デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
〈ハーミット〉と『よしのん』と遭遇してから、どれくらいの時間が経ったか。
士道と〈ハーミット〉は、デパートの中を歩きながら、会話に花を咲かせていた。と言っても、会話をしているのはパペットの『よしのん』であった。
時折琴理から〈ハーミット〉本人とコミュニケーションを取れと指示が飛ぶが、さっきからそれとなく〈ハーミット〉に話しかけようとすれば、『よしのん』が間に入って上手くできないが、『よしのん』は士道との会話をカラカラと笑って楽しんでいる。
本当は〈ハーミット〉本人とコンタクトを取りたいところだが、彼女の精神状態をモニタリングしている〈フラクシナス〉からは、良い数値が出ているらしい。
どうやら〈ハーミット〉本人は、『よしのん』と士道の会話を楽しんでいるようだった。
《ふむ、存外良い感じじゃない。好感度も上々よ。今すぐキスしようって言っても、拒まれないんじゃないの?》
「・・・・おいおい」
本気なのか冗談なのか分からない言葉に、頬をかく。
『やっぱりお喋りするのはたーのしーいねー。どうもあの人達<AST>は無粋でさー』
「は・・・・はは」
≪順調なのか? 当の〈ハーミット〉自身とはまるでコミュニケーションが取れていないこの状況が?≫
士道もドラゴンの意見に同意だった。
会話は弾んでいるし、好感度も機嫌も上がっているのだが。
「・・・・・・・・・・・・」
士道はちらと『よしのん』を操っている〈ハーミット〉の方を見た。
昨日会った時も、そして今日も、コミュニケーションを取っているのは『よしのん』だけで、〈ハーミット〉本人の口はピクリとも動いていないのである。
『おぉ?』
「・・・・・・・・っ!」
不意に『よしのん』がこちらを向いたので、士道は肩を震わせた。
『すっごーい! 何かねありゃー!』
『よしのん』が興奮気味に手をバタつかせると、その場からとてとてと走っていく。もちろん走るのは〈ハーミット〉なのだが。
『よしのん』が興味を持ったのは、ウサギやクマのぬいぐるみや、テレビヒーローの変身セット等が置かれた玩具売場の一角に組まれていた、やたらカラフルな強化プラスチックのお城、お子様用の小さなジャングルジムだった。
〈ハーミット〉は両足と右手だけで器用に上がっていき、頂点に到達すると、声を弾ませた。
『わーはは、どーよ士道くん。カッコいい? よしのんカッコいい?』
「お、おい、そんなところに立っていると危ないぞ」
≪ハァ・・・・ムッ、これはマズイな。おい小僧≫
ドラゴンが何か言っているが、士道は気にする余裕がなかった。
いくら小さな子供用の室内用ジャングルジムとは言え、てっぺんから落ちては怪我をしてしまう。〈ハーミット〉は空を飛ぶ事ができるのは分かっているが、昨日の盛大にスッ転んだイメージが残っており、慌ててジャングルジムの元へ駆け寄るが、『よしのん』は不満げに手を振った。
『んもうっ、カッコいいかどうかって訊いているのにぃー。っと、わ、わわ・・・・っ!?』
「なーーーっ!」
バランスを崩してしまったのか、〈ハーミット〉は『よしのん』ごとジャングルジムの上から踊るように手を振ってから、士道の上に落下し、そのまま〈ハーミット〉に押し潰される格好で、士道は床に張り付けられた。
「っ・・・・いへぇ・・・・」
仰向けに倒れる士道、何故か前歯が痛かった。そして、違和感に気づく、目の前に海のように青く美しい髪と、端正な造形の顔をした少女がいて、自分の唇あたりに、妙に柔らかい感触があったのだ。
≪なんと言う偶然だ。小僧、最悪だぞ・・・・≫
「ーーーーーーーーーッ!?」
数秒後、士道は今自分がどういった状況に置かれているのかを脳が理解した。ドラゴンが言った“最悪”の意味は、〈ハーミット〉とのこの状況であると思った。
《・・・・わお。やるわね、士道》
さすがの琴理も予想外だったのか驚いた声を響かせる。
現在士道は、上から落ちてきた少女と、ばっちり口づけを交わしたのだ。
『・・・・・・・・・・・・』
〈ハーミット〉と『よしのん』ですら、無言のまま身を起こす。その際ようやく二人の唇が離れた。図らずも、キスしてしまった。
「(でもこれで、彼女の力は封印できたのか?)」
士道は、十香とキスを交わした時のような、身体に温かいものが流れ込んでくる感覚が無い事に、違和感をかんじた。
体内にいるドラゴンに聞こうとしたら、そこで、インカムの向こうから、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「な・・・・っ」
力を封印できなかったのか、士道は眉をひそめる。そしてこのサイレンは精霊の機嫌が崩れ、士道に機嫌が迫ったときに鳴るものである。と言う事は〈ハーミット〉は・・・・。
「・・・・・・・・・・・・」
『あったたたぁー・・・・ごめんごめん、士道くん不注意だったよー』
しかし、〈ハーミット〉は機嫌が悪くなった雰囲気は無く、『よしのん』が口をパクパク動かして、平然としていた。二人とも、怒っている様子は見られない。
「え・・・・?」
≪馬鹿者が、機嫌が悪くなったのは〈ハーミット〉ではない≫
《士道、緊急事態よ。・・・・それもたぶん、最強最悪の》
インカムから聞こえた琴理の声が、いつになく焦った様子だった。
「は・・・・? 一体何が・・・・」
≪ボケ、後ろだ≫
と、後方から、ざっ、と言う足音が聞こえ、士道は肩を震わせた。恐る恐ると首を後方へ向けると、そこには、意外すぎる顔があった。
「と、十香・・・・?」
そこに立っていた少女に、士道は目を見開く。
そう、そこにいたのは、来禅高校の地下シェルターに避難している筈の十香であった。
因みに十香は、タマちゃん教諭やクラスのみんなと避難していたが、タマちゃん教諭から『空間震の危険性』を聞かされ、シェルターに避難していない士道を心配して、タマちゃん教諭の目を盗んで士道を探しに出て士道の気配と匂いで追跡して、ここまでやって来た。
その際雨に降られたのか全身はびっしょりと濡れており、ついでに全力疾走してきたのか、荒く肩で息をしていた。
「(ドラゴン! 何で十香が来ているって教えなかったんだよ!! お前なら十香の気配で分かるだろっ!?)」
≪大ボケが。さっきから〈プリンセス〉が来ていると言っていたわ。〈ハーミット〉に夢中になって聞いていなかったか、ボンクラめが≫
「・・・・シドー」
「っ!?」
士道とドラゴンの喧嘩を遮るように、十香が身体をゆらりっ、と揺らしながら声を発する。
何故か、名前を呼ばれただけで、背筋に寒気が走った。
「・・・・今、何をしていた?」
「・・・・っ、な、何って・・・・」
十香の問いに思わず唇に触れ、すぐに思い直して手を背の後ろにしまう。だが十香は、そんな仕草すら気に入らなかったのか、まるで愚図る子供のような表情を作ると、喉の奥から震える声を絞り出す。
「あ、あれだけ心配させといて・・・・」
「え・・・・?」
「女とイチャコラしてるとは何事かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
だんッーーーーーー! ベコンッ!!
十香が叫び、足で床を踏みつけた瞬間、その位置を中心に床が陥没し、周囲に放射状の亀裂が入った。
「な、ななななななななな・・・・」
≪本当にゴリラだな、この娘・・・・≫
士道は目を剥いて戦慄し、ドラゴンは呆れ目で十香を見ていた。
十香は現在精霊の力を封印されている状況では、常識的な範囲内の身体能力しかないと聞いていたが、士道はこっそりインカムに話しかける。
「ど、どう言うことだ、琴理・・・・っ」
《だから・・・・前々から言ってたでしょ。士道と十香の間にはパスが通ってるから、十香の精神状態が不安定になると、力が少し逆流する恐れがあるって》
「はあ? なんだよそれ、十香の精神状態が不安定だってのか?」
《ええ。状態が悪化する前に、何とか十香の機嫌を直しなさい》
「そ、そんな事言ったってどうすりゃあ・・・・?」
そんな事言っている間に、十香は士道と〈ハーミット〉の元に到着した。
「むむむ・・・・」
そして鋭い視線で二人を交互に見て、唇を引き結んでから、士道をキッ! と視線を、〈ハーミット〉にビッ! と指を向ける。
「・・・・シドー。お前の言っていた大事な用とは、この娘と会うことだったのか?」
「あ、いや、それは・・・・」
≪おい小僧。思わぬ助け船が来たぞ・・・・≫
《士道! 気をつけてなさい! 今そっちにーーーー》
グワシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンッ!!!
「「っ!?」」
ドラゴンと琴理の声が聞こえると同時に、デパートの壁がぶち破って、“何か”が現れた。
士道と十香は身体が強ばり、〈ハーミット〉はビクッ! と身体を跳ね、『よしのん』は『なになに!? 何事っ!?』と手をバタバタさせながら慌てたようなリアクションをとった。
『ほぉ指輪の魔法使い、いや、〈仮面ライダー〉に〈ハーミット〉、さらに〈プリンセス〉もいるな』
「ファントム!?」
「なにっ!?」
「っ!」
『あっ! アイツ、ここ何日か『よしのん』達を追い回してた恐い奴らだ!!』
魔獣ファントム『ヘルハウンドファントム』がバイクに乗って現れ、それを見た士道と十香は警戒し、〈ハーミット〉は怯えたように身体を震わせ、『よしのん』は口をパクパク動かしてヘルハウンドを指差す。
『クククク、これは好都合だ、な!!』
「っ、十香! 『よしのん』!!」
ヘルハウンドは口にあたる部分から、光弾を放つと、士道は十香と〈ハーミット〉を被うように押し倒すが、光弾が左肩をかすった。
「ぐぅっ!」
「士道!」
「っ!」
『士道くん!』
「だ、大丈夫だ・・・・! このまま身を屈めていろ・・・・!」
十香と〈ハーミット〉を物陰に隠れさせると、すぐに再生の炎が士道の左肩にポォゥッと燃え上がり、傷を完治すると、士道はすかさず『コネクト』を使う。
[コネクト プリーズ]
「ふっ!」
「フンッ!」
士道は『ウィザードソードガン』でヘルハウンドに向かって銀の弾丸を放つが、ヘルハウンドはその手に剣を取り出して弾丸を防ぐ、士道は弾丸を放ちながら、『コネクト』でチェーンを取り出し、銃を下ろして『コネクト』から『ドライバーオン』に取り替える。
[ドライバーオン プリーズ]
士道がベルトをウィザードライバーへと召還し、左中指に『フレイムウィザードリング』を嵌めて、ウィザードライバーを左手向きに変える。
[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャバドゥビタッチヘンシン~♪]
『えっ? なに? 今度はなんなの?』
「???」
〈ハーミット〉と『よしのん』は首を傾げるが、士道はお構い無しに『フレイムウィザードリング』を嵌めメガネを下ろし、ベルトに翳す。
「変身!」
[フレイム プリーズ ヒーヒー ヒーヒーヒー!!]
横に伸ばした左手の先から炎の魔法陣が現れ、士道の身体を通りすぎると、『ウィザード フレイムスタイル』へと変身した。
「っ!?」
『うわうわうわっ! 士道くんが変~身しちゃったぁ!』
「さあ、ショータイムだ」
驚く〈ハーミット〉と『よしのん』に構わず、ロングコートを翻し、ウィザード<士道>はソードガンでヘルハウンドを牽制すると、ヘルハウンドは専用バイク『ブラックドッグ』で店内を走りながら回避する。
「琴理! どうなってんだよ!?」
《完全にミスったわ。十香が来て機嫌が悪くなった事に気が向いていて、発見が遅れたのよ》
「ASTは?!」
《デパートに突撃しようとしたファントムを迎撃しようとしたけど、グール達が大量に現れてそれに対処しているわ》
今この場にASTが来ない事にホッとするが、すぐに十香に方を向く。
「十香! その子を連れてすぐにこのデパートから脱出してくれ!!」
「な、なにぃっ?!」
十香は険しい顔色を浮かべるが、士道は声を張り上げる。
「頼む十香! その子はお前と同じ“精霊”なんだ!」
《ちょっと士道!!》
「・・・・・・・・なん、だと??」
「・・・・・・・・っ」
『えぇっ??!』
十香と〈ハーミット〉と『よしのん』は、戸惑いながらお互いを見ると、目線があった。
琴理が止めようとしたが、この場で〈ハーミット〉を十香に任せるなら、こう言うしかないと、士道は思った。
「その子もASTやファントムに狙われている! 十香と同じなんだ! 十香! お前の“仲間”なんだっ!!」
「仲、間・・・・」
十香は戸惑いながら、〈ハーミット〉をジッと見つめ、〈ハーミット〉も恐る恐ると十香を見上げた。
『はははははははははははッッ!!』
「うわっ!」
『ブラックドッグ』に乗ったヘルハウンドが士道に向かってジャンプするが、士道は身を屈めて回避する。
「クソッ! 十香! とりあえずその子を頼んだぞ!」
「っ・・・・う、うむ」
まだ頭が整理出来ていないようだが、とりあえず十香が了承したので、士道は『コネクトリング』をベルトに翳す。
[コネクト プリーズ]
魔法陣から『マシンウィンガー』を取り出して乗り込むと、走らせて、迫りくるヘルハウンドにソードモードのソードガンを構え、ヘルハウンドも剣を構え、交差する瞬間、お互いの剣をぶつけ、火花が散る!
「っ!」
『ふっ!』
お互いにバイクをUターンさせ、ヘルハウンドが乗る『ブラックドッグ』が前輪を上げて走るウィリー走行で迫ると、士道も『マシンウィンガー』の前輪を上げてぶつけ合う!
「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ!」
『ぬううううううううううっ!』
「うおりゃっ!!」
『ぬおっ!』
押し合いに勝った士道は、バランスを崩したヘルハウンドに後輪で横殴りするが、ギリギリで回避し、ヘルハウンドは『ブラックドッグ』で走らせる。
「待てっ!!」
士道は『マシンウィンガー』を走らせて、追撃した。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
『んと・・・・・・』
士道と走って行ったのを確認した十香と〈ハーミット〉は、お互いを見て、気まずい雰囲気になった。
十香は、目の前にいる少女が、自分と同じ『精霊』であり、自分の『仲間』である事に戸惑いを感じており、〈ハーミット〉もどうすれば良いのか少しモジモジし、『よしのん』もこの雰囲気に、陽気な声を出せずにいた。
「お、おい・・・・」
「(ビクッ!)」
「あ、その・・・・」
話しかけようとした十香だが、〈ハーミット〉の怯えた姿を見て、とどまった。そして、『よしのん』が声を発する。
『あのさ、おねーさん。とりあえず士道くんが言ってた通り、ここから脱出した方が良いんじゃないのかね?』
「う、うむ。わ、私もそう思っていたぞ・・・・。と、とりあえず行くぞ・・・・」
「・・・・・・・・」
『はいは~い。ところでおねーさんの名前は?』
「・・・・十香だ」
『オッケーオッケー十香ちゃんねよろしく! 『よしのん』だよン♪』
十香は、〈ハーミット〉と『よしのん』を連れてデパートを出ようと動いた。
しかし、物陰に隠れながら、その二人(三人?)を見ている複数の影がいた。
◇
士道はヘルハウンドを追って、デパートの中をバイクで走り抜ける!
ヘルハウンドがバイクで階段を上ると、士道もそれを追った。
『かぁっ!!』
「くっ!」
ヘルハウンドが階段の上で光弾を放つが、士道は『マシンウィンガー』を巧みに動かして回避する。
「ふっ!」
士道がソードガンの弾丸を放つと、ヘルハウンドは『ブラックドッグ』を走らせて回避する!
「ちっ!」
≪何をしている小僧。識別名〈仮面ライダー〉がバイクで遅れを取るなど、笑い話にもならんぞ≫
「わーってるよ!」
士道は『マシンウィンガー』のアクセルを全開にさせて、ヘルハウンドの『ブラックドッグ』と横並びになる。
『フンッ!』
「ハァッ!」
ヘルハウンドが剣を士道に向けて振り下ろすが、士道はソードガンで防いで弾き、直ぐにソードモードに切り替えてヘルハウンドに振りかぶるが。
『ふんっ! おぉっ!』
「つぁっ! てやっ!」
ヘルハウンドも剣で防ぎ反撃し、士道も同じように攻防を繰り広げる。
ー琴理sideー
琴理はメインモニタに表示された二つの画面を険しい顔で見据えていた。
1つは勿論、魔獣ファントムとカーチェイスをしているウィザード<士道>。
もう1つは、〈ハーミット〉と共に避難しようとしている十香だった。
「まったく士道ってば、〈ハーミット〉の事を十香に任せるだけでなく、十香に〈ハーミット〉が精霊だって事を教えるだなんて勝手な事を・・・・!」
「・・・・しかしこの状況を見ると、ファントムの目的は間違いなく〈ハーミット〉だ。ファントムが精霊の『唯一の天敵』である以上、下手に交戦に巻き込む訳には行かないし、それにさっきまでの十香の機嫌の数値も、おそらく相手が自分と同じ精霊である事に、怒りよりも戸惑いの方が勝ったのか不機嫌度が下がったようだね。不幸中の幸いだ・・・・」
「よもや、魔獣ファントムのおかげで士道くんは窮地を脱したと言う訳ですね。いや~良かった良かった」
「魔獣に感謝なんてしてんじゃないわよ!」
ゲシッ!
「あひぃんっ!!」
琴理は神無月の尻を蹴飛ばすと、神無月は恍惚な表情で倒れる。
「琴理、シンもそろそろ決めるようだ・・・・」
令音からの報告で琴理はモニタを見ると、士道とファントムが、離れて向かい合っていた。
「司令! 大変です!」
「っ!」
しかし、突然艦橋下の椎崎からの声に、目を鋭くする。
ー士道sideー
士道とヘルハウンドのバイクのエンジン音が、唸りを上げる。
ヘルハウンドが持っていた剣を構えて、『ブラックドッグ』を走らせる!
ウィザード<士道>はウィザードソードガンをソードモードに切り替えて、握り拳になっている手形を開ける。
[キャモナスラッシュシェイクハンズ! キャモナスラッシュシェイクハンズ! キャモナスラッシュシェイクハンズ!]
「フィナーレだ」
ウィザード<士道>は左手に嵌めたフレイムリングをウィザードソードガンの開けた手形に翳した
[フレイム・スラッシュストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!]
燃え盛る炎を纏った刃、『フレイムスラッシュ』を構えて『マシンウィンガー』を走らせる!
「ハァアアァァァァァッ!!」
『オォオオオオオオオッ!!』
士道とヘルハウンド、それぞれのマシンを全力疾走させ、交差し、マシンが走り抜ける!
ザンッ!!
ザシュンッ!!
「ぐわっ!」
士道の身体に、斬られたような火花が散るがーーー。
『グォオオオオッ!!!』
ガァアアンンッ!!・・・・ドゴォオオオオンッ!
ヘルハウンドの身体に炎の斬り傷が走り、そのままヘルハウンドの身体を燃え上がらせながら、デパートの壁をぶち破り、外に飛び出すと、そのまま落下し、士道が振り向くと、下から爆発による爆炎が舞い上がった。
「ふぃいいい~・・・・」
《士道。ホッとしている場合じゃないわよ!》
「琴理?」
《十香と〈ハーミット〉がグールに襲われているのよ!》
「なに?! ASTはどうした!?」
《まだグール共と交戦中よ! 外の奴らとは別の集団ね。どうやらあのファントムは、貴方と十香達を遠ざけるのが目的だったようよ》
「クソッ! 琴理、十香達は今何処だ!?」
《一階の食品売場よ! 急ぎなさい!》
士道は『マシンウィンガー』を走らせて、十香達の元へ急いだ。
≪・・・・・・・・・・・・≫
ただ士道の内部のドラゴンは、ヘルハウンドがぶち破った壁を、訝しそうに睨んでいた。
ー十香sideー
「くぅっ・・・・!」
「っ・・・・・・・」
『アワワ、囲まれちゃったよ~。絶体絶命の大ピンチだよ~』
十香が苦い表情を浮かべ、〈ハーミット〉は怯え、『よしのん』も手を口元に近づけて緊張感が有るのか無いのか分からないリアクションを取っていた。
『グゥウウウ・・・・!!』
十香の周りを、10体くらいのグール達が取り囲み、槍を突き出しながら、十香達が逃げられないようにしていた。
「うわ~! どうしよう! 袋のネズミだよ~! 網にかかったお魚さんだよ~! 『よしのん』はウサギなのに~!!」
「おい、お前・・・・」
「(ビクッ!)」
「何かな? 何かな? 十香ちゃん! 今まさに大ピンチなんだよ~!」
ふいに十香が〈ハーミット〉に話しかけ、〈ハーミット〉は少し怯え、『よしのん』はオーバーリアクションを取った。
「お前も、ASTや、ファントムに襲われたりしたのか?」
「・・・・・・・・」
『あの銃をバンバン撃ってくる人達には、何度も襲われたよ。この怪物さん達には、ここ最近襲われたんだぁ』
「そうか・・・・」
十香は静かに頷くと、キッ!と視線をグール達を睨むと、一体のグールに向かった!
「たぁあああああああああああっ!!」
ドゴンッ!
『グガァッ!』
十香はグールの一体を殴ると、グールは床に倒れ、持っていた槍を落とすと、十香は槍を拾って、剣を持つように構えた。
「っ!」
『十香ちゃん!?』
「早く逃げるのだ! ここは私が受け持つ! ハァアアッ!!」
十香は剣のように構えた槍で、グール達を挑んだ。
『グワァッ!』
『ガァアッ!』
『ゴォオッ!』
どうやらグールはファントムほど精霊の力を無効化できないようで、封印された十香でも十分に相手取る事ができた。
「逃げるのだ! 早く!」
「・・・・っ」
『でもでも十香ちゃんが!?』
「私は大丈夫だ! すぐにシドーが助けに来てくれる!」
「っ・・・・」
『十香ちゃん、どうしてよしのんを助けてくれるの!?』
「私も同じだからだ! ASTに訳もわからず攻撃されて、ファントムに命を狙われていたから! お前の気持ちが分かる! それにシドーが言っていただろう!」
「『・・・・・・・・』」
「お前は、私の『仲間』だ!」
「っ!」
『仲間・・・・』
「仲間だから守る! そんなの当然だ!」
十香はグール達に果敢に挑むが、如何せん攻撃が効くとは言え、グール自体がタフなこともあり、倒れてもすぐに起き上がってくる。
「くっ!」
十香は歯噛みしながらも、槍を構える。自身の天使、『鏖殺公<サンダルフォン>』であればグール達を凪ぎ払う事ができるが、封印された今の状態では、『鏖殺公<サンダルフォン>』を呼び出せない。
すると、一体のグールが〈ハーミット〉に迫り、槍を振りかぶった!
「しまった!」
「っ!」
『うわっ!』
〈ハーミット〉はギリギリ回避できたが、足がもつれてしまって、床に倒れてしまい、その際、左手から『よしのん』がスッポリと外れてしまった。
『グゥゥゥ??』
「・・・・! ・・・・!」
グールの一体が『よしのん』を拾い上げると、〈ハーミット〉は声にならない悲鳴を上げると、全身をチワワのように震わせながら、『よしのん』を持っているグールの腕にしがみつく。
「かえ、して・・・・っ、くださ・・・・っ」
「何をしている?!」
十香が慌てながら他のグール達を槍でぶっ叩く。〈ハーミット〉の地声を初めて聞いたなと、少し的外れな事が頭をよぎったが。
「十香! そこを離れろ!!」
「っ! シドー!」
[シューティングストライク ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!]
ドンドンドンドンドンドンッ!!!
士道が『マシンウィンガー』で駆けつけると同時に、十香はすぐにグール達から離れ、グール達は『シューティングストライク』をくらって爆散し、士道は十香の近くで止まる。
「遅いではないかシドー!」
「悪い! あの子は!?」
士道が〈ハーミット〉の事を聞くのと同時に。
「・・・・っ、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉・・・・っ!」
〈ハーミット〉が右手をバッと上げたかと思うと、それを真下に振り下ろしたその瞬間ーーー床を突き破るようにして、その場に現れた巨大な人形。
「「な・・・・!?」」
≪まさかアレが・・・・!≫
全身三メートルはあろうかと言うずんぐりとしたぬいぐるみのようなフォルムをした人形。しかし、体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれ、頭部と思しき箇所には長いウサギのような耳が見受けた。
グールから離れた〈ハーミット〉は、自分の足の下から出現した人形の背にピタリと張り付くと、その背にあいていた二つの穴に両手を差し入れた。
グゥォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!
その時、人形の赤い目が輝き、鈍重そうな体躯を震わせながら、低い咆哮を上げ、それに合わせて人形の全身から白い煙のようなものが吐き出された。
「さ、ささ、寒いぞ、シドー・・・・!」
十香が身体を震わせる。まるで液体窒素から発せられたような、非常に寒い低温だった。
《このタイミングで“天使”を顕現・・・・!? 士道、まずいわ、十香を連れて逃げなさい!》
「は、はぁ・・・・っ!? て、天使って何だよ!」
≪この大たわけが! 〈プリンセス〉の武器を忘れたか!?≫
《精霊を護る絶対の盾・霊装と対と成す最強の矛! 精霊を精霊たらしめる『形を持った奇跡』よ! 十香の〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を忘れたの!?》
士道はその名を聞いて眉をピクリと動かした。つまり、〈ハーミット〉の精霊の力が、封印できていない事を証明されたからだ。
と、〈ハーミット〉が小さく手を引いたかと思うと、人形、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉が低い咆哮とともに身を反らすと、デパート側面部の窓ガラスが次々と割れ、フロア内部に外の雨が入り・・・・否、正確には、窓が割れて雨が入ってきたのではなく、まるで雨粒が凄まじい勢いで外部から窓ガラスを叩き割ったかのような感じだった。
「いぃ・・・・っ!?」
士道は仮面の中で目を見開くと、前方に聳える人形が、パペット『よしのん』を持っているグールを、ギロリ、と顔を向けた。
≪おい、防げ!≫
「十香! 俺の後ろに!」
「っ、シドー!?」
士道は十香は後ろに下がらせると、『ディフェンドリング』を使った。
[ディフェンド プリーズ]
士道が前方に、炎の魔法陣の障壁を展開するのとほとんど同時に、夥しい数の弾丸のようなものがグールに襲いかかり、『よしのん』を持っている手以外の身体の箇所に突き刺さり、グールは悲鳴を上げる事なく爆散した。
グールに刺さらなかった弾丸は、周囲の商品棚を派手に穿ったのち、透明な液体となって床に流れる。
「これは、雨・・・・!?」
≪割れた窓から雨粒がまるで雹のように固まり、〈ハーミット〉の意思のままに操作することができる。これがヤツの天使、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉の能力と言うわけか。どうやら水と氷雪を操るようだな・・・・≫
ドラゴンが冷静に天使の能力を分析していると、〈ハーミット〉が駆る〈氷結傀儡<ザドキエル>〉が動き、その鈍重そうなシルエットに似合わぬ俊敏な動きで地を蹴ると、そのまま割れた窓から屋外に飛び出して行った。
途中、グールの手から床に落ちた『よしのん』を、口に当たる部分でくわえていた。
「ま。待て・・・・!」
ツルッ!
「あっ!」
「あっ!」
《あっ!》
≪あっ!≫
十香が〈ハーミット〉を追おうとしたら、水が流れる床に足を滑らせひっくり返り、そのまま重力に従い。
ガンッ!
「きゃんっ!」
「十香っ!!??」
床に後頭部を強かに当てて、そのまま倒れ、士道は十香を抱える。
「おい十香! 大丈夫か!?」
「シ、シド~、星がキラキラしているぞぉ~・・・・ガクッ」
目をバッテンにして十香は気絶した。士道は〈ハーミット〉が去っていった窓を見つめる。
《〈ハーミット〉の反応は完全に離脱したわ。士道、ASTもまもなくグールを全滅させる、すぐに十香を連れてその場を離れて、〈フラクシナス〉で回収するわ》
「・・・・分かった」
[バインド プリーズ]
士道は十香の身体を鎖の魔法、『バインド』で身体に巻き付け、そのまま『マシンウィンガー』に乗り込み、その場を後にした。
そして、士道達がいなくなった後で、1人の人物が、デパート内を歩いていったーーーーーー。
やっぱり十香に詳しい事を何も言わずにいるのはダメだと思ってこうなりました。