デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
幕間 精霊と迎える新年と異邦者
ー士道sideー
「・・・・・・・・・・・・」
二亜の攻略が終わり、1月4日の遅い初詣を迎えた士道達は、五河家近くの神社の賽銭箱にお金を投げて目を閉じながら、頭の中に願い事を思い浮かべる。
「(今ある幸せが、ずっと続きますように)・・・・ふぅ」
士道は小さく息を吐くと、目を開け顔を上げた。
頭には小さな思念体となったドラゴンが手を合わせていた。
「(魔獣が神様にお祈りってどうなんだよ?)」
『(喧しいぞ五月の蝿。『人事を尽くして天命を待つ』、と言う諺があるだろう。天命を祈るのもまた必要な事なのだ』
さいですか、と思いながら、士道は左右に視線を向けると、先ほどの士道と同じように手を合わせる十香と折紙が右側に、耶倶矢と夕弦が左側に、皆それぞれ煌びやかな晴れ着を身に纏い(ドラゴンがプラモンスターズと撮影会をした)、熱心に祈りを捧げている。
士道も比較的長い時間祈っていたと思うのだが・・・・彼女らは一体何を願っているのだろうか。
「むん」
隣にいた紫に桜の模様の着物の十香が顔を上げると、綺麗に結われた夜色の髪が頬をくすぐり、陽光を浴びて艶々と輝く。
「おお、待たせたかシドー、ドラゴン」
「いや、大丈夫だよ。何を願ってたんだ」
「うむ。今年も美味しい物が沢山食べられますように、だ!」
「はは、成る程」
『うんうん』
何とも十香らしい願いである。思わず頬を緩める士道とドラゴン。今年も腕を振るわねばなるまい。
と、十香が付け足すように言葉を続ける。
「それと、もう1つ」
「ん?」
「シドーや皆と、ずっと一緒にいられますように、だ」
十香が太陽のような笑みでそう言うと、士道は一瞬目を見開いた後ーーーー。
「ああ、そうだな」
優しく笑って、コクリと頷いた。
するとそれに合わせるように、八舞姉妹が参拝を終え、顔を向けてくる。
「お、2人は何をお願いしたんだ?」
士道が聞くと、橙色と黒で色分けされた着物を着た耶倶矢(夕弦も同じ着物)はバッと手を顔の掲げ、やたらと格好いいポーズを取って見せた。
「願い? くく・・・・何を言うかと思えば。我はこの地を治むる神がどの程度の者か覗き見たに過ぎぬ。まあ、我が威容に戦いていたようだったがな」
『(夕弦。真相は?)』
「密告。勿論嘘です。耶倶矢は小声で【今年こそは大人の階段を上れますように】と言ってました」
「マジっぽいトーンで適当な事を言うのやめてくれる!? 私は【士道とデートできたら】としかーーーー」
言いかけて、ハッと肩を揺らした耶倶矢。
照れながら士道は、頬をポリポリと掻きながら視線を逸らした。
「や、まあ、その・・・・善処します/////」
「・・・・!////////」
耶倶矢の顔がカアッと赤くなっていく。それを見て夕弦が含み笑いを漏らす。
「微笑。うぷぷ・・・・。良かったですね」
「もー! もーッ!////////」
耶倶矢が涙目になりながら夕弦をポカポカと殴った。
「退避。痛い、痛いです耶倶矢」
「おいおい、他の人の迷惑にならないようにな」
士道は苦笑しながら2人を止めた。
自分達のように遅い初詣に来ている参拝客がチラホラと見て取れ、耶倶矢も察したのか、顔を赤くしながら呼吸を整え、気を取り直すように頬を張る。
「・・・・おっけ。落ち着いた。闇の加護よ我を護れ」
「そ、そうか。じゃあそろそろ・・・・ん?」
本堂を離れようとするが、まだ折紙が祈りを捧げている。ちなみに折紙の着物は白地に折り鶴柄の着物だ。
「折紙?」
「随分長いわね・・・・何願ってるのかな」
『耶倶矢。止めなさい。後悔するぞ』
興味深そうな顔をして折紙の方に歩み寄り、耳を近づける耶倶矢に、ドラゴンが呆れたような声を漏らすが、それでも聞き耳を立てた耶倶矢は数秒後。
「・・・・ッ!?////////」
耶倶矢が先ほどよりも強烈に、ボンッ! と顔を赤くしながら後方に飛び退いた。
「か、耶倶矢?」
「む? 折紙は何か言ったのか?」
十香が不思議そうにそちらに近づこうとするが、即座にドラゴンが念話を発して静止させ、耶倶矢も何やら慌てた様子でブンブンと首を振る。
『十香。人のお願いに聞き耳を立てるのはマナーの良くない事だから真似してはいけません』
「駄目! 十香にはまだ早い!////////」
「む・・・・?」
「い、一体何を願ってるんだよ、折紙・・・・」
思わず汗を滲ませる士道。と、丁度そこで、折紙が願い事を終え、顔を上げてこちらを向いてきた。
「お、終わったか、折紙」
「・・・・・・・・」
士道が問うと、折紙は無言で頷き、お腹をさすってグッと親指を立ててきた。
「準備は万端」
「何の準備!?」
『貴様、月のない夜は出歩かない方が身の為だぞ』
悲鳴じみた声をあげる士道に、ドラゴンがそう言うと、額に手を置きながらハアとため息を吐いた。
「と、兎に角。次の人達が待ってるから、行こう。お騒がせしてすいません」
士道は後ろに並んでいた参拝客に頭を下げると、精霊達もペコリと頭を下げ、賽銭箱の前から移動し、数グループに分けて、先に参拝を済ませた琴里達を探していた。
「おーい、おにーちゃーん」
と、ソコで後方から、聞き慣れた呼び声が聞こえ振り向くと、予想通り琴里達の姿を確認し、目を丸くし、十香達も不思議そうな顔をして首を傾げた。
「む? 琴里、何をしているのだ?」
琴里達は会議に使う長机におり、他の参拝客達が、ペンを手にして何かを熱心に書き込んでいた。
「ん」
赤い着物に妹モードの琴里が、手にした物を示してくる。家のような形をした小さな木の板、『絵馬』である。
「おお、それは何だ?」
「これは『絵馬』って言うの。これに願い事を書いて下げておくと、願いが叶うんだぞ」
「なんと! 本当か!?」
琴里の言葉に、十香は目をキラメーイと輝かせた。
「むう、七夕といい先ほどのお参りといい、そんなに沢山願いを叶えてくれる行事があるのか。スゴいな!」
『必ず叶うって訳ではないから、期待し過ぎてはイカンぞ』
「うむ! 分かっている。神様とやらも大変そうだからな!」
ドラゴンの言葉に、力強く頷く十香だが、ソワソワと身体を揺らして、士道の目を見つめてくる。八舞姉妹の方を見ると、似たような表情と挙動だった。
「折角だし、書いてみるか?」
『おー!』
士道の言葉に、精霊達は嬉しそうな声を上げた。
そこまで喜びを露にされると悪い気はしない。全員分の絵馬を買って、十香達に配っていった。
「さ、じゃあ空いている場所で書かせて貰おうか」
「うむ!」
十香達がワイワイと盛り上がりながら、テーブルの上に置いてあったペンを取る。
士道もそれに倣うようにペンを手に取ってから、既に絵馬を書き始めていた精霊達に目をやった。
「お、上手いじゃないか、四糸乃」
『よしのんか。とても良くできている』
言いながら、士道は手前にいた、若草色の晴れ着て、綺青空か海のように透き通る青い髪を綺麗に結い上げら、少しだけ大人っぽくなった四糸乃の絵馬を覗くと、絵馬の左半分に、眼帯を付けた可愛らしいウサギ、おそらくよしのんであろう絵が描かれていた。
「あ、ありがとうございます・・・・」
『うふふー、でしょー? 士道くんとドラゴンくんたら分かってるぅ』
少し照れたように頬を染めながら顔を上げてくる四糸乃と、それに同調するよしのんは、四糸乃と同じ着物を着込んでいた。
「ああ、大したもんだ。そんなに可愛い絵馬なら、神様も見つけやすいかもな」
士道が言うと、四糸乃は少し恥ずかしそうに笑った。
「あ・・・・でも、それなら七罪さんと二亜の絵馬もスゴいですよ」
「え?」
『ーーーーほぅ』
四糸乃の視線を追うように顔を上げーーーー士道は眉の端をピクッと揺らし、ドラゴンが感嘆と声を上げた。
皆と少し離れた場所で、2人の少女が向かい合うようにして絵馬を書いていたのだが・・・・その2人の周りに渦巻く雰囲気が、周囲のソレとは全く異なっていたのだ。
濃緑の着物を着て、鮮やかな緑色のモフモフとした癖の強い髪を綺麗に結い上げた小柄な少女と、ダウンジャケットを羽織った眼鏡の少女が、ペンを何色も使い分けながら、小さなキャンパスに可愛らしい振り袖姿の少女のイラストを描いている。
ソレだけ聞けば別段可笑しくないのだが・・・・2人の様子は新年和やかに絵馬を書いていると言うよりは、締め切り直前の漫画家が死ぬ気で原稿に挑んでいるかのようであった。
しかも双方、その出来映えはプロレベル(片方は正真正銘のプロ)であった為、否応なく注目を引き付けた。
『鬼気迫る雰囲気だな・・・・』
「お、おーい、2人共?」
声をかけると、七罪と二亜はそこで初めて士道が近くにいる事に気づき、顔を上げてきた。
「・・・・はっ」
「お、少年にドラくん。遅かったじゃーん」
七罪がビクッと肩を揺らし、二亜は眼鏡の位置を直しながら人懐っこい笑みを浮かべる。
「はは・・・・上手いもんだな。流石はプロ」
『七罪も二亜に負けていないぞ』
士道が苦笑し、ドラゴンは小さく笑みを浮かべながら言うと、二亜がフフンと得意気に平坦な胸を反らして、手にしていたペンを器用にクルクルと回して見せた。
「まぁねー。仮にも絵描きの端くれとして? 手は抜けないって言うか?」
しかし、二亜とは対照的に、七罪がバツの悪そうな顔をしながら、イラストを描いていた絵馬を手で隠した。
「・・・・私は二亜に乗せられてただけで、別に描きたくて描いた訳じゃないけど・・・・」
「ええー、ここまでやっといてそんな事言っちゃう? ついさっきまで2人で漫画道を歩んで行こうって話したじゃん」
「言ってないし!? 何漫画道って!?」
たまらず七罪が叫び、二亜はカラカラと笑うと、士道の方に視線を戻した。
「いやー、でも実際『なっつん』有望よ。正直ウチのアシスタントに欲しいし、何なら編集者に紹介するよ? 少年にドラくんも家事担当として雇いたいし」
「私メイデンとかコロッケ工場なんてお断り何だけど!?」
七罪がたまらずと言った様子で声を上げた。
「大丈夫大丈夫、すぐにメイデンの中で安眠できるようになるし、コロッケ工場も馴れれば作業効率が上がって助かるようになるよ『なっつん』」
「・・・・それ、感覚がかなり麻痺した境地に到達してるんじゃないの? て言うか『なっつん』って何・・・・?」
「え? 渾名だけど? ほらアタシとなっつんくらいの仲になると、自然でそういうのできちゃう感じじゃん」
「えっ、そんな深い仲になった覚えはないんだけど・・・・」
七罪が頬に汗を垂らしながら言うが、二亜は聞かず、感慨深げに腕組みをして続ける。
「因みに『なっつん』って言うのはあれよ。『七罪』って名前と『ナッツ』をかけてあるからね。ほら、殻に籠ってる感じとかソレっぽくない? ピスタチオみたいにちょっと開いた殻の隙間からこっちを覗いてるイメージ」
『「・・・・ぶふっ」』
「・・・・・・・・」
容易にその光景を想像して、思わず吹き出す士道とドラゴン。七罪がジトーっとした視線て見つめ、士道は誤魔化すように咳払いし、ドラゴンは機嫌を直して貰おうと、猫可愛がりするように七罪の癖っ毛を撫でた。
「そ、それよりも二亜は本当に良かったのか? 〈ラタトスク〉が二亜の分の晴れ着を用意してくれたみたいだけど」
「あー、うん。昔資料用にと1回着た事あるけど、どうも動きづらくてねぇ。それにほら、アタシは基本裏方って言うか、フレームの外側の人だから、綺麗な皆を見られれば満足なのよさ」
「そうなのか? 二亜も似合いそうだけどな」
何とはなしに士道が言うと、二亜は一瞬目を丸くしてから、ニマニマと口許を歪めてきた。
「えっへっへ、なーにぃ少年、新年早々二亜ちゃん口説こうってぇの? 流石お盛んねー。英雄色を好むってやつ?」
「へ? あ、いや、そういうつもりじゃ」
「んーふふふ、でもそっかー。少年たら晴れ着フェチかー。乱れた着物から覗く肌に興奮しちゃうやつかー。よし、じゃあそんな少年にはこれをあげよう」
人聞きの悪い事を言いながら、二亜がポケットの中から絵馬を取り出して士道に手渡した。
「ん? 何だこれ。もう1枚買ってたのか・・・・って」
その絵馬に視線を落とし、士道は息を詰まらせた。
その絵馬には、着物をはだけた美少女とそれに覆い被さる少年と言う、ギリギリ15禁くらいの際どいイラストが描かれ、その横には【こんな感じのラッキースケベに遭遇したいです。 二亜】と、何とも具体的な願い事が込められていた。
「に、二亜、何だよこれ!」
「絵馬だよー。いやー、最初はソレを描いてたんだけど、妹ちゃんに『公序良俗いはーん!』って怒られちゃって。自分で持って帰るのも何かアレだから、良かったら貰ってくんない?」
「お、お前なあ・・・・」
『兎に角、さっさと隠せ。周りの視線がくる』
ドラゴンに言われ、道行く人々の視線に気づき、気まずげに自分のポケットにそれをしまった。二亜は何だか嬉しそうに笑う。
「まあ、それはそれとして、なっつんと少年を雇いたいって件はマジよ。アシスタントだけでなく、ご飯作ってくれたり、洗濯してくれたり、掃除してくれたりだけでも超助かるし・・・・って、そりゃアシってより主夫だな。良し、結婚しようぜ少年」
「おいおい・・・・」
「実際欲しいのよメシスタント。漫画方面でも、たまになっつんと抱き合ってエロい構図取りに協力してくれるだけで大分助かるし」
「な・・・・っ/////」
「・・・・ッ!?///////」
『・・・・・・・・・・・・・・・・あ?』
二亜のいつもの冗談だと言うのは分かっているが、当事者が目の前にいた為、思わず息を詰まらせ、互いに意識していまう士道と七罪。
が、すぐにドラゴンからの殺意の波動を感じて、気持ちが落ち着いた。
と、次の瞬間。たたたっ、という足音が聞こえたかと思うと、ズサー! と晴れ着姿の少女、否、遅れてやって来た美九がテーブルに身を乗り上げてきた。
「だーりん! ハニー! 今の話をしてましたー!? 七罪さんとエロエロがどうとか聞こえた気がするんですけどー!?」
そう言って美九が、キラメンタルが爆発したかのように目をキラメーイ! と輝かせた。
「み、美九・・・・!?」
『どんな地獄耳をしているのだ?』
今の美九の表情は、アイドルと言う狭いフィールドから抜け出し、新たなる世界へと踏み出しつつあるようだ(精一杯のオブラート)。
「あっ、もしかして二亜さんのアシスタントってやつですかー? だーりんにハニーと七罪さんがやるなら私も! 私もやりますー! 4人以上の構図バンバン取りますぅっ!」
美九がテーブルに寝そべったまま、テンション高く手を上げてくる。七罪が嫌そうに眉をひそめ、美九から距離を空ける。
「あ、ホント? そりゃ助かるわ。んー、でも確か、美九<みっきー>アイドルなんでしょ? ギャラ高そうだなー」
「そんな事ありません! ノーギャラで結構です! 何ならむしろ私が料金をお支払いします!」
『それでは別の店だろう・・・・』
美九がビッと親指を立てながら言うが、保護者<ドラゴン>が首根っこを器用に掴んでテーブルから下ろそうとする。
『とっとと下りなさい』
「一応仮にもアイドル何だからあんまり奇行に走らない」
いつの間にかリボンを白から黒に変えた琴里が、半眼を作りながら言う。すると美九が、抵抗するようにジタバタと足を動かした。
「あぁーん! ハニーと琴里さんのいーけーずぅー!」
『コラ! 大人しくしなさい!』
「ちょーーーー」
「む、美九、あまり暴れるな」
「お、おい、ちょっと、危なーーーー」
美九が暴れた拍子にテーブルがバランスを崩し、4人を巻き込んで倒れそうになり、士道が咄嗟に美九達を支えようと手を伸ばしたが・・・・それがいけなかった。士道もまたソレに巻き込まれ、一緒にその場に倒れ込んででしまう。
「ってて・・・・大丈夫か、3人共・・・・って」
ソコで士道は、ビクッと肩を揺らした。
何をどうしてこうなったかは知らないが、士道は、着物をはだけた十香の上に覆い被さるような格好になってしまっていたのである。
「な、何をする、シドー!」
「わっ、す、すまん・・・・!」
「あーん! だーりんと十香さんばっかりズルいですー! どっちでも良いので替わってくださいー!」
「いや、これは・・・・ひぃっ!」
と、士道が背後からとてつもない怒気と殺気な波動を感じて振り向くと、予想通りのドラゴンが凄まじいオーラを放ちながら士道を見下ろしていた。
『新年早々貴様・・・・!!』
「いや、ドラゴン、これはその・・・・」
『新年最初の! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいぃッッ!!!』
『新年最初の! ぎぃやああああああああああああああああああああああああッッ!!!』
ーーーードゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
ドラゴンの新年早々のド突きで、士道は上半身が地面に突き刺さったポーズで、ピクピクっと、動いていた。
道行く人々は何だ何だと言う目で見ていたが、十香達はその光景を見ながら、『あぁ、これで今年が始まったなぁ~』と、言わんばかりに和やかな笑みを浮かべていた。
と、ソコで二亜が倒れた拍子に士道のポケットから転げ落ちたと思しき絵馬を手に取って、ソコに描いてあったイラストと先ほどの士道達の姿を思い浮かべながら、驚いたように目を見開く。
「マジ? この神社御利益スッゲェ・・・・」
と、呟いた。
ー???sideー
士道達が騒いでいるテーブルから少し離れた位置にある絵馬がぶら下がられた絵馬掛所の影に隠れた、2人の男性がいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
1人はフードを目深に被り、さらにサングラスをかけた成人くらいの青年で、士道達の様子を見て、恥ずかしそうに、いたたまれない気持ちなのか、片手で顔を覆っていた。
そしてもう1人は士道達より少し年上で、帽子を被り、マスクを付け、“色鮮やかな緋色の瞳をした少年”が、士道達を見た後に、呆れたように、顔を片手で覆った青年を半眼で見据えていた。
ーウェスコットsideー
さて、所変わってここはDEMインダストリー日本支社の執務室。
その部屋の奥の椅子に座るウェスコットは、先日手に入れた『形を持った絶望』、ーーーー魔王〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉のページを見ていると、近くの椅子に座るワイズマン。その後ろに、人間態のメデューサと人間態のグレムリン控えていた。
グレムリンは気安い態度でウェスコットに話しかける。
「どうしたのMr.ウェスコット? 確か〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉って、“〈シスター〉ちゃんからの干渉で情報検索が妨害されているんだよね”?」
「ああ。『全知』の能力に重い枷がつけられてしまった。酷い誤算だよ。ーーーー丁度その時調べていた情報の解読さえ、これだけの時間を要してしまったのだから」
ウェスコットの言葉に、ワイズマンは小さく口角を上げた。
『ほぅーーーーと言う事は』
「ああ」
ウェスコットは大仰に首肯した後、ニッと唇を歪めた。
「漸く判明したよ。ーーーー“新たな精霊の居場所がね”」
「「・・・・!」」
メデューサとグレムリンが小さく目を見開くと、ワイズマンが口を開く。
『既に現界しているのか? それでどこに?』
「ーーーーふふ」
ウェスコットは小さく笑うと、指を1本立てーーーーそれをそのまま、天に掲げてみせた。
そのすぐに、執務室の扉を荒っぽくノックしてから、エレンとアルテミシアが入ってきて、何故か汗をかいているエレンを訝しそうに見た。
士道達を隠れて見つめる2人の青年は、一体何者なのか?