デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

178 / 278
奪われた魔王

ー士道sideー

 

「か、〈仮面ライダーソーサラー〉・・・・だと!?」

 

「くくくくく、素晴らしいだろう? 次いでに紹介しよう」

 

[サモン ナウ!]

 

『召喚』と言う意味の音声が響くと、ソーサラー<ウェスコット>の身体に4角形の魔法陣が展開され、その中から現れたのは、

 

ーーーーゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!

 

巨大な羽と禍々しい角が2本生えたウィザードラゴンよりも2回りも巨体な竜ーーーーウィザードラゴンが4足型の竜ならば、こちらは豪腕を持った2足型のドラゴン型のファントムだった。

 

『ーーーー!!』

 

そのドラゴンの雄叫びが放たれる威圧感に、ウィザード<士道>達も、メデューサ達すらも一瞬畏縮された。

 

「紹介しよう! これが私の『魔獣ファントム』、〈ドレイクファントム〉さ!」

 

ーーーーゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!

 

ソーサラー<ウェスコット>の言葉に、〈ドレイクファントム〉は再び雄叫びを上げると、その身体は光り、人間大の大きさの人型ファントムへと変貌した。

大きく発達した何枚もの鱗を全身に纏い、鎧のような姿となったファントムだった。

 

「な、何だその姿はっ!?」

 

「おや、知らないのかい? 『魔獣ファントム』には、『魔獣形態』と『魔人形態』と言う、2つの姿があるのだよ」

 

「何!?」

 

聞き返すウィザード<士道>に、ソーサラー<ウェスコット>はやれやれと肩を竦めると、まるで態度も物分かりも悪い生徒に辛抱強く説明する教師のような口調で話す。

 

「良いかね。『魔獣ファントム』が『ゲート』の『アンダーワールド』を破壊する時、身体が大きく、力も強い『魔獣形態』で破壊する。そして『ゲート』を喰らい、身体を小さくする事でスピードど小回りが効き、尚且つ、魔力を凝縮させる事で更に強さを増した状態、それが『魔人形態』なのだよ。君が今まで『アンダーワールド』の中で戦ってきたファントム達が、この『魔獣形態』。メデューサ達を『魔人形態』なのだよ」

 

「『魔人形態』・・・・」

 

ウィザード<士道>がそう呟くと、ドレイクはソーサラー<ウェスコット>の一体化するように、ソーサラー<ウェスコット>の中に戻っていった。

 

「さて、授業はここまで、だ!」

 

ソーサラー<ウェスコット>がそう言い、ディースハルバードを振るったその瞬間、巨大な黄金の竜巻と雷撃が、ウィザード<士道>達に襲い掛かった。

 

「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

『あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

 

ウィザード<士道>も精霊達も、竜巻に巻き込まれ、更に竜巻の内部で雷撃を浴びてしまう。

竜巻が収まると、全身から煙を上げながら地面に落下するウィザード<士道>達。

 

「がはっ! うぅ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!(ゲシッ!) うぁっ!」

 

ヨロヨロになりながらも、立ち上がろうとするウィザード<士道>だが、その背中を踏まれ倒れてしまう、視線を向けると、自分の背中に足を乗せているのは、ヘルキューレ<エレン>だった。

ヘルキューレ<エレン>はウィザード<士道>の首にダーインスレイヴの刃を添えると、冷酷に告げる。

 

「下手な抵抗は後回しにしてください。私が殺す前に死なれては、私のプライドが許しません。それに、あなたの大切な精霊達も危なくなりますよ?」

 

「っ! 皆!」

 

いつの間にか、満身創痍で倒れた精霊達の身体を、グールやインプが取り押さえていた。

 

[Oooooooooooooooooooo・・・・]

 

ソーサラー<ウェスコット>が、うなり声をあげるシスターファントムを見上げると、手を虚空に伸ばし、パチンっ、と指を鳴らしたその瞬間、シスターファントムの周りに魔法陣が展開され、そこから魔力の鎖が飛び出していき、シスターファントムの身体を拘束した。

 

「Mr.ワイズマン達との契約もあるのでね。この『魔獣』は我々が引き取ろうじゃあないか」

 

ソーサラー<ウェスコット>がそう言って、再びウィザード<士道>達の方を向く。

 

「ソコでじっくり見ていてくれたまえ。君達はこれから、歴史的な瞬間を見るのだから。アルテミシア、やりたまえ」

 

ソーサラー<ウェスコット>がそう言った瞬間、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>はダーインスレイヴを握る手に力を入れ、その切っ先を二亜の身体から抜いた。

二亜の身体がビクンと跳ね、剣を抜いた腹部から、湧き水のように血が溢れる。

 

「二亜!」

 

叫び、駆け出そうとするウィザード<士道>だが、ヘルキューレ<エレン>を踏んでいる足に更に力を込めて、動けなくした。

ヘルキューレⅡ<アルテミシア>は片手をゆっくりと持ち上げると、二亜の胸元のちょうど直上に掲げそして、何かをブツブツと呟いたかと思うと、随意領域<テリトリー>を展開していき、それと同時にに、二亜の身体がくろく発光し始める。

 

「・・・・、・・・・・・・・、・・・・・・・・」

 

最早声すら出なくなった二亜が、微かに指先を震わせる。

すると次の瞬間、二亜の胸元から、夜を集めて宝石の形に凝縮したかのような物体が出現した。それに合わせるように、二亜の身体を纏っていた霊装が、黒い霞となって消え失せる。

 

「・・・・!」

 

「霊結晶<セフィラ>!? でも・・・・あの色はーーーー」

 

ウィザード<士道>が目を見開くと同時、目を覚ました精霊達、特にイフリート<琴里>とエンジェル<折紙>が驚愕の声をあげる。

二亜の胸から生じたソレは、かつて精霊〈ファントム〉が琴里を精霊にした時に用いた宝石に、良く似た形をしていたのだ。

 

「素晴らしい。これがーーーー反霊結晶<クリフア>」

 

ソーサラー<ウェスコット>は二亜の目前まで行き、仮面を解除すると、浮遊する漆黒の宝石を見つめ、狂気に満ちた笑みを浮かべ、ソレを慈しむように矯めつ眇めつした後、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>を一瞥した。

 

「ーーーーイツカシドウに精霊に、〈ラタトスク〉の諸君。改めて礼を言わせてくれ。君達のお陰で、私は漸く悲願への一歩を踏み出す事ができる」

 

高らかに宣言するように言いながら、仮面を展開したソーサラー<ウェスコット>が、ゆっくりとその結晶に手を伸ばす。

 

「お前・・・・何を!」

 

「ーーーーなにを? はは、君がソレを問うのかね? “今まで、8人もの精霊の力を得てきた君が”」

 

「な、何だと・・・・?」

 

≪っ! まさかヤツは・・・・!≫

 

ウィザード<士道>が眉根を寄せ、ドラゴンが察したように声をあげようとすると、ソーサラー<ウェスコット>は反霊結晶<クリフア>を掴みーーーーそのまま自分の胸へと無造作に押し当てた。

 

「な・・・・!?」

 

「くーーーーおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーッ」

 

反霊結晶<クリフア>を起点として、漆黒の閃光が、雷のようにバチバチッ! と音を立てながら辺りに撒き散らされる。まるでその一帯のみが一瞬にして夜になったかのように、辺りの景色が塗り替えられる。

そしてーーーー数秒の後。

その『夜』が、ソーサラー<ウェスコット>に吸い込まれるように収束していった。

 

ソコにはもう、反霊結晶<クリフア>は存在していない。

 

「ふーーーー」

 

ただ、鎧の胸元を派手に焼け焦げさせ、全身に漆黒の霊力を帯びたソーサラー<ウェスコット>が立っていた。

そう。まるでーーーー精霊のように。

 

「はは、ははははははははははははははッ! はははははははははははははははははははははははははははーーーーッ!」

 

ソーサラー<ウェスコット>は、身体を反らしながら哄笑を上げる。その様に、琴里が顔を戦慄の色に染めた。

 

「嘘・・・・霊結晶<セフィラ>を取り込んだって言うの・・・・!?」

 

「馬鹿な、そんな事・・・・」

 

言いかけて、ウィザード<士道>は言葉を詰まらせた。ーーーー先ほどソーサラー<ウェスコット>が発した言葉が、頭の中を掠めたのだ。

 

「精霊の、力を・・・・?」

 

ウィザード<士道>が呆然と声を発すると、ソーサラー<ウェスコット>が上機嫌そうに仮面を向けてきた。

 

「そう言う事さ」

 

そして片手を虚空に掲げ、唱える。

 

「ーーーー〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉」

 

その、強大なる『魔王』の名を。

 

「なーーーー」

 

ウィザード<士道>の狼狽に合わせ、1度は虚空に消えた本が、ソーサラー<ウェスコット>の手元に現れる。

瞬間、ソーサラー<ウェスコット>が声をあげる。

 

「ほう・・・・? 不思議な物だね。魔王に触れるのは初めてだと言うのに、その力、権能までもが手に取るように分かる。ーーーーこうかな?」

 

ソーサラー<ウェスコット>は楽団を指揮するように手を振り上げると、二亜の時のように〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉のページが舞い、ソコから影の異形が何体も現れた。

 

「何・・・・!?」

 

≪この短時間で魔王を操っているのか? 小僧よりもセンスがある!≫

 

「(うるせぇ!)」

 

驚くウィザード<士道>達を尻目に、ソーサラー<ウェスコット>は魔王の力を分析する。

 

「成る程・・・・本に記された存在の具現化か。ははは、魔王の名に違わず、世界の道理も条理もねじ曲げる力だ。素晴らしいとは思わないかね? どれ、他にはどんな権能があるのかな?」

 

「く・・・・」

 

ウィザード<士道>が『インフィニティリング』に手を伸ばそうとしたその時。

 

『遂に手に入れたようだな? Mr.ウェスコット?』

 

「おおMr.ワイズマン。来てくれるとはね」

 

『漸く精霊から生まれたファントムが手に入ったのだ。気持ちが逸ってしまったよ』

 

「では、これを」

 

『ふむ』

 

その場に転移魔法でワイズマンが現れ、ソーサラー<ウェスコット>とのやり取りで、ほんの僅かに身体をピクッと止めた。この時、構わず動いていれば、何かか違った可能性があったのかも知れなかったかも知れない。

そんなウィザード<士道>を気に止めず、ワイズマンがシスターファントムに向けて手を伸ばすと、シスターファントムは紫色の球体に包まれ、ワイズマンの手の平に収まるサイズにまで縮小された。

 

「ーーーーほう。これはこれは」

 

『その力で何か分かったかね?』

 

「ああ。君も知っているある『真実』さ。イツカシドウ。君は、自分の義妹、イツカコトリに隠している事があるね?」

 

「っ! まさか!」

 

それを聞いた瞬間、ウィザード<士道>はワイズマンとソーサラー<ウェスコット>を睨み、イフリート<琴里>達は訝しそうな顔になるが、ワイズマンとソーサラー<ウェスコット>が言葉を続ける。

 

『〈イフリート〉よ。お前とメデューサにはちょっとした因縁があるのだよ』

 

「正確には、“メデューサの『ゲート』”、とね」

 

「私と、メデューサの『ゲート』に因縁・・・・?」

 

『ん?』

 

その言葉に、イフリート<琴里>だけでなく、メデューサも、お互いに視線を向けた。

必死にワイズマンとソーサラー<ウェスコット>の元に這ってでも行こうとするウィザード<士道>だが、ヘルキューレ<エレン>の踏みつけが更に強くなるだけだった。

 

「やめろ! やめろウェスコット! ワイズマン!」

 

ウィザード<士道>の訴えを無視し、ソーサラー<ウェスコット>は答えた。

 

 

 

 

「5年前、『天宮大火災』の時、メデューサの『ゲート』である『稲森美紗』と言う少女がいた。そして、彼女の両親は、イフリートーーーー“君が起こした大火災で死んだのだよ”」

 

 

 

 

「っっ!!!???」

 

ソーサラー<ウェスコット>に告げられた言葉に、イフリート<琴里>は息を呑んで、おそるおそるとウィザード<士道>を見ると。

 

「くっ・・・・!!」

 

ウィザード<士道>の様子から、ソレが『真実』である事を証明された。

 

「・・・・私が、メデューサの『ゲート』の両親を、殺した・・・・?」

 

身体から力が抜けたように崩れ落ち、変身が解除され、茫然自失となる琴里。

 

「ーーーーウェスコットォォォォオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「なっ!」

 

ウィザード<士道>は怒りで力を引き出して起き上がると、ヘルキューレ<エレン>を押し退け、『インフィニティリング』を嵌めてベルトに翳した。

 

[イィィンフィニティー!!]

 

ーーーーギャォォォォォォォォォォンッ!!

 

ウィザード<士道>から光り輝くドラゴンが飛び出し、精霊達を拘束していたグールにインプを蹴散らし、ソーサラー<ウェスコット>とワイズマンに襲い掛かるが、ヘルキューレ<エレン>とヘルキューレⅡ<アルテミシア>とメデューサが立ち塞がる。

 

『邪魔だぁっ!!』

 

『「「うぁっ!!」」』

 

3人を吹き飛ばして、ソーサラー<ウェスコット>とワイズマンに牙を剥いた。

が。

 

「ドレイク」

 

ーーーーゴギャァァァァァァァァァァッ!!

 

ソーサラー<ウェスコット>の身体から、『魔獣形態』のドレイクが飛び出し、ドラゴンとぶつかり合い、距離を空ける。

 

ーーーーギャオオオオオオオオオオオンッ!!

 

ーーーーゴギャアアアアアアアアアアアッ!!

 

2体の魔竜が咆哮を上げ合うと、ドレイクはソーサラー<ウェスコット>へ、ドラゴンはウィザード<士道>へと向かい、一体化する。

 

[プリーズ!]

 

ウィザード<士道>の身体を水晶が包み砕け散ると、その姿を見せた。

 

[ヒースイフードー! ボーザバビュードゴーーン!!]

 

水晶のごとき輝きを放つ、〈仮面ライダーウィザード インフィニティスタイル〉だ。

 

「ほぅ、それがインフィニティか。成る程、膨大な魔力を感じるね」

 

「お前は許さない!!」

 

[アックスカリバー!]

 

輝煌斧剣アックスカリバー・カリバーモードを取り出すと、『インフィニティリング』をベルトに翳した。

 

[イィィンフィニティー!!]

 

「アイク!」

 

「っ!」

 

ヘルキューレ<エレン>とヘルキューレⅡ<アルテミシア>が立ち塞がるが、超高速で動くウィザード<士道>の動きに対応できずーーーー。

 

ーーーーザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!!

 

「ぐぅあっ!!!」

 

「あぁっ!!!」

 

2人のヘルキューレは地面に転がるが、すぐに体制を戻す。

 

「ーーーー成る程ね、これは確かに強敵だ。下手すれば精霊よりも厄介だね」

 

「忌々しいですけどね。ですからーーーー全力でいきますよ!」

 

「ああっ!」

 

2人のヘルキューレがそう言うと、アーマーの宝石部と馬の顔の目が光り、仮面の側頭部には光る羽が伸びた。

 

『真那<ビースト>が言っていた〈リミットオーバーモード〉か!』

 

「上等だ!!」

 

超加速で動くウィザード<士道>に、2人のヘルキューレも同じく超加速し、光の閃光が辺りに閃く。

 

『グレムリン』

 

『もう! ソラだよ!』

 

メデューサが目配せすると、グレムリンは不承不承ながら加速し、ウィザード<士道>達に追い付く。

 

「耶倶矢! 夕弦!」

 

「応さ! 我ら八舞を差し置いて、神速の世界でふんぞり返られるなど、許さん!」

 

「同意。最速の称号は八舞の物です」

 

茫然自失したイフリート<琴里>に代わり、エンジェル<折紙>が声を上げると、ベルセルク<八舞姉妹>が頷き、3人は加速して、ウィザード<士道>達に追い付く。

 

[ターンオン!]

 

「ふっ! はっ! たぁっ!」

 

「くっ!」

 

「っ!」

 

『はぁっ!』

 

「っ!」

 

「りゃぁっ!」

 

「加勢。たー!」

 

加速の世界で、アックスカリバー・アックスモードでヘルキューレ達とグレムリンと互角に切り結んでいるウィザード<士道>に、エンジェル<折紙>達が加勢する。

 

『耶倶矢! 夕弦! リングを貸せ!』

 

「っ! ああ!」

 

「承諾。どうぞ」

 

ベルセルク<八舞姉妹>は、『ラファエル・テンペストリング』と『ラファエル・ストームリング』を左手の人差し指と薬指に嵌めて、アックスカリバーのハンドオーサーに読み込ませた。

 

[ラファエェェェル! ハイタッチ! サイクロンストライク! ビュビュンビュビューン! ビュビュンビュビューン!]

 

アックスカリバー・カリバーモードに切り替えて、弓矢の矢を持つように構えると、アックスカリバーの切っ先に添えた握り拳から光の棒が伸びて弓とようにしなり、さらに弦のような光の線がアックスカリバーの上を掴んでいたウィザード<士道>の手に向かって伸びると、ウィザード<士道>の横に、『〈颶風騎士<ラファエル>〉・【天を駆ける者<エル・カナフ>】』の形になった武器を構えるベルセルク・テンペストとベルセルク・ストームの幻影が現れ、ウィザード<士道>と重なると、弓矢を放つように手を離す。

 

ーーーービュォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

その瞬間、竜巻を纏ったアックスカリバーが、ヘルキューレ達とグレムリンを凪ぎ払った。

 

「「あああああああああああッ!!」」

 

『ぐっはぁっ!!』

 

加速が解けると、ヘルキューレ達とグレムリンがその場に倒れ、変身が解除された。

 

「アイザック・ウェスコット! ワイズマン!」

 

『どちらが『最強の魔法使い』なのか、見せてやろうではないか!』

 

ウィザード<士道>がアックスカリバーを魔法使い<ソーサラー>と賢者<ワイズマン>に向けた。

 

「ふふふふ、実に楽しめたよイツカシドウ。いや、〈仮面ライダーウィザード〉」

 

『しかし、今日はこれでお開きだ』

 

余裕綽々な態度のソーサラー<ウェスコット>がディースハルバードを地面に突き立てる。

 

「ーーーー名残惜しいが、魔王と魔獣を手に入れると言う最大目的は達した。今日はここまでにしておこうじゃあないか」

 

「・・・・っ!?」

 

ウィザード<士道>はその言葉に眉根を寄せて、アックスカリバーを握る手に力を込める。狡猾なこの男など信じられない。

だが、ヘルキューレ<エレン>が声を発した。

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。流石に私も、複数の魔王を一気に取り込んでは身体が保てないだろうからね。それにーーーー楽しみは1つずつ堪能しなければ勿体ないじゃあないか」

 

『・・・・っ』

 

瞬間、ウィザード<士道>達は一斉に息を呑んだ。以前ウェスコットと顔を合わせた時から覚えていた『違和感』が、一気に膨張する。

この男、冷酷とか残忍とかとは、違う場所にいる。敢えて言うならばーーーー『異質』なのだ。

そう。この男に感じる漠然とした恐怖感の正体。それは畏怖ではなく、『魔獣ファントム』達と同じ、自分の常識の埒外にいる者に対する『未知』と言った方が適当だった。

 

「ーーーー分かりました。では」

 

「ああ。行こうか」

 

ーーーーパチンっ。

 

ソーサラー<ウェスコット>が言い、ワイズマンが指を鳴らした瞬間、背後に転移魔法陣が展開され、ワイズマンの近くに集まったメデューサとグレムリン。ソーサラー<ウェスコット>とヘルキューレ<エレン>とヘルキューレⅡ<アルテミシア>に、魔法陣がゆっくりと近づく。

 

「近い内にまた会おう。〈仮面ライダーウィザード〉と精霊諸君。残り少ない安寧の時を、どうか楽しんでくれたまえ」

 

「逃がすかーーーー」

 

「士道!」

 

追おうとするウィザード<士道>の手を、正気に戻った琴里が掴んだ。その隙に魔法陣がワイズマン達を通過すると、霧散した。

 

「気持ちは分かるけど、抑えなさい! 今は二亜の方が先決よ!」

 

琴里が、視線を仰向けに倒れた二亜の方に向けると、ウィザード<士道>はハッと息を詰まらせた。

 

「二亜!」

 

地面を蹴り、全員が変身を解除して、血の海に沈んだ二亜の元へと走った。

全身の傷も痛々しいが、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>に貫かれた腹部が酷かった。間違いなく致命傷だ。辛うじてヒュウヒュウと呼吸が聞こえるが、虫の息である。

 

『七罪。応急措置を』

 

「あ、そ、そうか・・・・!」

 

士道の身体から出てきたドラゴンに言われ、意図を理解した七罪が、『ハニエルリング』を嵌めながら小走りで二亜の側にやって来る。

 

「〈贋造魔女<ハニエル>〉・・・・!」

 

七罪は箒型の天使の力で、二亜の傷だらけの身体を、綺麗な身体に変化させた。

 

「これで・・・・少しはマシだと思う。でも、失われた血が戻る訳じゃないし、損傷した臓器が正確に修復できている訳でもないわ。早く治療しないと・・・・」

 

その言葉を示すように、二亜の容態はどんどん悪化していく。傷は塞いだが、顔から血の気がドンドンと失せ、呼吸も段々小さくなっていく。

 

「くそ・・・・二亜! 俺の声が聞こえるか!? 必ず助けるからな!」

 

二亜の手を握るが、その手はドンドン冷たくなり、ウィザードに変身して直接連れていこうかと思ったその時、

 

『ん! これは・・・・十香。〈シスター〉を良く見てみなさい!』

 

「・・・・っ! シドー!」

 

ドラゴンの言葉に、十香は訝しそうに二亜を見ると、何かに気づいたように、二亜の隣で足を折り、感覚を研ぎ澄ますように視線を鋭くして二亜を見つめると、バッと顔を上げてくる。

 

「微かだが、二亜に霊力が残っているぞ!」

 

「何だって!?」

 

士道が目を見開くと、ドラゴンが口を開く。

 

『上から降ってきたもう1人のヘルキューレに刺される前に、ほんの僅かだが引き戻していた。あの時点で、完全な反転状態ではなくなっていたのだろう。つまり、奪われた霊結晶<セフィラ>、いや、反霊結晶<クリフア>だったか、それが完璧な状態ではなかった可能性がある。おそらく〈シスター〉の身体には、僅かではあるがまだ霊結晶<セフィラ>が残っているのだ!』

 

「・・・・!」

 

ドラゴンがソコまで言って、士道はハッと肩を揺らした。

そして、今月の上旬に、士道の暴走の事が脳裏を掠めた。

 

「ドラゴンーーーー俺と皆のあいだには、目に見えない経路<パス>が繋がっていて、ソコを絶え間なく霊力が循環してる・・・・って言われたよな」

 

『うむ・・・・・・・・試してみる価値はあるな』

 

士道の言葉で、ドラゴンもその意図をすぐに察したように呟く。

 

「・・・・一か八か、二亜を封印する・・・・!」

 

そう。士道と、封印を施した精霊達の間には、霊力の流れが形成される。ならば二亜に経路<パス>を繋ぐ事ができれば、士道や精霊達の霊力を二亜に供給する事が出来るかも知れないと考えたのだ。

無論、二亜の士道に対する好感度が、封印可能領域まで上昇しているかは分からない。だが今は信じるしかない。ーーーー士道と皆の想いが、二亜に伝わっていると。

 

「ーーーー二亜。頼む。俺を・・・・受け入れてくれ。俺の力、全部持っていっても構わない! だからーーーー」

 

士道は懇願するようにそう言うと、皆が見守る中、ゆっくりと二亜に顔を近づけていきーーーー唇と唇を、触れさせた。そんな中、ドラゴンはコッソリと、二亜の薬指に『エンゲージウィザードリング』を嵌めていた。

一瞬、無機物のよつに冷たい唇に顔が強ばる。

しかしすぐに士道は、微かではあるが、身体に温かい物が流れ込んでくるような感覚を覚えた。

 

「・・・・!」

 

それは間違いなく、精霊の力を封印した時の感覚であった。唇を離し、呼び掛けるように二亜の名を呼ぶ。

 

「二亜! 二亜!」

 

『起きろ。まだ読み終えていない漫画やラノベがあるのだろう?』

 

「目を覚ますのだ、二亜!」

 

「二亜・・・・さん!」

 

士道に続くように、ドラゴンと精霊達も声を上げる。

やがて、微かに二亜の瞼が動いた。

そして掠れた声を発してくる。

 

「・・・・・・・・、そんなに・・・・叫ばなくって、も・・・・聞こえて・・・・るって・・・・の・・・・」

 

「ーーーー! 二亜!」

 

士道が叫ぶと、二亜は再び目を伏せ、小さく唇を動かした。

声は聞こえなかったけれどーーーー『あ』『り』『が』『と』『う』の5文字を綴っているように見えた。

 




次回で第十三章が終わります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。