーーーそう言う事かっ!』

 

ドラゴンは、叫ぶ二亜の額、手、足、身体の至る所から生じた傷と夥しい血が流れるのを見て、何かを察したように声を発した。

その、“二亜の身体が傷の存在を急に思い出したかのように”開いていくのを見ながら、士道は一瞬敬遠な信者に生じる『聖痕』のように思いながらも、ドラゴンに声をかけた。

 

「ドラゴン、どうなってるんだよ・・・・!?」

 

士道の言葉に同意するように精霊達がドラゴンの言葉に耳を傾ける。

 

『良く良く考えてみれば、違和感があったのだ。捕らえた精霊に、“DEMは何もしなかったのか?” とな』

 

「それって?」

 

『おそらくあの夥しい傷は、DEMによるーーーー人体実験の傷痕だっ!!』

 

『っっ!!!?』

 

人体実験、その言葉に精霊達は意味が分からず愕然とするが、琴里と折紙は思考を巡らせ、理解したように呟く。

 

「確かにその可能性は十分あったわ。あの悪辣なDEMの事よ。精霊の身体の構成やら内臓やら持っている能力やらを調べようと5年間、ありとあらゆるーーーーそれこそ拷問なんて一言じゃ片付けられないような、おぞましい人体実験を二亜にしていたとしたら・・・・!」

 

「だ、だけど、二亜はそんな事知っている素振りなんて・・・・!」

 

「ーーーー顕現装着<リアライザ>」

 

『っ!』

 

折紙が発した言葉に、士道達は反応した。

 

「おそらく、脳に顕現装着<リアライザ>を埋め込んでおいて、記憶を封印していたとしたら、二亜がその凄惨な拷問の5年間を覚えていないのも頷ける」

 

折紙の説明にさらに愕然となる一同だがーーーーやがて、二亜の身体から溢れていた血と霊力が二亜の全身を覆い、その姿を変化させたのを見た。

その姿は、以前見た修道女のようなシルエットだが、それとは似ても似つかない、禍々しい者に変貌していた。

 

「二、亜・・・・」

 

『良く見ろ小僧。そして皆。これがーーーーこれがDEMに捕らえられてしまった精霊の末路だっ!!』

 

呆然とする士道に、ドラゴンは怒気を込めた声を発した。

士道とドラゴン、否ーーーーここにいる全員に見覚えのある光景。

霊結晶<セフィラ>の、反転。精霊が深い絶望の淵に沈んだ時に起こる存在の転換現象。かつて十香と折紙にも起こった現象である。

十香は、目の前で士道が殺されたから。折紙は、己の手で両親を殺してしまっていた事を知ったから。

もしもドラゴンの推察が本当だったとした、二亜は5年間DEMにされてきた拷問の日々を思いだし、絶望にその身を呑まれてしまっていたとしたら。

と、そう考えていると、二亜の身体から立ち上がる禍々しいオーラに異変が起こった。

 

「な、何あれ!?」

 

七罪が指差すと、二亜の頭上に『無色の水晶』が突然現れた。そしてその『水晶』が二亜から放出されているオーラを吸収していった。

 

「ドラゴン、あれは?」

 

『っ! 魔力を感じる、まさかあれは、『魔力の核』かっ!?』

 

「『魔力の核』?」

 

『『魔獣ファントム』を生み出す『ゲート』が絶望した時、『ゲート』の体内の『アンダーワールド』に存在するあの『核』か絶望のエネルギーを吸収すると、ファントムが生まれるのだ!』

 

「ちょっと待って! それじゃあ」

 

琴里が言葉を継ごうとした際、その『核』が段々と変貌していき、さらに二亜の身体もビクンと震え、まるでマリオネットのような挙動で顔をあげた。

 

「あ、あああああああああああ」

 

激痛に歪んだ苦悶の表情。その貌は自らの血で真っ赤に染まり、まるで血の涙を流す聖母の像のようだ。

そして二亜が掠れた、声とも言えぬ声を発すると同時に、変貌していた『核』も象を作り出した。

 

「ーーーー〈神・・・・蝕、篇・・・・秩<ベルゼバブ>〉ーーーー」

 

その呼び声に応ずるように、二亜の前に、1冊の巨大な本が、頭上にはボロボロの修道女の亡霊のような姿に顔はウィンプルの奥に隠れ漆黒になり、回りには複数の本が螺旋を描くように宙に浮かせる異形の怪物がソコにいた。

その本は目にするだけで身体が重圧に縛られたかのような圧倒的なプレッシャーを放ち、それは反転した十香と折紙が持っていた〈暴虐公<ナヘマー>〉や〈救世魔王<サタン>〉と同種の『魔王』であった。

そして亡霊のような修道女の怪物こそ、二亜の絶望を吸収して生まれたファントム、〈シスターファントム〉でろう。

〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉は空中、制止したまま自動的にその口を開くと、凄まじい速度でページをめくり始めた。そしてそのページが本の咽から外れ、まるで吹雪のように辺りに舞い散る。

 

「こ、これは・・・・」

 

「気をつけて、士道。あれは『魔王』の1部。ただの紙吹雪ではない」

 

スピリッドライバーを腰に巻いた折紙が淡々と、しかし警戒心に満ちた言葉に応ずるように、二亜の周囲に陣を描くように散った〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉のページが、暗い輝きを放つ。

 

「な・・・・!?」

 

同時、士道は驚愕に目を見開いた。

〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉のページから、闇を固めたような異形、否、シルエットからその異形達、フェニックスやヴァンパイアと言った、士道達が今まで倒してきた『魔獣ファントム』に酷似しており、ソレらが這い出てきたのだ。

 

「(ビシッ)あてっ!」

 

『いつまでもバカ面を晒して呆けている場合ではない! 皆! 変身だっ!』

 

『っ!』

 

ドラゴンに言われ、士道と、既にスピリッドライバーを巻いていた折紙を除いた精霊達もドライバーを腰に巻いた。

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

『[ドライバーセット!]』

 

『[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]』

 

音声が流れるのを聞きながら、士道はチェーンから、十香達はネックレスとして下げていたリングを取り出すと、

 

『変身っ!!』

 

全員が一斉にドライバーに指輪を翳した。

 

[フレイム! ドラゴン! ボゥー!ボゥー!ボゥーボゥーボォー!!]

 

[プリンセス プリーズ!]

 

[ハーミット プリーズ!]

 

[イフリート プリーズ!]

 

[ベルセルク・テンペスト プリーズ!]

 

[ベルセルク・ストーム プリーズ!]

 

[ディーヴァ プリーズ!]

 

[ウィッチ プリーズ!]

 

[エンジェル プリーズ!]

 

全員が〈仮面ライダー〉に変身した。

 

『ーーーーーーーーーーーー』

 

異形は咆哮とも悲鳴とも取れぬ声を発すると、一斉に地を蹴り、士道達に襲いかかった。

 

[サンダルフォンブレードー!]

 

[ザドキエルファング!]

 

[カマエルブレイカー!]

 

[ラファエルランサー!]

 

[ラファエルロッドビュート!]

 

[ガブリエルキーボード!]

 

[ハニエルブルーム!]

 

[メタトロンウィンガー!]

 

『たぁっ!』

 

精霊達の〈仮面ライダー〉が、それぞれの武器で異形達を凪ぎ払い、異形達の空手の身体は空気に溶けて消えていく。

 

「事情は良く分からぬが・・・・放っておけない事だけは分かった!」

 

「周りの邪魔な子達は私達に任せてくださいー! だーりんとハニーは二亜さんを!」

 

プリンセス<十香>とディーヴァ<美九>が叫び、臨戦態勢を取るように構えると、それに対抗するように、〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉から更にページが舞い、そこから無数の異形が現れた。

 

「く・・・・」

 

次第に拡充していく二亜の軍勢に仮面越しで顔をしかめながら、ウィザード<士道>は姿勢を低くした。

精霊の力を封印する事ができるのは自分のみ。ならば自分が二亜に直接肉薄するしかない、のだが、1つだけ不安があった。

 

「・・・・俺がキスしたとして、二亜を正常な状態に戻せるのか・・・・?」

 

十香と折紙とは違って、繋がりが浅すぎる二亜を相手に、今までのやり方が通じるのか分からないのだ。

がーーーー。

 

「(バシィィィィィィィィィンッ!!) おがっ!?」

 

いつのも尻尾ド突きが炸裂し、頭を押さえて蹲る。

 

≪足りなすぎる脳ミソで一々グチャグチャと考えていた所で妙案が浮かぶ訳無かろうが、他に方法が浮かばないなら、今まで積み重ねてきた事を信じて、〈シスター〉に声が届くのを信じて戦え≫

 

「・・・・ああ、そうだな」

 

ウィザード<士道>は鈍痛を感じながら、やっぱコイツはこうじゃないとな、思い頭を振りながら、キッと二亜の姿を見据える。

その様は、異様且つ禍々しくもーーーーどこか悲痛な叫びを上げているようであった。

 

「二亜を助け出す。皆・・・・協力してくれ!」

 

『おお!』

 

ウィザード<士道>の呼び掛けに応え、精霊達が声を発した。

が、その瞬間。

 

≪ぬ!? この気配!≫

 

「ーーーー残念ですが、それは叶いません」

 

何処からか、そんな声が聞こえると同時に、空から二亜を挟んで向かい側に立つ〈仮面ライダー〉が降り立った。

 

「なぜなら、私がいるからです」

 

「・・・・ッ! エレン・・・・!」

 

そう。エレン・ミラ・メイザースが変身する〈仮面ライダーヘルキューレ〉であった。

ヘルキューレ<エレン>は闇に呑まれた二亜の姿を見て目を細めた。

 

「ーーーー成る程。素敵な様になったではありませんか、〈シスター〉。しかも、『精霊から生まれたファントム』まで現れるとは、流石はアイクです」

 

その言葉に、イフリート<琴里>はドラゴンの考察が確信に変わったかのように、不快そうな声を発する。

 

「・・・・随分タイミングが良いわね。やっぱりあなた達の仕業なのね、あれは」

 

「ええ。元よりその精霊の所有権はDEMにあります。ーーーーしかし、こうもアイクの予想通りに動いてくれるとは、今回はあなた方に感謝しなければなりませんね。お陰で我々は『魔王』と『魔獣』を手に入れられそうですよ。アイクの作ったシナリオの通りに踊ってくれて感謝します」

 

ヘルキューレの言葉に、ドラゴンが不愉快極まった声をウィザード<士道>だけでなく、精霊達にも聞こえるように発した。

 

『どうやら我々は、DEMのーーーーいや、アイザック・ウェスコットの手の平の上で、踊らされていたようだな・・・・!』

 

『っ・・・・!』

 

全員が悔しそうに拳を握り締めるが、ヘルキューレ<エレン>は意に返さず、ダーインスレイヴとイージスを召喚すると、ダーインスレイヴの切っ先を二亜に向ける。

 

「さて、私はこれからすべき事があります。潔くこの場から立ち去るのならば、今日の所は見逃してあげましょう」

 

そう言ってヘルキューレ<エレン>は、ウィザード<士道>達を追い払うような仕草をするが、ウィザード<士道>はギリッと奥歯を噛み締めた。

 

「ふざけるな! 二亜をお前らになんて渡すもんか!」

 

「ーーーーまあ、そう言うでしょう、ね!!」

 

ヘルキューレ<エレン>はそう呟くと、ウィザード<士道>に切り込んだ。ウィザード<士道>は2刀流にしたウィザーソードガン・ソードモードでそれを受け止める。

が、ヘルキューレ<エレン>のパワーが凄まじく、ウィザード<士道>は地面をガリガリと削りながら後ろに押し出される。

 

「くっ・・・・!」

 

「〈シスター〉と、この世界に顕現した『精霊から生まれた魔獣』。ソレらを全て手に入れるには、あなた方は邪魔ですからね!」

 

そしてそのまま、ウィザード<士道>と交戦に入るヘルキューレ<エレン>。

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

「シドー!」

 

「仕方ないわ! エレンとマトモに戦えるのは士道とドラゴンだけ! 2人がエレンの相手をしているこの隙に、私達が二亜を取り押さえましょう!」

 

イフリート<琴里>の言葉に、精霊達はそれぞれの武器を構えると、その動作に反応してか、二亜の周りに蠢いていた影の異形達が、一斉に精霊達に襲いかかる。

 

『っ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

その瞬間、精霊達は武器を振り、斬撃、吹雪、火炎、竜巻、衝撃波、光線を放ち、さらに木葉へと変化させ、襲いくる影の異形達を一掃した。

 

「良し! 十香! 耶倶矢! 夕弦! 折紙は士道と交代でエレンを押さえて! 美九は十香達のサポートを! 私とよしのんと七罪は黒い連中がまた出てきたら片付けてーーーー」

 

『そうはいかん』

 

「っ!」

 

突然後ろから聞き覚えのある冷徹な声が聞こえ、イフリート<琴里>はカマエルブレイカーを眼前に構えて振り向くと、メデューサが振り下ろしたアロガントを防ぎ、火花が飛び散る。

 

『琴里(さん)!!』

 

「メデューサっ!!」

 

『ふっ!』

 

『僕も忘れないでね♪』

 

さらに声が響くと、精霊達の間を緑色の影が通りすぎた。

 

『うぁっ!?』

 

『きゃぁっ!?』

 

メデューサがイフリート<琴里>から離れると、精霊達の身体から切られたような火花が飛び散り、全員がその場に倒れると、緑色の影、グレムリンが二刀の刃を振り回しながら現れた。

 

「グレムリンまで・・・・!」

 

『はぁい♪』

 

グレムリンは軽薄に手を振ると、二亜の頭上で巨大な本を列ねて浮遊させている〈シスターファントム〉を見据える。

 

『へぇ~。上手くいったね。ワイズマンの新たな実験☆』

 

「『実験』、ですって?」

 

『そ。彼女、〈シスター〉ちゃんだっけ? 彼女って実は『ゲート』じゃなかったんだよね。でも、折角の精霊を無視するのも勿体ない。だから、『ゲート』である人間から『魔力の核』を奪い取り、絶望した人間のエネルギーを吸収させる事で、『ゲート』じゃない人間もしくは精霊でもファントムを産み出せるんじゃないか、って実験をね』

 

「・・・・それが、ワイズマンの『実験』って訳ね、悪趣味極まれりだわ」

 

しかし、イフリート<琴里>は内心冷や汗をかいている。この『実験』が成功したと言う事は、奴らは適当な『ゲート』から『核』を取りだし、自分達精霊を絶望させ、そのエネルギーから、再び〈イフリートファントム〉達を復活させる事が可能になった。

と、イフリート<琴里>が思案を巡らせていると、〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉からまた異形が無尽蔵に増えていった。

インフィニティとなったウィザード<士道>ならば、メデューサとグレムリン、そして異形達をすぐに蹴散らし、二亜の元に行く事は可能だろう。

ーーーーだが。

 

「・・・・っ!?」

 

エンジェル<折紙>の息を呑むような声が聞こえ、ソチラに目を向けたイフリート<琴里>が目を向けると、信じられないものが目に入った。

エンジェル<折紙>の周りを浮遊している『メタトロンウィンガー』の先端が、自分に向かれ、光線を放ち、アーマーから火花を散らせたのだ。

 

「くぅ・・・・っ!」

 

「折紙!? 何をーーーーっ!」

 

が、エンジェル<折紙>だけではなかった。勝手に腕が動き、カマエルブレイカーの砲口を自分に向けたと思うと、勝手に指が動き、焔の奔流が襲いかかった。

 

「ああああっ!?」

 

「なになにっ!?」

 

「わっ、何よこれ・・・・!」

 

イフリート<琴里>が自分の焔の熱に悶えていると、ハーミット<よしのん>はザドキエルファングの冷気で自分の足を縛られ、ウィッチ<七罪>に至っては、ハニエルブルームの光を跳ね返され、愛想のないマスコットキャラの姿に変えられた。

 

「な・・・・!?」

 

「困惑。身体が・・・・動きません!?」

 

ベルセルク<八舞姉妹>もまるで金縛りにあったように動けなくなった。

 

『フフフフフフ』

 

『あははははは』

 

メデューサとグレムリンが得物を持って、精霊達に近づくーーーー。

 

[[フレイムドラゴン・シューティング(スラッシュ)ストライク! ボゥー! ボゥー! ボゥー!]]

 

『『っ!』』

 

と、そこで、紅蓮の斬撃と銃弾を襲いかかり、2体はソレを防いで距離を空ける。

そして、精霊達を守るように、ウィザード<士道>が駆けつけた。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

自分の天使に攻撃されている。その異常事態に、『ドラゴタイマー』で他のドラゴンスタイルに任せたウィザード<士道>。

 

「皆! どうしたんだ!?」

 

「わ、分からないわ・・・・! 身体が勝手に!」

 

≪未来記載か!≫

 

「っ!」

 

ウィザード<士道>がドラゴンの言葉に気づき、二亜の方を見ると、霊装の一部が筆記具と化し、自動的に〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉の紙面に何かを書いていた。

おそらく自分に敵対する士道達の未来の行動を、『未来記載』で書き込んでいるのだ。

しかし、以前に二亜が見せてくれたそれとは比べ物にならない書き込みの速度が桁違いだ。これでは、未来を描く神を相手取っているようなものだ。

 

「う、ぐーーーー!」

 

≪魔力を全身に膜のように纏うようなイメージだ。精霊の力は、我のような『魔獣ファントム』と反発する。我の力を膜にすれば、〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉の能力の影響を受けん!≫

 

「(よ、良し・・・・!)」

 

ウィザード<士道>は全身に魔力を張り巡らせるように、全身に力を込めた。

 

「ーーーーうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 

瞬間ーーーー。

ウィザード<士道>に中心に魔力が拡がり、群がっろうとしていた異形達が一斉に吹き飛び、それと同時に、精霊達の身体を停止させていた縛めが解かれた。

 

「これって・・・・!」

 

≪美九の時と同じだ。全身に魔力を纏う事で防いでいる。ま、美九と違って、『魔王』だと纏う為に魔力もかなりの物だがな。皆! 小僧と同じように全身に魔力を流せ! そうすれば防げる!≫

 

『っ! はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

ドラゴンの言葉に従い、精霊達も魔力と霊力の混合エネルギーを放出すると、自由に動けるようになる。

 

≪良し。これで動けるな≫

 

「ええ! 十香! 耶俱矢! 夕弦はウォータードラゴンの士道達とエレンの相手を! 私とよしのんと七罪と美九は、メデューサとグレムリンよ!」

 

『おー!』

 

「士道! あなたは二亜を!」

 

「おおおおおおおおおおおおッ!」

 

イフリート<琴里>が言い終わる前に、ウィザード<士道>の元に駆け出した。

そして並み居る影の異形を薙ぎ倒しーーーー。

ウィザード<士道>が、漆黒の汚泥の直中に膝をつく二亜に辿り着いた。

 

「二亜! 大丈夫か!? 気をしっかり持つんだ!」

 

「ああ、あああああ、ああああああああああーーーーッ」

 

しかし、二亜は呼び掛けに応えようとせず、ただ全身を蝕む痛みに支配されるように、苦悶の声を上げ続ける。

 

≪聞こえんか≫

 

「だったら無理矢理聞かせる!」

 

ウィザード<士道>はスウッと息を吸い、大きく喉を震わせる。

 

「【二亜!】」

 

そう。美九の天使〈破軍歌姫<ガブリエル>〉の歌で、二亜に呼び掛けたのだ。

 

「ーーーーッ」

 

するとそこで初めて、二亜の身体が反応したのか、微かに震えた。

 

【・・・・! 二亜!? 俺の声が聞こえるか!? 今助けてやるからな!?】

 

「し・・・・ど・・・・」

 

血に濡れた頬にを僅かに動かし、掠れた声を発した。

その反応から察した。おそらくこの状態は、二亜が感じる『痛み』に起因しているのだ。ならば、鎮痛の歌でそれを取り除けば、二亜の意識を引き戻せるのではと考えて、ウィザード<士道>は二亜に手を伸ばそうとしたその瞬間ーーーー。

 

 

「ーーーー駄目だよ。そんな事しちゃ」

 

 

遥か天より超高速で飛来した『何か』からそんな声が聞こえ、ウィザード<士道>の目前で炸裂し、凄まじい光を放った。

 

≪っ!≫

 

「うわっ!?」

 

咄嗟にドラゴンが反応し、ウィザード<士道>の身体を操作して、後ろに下げさせた。

ウィザード<士道>はすぐに二亜の方に目を向けると、ソコにはーーーー〈仮面ライダーヘルキューレ〉がいた。

 

「ヘルキューレっ!? エレンか!」

 

≪違う。奴はまだ戦っている!≫

 

プリンセス<十香>達の方を見ると、ウォータードラゴン達と連携をしてヘルキューレ<エレン>をどうにか抑えていた。

ウィザード<士道>は、改めて空から飛来したヘルキューレ?を見据えると、そのヘルキューレ?は、エレンのとは細部が異なっていた。白金のヘルキューレと違って、その姿は赤と銀の装飾がされた姿であった。

そしてそのヘルキューレ?はマスクを解除し、その素顔が露になった。

ハーフアップに括られた金髪。空色の碧眼。抜けるような白い肌が特徴的な、可憐と言う言葉を擬人化したような少女であったが、その顔には表情らしきものがなかった。

だが、ウィザード<士道>が目を奪われたのは、その可憐な少女の顔ではない。

彼女がその手に握った〈ダーインスレイヴ〉の切っ先に腹部を貫かれ、標本の蝶の如く磔にされた二亜の姿だった。

 

「二ーーーー亜? 二亜ッ!」

 

ウィザード<士道>は叫ぶを上げると、二亜の口からゴブ、と血の塊が流れ落ちた。

 

「お前ッ! 二亜に何しやがる! そこを退けぇぇぇッ!」

 

ウィザード<士道>はウィザーソードガンの柄を握ると、烈帛の気合いと共に少女目掛けて刃を振り下ろした。

が、刃が彼女に触れる寸前、マスクを展開した少女は、閃光のような軌跡を描きながらダーインスレイヴを振るい、ウィザード<士道>の身体を軽々と弾き飛ばした。

 

「ぐわッ!」

 

「士道ーーーー!」

 

吹き飛ばされたウィザード<士道>をエンジェル<折紙>が空中でキャッチした。下ではメデューサをイフリート<琴里>が、グレムリンをアーマースタイルになったハーミット<四糸乃>と大人モードのウィッチ<七罪>が抑えていた。

 

「わ、悪い、折紙。助かっーーーー」

 

ウィザード<士道>はソコで言葉を止めた。仮面越しからエンジェル<折紙>の雰囲気が緊張し、二亜に剣を突き立てているヘルキューレ?を見据えていたからだ。

エンジェル<折紙>が声を発する。

 

「どうしてあなたがここにいるの。ーーーーアルテミシア・アシュクロフト」

 

「・・・・・・・・」

 

エンジェル<折紙>が呼び掛けるも、アルテミシアと呼ばれたヘルキューレ?はそれに一瞥も返さなかった。

と、ソコでーーーー。

 

 

 

「ご苦労、アルテミシア。イヤ、〈仮面ライダーヘルキューレⅡ<ツー>〉」

 

 

 

「・・・・っ!?」

 

≪っ!≫

 

と、ソコで、ウィザード<士道>とドラゴンは半ば反射的に、視線の向きを変えた。

ソコに現れた人間の異様の過ぎる気配を放っていたのか判別はつかなかったがーーーーこの場に存在しなかった『異物』が紛れ込んでいる事が、ハッキリと分かった。

士道だけでなく、その場にいた精霊達も、メデューサ達も、同じ方向に目を向けた。

皆の視線を集めながら、“その男”は悠然と二亜とヘルキューレⅡ<アルテミシア>の元へ歩み寄った。

 

「アイザック・ウェスコット・・・・!」

 

ウィザード<士道>が射殺すような視線で睨み付けながら名を呼ぶと、ウェスコットは薄く唇を歪めて見せた。

 

「直接顔を見合わせるのは久しぶりだね。イツカシドウ。壮健そうで何よりだ。それにしても・・・・ふふふふっ、君達は実に、僕の手の平の上で見事なまでに踊ってくれたね。お陰で『魔王』が手に入ったよ。拍手喝采を上げたい気分だ」

 

『っっ!!』

 

ウェスコットが手をパチパチと叩きながら言うと、ウィザード<士道>だけでなく、精霊達がウェスコットを睨み付けた。

 

「是非お礼をしよう。と言っても、金品は持ち合わせていなくてね。代わりにーーーー面白い物を見せてあげよう」

 

「面白い物?」

 

ウェスコットが不気味な笑みを浮かべながら上着を上げたその時。

 

「何っ!?」

 

『えぇっ!?』

 

ウィザード<士道>も、精霊達も顔を驚愕に染めた。何故なら、ウェスコットの腰に巻かれていたのはーーーーウィザードライバーだったのだ。

否、ベルトの手形が士道のでは黄色の縁だったのに対し、あちらは赤で形も、爪が立っているようで、細部が異なっていた。

 

「さぁ、お見せしよう。これが私のーーーー変身だ!」

 

ウェスコットがドライバーを操作すると、左手の薬指に、金の装飾が施された黒いウィザードリングを嵌める。

 

[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

ベルトから、ウィザード<士道>の音声とは違った重い声、ヘルキューレのドライバーと同じ声が響いてくる。

ウェスコットはリングを嵌めた左手を天に伸ばし、ゆっくりと下ろすと、リングのメガネを下ろし叫ぶ。

 

「変身!」

 

[チェンジ ナウ!]

 

音声が響くと、ウェスコットの頭上に、4角形の金色の魔法陣が展開され、荘厳な鐘の音色と共に下りてきて、ウェスコットの身体を通過すると、その姿を現した。

闇のように漆黒な身体に黄金の装飾が施された鎧、マスクにも黄金の顔を作り、黄金の王冠に魔法使いの帽子のように円錐形に伸びた黒い角。禍々しい存在感と威圧感が交ざった魔法使いの姿に。

 

「そ、その姿は・・・・!?」

 

「この姿かい? そうだなぁ・・・・君が魔法使い<ウィザード>ならば、私はーーーー〈ソーサラー〉、〈仮面ライダーソーサラー〉と名乗ろうか!」

 

[ディースハルバード!]

 

ウェスコットが変身した〈仮面ライダー〉ーーーー〈仮面ライダーソーサラー〉は、右手に長大な斧『ディースハルバード』を持ち、リングを嵌めた左手を見せながら名乗った。




ー〈仮面ライダーヘルキューレⅡ<ツー>〉ー
色ちがいの仮面ライダーヘルキューレ。アルテミシア・アシュクロフトが変身します。内部には量産型スレイプニルを宿す。

〈仮面ライダーソーサラー〉をウェスコットにするのは最初から決まっていました。
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