デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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宇宙・〈ゾディアック〉

ー???サイドー

 

天宮市を一望できる公園から、2人の男性がーーーー初詣の際に士道達をコッソリと見ていた2人の男性が、来禅高校に『隕石』が落下したのを見た。

 

「ーーーーーーーー」

 

「ーーーーーーーー」

 

キッと視線を鋭くした青年達は、少し会話をすると、急いでその場から離れ、それぞれ懐から“アイテム”を取り出すと、ソレを構えた。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

士道と十香達精霊と副担任の令音は、学校近くに回された車に乗って〈ラタトスク〉の地下施設にやって来た。

ーーーー厳重なセキュリティチェックを抜けた所で十香達と別れ(十香達は少々不満気だったので、ドラゴンにフォローを任せた)、令音と共に司令室へ向かい、入ると緊迫した空気が伝わった。幾つものモニタが並んだ部屋には既に、〈フラクシナス〉クルー達が勢揃いし、各々のコンソールに向き合って慌ただしく作業していた。

 

「ーーーー来たわね」

 

司令室の中央に設えられた司令席に腰かけた司令官モードの琴里が、こちらを向きながら言ってくる。

 

「・・・・すまない、待たせたね」

 

「いえ、助かるわ」

 

「ドラゴン」

 

[ドラゴライズ プリーズ!]

 

白衣を脱ぎ、空いていた席に腰かけ、解析を始める令音。琴里は士道とドラゴン(思念体)に視線を戻す。

 

「それで、状況だけど」

 

「ああ・・・・ドラゴンはあの隕石は精霊の仕業って言ってたけど、空間震警報は鳴ってなかったよな? 静粛現界をしたって事か? それに、いきなり高校を狙ってくるなんて・・・・まさか、俺や十香達が狙われたって事なのか?」

 

「んー・・・・」

 

士道の問いに、琴里は難しげな顔で顎を擦った。

 

「どうなのかしらね。正直、何とも言えないわ」

 

『どういう事だ?』

 

「ん。画像、出せる?」

 

琴里が言うと、ソレに合わせてクルーがコンソールを操作した。

すると全面の大きなモニタに、世界地図が表示された。大陸に島、海に何ヵ所も赤いマークが記されていた。

 

『まさか・・・・この赤いマーク全てに隕石が?』

 

「話が早いわね。そう。高校に隕石らしき物が現れたのとほぼ同時刻に、同様の現象が起こった場所を示しているわ」

 

「な・・・・!?」

 

士道は思わず眉をひそめ、世界地図を凝視した。

 

「この全部に、同時に・・・・!?」

 

「ええ。にわかには信じられないけれど、今世界で42ヵ所もの場所に、『弾丸』が投擲されたの。ーーーーその中には、DEMの施設や、各国の対精霊部隊基地も幾つか含まれているわ。だからもしかしたら、微弱な霊波や魔力反応を察知して、それを狙ったと言う可能性も捨てきれない」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。南米にも落ちてるじゃないか! 地球の裏側だぞ!? ソレを同時に何て・・・・まさか八舞姉妹みたいに、複数の精霊なのか!?」

 

「・・・・いいえ、違うわ。精霊は間違いなく1人よ。それに、そもそもあれは、正確に言えば隕石ですらないの」

 

琴里がゆっくりと首を横に振り返してくる。士道は困惑に表情を染め、ドラゴンが『呆けるな阿保!』と、尻尾ド突きで正気に戻し、琴里が口に咥えていたチュッパチャプスの棒をピンと立て、クルーに指示を飛ばす。

 

「百聞は一見に如かずよ。映像を出してちょうだい」

 

「はっ!」

 

幹本が声を発し、コンソールを操作する。

すると世界地図が表示されたモニタに、とある映像が映し出せた。

 

「ーーーー」

 

その幻想的な光景に息を呑む。

画面一面に広がる漆黒の闇。そこに燦然と光る無数の星々。さらに画面下方には、目映いまでの白と青が渦を巻いた緩やかな円ーーーー間違いなく、士道達か棲む母なる星、地球であった。

 

「宇宙・・・・」

 

そう。それは正しく文字通り、天と地とが綺麗に分かたれた光景であった。

そして、その直中に。その少女は、悠然と浮遊していた。

まず目につくのは、暗い宇宙空間の中にあってなお、燐光のような輝きを放つ、見るも鮮やかな黄金色の美しい髪。まるでおとぎ話に出てくる髪長姫<ラプンツェル>を思わせる長い髪が、無重力の世界をたゆたうように広がっている。

身に纏う霊装は星座のような紋様が描かれ煌めく。そしてその手には、巨大な錫杖のような物が握られていた。恐らく、この錫杖が天使なのだろうと、ドラゴンは見抜く。

 

『この映像は自律カメラか?』

 

「ええ。地上で普通に使用している物とは少し違うけど」

 

「それで、この子・・・・が?」

 

「そうーーーー私達も、初めて確認する精霊よ。正式な識別名はつけられていないけれど、便宜的に〈ゾディアック〉と呼んでいるわ」

 

「初めて?」

 

「そう。勿論私達が観測できていないだけって言う可能性は捨てきれないけど、少なくとも〈ラタトスク〉のデータベースに、彼女とような精霊は存在しないわ。だから、天使、霊装、能力、性格等、分からない事が非常に多いの」

 

『今までの精霊達とて、そんな感じでは無かったか? 何を今更、〈ラタトスク〉のデータベース等、ほとんど宛にできんわ』

 

『ぬぐ・・・・!』

 

強烈に嫌味を言うドラゴンに、琴里とクルー達は渋面を作る。神無月はゾクゾクし、令音は冷静に作業をしているが。

 

「そ、それよりもさ! どうやってこの子が地球を攻撃したのか分かるか?」

 

話を戻そうと士道が問うと、小さく深呼吸した琴里は、肩を竦めながら息を吐く。

 

「ーーーー実は、私達が〈ゾディアック〉の位置を特定できたのには理由があるのよ」

 

「理由?」

 

「ええ。ーーーー映像、3時間前まで巻き戻して」

 

「はっ」

 

クルーが答えると同時に、モニタに別の映像に変わる。

宇宙空間に変わりはないのだがーーーー〈ゾディアック〉が眠るように身体を丸めながら、浮遊しているだけだった。

士道が何が言いかけそうになるが、ドラゴンが尻尾で口を塞ぐと、画面の中に、新たな影が現れた。

 

『空中艦。DEMか・・・・』

 

ドラゴンがそう呟く。そう。地球から、巨大な空飛ぶ艦が3隻、現れたのである。しかも、それだけではない。それらの艦の周りには、DEMインダストリーの無人兵器〈バンダースナッチ〉と、グールやインプと言った雑魚ファントムまで現れたのだ。

 

「プハッ! DEMにファントム達が!?」

 

ドラゴンの尻尾から脱出した士道の言葉に、琴里は忌々しげな調子で頷いた。

 

「ええ。〈ゾディアック〉の場所を発見したのはDEMよ。私達は、DEMの空中艦が不審な動きをしていたから、その周辺に自律カメラで探っていただけ」

 

「な、何でDEMは精霊の居場所(バシッ)ガボッ!?」

 

『アホが。先日DEMは何を手に入れた?』

 

「あ」

 

ドラゴンに後頭部を叩かれ、士道は思い出した。琴里はとっくにその考えに至っており、小さく首肯してから声を発する。

 

「恐らく、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉でしょうね。二亜に検索を妨害して貰ったとは言え、完全にその力を無力化できた訳じゃあないから」

 

と、琴里が不愉快そうにフンと息を吐くと、画面の中に変化が現れた。

DEMの艦が、宇宙空間に漂う〈ゾディアック〉に狙いを定め、攻撃力準備を開始した。

艦が随意領域<テリトリー>を展開し、無数の砲門を開いて凄まじい量の魔力を充填し始める。それに合わせるようにして、精霊を囲うように広がった〈バンダースナッチ〉とファントム達が、思い思いに武器を構える。

士道が「ヤバい」と言いそうになる口を、ドラゴンが「黙れ」と言わんばかりに尻尾で巻いて止めた。

すると、画面中央に浮遊していた〈ゾディアック〉が、漸く周囲の状況を察したようにゆっくりと顔を上げる。別段驚いた様子も見せず、淡々とした調子で身体を伸ばしと、右手を掲げて見せた。

 

 

 

《ーーーー〈封解主<ミカエル>〉》

 

 

 

映像の中の少女が、小さく呟いたその瞬間、虚空から光り輝く錫杖が現れた。

間違いなく。先程の映像で〈ゾディアック〉が握っていた天使だ。豪奢な装飾が施された上部に、歪や歯がまだらに並んだ柄。

 

『錫杖・・・・イヤ、鍵か?』

 

ドラゴンが呟き、天使の能力をその形状から直ぐに頭の中で推測を並べると同時に、グール達とインプ達、〈バンダースナッチ〉達が一斉に行動を開始した。〈ゾディアック〉を囲うように展開していた何体かが、槍とレイザーブレイドを構えて〈ゾディアック〉に飛びかかった。

が、〈ゾディアック〉は驚いた様子も見せず、前方から迫っていた〈バンダースナッチ〉に鍵の天使の先端を差し込むと、

 

「ーーーー【閉<セグヴァ>】」

 

と短く言いながら、ソレを右に回した。まるで、鍵穴に差し込んだ鍵を回すかのように。

すると次の瞬間、〈バンダースナッチ〉の手足からガクンと力が抜け、その周囲に張られていた随意領域<テリトリー>が霧散する。

〈バンダースナッチ〉には傷1つ付いていないが、一瞬前まで明確な敵意を持っていた〈ゾディアック〉に襲い掛かっていた数体は、電源が切られたようにグッタリと動かなくなり、グールとインプ達も戸惑ったかのように動きを止めて、〈ゾディアック〉から距離を空けた。

 

「これは・・・・」

 

『あの天使の能力か』

 

「・・・・〈封解主<ミカエル>〉。映像と解析数値からの推測になるが、対象に鍵を差し込み、『閉じる』事により、その者が持つ機能を封じてしまう力を持っているようだ」

 

士道の狼狽と、ドラゴンの冷静に言うと、令音が静かな調子で答える。その間も〈ゾディアック〉は、襲いかかる〈バンダースナッチ〉達を次々と機能停止させ、その機体を杖で殴り、グール達にぶつけた。ぶつかったグールにインプ達は、まるでパチンコのように周囲を飛ぶ。

だが、DEMもこれで仕留められると思っていないようだ。〈ゾディアック〉が雑魚に対応している間に、3隻のDEM艦は魔力充填を完了させ、一斉に攻撃を開始した。3方向から濃密な魔力光が放たれ、暗い宇宙空間が一瞬目映く光り輝いた。

 

《・・・・・・・・》

 

が、〈ゾディアック〉はそんな窮地にあっても微塵も怯えた様子を見せず、ただ静かに杖を構えると、その下端をグッと前方に押し出した。

すると杖の下端が、空間を呑み込ませたかのように不意に見えなくなる。〈ゾディアック〉はそのまま、その杖を両手で左に回した。

 

《ーーーー【開<アータイブ>】》

 

すると次の瞬間。

〈ゾディアック〉の周囲にブラックホールのような『穴』が広がったかと思うと、〈ゾディアック〉に向けられていた砲撃が、全てソコに吸い込まれた。

 

「な・・・・!?」

 

『・・・・』

 

士道が驚愕に目を見開き、ドラゴンが視線を鋭くする。

が、それで終わりではなかった。DEM側の攻撃が全て無効化されたかと思った次の瞬間、DEMの艦や〈バンダースナッチ〉やグール達の後方に、〈ゾディアック〉の周囲に生じたような『穴』が開くと、ソコから凄まじい砲撃が放たれた。

ーーーー漆黒の宙の世界に、再び光の花が咲く。

自ら放った最大威力の魔力砲を受けて、3隻の艦と無数の魔獣と人形は、脆くも爆散した。

 

「DEMの砲撃が・・・・!?」

 

『これが彼女の天使、〈封解主<ミカエル>〉の能力の1つか・・・・』

 

「・・・・ああ」

 

士道が狼狽し、ドラゴンと令音が静かな調子で会話する。

 

「・・・・空間に鍵を差し込み、『開く』事によって、ソコに『扉』を作り出す・・・・と言った物のようだ。そしてその『扉』の出口は、彼女の任意の場所に生じるらしい」

 

「『扉』を開く鍵の天使・・・・って、まさか!」

 

士道はハッと顔を上げ、琴里の方を見ると、「ご名答」と言うように、琴里が指をパインと鳴らす。

 

「珍しく察しが良いじゃない。ーーーーこの後、〈ゾディアック〉は地球に向けて攻撃を行ったわ。さっきみたいに空間に『扉』を作って、手近にあったDEMの艦の残骸を手当たり次第放り込んだの」

 

「『扉』の出口を・・・・地球上に何ヵ所も作って、か」

 

「そう言う事。良い気持ちで眠っていた所をDEMに起こされて、よっぽど頭に来たんでしょうね。普通なら大気圏で燃え尽きるような残骸も、直接空中に転送されたなら、質量そのままで地上にドーン、って寸法よ。・・・・ま、逆にそのお陰で、衝突の威力自体は随分と抑えられたみたいだけど」

 

「そ、そうなのか? かなりの衝撃波だった気が(バシンッ!)ズゴッグ!?」

 

『トコトン無知な愚物めが。あの大きさの質量の物体が大気圏外から衝突すれば、半径数十キロは更地になっているわ。この間皆で見た宇宙の特番を見てなかったのか?』

 

「あ、あぁ、そう言えば・・・・!」

 

尻尾ド突き(中)の痛みに悶えながら納得する士道に、琴里は無知な兄に呆れながら肩をすくめ、話を進める。

 

「兎に角ーーーー自由に『扉』を開ける事のできる彼女には、それが可能って事。・・・・いえ、さっきの攻撃くらいの威力であっても、当てる場所によっては深刻な被害をもたらす事ができるでしょうね」

 

「・・・・・・・・」

 

士道は頬に汗を垂らした。ーーーー成る程、恐ろしい能力である。使いようによっては地球そのものが破壊されてしまうやも知れなかった。

が、恐れてばかりもいられない。士道は心拍を落ち着かせるように深呼吸すると、改めて琴里の目を見つめた。

 

「・・・・で、俺は一体どうすれば良いんだ?」

 

精霊が現れたのだから、デレさせてーーーーその力を封印する。が、相手がいるのは宇宙空間だ。今までのようにおいそれと会いに行けるような場所ではない。それ処か、コンタクトを取る事すら難しいだろう。

 

「そうね・・・・幾つか手はあるけど、あまり時間をかけてまた地上を攻撃されても困るわ。先ずは1番手っ取り早い手段で、彼女と会話をしてみましょう」

 

「会話って・・・・一体どうするんだ? 電話やメールって訳にもいかないだろう」

 

士道が首を捻ると、琴里は士道に尻尾ド突きの態勢に入っているドラゴンに声をかけた。

 

「・・・・ねえドラゴン。〈インフィニティスタイル〉で宇宙まで行って活動できる?」

 

「いやいや琴里何言ってんだよ。そんな事『できるぞ』できるのかよっ!?」

 

琴里が一応聞いてみると、ドラゴンはできると断言し、士道は目を見開いた。

 

『重力問題は『グラビティ』で、空気問題は全身に魔力の膜を張れば、恐らくだが数時間は宇宙空間で戦闘も可能だし、仮面だけなら解除しても問題ない。ーーーーだが、勿論変身が強制解除されたりしたら即あの世行きだがな』

 

「OK。精霊と対話する時は仮面を解除して。士道、初めての宇宙よ。気を引き締めて行きなさい。目覚めた彼女がいつ攻撃を再開するか分からない以上、あまり時間をかけたくないわ」

 

「あーーーーああ。分かった」

 

士道は心拍を整えるように胸に手を置いてから、力強く頷いた。

正直に言えば、初めての試みに緊張するし、心の準備をしておきたくもあった。

だが、琴里の言うとおり時間がない。そらに、いくら心の準備をしたからと言って上手くいく訳ではないのが精霊攻略である。士道は覚悟を決めるように拳を握ると、細く息を吐いた。

そして緊張で固くなった頬に手をやり、ニッと笑顔の形にして見せる。そう。精霊に臨む士道が振るわねばならないのは『魔法』ではなく『愛の言葉』。そして胸に抱かなければならないのは、精霊に対する『恐怖心』ではなくーーーー精霊を絶対に救って見せると言う『確固たる信念』である。

 

「ーーーーいつでも良いぞ琴里」

 

「良い笑顔よ」

 

『・・・・・・・・』

 

琴里はニッと唇の端をあげると、艦長席に腰を落ち着け直し、それを見て士道は部屋を出ようとする。

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

琴里が笑みを浮かべるが、ドラゴンはそんな士道の後ろ姿を半眼で眉根を寄せて、訝しそうに見ていた。

 

≪どうしたのよ?≫

 

琴里が念話で聞いてくる。

 

『(うむ・・・・どうも嫌な予感がするのだ)』

 

≪えっ?≫

 

『(あの愚物、精霊攻略にもそれなりに『馴れ』が生まれたようだが・・・・こういうのが1番危ない)』

 

≪と言うと?≫

 

『(どうにもーーーー『落とし穴』があるような気がするのだ)』

 

≪・・・・『落とし穴』?≫

 

琴里がドラゴンの言葉に首を傾げると、ドラゴンは話を続ける。

 

『(物事が上手く行っていると、思いがけない事に躓いて動けなくなってしまう。その思いがけない事が『落とし穴』だ。あの小僧、1度その『落とし穴』に落ちると、直ぐに這い上がろとせず、“何で自分は落ちたんだ?”、とか、“何が間違っていたんだ?”、とか中身の無い脳ミソでグチャグチャと考えて動けなくなってしまうからな)』

 

≪(・・・・・・・・・・・・・・・・)≫

 

ドラゴンの言いたい事が何となく分かってきた琴里も、頬に汗を一筋垂らした。

 

「ドラゴン! どうしたんだよ?」

 

『(はぁ・・・・)まぁ、『落とし穴』に落ちたら落ちたで、少しはあの愚物の成長の糧になるかもな・・・・』

 

何か、出来が悪過ぎて手の焼ける『弟』の面倒に苦心する『兄』のような哀愁を漂わせながら、ドラゴンは士道と共に部屋を出た。

 

「(・・・・・・・・・・・・何か、私も嫌な予感がする)」

 

ドラゴンの言葉に、琴里も何やら得体の知れない不安感を感じた。

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

〈ラタトスク〉の地下施設の屋上に着いた士道は、右耳にいつものインカムを付け、ドライバーを起動させた。

 

[ドライバーオン プリーズ!]

 

ドライバーを召喚すると、『インフィニティリング』を嵌めてベルトに翳した。

 

[イィィンフィニティー!! プリーズ!]

 

ーーーーギャォォォォォォォォォォンッ!!

 

士道の隣でドラゴンが光り輝き、士道と一体化すると、士道の身体を水晶が包み砕け散った。

 

[ヒースイフードー! ボーザバビュードゴーーン!!]

 

〈仮面ライダーウィザード インフィニティスタイル〉へと変身すると、『グラビティウィザードリング』を嵌めて、ドライバーに読み込ませた。

 

[チョーイイネ! グラビティ サイコー!]

 

ウィザード<士道>の足元に黄色の魔法陣が展開されると、ウィザード<士道>は足に力を込め、空高く飛び上がるようにジャンプした。

 

「うぉっ!?」

 

ジャンプしたその瞬間、一気に天宮市を一望できるくらいの高さまで上昇し、さらに上へと昇って行くのに、少し驚くが身体を魔力の膜が包み、さらにウィザード<士道>の身体をバリアが展開されたように包むと、ウィザード<士道>は成層圏を飛び越え、一気に宇宙空間へと到達した。

 

「・・・・!」

 

果てしなく広がる漆黒。地上からとは比べ物になら無い位に目映い輝きを放つ星々。そしてーーーー眼下に広がる巨大な蒼い惑星。その雄大な光景に、一瞬目を奪われ、息を呑んだ。

だが、今はそんなものに見とれてる場合ではない。ウィザード<士道>は気を取り直すと、ゆっくりと顔を上げるとーーーー目の前に、その少女がいた。

ーーーー長い、長い金髪をたゆたわせた少女の後ろ姿。その様は、まさに精霊と言うに相応しい神秘性と威容を備えていた。

 

《ーーーーそれじゃあ、始めましょうか。地球と宇宙の遠距離恋愛を》

 

インカムから琴里が、冗談めかした言葉を、しかし真剣な口調で言ってくる。ウィザード<士道>は仮面を解除すると、それに応じるようにコクリと頷き、少女の背に声をかけた。

 

「やあ、こんにちは」

 

「・・・・・・・・」

 

≪っ!!≫

 

と。

士道の声に反応して少女が振り向いたかと思うと、次の瞬間錫杖を掲げ、士道の頭目がけて光線を放ってきた。

 

「うおッ!?」

 

間一髪、ドラゴンが士道の身体を動かし身を反らさせて回避させた。黄金色の輝きを放つ霊力で編まれた光線は、暗い宇宙へと抜けていった。

 

「あ、危ねぇ・・・・!」

 

≪気を付けろこのスカポンタヌキ。いきなり殺意満点の攻撃とはな。十香の時を思い出す≫

 

《DEMに攻撃されて気が立っていたんでしょ。そんな状況でいきなり声をかけたら、敵と判断されても仕方ないわ。先ずはこっちに敵意が無いことをアピールしていきましょ》

 

「そ、そうだな」

 

士道は気を取り直すように深呼吸をした。

 

「お、落ち着いてくれ。俺は君の敵じゃない。君を攻撃する意思はないんだ」

 

「・・・・ふむん?」

 

少女は、表情を変えぬまま士道を見ると次の瞬間、少女が指をクイ、と動かしたかと思うと、辺りに漂っていた機械の破片、スペースデブリが高速で飛来し、士道に襲い来る。

 

≪くっ!≫

 

「うわッ!?」

 

[ディフェンド プリーズ]

 

ドラゴンが士道の身体を動かし、魔法陣の障壁を張って、スペースデブリを防ぐ。

 

≪そらっ!≫

 

「うぉッ!」

 

ドラゴンが身体を動かして、デブリを全て地球に捨てると、全部大気圏に入って燃え尽きた。

ゴミのポイ捨てをしてすみません、と思いながら、士道は言葉を続ける。

 

「待ってくれ。俺はーーーー」

 

士道が言いかけた所で、少女は今度は錫杖の上部で頭を思いっきり叩き潰そうとする。

 

≪ぅおっとぉっ!!≫

 

またもドラゴンが士道の身体を動かし、錫杖を両手で止める。刀であれば真剣白刃取りだ。

 

「い、いや、だからちょっと・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

またもデブリが襲い来る。『ディフェンド』で防いで捨てる。

 

「は、話を・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

無数の光線が放たれ、『リフレクター』で拡散する。

 

「うがぁぁぁぁぁっ!」

 

ドラゴンがいなければ5回は殺されているだろう。士道は悲鳴じみた声を上げた。

 

「滅茶苦茶好戦的じゃねえか!? この数分で5回は殺されそうになってるぞ!?」

 

《ドラゴンがいた事に本当に感謝しなさいよ》

 

士道の言葉に、琴里がそう返すと、令音がフウムと顎に手を当てる。

 

《・・・・ふむ、まさかこんなにも攻撃的とはね》

 

《! 待ってください。精霊が!》

 

椎崎が叫ぶと、その声に弾かれるように顔を上げると、少女が、自分の攻撃を防いだ士道を興味深げに覗き込んでいるのが分かった。

何処かボウッとした表情に一切変化はない。だが、その身体の動作は、今までに無いものであった。

そして初めて少女が、その小さな唇を開く。

 

「ーーーー不思議じゃの。うぬは何者なのじゃ?」

 

あまり抑揚のない静かな声と、何処か古風な喋り方。とは言え、彼女から得られた初めての攻撃以外の反応である事に変わりない。士道は大仰に頷いた。

 

「あ、ああ! 初めて話してくれたな。君と話がしたくた、ここに来たんだ。だから・・・・あ、痛い。痛い痛い痛い。やめて。話してる最中に杖でお腹抉るのやめて」

 

士道は脇原を押さえながら苦悶の表情を浮かべた。少女が杖の先端を士道の腹に突き刺し、スープをかき混ぜるようにグリグリと動かしてきたのである。

 

「ふむん・・・・人間の身のようじゃが、良くこの世界に来られたの? 不思議じゃ」

 

「お、おう・・・・そ、それより、良かったら君の名前を教えて貰えないか?」

 

脂汗を垂らしながら苦笑しながら士道が問うと、少女は士道のお腹をかき混ぜるのをやめ、顔を上げてきた。

 

「むくの名か。よかろ。ーーーー六喰。星宮六喰じゃ」

 

少女、精霊〈ゾディアック〉、星宮六喰と士道の邂逅した。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

と、六喰が最初に士道に放った光線だが、実は士道の背後、六喰と士道から1キロ程離れた宙域にいる。“2人の人物?”にも向けて放たれたのだ。

 

『っ!』

 

2人の内の1人が、六喰が放った光線を大胸筋で受け止めると、さらにスペースデブリが襲いに来るが、もう片方の1人が無数のデブリを地球へと片手で弾き飛ばした。

そのまま2人は何もせず、士道達の様子を眺めているだけであり、六喰も目の前の士道に興味を移したようであった。




ドラゴンが感じた『落とし穴』とは?
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